2週間ほど前から「肉体改造計画」に取り組んでいる。

 きっかけは7月に3週ほど日本に帰ったことだった。久し振りに、駅まで歩いたり、駅で階段の上り下りをしたりしなければならない生活を強いられて、「足が弱っている」ことを痛感したのである。

 もともと、駄文を書くことを生業としているので運動不足となりがちだったのだが、ここ3年間で2回足首を捻挫した。各回とも、まともに歩けるようになるまで二ヶ月ほどかかったこともあり、歩くことが徐々に苦痛となっていた。苦痛になるとますます歩くのが億劫になり、悪循環に入ってしまったのである。しかも、米国郊外の暮らしは車での移動がメインとなるため、歩く機会はもともと少なかった。

 ところが、日本では、歩かなければどこにも移動できない。否も応もなく歩かされることになったのだが、数分ほど歩き続けると、下腿・上腿・股関節・腰部に痛みが襲い(痛む場所はその時々で変わった)、速度を遅くしたり、休んだりしなければならなかったのである。

  私は10年ほど前に勤め人であることをやめた時から、「世の中に寝るほど楽はなかりけり。世間の馬鹿は起きて働く」をモットーとして生きてきたのだが、さすがに、自分の肉体の衰えに危機感を抱かざるを得なかったのである。

 そこで、「肉体改造計画」に着手することにしたのだが、まず、したことは、いわゆる「万歩計」を購入することだった。実際に使ってみると、昔の物と比べて機能がはるかに向上し、歩数だけでなく、活動時間や消費カロリーも計測する。しかも、一日の目標を達成すると、「万歳」で祝福するディスプレイが表示される。単純なしかけとはいえ、「今日も万歳が見たい」と張り切るので、少なくとも私にとってモーチベーション増進の効果は抜群だった。

 米国に戻ってからずっと、万歩計をつけて暮らしているのだが、いきなり無理な運動をしてあちこち痛めたのでは元も子もない。そこで、何年か前に衝動買いしたトレッドミルを活用することとし、「歩く」ことをメインとするだけでなく、「歩く条件が厳密にコントロールできる」環境での肉体改造計画にとりかかったのだった。

 速度・距離・歩く際の勾配等、徐々に負荷を上げてきたが、開始後2週半のいま、一日の総歩行距離「4マイル(6.4 km)」をノルマとして頑張っている。しかも、幸いなことに私のトレッドミルは扇風機付きなので、汗が吹き出し始めても、風を浴びながら快適に歩き続けることができる。各回、0.5マイルとか1マイルとか目標を決めてトレッドミルに乗るのだが、ノルマを達成した後、顔に浴びる風は特に心地よく感じられるのである。

 と、肉体改造計画は順調にスタートしたものの、一週間目くらいから口角炎が再発したので、私はびっくり仰天した。口角炎との戦いで苦労した経緯は以前に述べたが、これまで、発症は真冬に限られていた。「口角部に吹きつける寒風が皮膚にダメージを与え、カンジダが感染しやすい足場を作るから発症するのだ」というのが私の仮説であっただけに、真夏に口角炎を発症したことに、私はショックを受けた。

 幸い、どうすれば治るかはわかっていたので、自分で作ったプロトコールによる治療を始めたものの、これまで発症することのなかった真夏の発症だっただけに、私は言いようのない不安感にとらわれることとなった。「口角炎を発症しやすくする基礎疾患があり、その基礎疾患が重くなっている」可能性を考えざるを得なかったからである。癌、免疫不全、耐糖能異常、・・・etc. あまり嬉しくない基礎疾患の名があれこれと思い浮かんだ上、どれであるかはわからないその基礎疾患が重くなっている可能性を考えなければならなかったのだから、嬉しいはずはなかった。

 もっとも、口角炎が発症したからといって肉体改造計画を中断する理由になるとは思えなかったので、肉体改造計画はそのまま続行した。

 口角炎の再発が肉体改造計画と関連していたことがわかったのは、再発から数日後のことだった。4マイルのノルマを達成後、トレッドミル付属の扇風機が吹きつける心地よい風を顔に受けながら、私は、再発の原因が目の前で回っていることに気がついて愕然とした。扇風機が送り出す風が口角の皮膚を乾燥させることで、季節外れの口角炎を誘発していたのである。

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 その後、トレッドミルに乗る際に扇風機を使わないようにしているのは言うまでもないが、ここで口角炎治療のおさらいをする。私が以前に書いた口角炎のコラムには、いまだに毎週100人以上のアクセスがあり、同病に悩む方は少なくないようだからである。

1)      少なくとも毎食後及び就寝前に以下の処置を繰り返す。

2)      石鹸で洗顔。特に口唇・口角部は念入りに洗う。

3)      顔を拭いた後、ティシュー・ペーパーで口唇・口角の水分を除去。

4)      口角部にカンジダに抗菌力のある抗真菌剤を少量塗布。

5)      ワセリンを口角・口唇に塗布。口角部だけでなく、口唇全体に(口を一周して)ワセリンを塗るのが早く直すこつなので、ワセリンをけちらないように。

 口角炎に悩む方々が、一日も早くその苦しみから解放されることを願ってやまない。