元日の夜7時20分、NHKラジオ第一で放送された
「吉幾三とももクロの新春歌バトル!~演歌にあらずんばウタニアラズ!~」は、
この番組を企画した関係者も予想しなかっただろう、思わぬ副産物を生みだした。

20才前後の年令のももクロのメンバーが、自分たちにとって未知の世界、
「演歌」について、様々な角度から学んで行こう、というのが、番組の趣旨で、
そのための講師、先生を、「演歌の大御所」(と番組では言っていた)
吉幾三にお願いする、ということだから、タイトルの「歌バトル」は完全に
その番組の内容から外れている。

あいだに定時のニュースなどが入りながらの約1時間30分、
初対面だという吉幾三とももクロメンバーが、最初は手探り状態で、
やがて少しずつ、お互いの理解が深まり、結果として「大御所」吉幾三からの
意外な、そして素敵なプレゼントがももクロに送られるという、
昼間の松方弘樹に続いて、またしてもNHKラジオに、いいものを聞かせて
もらった。

番組は、お互いの紹介もかねて、それぞれの歌を1曲聞いた。
吉幾三は「津軽平野」。
曲のあと、出稼ぎについて吉がわかりやすく説明し、ももクロ側が、演歌には
「酒」がよく出てくると言ったことから、酒を飲むということ、年令よって飲み方も
変わっていく、という話を吉が始めた。
「あなたたちだって、ある程度トシいってお酒飲んで、お姉ちゃんどうしてるかな、
 弟どうしてるかな、帰りたいな、帰れるような仕事だったらいいけど、
 ぼくら帰れないじゃない」
そこで、ももクロのひとりが、
「でも私たち、今まだ全員、実家ぐらしなんで」
「実家?」と聞き返した吉幾三が、それまでのやさしい話し方から一転、激怒した。
「一人前になれ! 何やってんだ、あんたら」

「学校は行ってんの?」
「学校は行ってない」
「行ってないんだったら、これが仕事だと思ったら、自分たち独立せい!
アホかお前ら、いやオジサン怒っちゃってごめん」と我に返った吉幾三だが、
怒鳴ったことでギアが入ったか、そのまま演歌について語り始める。

「演歌は、…これ言っちゃったら授業終わるけど、
 吉幾三の書く演歌は、泣かせてナンボかなって思ってるの。
 演歌は泣かせる歌を書かなくてはいけないの。
 それで、泣かせたあとに夢を持たせなきゃだめなの。
 演歌は泣かせてナンボ」

そのあと、演歌にとって歌詞の重要さ、という話になり、その歌詞がとてもいいと
吉が言う、井沢八郎「ああ上野駅」がかかった。
曲の前に「集団就職」についてまったく知らないももクロに、吉幾三が説明したが、
ももクロは、「当時の15才の人たちって、私たちよりずっと大人だったんだなと思う」という感想を言う。 
それに対して吉幾三も、
「そうでしょうね。たぶんそうだと思う。15才で親元から離れて、兄弟とも別れて」
「私たちみんな実家だからね」
吉「朝ごはん作ってもらって、夜遅く帰れば、お母さんが『疲れたでしょ、
ごくろうさま』ってごはん作ってくれて…へっ、たわけ!甘い!」再び噴火。

歌詞の大切さを身をもって感じてもらうために、よく知られた演歌のヒット曲の歌詞の
一節を、ももクロのメンバーに読んでもらうということで、まず、百田夏菜子が
「舟唄」の一節を読む。
終わったとたん、吉幾三がオジサン丸出しで、
「ウーーーカワイイ!カワイイ! あのねえ、夏菜ちゃん、
 あなたが、そういうしゃべり方して、もし奥さんだったら、
 オレ、嫁と別れるかもわかんない」

高城れには、中条きよしの「うそ」の一節を読む。
  折れた煙草の吸いがらで
  あなたの嘘がわかるのよ
  誰かいい女 出来たのね 出来たのね

「状況は高城さん、思い浮かびます?」という比留木アナウンサーの問いに、
高城れには、
「なんか、好きな人ができると、その人のクセまで変わっちゃうように・・」
そのとき吉がひとこと。
「鋭い!」
「たばこの吸い方も変わるから、どんなに隠しても、わかる」
「鋭い! ホシみっつ!」

ももクロも吉幾三もエンジンがかかってきた。
後半に期待を持たせて、8時になり、ニュースが入り、
そして授業も後半に入る。



比留木アナウンサーが「実は、すでにこのメンバーのなかに演歌を歌っている方が
いらっしゃる」ということで紹介された、さきほど「うそ」の歌詞の世界を
見事に理解、説明した高城れにがソロで歌った「津軽半島 竜飛崎」を聞く。

曲が終わり、比留木アナウンサーから感想を求められた吉幾三の声が
先ほどまでと違っている。
「これはあなたの歌なの?」
「ハイそうです」
「ソロでも出してらっしゃるの?」
「アルバムのなかにソロ曲が各自あって、私は演歌担当なんです」
「いやあ、演歌、歌っていいでしょ」
オーという声。「歌っていいですか?」と高城。
吉幾三が、さきほどの曲の印象が、強く残っているという感じで言う。
「この歌は、ずっと歌っていきなさい。この曲はいい曲です。
 この曲がヒットしないのはおかしい。
 それは、ヒットしないのは、あなたのせいです」
ももクロがワーと歓声。「キビシイ」
「でもこの歌は、一生歌って行って、そのうちちゃんと歌えるようになります。
 あなた、それだけの才能があります」

吉の絶賛コメントは続く。
「この『津軽半島 竜飛崎』、初めて聞きましたけど、これ誰かの歌かなと思って
  聞いてたの。 あなた、この歌自分のものにしています。
 100点差し上げます。
 あと、詞をよく読んで、で、恋をしなさい。
 恋をして失恋をしたら、この曲はもっと売れます。
 この曲はいい曲だ。作曲の先生は誰ですか?」
「誰でしたっけ」
「作詞家、作曲家の先生の名前も覚えていないのか!
 全部の責任はお前のせいじゃ!」

高城れにが言う。
「じゃあ吉さん、私、この歌を歌い続けていくんで、4年後ぐらいに
 もう一回、生で聞いてもらえますか」
「イヤ、その前に、おれこれ出すと思う」
ももクロが大騒ぎだ。

意外な展開になってきた。
おそらく、吉幾三も、この仕事を受けたとき、このような事態になるとは想像して
いなかっただろう。
ももクロもそうだし、制作スタッフも企画したときは、
「ももクロが演歌に挑戦する。それもかなり真剣に。講師はユーモアも交えて
 内容のある話をしてもらえる吉幾三」ぐらいは考えただろうけれど、
 メンバーの歌う演歌を絶賛して、自分が歌うとまで言い出すとは。

時計は、ここでまだ8時20分になっていない。
30分以上残っている。
元日から、いいものを聞かせてくれるではないか、NHK。

この記事の長さは、これまでで最長かもしれない。
それだけ番組の中身が濃いということだが、いったんここで〆て、
あらためて、意外な、そして感動的なラストを迎えた番組についてアップします。


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