このブログを読んで下さっている方なら、お解りかと思いますが、私はEV懐疑派です。今は、まるで熱病に取り憑かれた患者のように、EVに傾倒している欧州ですが、いずれ雪崩をうってガソリン機関へ戻ってくると考えています。比較の対象として強引である事は、重々承知していますが、経済効率や利便性を無視して、思想から生まれて、無理矢理現実に捩じ込んだ事は、共産思想など、必ず失敗すると思っています。

自動車の歴史から言うと、モーター駆動は、内燃機関より早く開発されています。今から1世紀以上前に、EVの最も原始的なモデルというのは実在していました。しかし、後からガソリンで駆動する内燃機関のエンジンが開発されると、製造の手間や難しさにもかかわらず、エンジン駆動が主流になりました。これは、単に偶然の仕業ではなく、エネルギー効率で一度変換が必要な電気より、直接爆発させてエネルギーにするガソリンのほうが優れていたからです。また、保存・移動という面でも、電気よりも優れています。

地球環境の為に全てEVにするという主張は、過激派のビーガンの方々が、精肉店にレンガを投げて破壊したり、肉料理を提供するレストランの中で、屠殺する豚の断末魔の悲鳴の録音を大音量で流したり、スーパーの中で、陳列してある牛乳のパッケージを勝手に開けて床にぶちまけたりして、「お前達は、悪だ。直ぐに肉食を止めろ」と叫んでいるヒステリックさを感じます。つまり、思想を背景にする事で、反論を封じ、優越的な立場を表明する事で愉悦を感じているとしか思えないのですね。

私なんぞは、根が捻くれているので、「ゲームのルールを変える事で、自動車産業で主導権を取りたいだけだろ?」と思っています。仮に、短い期間で、エンジンからモーターに切り替わると、エンジンを組み立てるのに必要な、膨大な裾野の部品メーカーの雇用が危機に晒されます。つまり、今、自動車業界で強いシステムを確立している企業程、甚大な被害を受けるわけで、政治が方向性を決める前から、準備をして、地球環境を理由にルールを変えれば、先行している分、絶対的に有利です。環境問題を理由にすれば、頭が狂っているレベルの環境保護グループが、テロとか起こして、話題性も十分ですから、「自動車はEVにするのが正義」みたいな論調は、すぐに創れるでしょうねぇ。ああ、まるで、十数年前の「移民問題」みたいですねぇ。

しかし、普通に考えて、ガソリンを燃焼させるより、一回電気という形へエネルギー変換をしないといけないEVのほうが効率が悪いのは判りますし、廃棄バッテリーなど新たな問題を生む事も判っています。強引にEV化を進めようとするのは、環境問題じゃなくて、政治なんじゃないのと思うのも無理は無いですね。確かに排気ガスを出している自動車は見なくてすむかも知れませんが、今後増えるEVが必要とする電力を、どう確保するんだという問題もあります。

さて、では、EV先進国と言われるノルウェーで、今、起きている事を見てみましょう。ごちゃごちゃ理屈を語るよりも、現場を検証したほうが、意味のある問題提起になります。

ノルウェーは、政府の積極的なEV転換支援策によって、物凄い勢いでEV化が進み、現在は脅威の新規購入の自家用車の84.7%がEVになっています。何しろ、EVに買い替えると、自動車にかかる税金が全額免除されるので、結構高いレベルのEVが格安で買えます。また、購入時だけではなく、フェリーで車ごと島へ移動する時に、料金がタダになったり、EV専用のレーンが道にあったり、つまり、EVだと得する社会制度になっています。

また、売りっぱなしではなく、急速充電用の電気スタンドも、積極的に設置して、充電渋滞が起こりにくいよう、インフラの充実も、おそらく世界有数です。テスラ社専用の給電規格であるスーパーチャージャーや、ヨーロッパ最大の給電ネットワークであるIONITYの最上位規格である350kWの急速充電スタンドも、設置されています。充電スタンドと呼ばれる場所には、10台近い充電器が並んでいて、日本の充電スタンドの環境とは、天と地の差です。

ここまでやれば、一般的に言われているEVの運用面での問題は起きないように思うじゃないですか。しかし、そうじゃないんですね。これだけ、充電スタンドのインフラが充実していても、いわゆる繁忙期と言われるバカンスシーズンや、人々が活動する時間帯には、とんでもない充電渋滞が起きています。急速充電とは言っても、それなりに時間がかかるのは必須なので、ある程度台数が設置されていても、やはり捌けないのですね。それでも、長くで30分待ちの渋滞で済むのは、やはりインフラ整備の賜でしょう。

それと、故障している充電スタンドが、とても目につく事です。恐らく、酷使される上に、急速充電自体が負荷の高い作業になるせいでしょうか、故障中の表示が出ている充電スタンドを見つけるのに、さほど苦労しません。どうも、頻繁に故障する問題というのが、あるようです。半時間も待って、充電しようとしたら、故障中のランプが点灯なんぞしたら、気の短い人ならキレますよね。充電時間の短さを、カタログ・スペックで競うEVが増えてますが、充電というのは、充電させる方の機器の耐久性の問題があるようです。

かといって、家庭用コンセントから充電しようとしたら、それこそ半日とかの単位になりますし、緊急時の使用に移動できる距離に制限がかかる事になります。それと、このブログで何回か記事にしていますが、ガレージなどで、コンセントから充電していると、今のリチウム・イオン電池だと、火災を起こす可能性がゼロじゃありません。実際に事故も起きてますし、EVより外部環境の影響を受けやすい電動スクーターなどの2輪車が充電中に燃えるのは、中国あたりでは日常茶飯事です。まぁ、中国共産党の補助金目当てで、本業が酒造屋とか、IT産業とかの素人も参入していて、品質管理が甘いという事もあるのですが、言われているところでは、年間で万単位の火災が起きています。下手すると、家が無くなります。

それと、現地に行ってみないと、混んでいる充電ステーションと空いている充電ステーションが判断できない点も問題です。渋滞というのは、少ないリソースに利用者が集中するから起きるのであって、利用者が効率的に分散すれば、ある程度回避する事ができますが、予め判断する情報がありません。

ちなみに、ノルウェーは、自然環境が厳しいので、国の人口密度は高く無く、効率的に人が居住する為に、点の形で点在する都市を、道路という線で結ぶ形になっていて、道路環境は、ゴチャゴチャと無計画に増殖した都市を狭い道路で結んでいる日本より、かなり良いので渋滞問題は、同じ環境で比較するなら、日本の方が遥かに深刻になると予想できます。

そして、ノルウェーの累積の自家用車の比率で見ると、未だに純粋なEV車の数は、16%程度であり、それでも、これだけの問題が噴出しているという事です。欧州は、将来的に全ての車をEVにするとか息巻いていますが、恐らく途中で挫折すると思います。今の問題を一掃するような画期的な技術が出てくれば別ですが、今のままでは無理ですね。「~ねばならない」と現実は、違うという事です。思想で政治をやると、これがあるから最終的には国が破滅して終わるのですね。EVも適切な使い分けを考えないと、同じ道をたどると思います。