最近、医療安全についてシステム・チームで考える機会が増えてきました。



もう何年も前から、内科・総合診療科のスタッフ・専攻医のあいだでは、月に1回の「M&Mカンファレンス」は行っています。

初めて開催したときの記事はこれでした。もう4年前か。

M&Mカンファレンス第1回、開催しました!!



ヒヤリハットカンファレンスや診断カンファなどでは、注意しておかないと「個人の出来なさを指摘して、反省させて、叩き直して、めっちゃ頑張らせる」という形になりがちです。

そうではなく、「成長過程の若手がおおく、現場は忙しくて疲弊していることもあり、そもそも万全の人でもエラーは起こしうるし、中小規模病院で精鋭スタッフや全医療設備が整っているわけでもないという前提を踏まえて、システム・ルール等を帰ることでエラーの発生率や、エラーの重症度を減らすために知恵を絞る」という考え方が徐々に浸透してきていると思います。



去年からは病棟医長に準備・司会の大部分をお願いしていますが、頑張って症例を集めてきて、当日のオープニングレクチャーでグラウンドルールも説明してくれ、議事録も簡単にまとめてくれ、今後は該当部門や委員会に提出するための改善要望書などもかいてくれるようになり、助かっています。

自分がやらなくてもちゃんと運営されるというのは、「一人のスーパースターに依存しない、協力や個々の成長に支えられた持続可能で継続的に発展し続ける健全な組織を作りたい」という自分のイメージに沿うことなので、とても嬉しいですね。



先月のM&Mカンファでは、いろいろ難しい事例・状況・方針を振り返ることで、最近の標準治療を復習しつつ、当院ではどうすべきか、この事例ではどうすべきだったかを明確にして、その上で「システムかルールを改善したら、誰も努力しなくてもこういう急変はふせげないかな?」という方向に進められました。

結果的に、あるシステムの権限を広げるというすぐにでも実行可能な工夫で、誰の努力もふやさず、むしろ減らすくらいの勢いで、急変を予防したり早期に発見する仕組みがすぐ構築できそうです


いままでも、その改善の要求は出していたんですが、要求を受ける側の委員会や担当者がポンコツなのか突っぱねられていましたけど、実際の事例で起きたことをもとに科としてきちんとして検討し適切な書式の要望書を出せば何かは変わるでしょう。きっと。

いままでも10個以上の改善がこのカンファレンスからうまれ、実際自分がこの病院に来たときに比べるといろんなことがやりやすくなったなと感じます。


個人攻撃や、個人の成長を指示する形ではなく、小さくてもいいから診療の効率や安全性が高まるようなシステム改善を1個は指摘することを目指して行われるカンファは、積み重ねてくるとかなりの効果を発揮するなぁと感じました。




まあ、それだけなら例年と大きな変化はないんですが、ここで同時偶発的に関連イベントが起きたのが今年のハイライトなんですよね。


一つ目は、外来で対応がいけてなかった事例が発生したのがきっかけでした。

その数日後に、外来看護師側から「あの事例を振り返りたい。できれば似たようなことが起きないように仕組みを再検討したいんだけど」と相談されました。

その場で、自分も医長も「M&Mが良さそうだね!」となり、その日の午後に急遽でしたが医師・看護師・事務も合同での臨時M&Mカンファを行いました。

医長からM&Mについての簡単なミニレクチャーをしてもらい、事例の分析をいつも通り(でも多職種からも情報をもらいながら)すすめて、どこがまずかったのか、どこが改善可能かを考えました。

当初から「たどり着きたい最低ラインのゴール」は自分の頭のなかにあったんですが、今回の奇跡は、いつもだったら改革に抵抗しがちなご意見番的な人から「こうしたらいいんじゃない?できるしょ、みんな」と自発的に発言してくれ、それをきっかけに流れが急に進み、最終的には自分が考えていたゴールよりも更に良い方向に発展して終えることが出来ました。


これの報告書も、まずは医長にかいてもらい、次からは多職種も書けるようになろうねという話になったのは良かったなと思います。

また、「おもしろかった」「誰も責められないのになにか良くなった気がしてよかった」「重たい話題なのに明るく追われた」などの感想がでて(終わったあとのフリートークで、やや意図的にSEAカンファ的スキルもつかってあえて引き出したりはしましたが)、とても良かったなと思います。

またやる機会が来るでしょう。


これまでも、複雑事例について、四分割カンファレンスのフレームで多職種検討する文化はありました。

やっているうちに看護師側の能力も高まり、数年で「看護師だけで自主的に事例を選定し、まずは看護師内でミニカンファをして、解決できちゃえば自主的に動いちゃうし、難しければ医師に声をかけて多職種カンファに載せる」という流れが看護師側で自発的にできていたので(自発的にカンファを行えるように外来診療システムをいじるなどの下ごしらえはしましたが)、現場の事例に基づいて協力しながら現場を良いものに変えていく分化はもともとあったんですよね。

そういうところに新しく、使いやすいフレームを提示して、そこで化学反応がおきて予想を超えた大きな変化が起きるのはとても嬉しいなと思います。



二つ目は、全く絡んでいませんでしたが、医療安全委員会主催の全職員向け学習会で、Team STEPPSを扱う学習会が開催されることになりました。

無題
これは、医療安全におけるキモである、コミュニケーションを扱うフレームとしては一番有名なものなんですよね。

たぶん、以前だったらこれを提示してもあまり反響がなかったかもしれませんが、医療安全委員会の種々の活躍・活動があり(私は委員でないのでかんけいないですが)、また病棟や外来での様々なカンファでの下地の上に、先日の外来多職種M&Mカンファというきっかけもあったので、上手く乗っかればさらなる発展のきっかけとして良さげです。


ただのレクチャーでなく、交流型・参加型のワークショップ形式になるようなので、楽しみにしてます。



あと、オマケ的ですが、わたしが編集委員として関わっている、南山堂の雑誌「治療」でも、医療安全がテーマの号が出ました!

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しかも、編集幹事は同じ法人の先生でした!

なんとも偶然な出来事が連鎖しますね!!


数年前には、医療安全×ACLSのフレームでいろんな活動を若手と一緒にして、それらが徐々に結びついて大きな流れとなり、院内のシステムや委員会組織図などが変わったという動きがありました。

今回は、医療安全×M&Mのフレームで同じような大きな波がやってきそうで面白いなぁと思いました。


どちらも中心には、病院総合医の中堅が、自分の関心や学習や経験に基づいて、一定の役職・肩書と責任と僅かな権限を用いて、継続的に粘り強く活動していた。という共通項があるなぁと思いました。

どちらも、ポートフォリオ作成を通して振り返りながらスキルを身につけて「自分が経験していることから成長の課題を抽出し、自分の活動内容を考える」力を習得してきたことや、立場的にいろんな成長段階の色んな立場・職種の人たちをつなげながら現場の医療の質を高めたいと思い活動しているふだんのあり方など、そういったものがあることで、こうやって努力や活動たちが一つに結実していくんだろうなと思います。



いやー、すごいですねぇ。

自分を褒めなくてもよい環境(後輩に対して、すごいなぁと思っていれば現場が回る環境)は素晴らしいなぁと思いました。まあ、それを作ってきた自分を遠回しに褒めてはいますが、いいんですこまかいことは。






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