これは3日前の木曜日に出会った見知らぬ老人とのお話。
私の家の近くには古本屋がある。
しかし、一度も行ったことがなかった。どうも外見が胡散臭いのだ。古本屋ならではの、あのノスタルジックな感じもなく、市役所の様な外見、つまらん不動産屋のような看板、どうもそそられなかった。
だが私は暇すぎた。食わず嫌いも良くないだろうと思い行ってみることにした。
店に入る。
第一印象として、暗い。
なんだここは営業しているのかと思うほど暗い。レジには老人が座っている。私の存在に気づくと老人は煎餅を食べながら「おっとっと」と言い電気をつける。エコか、と。そう言いたい。
というか先ほどレジに老人が座っていたと言ったが、そこがレジがすらも怪しい。
レジというか完全に家なのだ。地方の中小企業にあるようなデスクの上にカップラーメン、ノリ、煎餅の袋、フィギュア、輪ゴムなどの生活感が強すぎる面々がずらりと敷き詰められている。そして、その机上の中心に半径20cmほどのスペースが存在している。
あくまで憶測ではあるが、これがレジということにしておいた。
このスペースにお金を置くんだろうな、と。
まあそんなことを思いつつ、店の中を物色する。
そこでやはり一番目につくのは
ゴミ寄りの本の塊だ。
いやと言うか
本寄りのゴミの塊である。
本棚に収まりきっていない、横積みして1mくらいの高さになった本の塊が何箇所にも存在している。
一度は見たことがあるだろう。あの古本などを回収して周る軽トラックの荷台にいらない本が沢山乗っている感じの画を。あれがまさに店の中にある。
これは店なのかと感じるほど、悪い意味で雑多である。しかし、そこが少し楽しかった。一応本を買ってあげようと思い、普通に読みたかった「限りなく透明に近いブルー」150円、とゴミ記念として「破壊王ノリタカ!⑤巻」200円を買うことにした。
破壊王ノリタカ!は見るからにつまらなそうな平成初期のヤンキーギャクマンガである。実は面白くて名作なのかもしれないが、そんなことはあってはならないことである。
そして何故「破壊王!ノリタカ!⑤巻」が200円もするのかは訳がわからなくて店内で爆笑してしまった。200円て、200円て、105円でしょ普通。破壊王ノリタカだぜ?
まあ
その2つを持ってレジに行った。
2つで350円なので、小銭がなかった僕は1050円を先ほど述べたレジだと思われる半径20cmほどのスペースに投じた。
老人は特になにもなかったように、お金を受け取る
どうやら、あそこがレジであっているようだ、正解だ、私の推理はあっていたらしい。嬉しいっちゃ嬉しいがこの嬉しさは、小学校で参観日に親に来てほしくなくて「来なくていいよ」と言い続けたら親はこなかったが祖父母が来てしまった感情と類似していると思う。
老人はお釣りを渡そうとデスクの引き出しを開けた。
おお、あそこが一応金庫みたいになってるのか、と思っていると
中身は領収書系の紙だらけ。なんなんだそれは、とおもっているとそのなかから小さいポーチの様なものを取り出し、そこから700円のお釣りを渡してくれた。店の利益がそこに詰まっていると思うと今日も眠れない。
お釣りをもらうときに、お店が謎に包まれ面白かったので老人に話しかけてみた。
すごいですね、この本の山。ずっとこういう感じで置いてるんですか。
「うーん、そうですねー、ずっとこんな感じかなぁー、いつだったかなぁー」
この爺さん何故軽く敬語を使ってくるんだ、と思いつつ
これって、地震の時とか大丈夫だったんですか?最近もあったじゃないですか、あの時とか大丈夫でした?
「あー、はい、ありましたね。地震ね、いやー、うちは意外と大丈夫でしたよー、うん、あんまり崩れなかったなぁ、なんだっけあの、最近あった地震、、、」
最近だと熊本のやつですかね(この言葉は多分老人には聞こえてない)
「あ!最近のーー、あのー、この前あったー、東日本のーー、福島が大変だった、東北のあの地震だ」
最近、、、!?
5年も前だぞ、、、
この前て、、、
これが老人の強さか、と
どうやら歳をとると時が経つのを早く感じるというのは本当らしい。5年なんて1週間くらいなんだろうか。
私にはまだその境地は理解できない。
我々は大学の4年間で多くのことを学び、多くのことを体験し、多くのことを感じるだろう。
こう考えると実は我々の時間はとても遅いのだ。ゆっくりとした流れの中で生きている。小中高のように義務的な日常生活でもなく、大人のように仕事に追われる日々でもない、人生で最も遅いのが大学時代なのではないか。
このゆっくりと時間の中をさらにダラダラと過ごしている大学生、ゴミとしか言いようがない。
あと
破壊王ノリタカは個人的に少し面白かったので、みなさん本屋で見つけたら是非
ゴミ①