李啓充 MLBコラム

スポーツ紙のMLB情報では物足りないファンのために

呪いバスター(Curse Buster) テオ・エプスタイン

108年振りのワールドシリーズ(WS)優勝で「殿堂入りを確実にした」といわれているのが、カブス球団社長のテオ・エプスタインだ。
 

レッドソックスGM時代の2004年に「バンビーノの呪い」を破って86年振りのWS優勝を成し遂げたことは読者もよくご存知の通りだが、今回は「ビリー・ゴートの呪い」を破っての優勝である。MLB史上の「二大呪い」を立て続けに破った「呪いバスター(curse buster)」の殿堂入りに異を唱える向きはいない。
 

一方、インディアンス監督のテリー・フランコーナもレッドソックス時代に「バンビーノの呪い」を破った実績があり、今回「インディアンスに68年振りの優勝をもたらせばこちらも殿堂入り確実」と言われていた。「あと1勝」までせまった後の3連敗で悔しい結果となったが、WSでの采配はカブス監督のジョー・マドンを上回る冴えを見せていただけに惜しまれる。

 

エプスタインがMLB史上最年少(当時)の28歳でレッドソックスGMとなったのは2002年のシーズン終了後のことだった。セイバーメトリクスに基づき、他のチームとは違うデータ(たとえば出塁率)を重視することでチーム編成を行う手法を始めたアスレチクスGMのビリー・ビーンが、一度は引き受けたレッドソックスGM就任を断った後の「代役」として抜擢されたのだった。

就任時にバンビーノの呪いを破る「戦略」について聞かれたエプスタインは、「毎年のようにプレーオフに出場できる戦力を調えることが基本。プレーオフに出場した後は何でもありだから運を天にまかせるしかない」と答えたが、その後2年のシーズンは、彼の言葉通りの展開となった。就任1年目の2003年はALCSでライバル・ヤンキースと、最終第7戦まで戦いサヨナラ負け。2年目の2004年に再びヤンキースとALCSでまみえ、3連敗後の4連勝という奇跡的逆転でWSに進出、4連勝でバンビーノの呪いを破ることに成功した。2007年にもWS優勝を達成、レッドソックスの「大功労者」となった。
 

最大の功績としてよく上げられるのは、ツインズをお払い箱になったばかりのデイビッド・オーティースをGM就任直後に獲得したことだが、オーティースを採っていなかったら、2004年のALCS逆転優勝もありえなかったし、いまだにレッドソックスはバンビーノの呪いを破れずにいた可能性さえあるのである。
 

2011年のシーズン最終29試合を821敗の「collapse」で首位から陥落、3位に終わったことの「責任」を取って辞任、レッドソックスを去ることとなった。しかし、オーナー達から「実力にこだわるのでなく、テレビの視聴率が取れるような『セクシーな選手』を採れ」と要求され続けたことも辞任の一因であったことをその後認めている。
 

レッドソックス辞任直後、カブスのオーナーに請われて球団社長に就任、レッドソックス時代の「腹心」だったジェッド・ホイヤー、ジェイソン・マックラウドをパドレスから呼び寄せ、それぞれGM、スカウト部長に起用、チーム作りに着手した。
 

レッドソックスGM就任時に前任者から受け継いだチームはすでに強かったので、「いかにしてさらに強くするか」に腐心したが、カブスで受け継いだチームは、2011年の成績で見たとき、7191敗・地区5位という「ダメ」チームだった。エプスタイン等は「チーム解体・ゼロからのスタート」を決め、ファンに対し「5年後には強くするから、しばらく我慢を」と要望した。「役立たず」のベテラン・中堅を放出するとともに、若手有望選手を次々に獲得、ファームの充実にとりかかることから始めたのだが、実際、2012年のカブスは、61101敗と、前年を上回る(下回る?)弱さを見せつけた。その後、66勝、73勝、97勝と着実にチームを強化、5年目の今年はシーズン103勝というMLB最強チームを編成、ファンとの約束を守った。WSロースター25選手中、前任フロントから引き継いだ選手はウィルソン・コントレラス(捕手)とハビエル・バイエズ(内野手)のわずか2人。いわば、持ち札を「全取っ替え」することで山羊の呪いを破ったのだった。
 

エプスタインの手腕(=選手を見る目の確かさ)を、これ以上はないほど明瞭に示す「証拠」となったのが、今季のオールスター戦だった。投手を除く先発出場(=ファン投票選出)18選手中、ドラフト・トレード・FA契約でエプスタインがレッドソックス・カブス在任中に獲得した選手が9人と半数を占めたのである(詳細は末尾に付記)。
 

ことほど左様にエプスタインは選手の能力を見る目に長けているのだが、実際の選手獲得に当たっては、「性格・人格」を重視する。アンソニー・リゾー、デイビッド・ロス、ジョン・レスター、ジョン・ラッキーと、レッドソックス時代から知っていた選手をカブスで再雇用しているのも、「性格のよさ」を熟知していたことが決め手になった。
 

一方、今季途中、ヤンキースから抑えのアロルディス・チャップマンをトレードで獲得するチャンスが訪れた際、エプスタインはトレードを断行するかどうか最後まで迷ったという。家庭内暴力で警察沙汰を起こしてMLBから出場停止処分を受けたばかりとあって、逡巡したのである。最終的に、MLBからチャップマンと直接話す許可をとりつけ、「不祥事に対する反省の思い」を本人から確認、トレードを決断したのだった。
 

選手の人格・性格を重視するポリシーを採用するだけあって、エプスタイン本人もその人格の良さで知られている。ニューヨークタイムズのコラムニスト、タイラー・ケプナーによると、イェール大学を卒業してパドレスのフロントの一員となったばかりの頃、エプスタインは、ベテラン内野手のクレイグ・シップリーから「選手はみなフロントの連中にだまされてきたか、これから騙されるに違いないと思っている」と聞かされた。そのとき「自分は選手に対して常に正直に振る舞う」ことを決めたというが、正直に振る舞うことが「正しいこと(the right thing to do)」であるにとどまらず、「選手とよりよい関係を築く」という、嘘つきのフロント担当者が決して持つことの出来ない実利をももたらすことを即座に直観したのである。
 

実際、「エプスタインにだまされた」と非難する選手の存在を私は知らないし、正直に振る舞うという原則に徹してきたおかげで、歴史的「呪い」を二度も破ることができたのだから、世間の正直者の皆さんは勇気づけられてしかるべきではないだろうか。私の場合、最近、仕事絡みで、エプスタインとは正反対のタイプの上司と関わる羽目に陥っただけに、一層、彼の偉さがよく理解できてならないのである。

 

<付記:エプスタインが獲得した2016オールスター先発出場(ファン投票選出)選手>

ア・リーグ(レッドソックス)

デイビッド・オーティース(指名打者)

ザンダー・ボーガート(遊撃)

ムーキー・ベッツ(右翼)

ジャッキー・ブラッドリーJr(左翼)

 

ナ・リーグ(カブス)

アンソニー・リゾー(一塁)

アディソン・ラッセル(遊撃)

ベン・ゾブリスト(二塁)

クリス・ブライアント(三塁)

デクスター・ファウラー(中堅、ファン投票で選出されたものの負傷欠場)

 

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カブス 108年目の「偶然だぞ」〜 The Best Rain Delay Ever

カブスが108年ぶりのワールドシリーズ優勝を達成した。

7戦、スタンドでカブスを応援するファンの中に、「It’s Gonna Happen」と書かれたプラカードを掲げる向きがいるのを中継で見たとき、私は2008年開幕戦の「偶然だぞ」事件を思い出した。
 

この事件、カブス・ファンが、優勝への期待と日本から獲得したばかりの福留孝介の開幕デビューに合わせた応援とを組み合わせたことによって起きた「珍事」だった。まず、「It’s Gonna Happen」のプラカードの意味を説明するが、そのためには2007年のシーズンまでさかのぼらなければならない。
 

同年のシーズン、カブスは、61日時点で首位に 7.5ゲーム差の地区4位(借金8)と大きく出遅れていた。しかし、62日、ルー・ピネラ監督が退場覚悟の「猛抗議」でチームの闘志に火をつけたことがきっかけとなって快進撃が始まり、最終的に地区優勝をとげた。スポーツ・イラストレイテッド誌(同年730日号)が、67月の快進撃を伝えた際、記事に「It's Gonna Happen」とタイトルをつけたことで、このタイトルが、応援スローガンとして一気にファンの間に広まったのだった。ちなみに、「It's Gonna Happen」の「It」が「(その当時の計算で)99年ぶりのワールドシリーズ優勝」を意味したのは言うまでもない。
 

2008年のシーズンは、大枚を叩いて日本から強打者福留孝介を獲得した上、前年地区優勝したとあって、カブス・ファンは「今年こそ悲願達成」と期待を強め、優勝の立役者になるはずの福留に特別の応援をする必要を感じていた。そこで、優勝への期待を込めた「It's Gonna Happen」の応援プラカードの裏にその日本語訳をつけることで福留を鼓舞しようとしたのだが、悲しいかな、誰かがコンピュータの自動翻訳で見つけた「偶然だぞ」をそのまま印字してしまったのだった。かくして応援された当の福留が何のことやら意味がわからず目を白黒させる珍事件が出来したのだが、今回のカブスの第7戦勝利は、天の配剤による「偶然だぞ」が最大の勝因となったと考える向きは多い。
 

……
 

最終第7戦は、ジョー・マッドン監督の投手リレーが失敗、カブスは「あとアウト4つで優勝」と迫ったところで同点に追いつかれた。8回裏二死3点差の場面で、ジョン・レスターに代えてアロルディス・チャップマンを起用、「4アウト・セーブ」を期待したのだが、第6戦、5点リードの場面で不必要に登板させたつけが祟った。疲れの目立ったチャップマンは、1アウトも取れないまま、あっという間に3点リードをふいにしてしまったのである。
 

3点リードであとアウト4つ」まで迫ったところでクローザーがセーブに失敗したのだから、そのショックは大きかった。嫌なムードを引きずったまま延長戦に突入しようというそのとき、「天の配剤」がもたらした「happening(偶然)」がカブスを救った。アンソニー・リゾーいうところの「The best rain delay ever(これまで起こった中で最良の雨天中断)」が起こったのである。
 

雨天中断が告げられると同時に、同点に追いつかれて意気消沈していたチームメート達に「選手だけのミーティング(players only meeting)」招集を呼びかけたのは、今季ずっと打撃不振に苦しんだジェイソン・ヘイワードだった。打線の「ブレーキ」として幾多のチャンスを潰してきたものの、ヘイワードは好守備で何度もチームを危機から救ってきた。しかも、誠実な人柄はチームメートも認めるところであり、スランプから抜け出ようと一所懸命努力してきた姿勢は逆に尊敬を集めてきた。
 

集まったチームメートに対し、ヘイワードは大略次のように語ったという。

「僕たちは今季野球界ベストのチームとして闘ってきた。ここまで来るために多くの障碍も乗り越えてきた。大切なのは勝ち負けそのものではなく、チームメートを信じ、互いのために全力を尽くすことだ。君たちといっしょにプレーできることを誇りに思う」
 

ヘイワードの言葉を聞きながら涙ぐむ選手は少なくなかったという。ヘイワードの後も次々と選手が発言に立ち、チームを奮い立たせた。クローザーが打たれて意気消沈していたチームの雰囲気が一変、17分の中断が終わった時には、逆に、意気揚々と延長戦に臨むことができたのである。
 

10回表、先頭打者カイル・シュワーバーのヒットに始まり、代走アルバート・アルモラが中飛でタッチアップし二塁に進む好走塁、そして、ベン・ゾブリスト、ミゲル・モンテロのタイムリーと、カブスは猛攻で2点を上げた。その裏1点を奪われたものの、逃げ切って108年振りの悲願を達成したのは、読者もよくご記憶のとおりである。優勝が決まった途端、「It’s Gonna Happen」のプラカードが「It Did Happen」と書き換えられたのは言うまでもない。
 

……
 

優勝の翌々日、シカゴでの祝勝パレードでは、500万人のファンが沿道と最終会場のグラント・パークを埋め尽くした。就任時の、「5年で優勝できるチームを作る」とする約束を守った球団社長のテオ・エプスタインは、グラント・パークでの挨拶で、雨天中断という「偶然」をもたらした「天の配剤」のおかげで優勝できたことを強調、天国にいる「Harry」(カブスの名アナウンサーだったハリー・カリー)と「Earnie」(殿堂入りした名遊撃手アーニー・バンクス。「Let’s play two(こんなに天気がいいのだから、二試合やろう)」の名セリフを残したことで有名)に感謝した。
 

以上、「The best rain delay ever」が、最終戦、しいてはワールドシリーズのカブスの勝因となったことを説明した。そういう意味では、10回表にタームリー二塁打を放ったゾブリストよりも、シリーズ通算20打数3安打のスランプでチャンスをことこどくつぶしたヘイワードの方が、チーム全体を奮い立たせ、10回表の猛攻を可能とした功績でMVPにふさわしいと思うのだがどうだろう。
 

 

(付記:本ブログ更新が遅れたことを読者にお詫びする。引越、新しい職場への赴任と、ばたばたしていたためであるが、引越・転勤が必要となった理由についてはこちらの方で説明したので興味のある読者はご一読いただきたい)

 

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カブス  108年振りの優勝は「天の配剤」説

カブスが1908年以来108年振りの優勝を目指してワールドシリーズ進出を決めた。

シカゴの街が沸き立っているのは言うまでもないが、いま、彼の地では、「108年待ったのは決して偶然ではなく、神仏の深い意図によって待たされたのである。それが証拠にカブスの歴史を宇宙的観点も交えて見たとき、あちこちに数字の108が登場する。だから、108年目の今年こそ、天の配剤により優勝する」とする説が唱えられている。

以下、922日づけのシカゴ・サン・タイムズ紙が列挙した「108年振りの優勝は天の配剤説」の「根拠」を紹介する。

   リグリー・フィールドの右翼も左翼も本塁からの距離は108 m である

   オーナーのリケッツ家の本業「TD Ameritrade社」はネブラスカ州オマハ市の108番街にある。

   第2戦先発予定のジェイク・アリエッタは週6日間ヨガをするが、ヨガでは108が聖なる数字とされている。

   映画「Back To The Future II」(1989年)、及び「Taking Care Of Business」(1990年)とも、作中でカブスがワールドシリーズに優勝する設定となっているが、二作ともその長さは108分である。

   1945年のワールドシリーズで山羊の入場を断られた怒りが収まらなかった飼い主ウイリアム・シアニスは、ワールドシリーズ第5戦にカブスが負けて王手をかけられた後、オーナーのP. K.リグリーに「Who smells now?(くさいのはどっちだ?)」とする嘲りの電報を送ったが、電報が送られた日付は1945年「10/8」だった。

   カブスが最後にワールドシリーズの試合に勝ったのは1945年の第6戦(延長1287でサヨナラ勝ち)だったが、その日付は「10/8」だった。

   野球のボールの縫い目は108個である

   太陽と地球の距離は太陽の直径の108倍である。

   ・・・・・

いささかこじつけが強い感は否めないが、2004年にレッドソックスがバンビーノの呪いを破って86年ぶりにワールドシリーズ優勝を成し遂げた夜は奇しくも皆既月食と重なり、「天の配剤」が言われたものだった。今回のカブスの「天の配剤」説も、「108年振りの今年こそ勝つ」と信じたい向きには、心強い仮説なのではないだろうか。

そういえば、仏教でも「人間の煩悩の数(=除夜の鐘の回数)」は108とされているが、これも「108年振りの優勝は天の配剤説」の根拠になるのだろうか?

 

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元レッドソックス効果

MLBファンの間では、昔から「Ex-Cubs factor」なる仮説が唱えられてきた。「カブスには長年の負け癖が染みついているので、ひとたびカブスに在籍した選手は他のチームに移籍した際にその負け癖を移植する。元カブスの選手が3人以上いるチームはワールドシリーズで勝てない」という仮説である(直訳すれば『元カブス要因』となるが『元カブス効果』といった方がわかりやすいだろう)。実際、カブスが最後にワールドシリーズ(WS)に進出した1945年以降、元カブス選手を3人以上擁してWSに進出したチームは23を数えるが、うちWSを制したチームはわずか3チームにとどまっているのである。

しかし、今年のポストシーズンを見ていると、私は「Ex-Red-Sox factor」なる仮説を唱えたくなってきた。勝ち進んだインディアンズ・カブス・ドジャースに、元レッドソックスの選手がやたらに多く、「2004年にバンビーノの呪いを破って以後、レッドソックスの選手には呪いを破る神通力が備わっている。元レッドソックスの選手が多いほどポストシーズンで勝つ確率が高い」とする仮説を唱えたくなってきたのである。

以下、元レッドソックスの面々とその活躍振りを列挙する。


<ドジャース>

デイブ・ロバーツ(監督):2004年のリーグ決定シリーズ第49回裏2死一塁で二盗を決め、3連敗から4連勝の劇的逆転のきっかけを作った。

エイドリアン・ゴンザレス(一塁手):2011年主砲となることを期待されてレッドソックスがパドレスからトレードで獲得したものの期待に答えられず、翌年のシーズン途中、「お払い箱」扱いでドジャースに放出された。リーグ選手権第2戦、決勝本塁打を放ってクレイトン・カーショウの好投に答えた。

ジョシュ・レディック(右翼手):レッドソックスの元プロスペクトであったが、メジャーデビュー後わずか3年でアスレチクスに放出された。

リッチ・ヒル(投手):マサチューセッツ州出身ということもあってレッドソックスに3回雇われ3回解雇された。リーグ選手権シリーズ第3戦で6回無失点2安打と抑え、カブス・ファンを「今年もダメだ」と絶望させた。


<インディアンズ>

テリー・フランコーナ(監督):2004年、バンビーノの呪いを破ってレッドソックスに86年振りのWS優勝をもたらした後、2007年にもWS優勝をもたらした大功績者だった。しかし、首位を走っていた2011年のシーズン、終盤27試合を720敗の「大スッコケ」で優勝を逃し、責任を問われて解雇された。今ポストシーズン地区決定シリーズ第1戦、二枚抑えの一人、アンドルー・ミラーを5回に投入する名采配で1点差を守りきり、レッドソックスの出鼻をくじいた。

ブラッド・ミルズ(ベンチ・コーチ):2004-2009年フランコーナの副将としてレッドソックスのベンチ・コーチを勤めた。フランコーナのインディアンズ監督就任と同時に合流、副将に復帰した。

アンドルー・ミラー(救援投手):先発投手で鳴かず飛ばずだったミラーを救援に転向させたのは2011年に加入したレッドソックスだった。その後リリーフ投手として大成、リーグ選手権シリーズではMVPとなる活躍を見せた。

マイク・ナポリ(DH):2013年レッドソックスWS優勝の立役者であったのに、2015年のシーズン途中、冷たくカーディナルズに放出された。今季は101打点の活躍でインディアンズを地区優勝に導いた。

ココ・クリスプ(左翼手):2006-2008年レッドソックスに在籍した後、ロイヤルズに放出。地区決定シリーズ第3戦、21とリードした6回表に2点本塁打を放ちレッドソックスの息の根を止めた。


<カブス>

テオ・エプスタイン(球団社長):2002年MLB史上最年少GMとなるや、2年後にバンビーノの呪いを破り、レッドソックスにWS優勝をもたらした。2011年の「大ズッコケ」後退団、カブス球団社長に就任、カブス・ファンの期待を一身に担ってきた。

ジェド・ホイヤー(GM):レッドソックス時代はエプスタインの腹心。2009年パドレスのGMに就任するも、2011年エプスタインに合流、カブスGMとなった。

ジェイソン・マクラウド(スカウト部長):2005年から2009年までレッドソックスのスカウト部長。その後ホイヤーと行動をともにしてパドレスに移籍、さらに、2011年にはカブスでエプスタインに合流した。2012年アルバート・アルモラ、2013年クリス・ブライアント、2014年カイル・シュワーバーをドラフト指名するなど、有望選手を次々に獲得した。

アンソニー・リゾー(一塁手):レッドソックスのマイナーリーガー時代、パドレスにトレードされた(パドレスGMはホイヤーだった)。ゴンザレスとのトレードだったが、エプスタインは「いつか君をきっと呼び戻す」と約束したという。その約束を果たし、ホイヤーがGMとしてカブスに合流するやいなや、リゾーをトレードで獲得した。今季はファン投票でオールスターに選ばれるなど、エプスタインのお眼鏡にかなう成長を果たした。

ジョン・レスター(投手):2007年、2013年と2回のWS優勝に貢献したが2014年シーズン途中にアスレチクスに放出された。シーズン終了後FAとなった際、エプスタインの強い勧誘があり、カブスに入団。「大試合に強い」の定評に偽りはなく、リーグ選手権ではハビエル・バイエズとともにMVPに選出された。

ジョン・ラッキー(投手):2013年のWS優勝に貢献したものの、2014年のシーズン途中カーディナルズに放出された。レスターと同じく「大試合に強い」ところをエプスタインに買われて今季カブスに移籍した。リーグ選手権第4戦で4回を2失点に抑え、連敗を止めることに貢献した。

デイビッド・ロス( 捕手):
2013年のWS優勝に貢献した超ベテラン。カブスではレスター専属の捕手として活躍。今季カブスをWS優勝に導いて引退と広言、ファン・チームメートから「グランパ・ロス」と慕われている。

 

以上、元レッドソックスの面々の今ポストシーズンでの活躍を紹介したが、書けば書くほどレッドソックス・ファンとしての怒りが募ると同時に、私の「元レッドソックス効果」の仮説は間違っているように思えてきた。というのも、ここに書いた選手・首脳陣がいまレッドソックスに残っていたら、今年はレッドソックスがWSに簡単に優勝していたのではないかと思えてならないからである。

たとえば、レッドソックスは2014年のシーズン終了後のFA交渉の際、レスターに年俸を出し惜しみしてカブスに奪われた(契約期間6年・総額15500万ドル)。翌年その「間違い」の埋め合わせをするかのように、デイビッド・プライスを、レスターの契約額を大幅に上回る巨額年俸(7年・21700万ドル)で獲得した。しかし、プライスのポストシーズン通算成績は28敗・防御率5.54であり、レスターの86敗・防御率2.50とは「正反対」と言ってよいほど大試合に弱い。いったい何をやっているのかと、怒らざるを得ないのである。

「元レッドソックス効果」は「最近のレッドソックスのオーナー・フロントは頭がそれほど強くないため、大試合向きの人材を次々に放出している。だから最近レッドソックスから放出された人材が揃っているチームほどポストシーズンに勝つ確率が高い」と書き直さなければならないのではないだろうか。

 

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ジャイアンツ 「偶数年マジック」の破綻

 ポストシーズンの采配に限れば、MLB史上、ジャイアンツ、ブルース・ボーチーの右に出る名将はいないのではないだろうか?

 8回のポストシーズン進出通算4433敗(勝率571厘)も立派だが、ジャイアンツに移った後の4回に限れば、3617敗(勝率679厘)という驚異的数字を残しているのである。

 しかも、2010年、2012年、2014年と偶数年のワールドシリーズ優勝を3回続け、「ジャイアンツの偶数年マジック(even year magic)」と称されるに至った。しかも、「負けたらおしまい」のelimination game は今季カブス相手の地区決定シリーズ第3戦の逆転勝ちまで10連勝と、ポストシーズンのシリーズでボーチー率いるジャイアンツを敗退させるほど困難なターゲットもなかった。地区決定シリーズ第4戦も9回表まで52とリード、「偶数年マジックは今年も生きていたか」と、恐怖におののき始めたカブス・ファンは少なくなかった。

 ではなぜジャイアンツの偶数年マジックが破綻したのかというと、その原因は、第49回表の展開に象徴されていた。8回までカブスを2安打に押さえる好投をしたマット・ムーアの投球数はすでに120、ボーチーは、3点差を守るために継投策を駆使する以外になかった。

 まずカブス一の強打者クリス・ブライアント(2番右打ち)に対し右のデレク・ロウをぶつけたものの三遊間を抜かれて先頭打者出塁を許してしまった。続く3番のアンソニー・リゾー(左打ち)に左のハビアー・ロペスを起用して四球、4番のベン・ゾブリスト(両打ち、右打ちの方が成績がよい)に右投げのセルジオ・ロモを送ったものの二塁打を打たれて2点差、無死二・三塁とピンチは続いた。5番のアディソン・ラッセルに左打ちの代打が出たところで左投げのウイル・スミスを投入したものの右打ちの代打ウイルソン・コントレラスに代えられ、同点2点打を許してしまった。ボーチーとしては、四苦八苦の末に救援投手4人を投入したというのに1アウトも取れず、3点差を追いつかれてしまったのだった。

 つまり、偶数年マジックが破綻した理由を一言でいうと、「信頼できるクローザーがいなかった」ことにつきる。2010年はブライアン・ウイルソン、2012年はセルジオ・ロモ、2014年はサンチアゴ・カシヤと、最終回のリードを守ることができるクローザーがいたからこそ「偶数年マジック」が成立したのだが、いかに名将ボーチーをもってしても、クローザー不在でリードを守ることは至難の業だったのである。今季レギュラーシーズンのセーブ失敗30回はリーグ最悪、ポストシーズンでの苦戦は予め予想されていたのだった。

 マリアノ・リベラの例をあげるまでもなく、敵に絶対的な力を持つクローザーがいた場合、相手チームは中盤にリードされた時点で「負けムード」に支配されがちとなるものだ。今季のジャイアンツの場合はその反対で、地区決定戦第4戦のカブスのように、「先発が引っ込んだらチャンスが来る」とリードされている相手が諦めないだけに逃げ切るのは一層難しくなるのである。一方、ジャイアンツとは対照的に、オリオールズの場合、ワイルドカード決定戦同点の場面でア・リーグ・セーブ王(47セーブ)のザック・ブリトンを出し惜しみした挙げ句にサヨナラ3点本塁打を喫してあえなく敗退してしまった。バック・ショワルター監督とすれば悔やんでも悔やみ切れないだろう。

 今季ポストシーズンに勝ち進んでいるチームのレギュラーシーズン中セーブ失敗数を見たとき、インディアンズ(MLB最少)とカブス(同4位)が、抑えの信頼性で他の2チームに勝っている。リーグ決定戦に向け、有利な条件となるのではないだろうか?

 「人生で一番大切なものは二つ。よい友人達と強固なブルペン」なる名言を残したのは、1948年には投手としてインディアンスを、1978年には監督としてヤンキースをワールドシリーズ優勝に導いたボブ・レモンだった。いま、ボーチーもきっと同じ思いでいるに違いない。

 

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