On Base Percentage Plus Slugging Percentageの略(出塁率と長打率の和)。
簡単に計算できる打力の指標の中では、もっとも信頼性が高いとされている
<おおざっぱな評価の目安>
8割を超えたら一流
9割を超えたらオールスター級
10割を超えたらスーパースター(化け物)級
<2009年の平均値>
メジャー全体: 7割5分0厘
ア・リーグ: 7割6分3厘
ナ・リーグ: 7割3分9厘
<2009年のベスト3>
ア・リーグ
1. ジョー・マウアー(ツインズ) 10割3分1厘
2. ケビン・ユーキリス(レッドソックス) 9割6分1厘
3. マーク・テシェラ(ヤンキース) 9割4分8厘
ナ・リーグ
1. アルバート・プホルス(カージナルス) 11割0分1厘
2. プリンス・フィールダー(ブルワース) 10割1分4厘
3. ジョーイ・ボットー(レッズ) 9割8分1厘
<メジャー歴代ベスト3>
1.ベーブ・ルース 11割6分3厘
2.テッド・ウィリアムズ 11割1分6厘
3.ルー・ゲーリッグ 10割8分0厘
2)打撃成績表記法
ある選手の打撃成績を記載する方法として、これまでは「打率・打点・本塁打」の三つの数字が使われることが多かった。
しかし、最近は、出塁率・長打率が重視されるようになったため、メジャーでは「打率/出塁率/長打率」の三つをセットとして、個々の選手の打撃成績を表すことが流行っている。
なお、この表記法が使われる際は、何の断りもなく「.365/.444/.587」と、三つの数字を列記して表記することが多い。第2項と第3項を足すことで、OPS「1.031」と簡単に計算できるしくみとなっている(ここで例として使った数字は、2009年、ジョー・マウアーの成績)。
以下、ア・リーグに所属する三選手の2009年の成績をこの表記法に準拠して記したが、誰だかおわかりになるだろうか?
選手1 .352/.386/.465 (OPS.851はア・リーグ29位)
選手2 .274/.367/.509 (OPS.876はア・リーグ18位)
選手3 .325/.401/.534
選手1はイチロー、選手2は松井秀喜。打率のみの判定では「イチローの方が優れた打者」という結論が導かれるが、OPSでは「松井の方が打者として優れている」という評価となる(ただし、走力・守備力を含めた選手としての総合力を評価するものではないので、誤解のなきよう)。
ところで、選手3は、実は、松坂大輔の被打率/被出塁率/被長打率である。被OPS.935(相手打者が総じてオールスター級の打力を発揮したという数字)は、2009年にア・リーグで40イニング以上投げた投手393人中ワースト5位。2009年の松坂の不調ぶりがどれだけ凄まじかったかがおわかりいただけるだろう。
3)なぜOPSなのか?
セイバーメトリクスの創始者、ビル・ジェームズが最初にした大きな業績は、「産生得点(Runs Created)」の概念を提唱したことにあった。「打者の仕事の本質は、『得点を生み出すこと』にあるのだから、打力の指標は得点を産生する能力で見なければならない」と、「産生得点」の計測法を考案したのである(その計算式は非常に複雑なので、ここでは記さない)。
一方、以下に、データを示すように、打率、本塁打、出塁率、長打率など、「旧来の打力の指標」は、「産生得点」と比べたとき、チーム総得点との相関度が低い。簡単に計算できる指標としては、OPSのみが、「産生得点」に匹敵する相関の高さを示すのである。
<チーム打撃成績とチーム総得点の相関>
打力の指標:得点数との相関(相関係数)
四球数:0.590
本塁打数:0.719
打率:0.849
出塁率:0.910
長打率:0.913
OPS:0.955
産生得点:0.964
(2000−2004年MLBのデータ)
さらに、Δ打率=(打率と被打率の差)、Δ本塁打=(本塁打と被本塁打の差)、・・・etc.として、これら「打力指標のΔ」とチーム勝率とを比較した場合、チームの勝率と一番相関する打力指標はΔOPSであることが知られている。
つまり、勝てるチームを編成したいと思ったら、打者はOPSが高い選手を、投手は被OPSが低い投手を選ぶことが理にかなうのである。
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