2005年12月30日

『マリア様がみてる 未来の白地図』 ピコ感想

マリみて最新刊の感想です。
いや〜、相変わらずマリみては面白いですな〜(^-^。そして、一時間半の羽田-千歳のフライトの中でも読み切れてしまう手軽さも、いい感じです。
では、無論ネタバレ感想なので、本文は「続きを読む」にてどうぞ。

前巻から続いている今回のお話は、何と前代未聞の三話以上連続話になるようで。そして、今巻もいわゆる『レイニー止め(『レイニーブルー』のように、問題が未解決のまま「次巻に続く」みたいな形で終わる事)』でしたね。
ここまで引っ張るということは、祐巳の妹問題は、本当にこの物語の中の最重要エピソードであるのでしょう。無論、この物語が祐巳の成長物語である以上、それは当然のことなんでしょうが。
祥子様-祐巳の関係をなぞるように、勢いだけで瞳子にロザリオを差し出して拒絶されてしまった祐巳。今はただ、愛するお姉様の腕の中で泣く事しかできない祐巳ですが、本文にもある通り、これは一年前に、この今は誰よりも近い距離にある二人の間にもあったことなんですよね。
祐巳が瞳子に拒絶されてしまったのは、まだ祐巳に瞳子のことを背負う『覚悟』が無かったから。でも、同じ様に一年前祐巳に拒絶された祥子様は、祐巳を妹にして、そしてスールとして一年間過して、随分と成長しました。ならば、祐巳だって、こんな問題なんてきっと乗り越えていけるはずです。
おそらくは次巻、この問題には決着が付くでしょう。その時、祐巳がどうするのか、祐巳がどんな風に成長していくのか、今から楽しみで楽しみでしょうがないです。

それにしても、遂に祐巳の妹候補は、名実共に瞳子に絞られましたね。
ああ、ここまでが長かった・・・。何しろ、今巻に至るまで、祐巳は瞳子の隠された気持ちに全く気付いていませんでしたからね〜(『主人公が想いを寄せる相手に対して信じられないほど鈍感』というのは、まあラブコメのセオリーですが^-^;)。
ですが、祐巳が瞳子を「妹にしたい」と思った理由が、理屈からではなく、「それは確信だった」のは、なんだか、唐突な感はありましたが、すごくいいな、とも思いました。人間関係って、結構そういうものですからね。「あいつの、どこどこが好き」で結んだ人間関係は、言い換えてみればそれは表面的な、その人の一部分しか見ていない関係性でしかない場合も多いと思われますが、「何でかわからないけれど、あいつが好きなんだ!」というのは、理屈をすっ飛ばして、『その人そのものを全肯定』しているということなのかもしれませんから。
『相互理解の物語』であるこのお話で、それが肯定されるのは当然のこと。なので、ここから入った祐巳と瞳子の関係性は、きっと素晴らしいドラマに発展してゆくに違いありません。そういう意味でも、次巻以降が大いに楽しみですね。


そして、今回のサブタイ『未来の白地図』。丁度就活を目前にした僕には他人事じゃなかったりします(^-^;。
そんな今の自分を見ると、今巻の令ちゃんや祥子様が高校三年生できちんと今の自分を見つめて進路を選んでいるのを見ると、「すごいなー」と思ってしまいます。
僕が高三の頃なんて、それこそ「自分は何だってできる」と思って、ただ「こうなれたらいいなー」だけで志望大学選んでましたから。自分には何ができるのか、自分のためには最低限自分にどういう環境を整えてあげなくてはならないのか、自分が求めているものは何なのか、その他諸々が全くわかってませんでしたから。う〜ん、もしも高三の自分に会えるなら、小一時間説教してやりたいところです。「自分に自身を持つのもいいが、もっと自分のことを真剣に見つめ直せ!『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』というあの言葉、あれは中々バカにできたものじゃないぞ!!」と。

まあ、僕自身の愚痴などはどうでもいいです。それより、本編の感想ですね。
前々巻辺りから、いわゆる「令ちゃん離れ」が着々と進行している由乃が描かれていましたが、一方では、由乃以上に相手に依存心が強かった、いわゆる『へた令』こと令ちゃんも、遂に今巻「由乃離れ」を決意しそれを実行に移しつつあることが明らかになりました。
この『マリみて』は、「相手に依存せずに適度な距離を保ち合った、自立した相互理解関係」を終着点とするお話ですから、黄薔薇姉妹の物語はそろそろ着陸点に入った感じですね。

一方、令ちゃんとは対照的に、「リリアンに残る」決意をした祥子様。これは僕も意外だったですが、よく考えてみれば納得かも。また、一見すると、祥子様がまだ祐巳に依存しているようにも見えますが、そうでもなさそうです。
思い返してみれば、聖さまも、「祐巳と出会ったことで、気楽な学生生活をもっとじっくり楽しんでみたくなったから」という理由で、リリアンに残ることを決めたんですよね。祥子さまがリリアン大学に行く理由も「祐巳のいるリリアンに残りたい」だった。
聖さまって、祐巳と会う前は、どこか張り詰めた雰囲気を持ち、何か生き急いでいる雰囲気のキャラだったわけですね。祥子様もそうだった。そんな聖さまが、祐巳に出会ったことで、「ちょっと立ち止まって、一息ついてみよう」と思ったのならば、祐巳とより関係の深い祥子様が同じことを考えても、全然不思議じゃないです。祐巳は、生き急ぐ人たちに、ちょっと立ち止まる事の大切さを教え、心地よい安息の場を与える才能みたいなものがあるのかもしれませんね。
だから、祥子様がリリアンに残ることを決めても、それは決して祐巳への依存などではなく、「自分の安息の場所、心の原点を、将来に向けてしっかりと自分の胸に刻んでおく」という、そんな前向きな決意のように、僕には取れました。

さて、一番気になるのは、やはり何と言っても瞳子でしょう。
瞳子の両親との喧嘩の理由、そして祐巳に漏らした「理想と現実のギャップ」の内容は、未だに謎のままです。
おそらく進路に関わることなのではないかと予想されますが、これは、『瞳子がリリアンから転校』という可能性もあり得ます。そうすると、祐巳とのスール結成は一筋縄ではいかなくなるわけですが・・・。どうなるんでしょうね。


最後に。素直になった可南子ちゃん、なんだか激可愛いです(・^-^・。

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とりあえず、一回読んだだけですが感想を。 現在は妹が読んでいるのであんまり詳細には感想書けないのですが。
マリア様がみてる 未来の白地図 感想【a bene placito】at 2005年12月30日 22:08
 長いです。本当マリみて好きだよ、自分。  感想は「続きを読む」からどうぞ。「続きを読む」以降及び、コメント欄、トラックバック欄はネタバレ全開を前提に閲覧いただくようにお願いします。
今野緒雪『マリア様がみてる 未来の白地図』/感想/コバルト文庫【ランゲージダイアリー】at 2005年12月30日 22:14