2015年06月

プをそそくさと端に寄せ、トートバッグから透明なクリアファイルを取り出し、中身が見えるように彼の前に置いた。 「……えっ?!」 「私と結婚してください!!!」  彼が挟まれた婚姻届に気付いて大きく目を見開くと同時に、一息にそう言い切り、クッションごと下がって勢いよく土下座をした。長い黒髪を大きく乱したまま頭を伏せ続ける。心臓がに激しく打ち、次第に息苦しさが増し、じわりと汗が滲むのを感じた。それでも、身じろぎもせずギュッと目をつむり返事を待つ。 「どうして……」  思わずこぼれたような虚ろな声が、頭上から聞こえた。  澪は伏せていた顔をおずおずと上げていく。 「あの、このまえ断ったばかりなのに勝手だとは思うけど……」  クリアファイルに伸びている彼の手元を見つめながら、慎重に言葉を選んで理由を説明しようとする。しかし、彼は最後まで聞くことなくテーブルに手をついて立ち上がり、背を向けて寝室へ入っていった。  怒ったの? 呆れたの? 愛想を尽かしたの?  半開きになった寝室の扉を呆然と見つめているうちに、さまざまな憶測が頭をよぎっていく。目の奥がじわりと熱くなり視界が大きくぼやけた。もう見捨てられたのかもしれないと思うと怖くてたまらないが、たとえそうだとしてもまだ諦めるわけにはいかない。せめて、話だけでも最後まで聞いてもらわなければ——。  目元を拭い、崩れそうな体を奮い立たせる。  そのとき、誠一が何か難しい顔をして寝室から戻ってきた。手には折り畳まれた白い紙を持っている。先ほど座っていた

プをそそくさと端に寄せ、トートバッグから透明なクリアファイルを取り出し、中身が見えるように彼の前に置いた。 「……えっ?!」 「私と結婚してください!!!」  彼が挟まれた婚姻届に気付いて大きく目を見開くと同時に、一息にそう言い切り、クッションごと下がって勢いよく土下座をした。長い黒髪を大きく乱したまま頭を伏せ続ける。心臓がに激しく打ち、次第に息苦しさが増し、じわりと汗が滲むのを感じた。それでも、身じろぎもせずギュッと目をつむり返事を待つ。 「どうして……」  思わずこぼれたような虚ろな声が、頭上から聞こえた。  澪は伏せていた顔をおずおずと上げていく。 「あの、このまえ断ったばかりなのに勝手だとは思うけど……」  クリアファイルに伸びている彼の手元を見つめながら、慎重に言葉を選んで理由を説明しようとする。しかし、彼は最後まで聞くことなくテーブルに手をついて立ち上がり、背を向けて寝室へ入っていった。  怒ったの? 呆れたの? 愛想を尽かしたの?  半開きになった寝室の扉を呆然と見つめているうちに、さまざまな憶測が頭をよぎっていく。目の奥がじわりと熱くなり視界が大きくぼやけた。もう見捨てられたのかもしれないと思うと怖くてたまらないが、たとえそうだとしてもまだ諦めるわけにはいかない。せめて、話だけでも最後まで聞いてもらわなければ——。  目元を拭い、崩れそうな体を奮い立たせる。  そのとき、誠一が何か難しい顔をして寝室から戻ってきた。手には折り畳まれた白い紙を持っている。先ほど座っていた

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