15/09/01 GPIF、4−6月は1兆円近い買い増し? ―株安でさらに買い余力

GPIFは8月27日、15年4−6月期の運用損益が2兆6489億円の黒字(前年同期は2兆2222億円の黒字)だったと発表した。黒字は5四半期連続で、6月末時点の運用資産額は141兆1209億円。

 ただ、年金特別会計分を含めた年金積立金全体の運用資産額は四半期毎の数値が非開示となっている。最新の全体運用資産額は26年度末(15年3月末)で143兆9509億円。3月末のGPIF運用資産額は137兆4769億円で全体の運用資産額から引いた数字は6兆4740億円となり、これが年金特別会計分となる。この6兆4740億円に6月末時点の運用資産額141兆1209億円を合算すると、年金積立金全体の運用資産額は推計147兆5949億円。15年6月末におけるGPIFの運用資産別金額は、この推計を基として計算すると下記のようになる。

             15年6月末         15年3月末
      比率(%)  金額(兆円) 差引増減  比率(%)  金額(兆円)
国内債券  37.95%  56.0  −0.7  39.39%  56.7
国内株式  23.39%  34.5   2.8  22.00%  31.7
外国債券  13.08%  19.3   1.1  12.63%  18.2
外国株式  22.32%  32.9   2.8  20.89%  30.1
短期資産   3.27%   4.8  −2.5   5.08%   7.3
合計   100.00% 147.6   3.7 100.00% 143.9


 国内株式は比率も増え、4−6月の3カ月で資産額が2.8兆円増加したことが分かる。ベンチマークの8割以上を占めるTOPIXの上昇率は同期間配当込みで5.84%。15年3月末から何もしなくても保有株式の値上がりにより、約1.85兆円(31.7兆円×5.84%)増えていることになる。2.8兆円からの差し引き額は9500億円。計算上は同期間に1兆円近く買い増していたことになる。

<株価急落で巨大な買い余力発生も、多大な期待は微妙>

 今後も足元の世界同時株安で巨大な買い余力が発生している可能性が高い。7−8月のTOPIXは配当込みで5.7%下落した。GPIFの国内株資産は何もせずとも約1.97兆円(34.5兆円×5.7%)減少し、4−6月の上昇分を帳消しにした。8月末時点の国内株運用資産額は推定32.5兆円となる。

 GPIFの基本ポートフォリオは国内債券35%(±10%)、国内株式25%(±9%)、外国債券15%(±4%)、外国株式25%(±8%)で、ここから計算すると147.6兆円に対する国内株式の割合は36.9兆円(*)。市場の動きによる資産額変動を考慮しない単純計算だが、36.9兆円から32.5兆円を引いた4.4兆円が現状のGPIF買い余力ともいえる。

 もっとも各資産の大規模なアロケーションは一段落しているため、「この先は積極的に買い増していくというより、株価が下がれば買い、上がれば売るという本来のGPIFのスタイルに近い運用になっていくのではないか」(外資系証券)という。GPIFの買いに多大な期待を持って良いかは微妙な所だ。

 なお、不思議なことにGPIFの国内株式買いの指標とされる信託銀行の現物取引は4月第1週−6月第4週に4067億円の売り越し、先物込みだと5271億円の売り越し。前述した計算とつじつまが合わなくなってしまう。年金特別会計分で何か動きがあったのか、国家公務員共済組合連合会(KKR)、地方公務員共済組合連合会(地共連)、日本私立学校振興・共済事業団(私学共済)の主要3共済の動向なのか定かではないが、気になる点ではある。

(*)株式、債券の動きによる運用資産額の拡大・縮小は計算に入れない。

提供:モーニングスター社