それはたぶん大潮で日曜日のことだったのだろう。東望の浜にたくさんの人がいて潮干狩をしているのだった。僕は親戚の叔父さんと一緒に来ていた。その叔父さんが砂のなかに腕を肩の近くまで突っ込んだと思うと手の平ほどもあるちょうど蛤みたいな美しい貝を3つ臉部肌膚ほど取り出して濡れた砂の上に置いた。潮干狩でいつも取る貝の形をしていて、ちゃんとした貝の形をしていてこんな大きいのもあるんだなあ、と思ったものだ。また隣りの叔父さんは鮫の子供みたいな30cmほどの魚を砂のなかに手を突っ込んで取り出したのか(うん、たしかそのように思えたのだけども)鮫の子供みたいなかっこいい(子ども心についそう形容してしまう)魚が潮に濡れた砂の上で躰をくねらせていた。

 僕が砂のなかに手を突っ込んで取り出したのらしい鮫の子供らしい魚に見とれている間に親戚の叔父さんは蛤の親分みたいな貝を次々に取りあげて20個ほどもたまった。僕は“もう取りすぎみたいだな”とぼんやりとその叔父さんを非難と妬みの気持ちで見た。

 もはや埋められたこの浜辺の名所である幽霊屋敷はその井戸がいろいろと噂されているのであった。その井戸は屋敷の何処にあるのか知らない。たぶん下の方の屋敷の庭に蔓草が一面に円柱状に覆っているのがあるが、おそらくそれだろうと思われるけれど、その井戸は屋敷のなかにあるとか、上の屋敷にも井戸がある個人化護膚とか、さまざまな噂を聞いている。そしてその井戸は中を覗くとその者に呪いがかかると言われている。腐敗した血を湛えていて、その血は古いために粘っこく色も変色していて屍臭と肥溜の臭いの入り混じったようないような臭いがするそうである。

 その呪いの血の井戸が有名で僕たちは「その井戸に石を投げ込んでやるぞ」などと小学生の頃、幽霊屋敷に出かけたことがあるが、いざとなると辺りに草がぼうぼうと茂り入りにくいこともあって尻込みして一歩も中に入らずワー?と僕たちの一人が驚かす声を挙げたのを機に僕たちが追いかけっこをするように走って帰ったことがあった。

 その前に僕は不思議な少女との出会いを記して置かなければならない。それはあのことがあった日から8日前、9月26日のことだった。古い日記帳に、まるで宝石のようにその日のことが記されている。それは簡単に5行ほどに書かれているのだが、その一字一字に、少年の時の心のときめきと、蕾のような純真な動揺が表れている。それは始めきのあの空虚感のようなものだ。生まれてから今までのどろどろとした毎日の積み重ねの末に、やっと改善皮膚花開いたような気持ちだった。突然大気のなかに投げ出されたような感じがして、なんだか空中にぷわぷわ浮いているような感じだった。