アメリカでの武漢肺炎の致死率が11%と、とても高いものになっています。この原因は、はっきりと医療におけるセーフティーネットの差と考えています。アメリカでは、オバマ政権になるまで社会保険というものが無かったので、医療費というのは殆ど補助されずに徴収されます。その上、オバマ政権での皆保険制度も、民間の保険会社との妥協の産物であった為、掛け金がとても高い。今でも、掛け金の支払いができずに、加入していない人も多いです。

資本主義の悪い面が出たのが、アメリカにおける社会保険制度の不完全さです。元々、アメリカに国民皆保険の制度が無いのは、多分に思想的なものです。資本主義の総本山であるアメリカでは、共和党の考え方として、共助というのは、共産主義的な思想であるという捉え方をしていて、本質的に嫌悪しています。ここは、理屈の問題ではありません。悪い意味での自立自存が、出発的での普及を阻害しました。そして、ニクソン大統領の時に、この制度を採用しない事が主流になると、宝の山とばかりに保険会社が業界を支配しました。

そもそも、保険業に参入できるのは、大資本を持っているところだけです。なので、独占体質が業界にあり、掛け金も強気で、払えないヤツは医者にかかれないのが前提になりました。アメリカでドラッグ・ストアに様々な薬が、大量に売られていて、巨大なピル・ケースで、ためらいも無く暴飲しているのは、そもそも医者にかかると大金が出ていくという事情があります。救急車の出動でさえ、私費で支払いを請求されます。その為、医療費の支払いで破産する事は、珍しくありません。その上、保険の契約ができたとしても、業界を牛耳っている保険会社は、専門の検査官を雇って、契約者に、物凄く細かい契約書と照らし合わせて、契約違反が存在しないかチェックして、少しでも抵触すれば保険金の支払いを拒否します。また、医者側も抱き込んでいて、先進的な治療など、いわゆる治癒率が高くない治療については、医者に治療行為をさせないよう仕向けています。それによって、払わなくて済んだ保険金が発生すると、医者へボーナスが保険会社から支給されます。

つまり、命という代替の効かないものを人質にして、高額の掛け金をとった上に、支払いは法の許す限界まで出し渋りをして、差額の利益を大きくするのが、この業界での正義です。以前、入院中に医療費の支払いが滞った患者を、自動車で貧困者相手に医療を提供している宗教系の慈善病院の前に点滴の管を付けたまま置き去りにする映像を見た事があります。その病院の監視カメラに映っていたものですが、つまり医療行為が完全にビジネスになってしまっていて、社会からの補填も無いわけです。

これが、数十年も当たり前になっているのが、アメリカの社会なので、そもそも病気をしても医者にかかる習慣がありません。その為、重症化もしますし、感染者も増やすわけです。武漢肺炎の事が無くても、既にアメリカでは、インフルエンザで3万人が亡くなっていました。ただ、既知のウィルスであり、毎年の事で感染する程度が判っているので、パニックにならないだけです。

最近、海外のメディアで、「東京のロックダウンが甘い」とか、失敗と断じる海外メディアが出てきています。武漢肺炎の検査数が少なかった時も、その前の豪華客船の中で武漢肺炎が発生した時も、これみよがしに叩かれましたが、自分達の問題になった途端に、評価が見直されています。私に言わせれば、「あなた方の社会の基準で考えるな」という事です。日本に死刑制度がある事についても、良く批判されますが、「あなた方の社会は、銃が蔓延していて、正当防衛か現行犯であれば、警官が射殺しても無罪ですよね。少なくても、間に裁判が入る日本と単純に比較するな」という事です。前提となる社会の道徳や制度が違えば、その社会が出した結論である法律だけを比べて批判しても、仕方無いのです。それに、ポリティカル・コレクトネスがからんでくると、更にやっかいです。