13/10/29 【東洋経済】Airbnb、Uber、Google carの共通点は? 

2011年、スタートアップ企業支援を専門とするベンチャーキャピタル、モビーダジャパンを創業した孫泰蔵CEOは、ヤフー・ジャパンの立ち上げを皮切りに、多くのベンチャー事業に携わってきた”目利き”。「アジアにシリコンバレーを超えるエコシステムを作る」ことを目標に掲げている孫氏が、注目しているベンチャーとは。10月18日にグローバルベンチャー研究会(GVS)で行われた講演の様をお届けする。
 
 社会全体に対してイノベーションを生み出し、社会全体を大きく変革していくことが起業の社会的役割だと思う。日本では中小企業のことをベンチャーと呼ぶことが多いが、中小企業と世界を変えるスタートアップには明確な差があると思う。そのため、私はあえてベンチャーという言葉は使わず、スタートアップという言葉を使っている。

 今、そうした社会を根底から変えるようなスタートアップが生まれているので、3つ紹介したい。

■ 宿泊業を根底から変える「Airbnb」

 一つはAirbnb(エアビーアンドビー)。自分の家や別荘、もしくは家の部屋など、空いた家や部屋を貸すサービスだ。1日5000円とか1万円とか、値段も自分で決められる。使いたい人が申し込んで先方からOKが出ると、「カギは郵便受けの中に置いてあります」といった連絡がくる。

 実際、私もサンフランシスコで使ったが、ホテルだと1人1泊300ドルとか400ドルかかってしまう。何人かで出張に行くと、それが全員分、必要になる。

 それに対して、Airbnbでは4ベッドルームの戸建ての家をたとえば1日1万5000円で借りられる。一緒に出張に行った仲間全員が同じ場所に泊まれる。食事は自炊をすればいい。ご家族のベッドですから、「本当にこの中で寝ちゃっていいのかな」と申し訳なく思いながら寝るんですけど(笑)。


 最初に創業者がこのアイデアをプレゼンした時には「クレイジー。自分の家を赤の他人に貸すなんてあり得ない。借りるのも気持ち悪いだろう」と、誰も相手にしてくれなかったようだ。しかし、これが今では大ブレークして世界中に広がっている。東京でも使われている。累計宿泊数が1億を超えて手数料収入も増えており、強烈に儲かるビジネスになっている。

■ 白タクがまかり通る「Uber」

 次はUber(ウーバー)という配車サービス。これは、どこかに行こうとしているがタクシーがなかなかつかまらない時に、スマートフォンのアプリのボタンをポチっと押す。すると、近くを通っていて方向が同じクルマから「5ドルで乗せてあげる」「4ドルでいいよ」とメッセージが入る。「この人(クルマ)でOK」とすると、その車が来る。サンフランシスコで実際に使ったのでわかるのですが、5分以内でクルマが来ます。決済はアプリ上で済んでいるので、あとは乗って降りるだけ。

 年間数百億円の利用があり、そのうち10%がUberの手数料収入になる。この会社が先日、資金調達をした際、ものすごい人気でびっくりするような時価総額が付いていた。ベンチャーキャピタルから、それだけ高い評価を受けている。

 AirbnbもUberも、日本でこのようなサービスをしようとすると「旅館業の免許はどうなっているのか」「白タクじゃないのか」という点が問題になり、まず誰もやろうとしない。米国でも「トラブルが起こったらどうするんだ」「人に家を貸して、荒らされたらどうするんだ」ということを言う人はいる。でも、まずは新しいことは、やってしまう。そこが重要なポイントだ。

 3つ目はGoogle car(グーグルカー)だ。これはグーグルが取り組んでいる無人自動車、ロボットカーのこと。搭載されたレーザースキャナーが1秒間に250万回もスキャンして、地形や障害物などあらゆるものを測り、車間距離をあけたり詰めたりする。私は米国でグーグルの研究員が運転する車の後部座席に乗ったのですが、最初はハンドルを握っていたのに、高速道路に入ったところで後ろを向いた。「大丈夫? 」とびっくりしたら「大丈夫。実はさっきまでもハンドルを動かしてなかったんだ。いきなりだと皆さん不安になるので、一応、運転しているようにしていただけ」と。

 非常に安定した運転で、まるで電車に乗っているような気分。5年以内に商用化し、最終的にはカーナビぐらいの価格にして、購入した人がクルマに後付けで取り付ければ、ロボットカーにできる世界を目指している。とはいえ、「事故が起こって死者が出たらどうなるのか。誰が責任をとるのか」という問題はある。それに対し、研究員は次のように話していた。

 「これが普及した時に、世の中がどう変わるのか。そのことを考えてみてほしい。人が運転に費やしている時間は何万時間、何十万時間もある。その時間を読書などほかのことに振り向けられたら、どれだけ有意義か。みんなで食事をするときに『クルマを運転してきたので飲めない』と言って、帰る必要もなくなる。何よりも、身体障害者の人たちの人生が変わる。今のところ、介護をするヘルパーの手助けがないとどこにも行けないような人たちが、自分で行きたいところに行けるようになる。これがどんなに素晴らしいことか」

■ 無人カーのほうが安全

 彼らのシミュレーションによると、無人のロボットカーのほうが圧倒的に事故が減るそうですし、全部がロボットカーになれば事故はほとんどなくなるということも言っていました。

 このロボットカー、普通の道を普通に走っている。でも、僕は気になったので「これは許可をとっているんですか」と聞いたら「何も取ってないよ。とりあえずもう1000時間ぐらい走らせたけど」と自慢する。「それはイリーガルでしょ、ダメじゃないの? 」と指摘すると、「イリーガルだよ。でもいいんだ」と話がかみ合わない。

 グーグル日本法人元社長の村上憲郎氏が指摘していることだが、ある新しい機能が出てきたときに、基本的にみんなが使えるようにして、使いたくない人は使わなければいいという仕組みがオプトアウト(opt out)。米国はオプトアウト社会の典型で、新しいことはとりあえずやってみて、その中で禁止事項を作って修正していく。対して日本はオプトインの社会。新しいことや機能が出てくると、先回りして心配して原則禁止とする。そしてOKなものだけを許可する。

■ イリーガルの本当の意味とは? 

 先程の話に戻ると、ロボットカーを公道で走らせてはいけないかというと、規制がないのでOKと判断される。しかし、勝手にやるのはまずいから、「こういうことを考えているので、こういう規制や法案を作って通してはどうですか」と民間側が行政側に提案する。

 そうして規制や法案が決まると、そこからがリーガルということになる。日本ではイリーガルを非合法と訳しますが、ニュアンスが違う。米国では、ルール破りだけがイリーガルなのではなく、ルールが作成されていない中でやっている状態のこともイリーガルと呼ぶ。だから、グーグルの研究員との話がかみ合わなかった。

 もちろん、法案ができた後にそれを破るのは厳しく罰せられることになる。実際、グーグルは各州に働き掛けており、いくつかの州で法案ができている。

 こうした3社のように、新しいアイデアやテクノロジーによって今までない価値が生み出される時に、それに合わせて社会が規制や変えたり新しい法案を作ったりしながら修正していく流れが、シリコンバレー周辺では機能している。だからこそインパクトのあるグローバルベンチャーが生まれている。

 日本でもオプトアウトを許可する、特区をつくればいい。特区という形で限定的なエリアにすれば可能だろうし、そういうやり方でまずは成功事例を生んでいくことが重要。スタートアップの集積は世界各地に生まれつつあり、日本も世界に誇れるようなスタートアップの集積地にしていくことが大事だと思う。