8月が終わった時点で、レッドソックスは、2位ヤンキースに1.5ゲーム、3位レイズには9ゲームの差をつけ、ア・リーグ東地区の首位に立っていた。

 しかし、9月に入って5勝15敗と、うって変わった大不振。首位の座をヤンキースに奪われただけでなく、9月20日時点で、6ゲームの大差をつけられている。しかも、ワイルドカード争いで次点のレイズにも2ゲーム差に迫られ、プレーオフに進出できない可能性さえ現実味を帯びているのである(ボストン・グローブ紙の世論調査では、約半数のファンが「プレーオフには出られない」と諦めてしまっている)。

 レッドソックスが9月に入って勝てなくなった理由を一言で言うと「投手陣の崩壊」。9月20日時点で、チーム被OPS7割1分1厘はリーグ6位と、シーズン全体で見るとまずまずの投手力を誇ってきたのだが、9月は被OPS8割1分3厘(リーグ12位)と不振に陥ってしまった。一方、打線は、シーズン全体のOPS8割1分1厘(リーグ1位)に対し9月は8割1分5厘と、特に落ち込んでいるわけではない。打線が稼ぎ出した分を投手陣がはき出すパターンが続いているために、9月は勝てずにいるのである。

 崩壊した投手陣の中でも、「最大の戦犯」は誰かというと、クローザー、ジョナサン・パペルボンへのつなぎ役、ダニエル・バード。彼の突然の大不調のせいで、勝てていたはずの試合を次々と落とし続けているのである。

 今季のバードは、8月終了時点で防御率2.03・WHIP0.81と、申し分のない投球を披露してきた(5月27日から7月31日には26⅓回連続無失点)。8月までは、「バードが出てきた次点で試合は終わり」と、ファンから全幅の信頼を置かれてきたのである。

 ところが、9月に入って防御率12.38・WHIP1.75と、三流投手に変身。登板する度にリードをはき出す体たらくで、チームの勝利をフイにしてきた。ファンの信頼を失っただけでなく、本人が自信を失ってしまったように見えるのだから事態は深刻である。

 9月20日の対オリオールズ戦、フランコーナ監督は、2試合連続無失点(9月16・17日)と復調の兆しを見せていたバードをいつもより早い7回に投入した。その時点で、レッドソックスは6対5と1点差でリードしていたのに対し、ワイルドカードのライバル、レイズは、ヤンキース相手に0対5と敗色濃厚だっただけに、「ゲーム差を2から3に広げるチャンス」と勝負に出たのである。

 しかし、「バードとパペルボンのリレーで3イニングを押さえて逃げ切る」作戦は裏目に出た。8回表、守護神二人が3点を奪われ、まさかの大逆転を食らってしまったのである。しかも、7月17日以降22イニング連続無失点と完璧な抑え役を果たしてきたパペルボンが、まるで、バードの不調が感染したかのように、二死満塁の場面で満塁一掃の決勝二塁打を打たれてしまったのだからショックは大きかった。

 と、9月に入って、投手陣のバック・エンドが大不振に陥っているのだが、トップ・エンド(先発陣)も救援陣に輪をかけて不調なのだから勝てないのも不思議はない。9月のクオリティ・スタート(先発投手が6回以上を自責点3以内に抑えること)は、20試合中わずかに3試合であるのに対し、ワイルドカードのライバル、レイズは18試合中10試合。9月に入ってゲーム差を7縮められているのだが、縮められた差は、クオリティ・スタートの差(つまり、先発投手が責任を果たしたかどうかの差)と、ぴたり一致しているのである。

 開幕前、レッドソックスは「強力」先発陣が「売り」の一つだった。しかし、松坂(トミー・ジョン手術)、バックホルツ(腰椎骨折)を怪我で失い、ラッキーも防御率6.49・WHIP1.63と期待外れの大不振。自慢の先発陣5人の内、3人が潰れてしまったのである。それでも、8月まで首位を維持してきたのは強力打線と「二枚守護神」のおかげだったのだが、9月は、「二枚守護神」体制が崩れたせいで、強力打線をもってしても補いきれない事態となっているのである。

 残り7試合となった9月20日時点で、レッドソックスのプレーオフ進出へのマジック・ナンバーは7。現在のチームの状態を考えると、マジック・ナンバーは実質消えてしまったのと変わらず、プレーオフに進出するためには、「レイズに負けてもらう」ことが必須となっている。

 一方、9月20日終了時点で、レイズの残り9試合のうち、6試合が対ヤンキース。プレーオフに進出するためには、ヤンキースの助力を仰がなければならなくなっている。

 レッドソックス・ファンのほとんどは、ずっと、相手チームがどこであっても、毎日、「ヤンキース負けろ」と念じ続ける人生を送ってきた。それなのに、いま、「ヤンキース勝ってください」と応援しなければならなくなっているのだから、これから、心や体に変調を来すファンが多数出てきたとしても不思議はないのである。

 (9月11日、姉妹サイト「CTBNL (Column To Be Named Later)」を更新、「スーパーマン 『種の保存』にまつわる困難の数々」をアップしました。なお、講演・原稿等のご依頼は本サイトのコメント機能をご利用下さい)

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