これはほんとにドキュメンタリーなのだろうか。
自分は、テレビドラマを見ているのではないか、そんな気がした。
NHK BSプレミアムで、毎週木曜日の夜9時から放送されている
「覆面リサーチ ボス潜入」という番組だ。
毎回、ひとつの会社の社長が変装して、社員たちの働く現場で共に仕事をし、 
現場でなければ出てこない意見、提案、そしてもちろん不満などを直接聞き、
言うまでもなく、その現場スタッフは、相手が社長だと知らないわけで、
そのような「社長のお忍び現場研修視察」が数ヵ所行われたあと、
その現場に関わった社員が集められて、最後に社長からネタばらしがあり、
スタッフたちが、いまひとつ何が起こっているのか理解できないでいるなか、
社長から、一人ひとりに対して、現場で彼らが話したことについて、
社長としての考えが話される。

ここで、ほとんどの視聴者は泣く、らしい。
私は、今回初めてこの番組を見たが、正直に言うと、ポロリと涙がこぼれた。
しかし、しばらくして、何となく胸にしこりのようなものを感じ、
時間とともに、それは大きくなっていった。
そのしこりとは、
「これ、うまくいきすぎではないのか」「全部が、完全にドキュメントなのか」
というものだ。

2月11日木曜日の放送は、全国的に展開しているシネマコンプレックス(シネコン)の社長が、身分を隠して各地の自社の映画館で働き、現場でなければわからない会社の様々な問題を知ることになる。
各地の現場で、彼は、広告代理店の人で、シネコンの現場を勉強するため、
研修にきた、というふうに紹介される。

そして番組の最後に、それぞれの職場で、よりよい映画館にしてゆくための
自分なりの考えを率直に語ってくれた現場スタッフに
もちろん、彼らは、そのときは自分が話している相手が社長だなどとは、
まったく知らないのだが、
社長自身の口から、自分の意見、こんなことができたらいいな、という、
ついこのあいだ言ったことに対して、会社として、どう対応していくか、
ということが語られる。

そしてこの回のラスト、社長は、きょう集まった全員に、3泊4日の香港支社への
研修旅行をプレゼントすると発表がある。思わず、歓声を上げるスタッフ。
あすの仕事への期待と希望を感じさせる音楽が盛り上がって、番組は終わった。
メデタシ、メデタシ。

時間が経って、冷静に振り返ってみる。
まず、全国の、自社が運営する多くのシネコンのなかから、
社長が訪れるいくつかが選ばれたわけだが、
それはどのようにして選ばれたのか。
選ばれたシネコンには、いずれも、真面目に働き、現状に満足することなく、
さらにもっと、お客さんが喜ぶこと、お客さんが増える方法、そういうことを
いつも考えているスタッフがいた。

そして、昼の休憩時間など、社長と話す機会があり(何度も言うが、彼らは
その人が社長だとは知らない)会社のコストカットの方針が、この現場に
どれだけスタッフの負担を増やしているかを話したり、
あるいは、映画館が使われていない時間に、
その客席の一角で、こういう空き時間の映画館を有効に使うアイデアを、
きょう仕事を始めたばかりの新人の中年男に語ったりする。

そのときは、何の気なしに見ていたが、あとになって、
なんだか、予定された段取り通りに進んだのではないかという
印象が濃くなってきた。
つまり、完全なドキュメンタリーではなく、社長とスタッフが話をする場も、
言ってみれば「仕込み」と言えなくもない。

簡単に言うと、あらかじめ作られた「感動ストーリー」があり、それに従って撮影が
行われたということ。
もちろん、そこにウソはない。
誰もが真剣に仕事のこと、会社のことを思い、一生懸命働いている。

それでも、今、胸の中に残るモヤモヤ感は否定できない。

今週は、どんな放送なのだろうと、番組表を見てみたら、
なんと、木曜よる9時のワクは、舘ひろし主演のドラマになっていた。
先週が第1話だったが、ということは、その前の週の放送が「ボス潜入」の
最終回だったということになる。
この放送を見たが、「今回が最終回」ということは一切言っていなかった。
そして不思議なことに、NHKのウェブサイトの広報のページで、
この、2月18日の放送を前に、細田というプロデューサーのインタビューを
のせているが、この回が最終回などとはひとことも言っていないのだ。

http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=03660

NHKふれあいセンターに電話で聞いてみた。
「ボス潜入」を楽しみにしていたが、急に終わってしまった。なぜなのか。
電話のオペレーターは、担当者に確認してみるので、少しお待ちください、
という。
ずいぶん、すばやい対応だなと思いながら待つと、すぐ返事が返ってきた。
担当者によれば、最初から7回シリーズと決まっていたもの、とのこと。

そういう場合、最初から番組ホームページで「7回シリーズ」と告知するものでは
ないかと聞いたが、今、答えられるのは「7回シリーズ」と決まっていた、
ということだけとオペレーターは言うばかり。

きりがないので、電話はそれで終わりにしたが、その答えも、
当然、予想される問い合わせに備えて用意されてあったのだろう。

たかだか、ひとつの番組のことでしかないが、
番組以上のドラマが隠れているような気がする。

誰か、潜入して調査してくれないだろうか。



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