15/11/02【エコノミスト】特集-緩和中毒-2015年11月9日号
【菊池 真】(ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表取締役)


151102_エコノミスト 日米欧の各中銀の国債保有残高


 大量の国債買いという量的緩和によって日米欧では、発行済み国債残高に対する中銀が保有する割合が急増している。特に日本は、国債発行残高に占める日銀保有分の比率が30%近くに達し、飛び抜けて高い水準にある。「緩和中毒」の度合いは最も深刻だ。


◇リーマン・ショックの再来も

注意を要するのは、今の状況がリーマン・ショック(08年9月)の前年の07年と酷似していることだ。07年度も企業業績は増益で、08年4〜6月期に業績はピークを迎えた。しかし、株式市場は07年7月末から8月半ばにかけて高値圏から急落した後、反動で10月に値を戻した。この時、株式市場が織り込んだのは、米サブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)問題だ。この問題では大手投資銀行ベア・スターンズが08年3月に破綻。株式市場は9カ月ほど早く反応していたことになる。

 今回、サブプライム問題に相当するのは、中国はじめ新興国の需要減速による商品市況の大暴落だ。8月の中国株急落による世界株安から、ここに来て反発した動きは、07年と非常によく似ている。

 07年は11月に安値を更新した後、下げ止まらず、翌年のリーマン・ショックまで突き進んだ。今回は、資源企業を中心とする大型倒産から世界金融危機へ至る道筋が、水面下で醸成されている可能性が高い。




【斎藤 満】日銀:異次元緩和に出口は見えない
 バブルが崩壊し、金融危機を経て経済に推進力が無くなってしまった日本では、ゼロ金利を長年続けても、異次元の量的緩和を続けても、景気は浮揚せず、インフレ率の引き上げも円安のコスト高がむしろ経済を圧迫するだけで持続しなかった。

 ◇資産市場に流れたマネー

 それにもかかわらず、日本では2013年に2%のインフレ目標が政治的に設定され、デフレ脱却のためと称して、効果の確認できない異次元の量的緩和が推進された。それでも効果が上がらないので、昨年10月には資産買い入れ規模を拡大する「バズーカ緩和」が追加され、1年たって、さらなる追加が論議された。

 多くの国ではインフレ目標に幅を持たせ、中期的な目標としているのに対し、日本では「2%を2年で達成」と大風呂敷を広げてしまった。マネタリーベースは12年末の132兆円から今年9月末には332兆円に膨張、国内総生産(GDP)の実に66%(対4〜6月期名目GDP比)に達した。欧米では20〜25%だから、日本の異常さが分かる。

 日銀が大量に供給した緩和マネーは日本の実物経済には向かわず、むしろ新興市場や資産市場に向かった。それは投資に対する期待収益率が、今の日本では実物経済で低く、新興市場や資産市場でのリターンがより大きいためだ。日本では名目GDPはこの20年、500兆円あたりで停滞しているから、実物経済での期待成長率は、ほぼゼロとなる。

 一方、新興市場では5〜10%の成長が期待され、資産市場では日銀自ら投資家として大量の資産買い入れをするから、国債市場や株式市場では手っ取り早く利益が上げられるとの期待を誘った。特に円安になると株価が上がるとの連想が広がっているから、「日銀の金融緩和→円安→株高」の期待が醸成された。市場では景気が悪化すれば、むしろ追加緩和が期待できるとして株を買い上げる事態まで生じることになった。まさに「緩和中毒」と言ってよい。


151102_週刊エコノミスト 緩和中毒 表紙


週刊エコノミスト 緩和中毒 目次

18 世界4極の果てしなき緩和 リーマン・ショックの再来も ■菊池 真

21 [米国]利上げを阻む3要因 ■鈴木 敏之

22 [欧州]限界に近づくECBの金融政策 ■吉田 健一郎

24 [日銀]異次元緩和に出口は見えない ■斎藤 満

26 [中国]14年11月以降6度目の利下げ ■齋藤 尚登


株式市場はどう反応するか

27 緩和マネーは株式に向かわざるをえない ■隅谷 俊夫

27 市場予想以上の緩和なら2万1500円も ■吉野 貴晶


年末の為替はどうなる 米利上げ開始は?

28 大統領選見据えドル安誘導 ■宇野 大介

28 休止したドル高トレンドが復帰 ■高島 修

28 正反対の日米金融政策で円安に ■中窪 文男

28 ECBの明確な緩和意思でユーロ安 ■窪田 真之

28 FRB12月利上げでユーロ一段安 ■矢嶋 康次


Viewpoint
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