インフルエンザを含めた「風邪」の患者が増えてきています。

そこで、今まで耳学問中心だった「風邪」の「治療」について、少しまとめてみます。


初期研修の頃は「エビデンスがない」から、対症療法の薬なんていらない!
寝てれば治るのに、なんでみんな薬欲しがるのか?
なんでみんな、そんなに薬を沢山処方するのか?

とかなり了見の狭いやつでした。



が、自分も医者になってからの風邪をたくさん経験して、「対症療法、大事でしょ!」と思うようになり、態度が柔らかくなり、症状に合わせた処方をするようになりました。

その一方で、こんなにエビデンスのない薬を処方しまくって、実は効果がないのに副作用と費用だけ与えている「心優しいやぶ医者」になってないかな?という不安もあり。


そんな思いが溜まりに溜まって、ついにDynamedの「Upper respiratory infection」の項目を見ることにしました!


 

今回参照するのは「Dynamed」の「Upper respiratory infection」の項目の中で、「Treatment」の欄の「Overview」だけにしておきます。 
時間もないので。


FDAの推奨

・「市販薬」を2歳未満に使うことは強く反対しており、4歳未満に対してもやめたほうがいいよと言っている。 

・「アセトアミノフェン」は、小児の発熱の度合いを下げるかもしれないが、そのエビデンスは限定的で結論は出ていない(少なくとも悪くはなさそう)。

・NSAIDsも不快感や痛みをとるかもしれない。



症状持続期間を短縮させる目的の治療

・Level 1 evidenceがあるのは イングリッシュゼラニウム(Pelargonium sidoides)の抽出物である、「Umcka coldcare」という商品があるらしい。
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・また、Echinacea(エキナセア)も風邪の罹病期間を短縮させるかもしれないというLevel 2のエビデンスがあるが、特定の製品を推奨するほどの証拠はない。
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・それから、 Andrographis paniculata(センシンレン) というものも、成人で風邪症状を軽減するというLevel 1のエビデンスがあるようで、「KalmCold」や「Kan Jang tablets」という商品があるそうです。
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→ハーブ・漢方的な世界ですねぇ・・・ いきなりこれからはいるとは、ちょっとびっくりです。



ACCP(米国胸部内科学会)の推奨

ブロムフェニラミン(抗ヒスタミン薬)と持続性のシュードエフェドリン(交感神経刺激作用、風邪に使う漢方に入っている麻黄の主成分)をGrade Aで推奨。

ナプロキセン(NSAIDs)も、ipratropium bromide(抗コリン薬:アトロベント)の経口吸入もGradeA

鎮咳薬は使うべきでない(GradeD)

→ということは、麻黄湯や葛根湯に抗ヒ剤の錠剤を組み合わせて出すのはありなのかもしれません!


Cochrane review

ほとんどの市販薬には利益を証明できるような良いエビデンスはかけるとし、それでも成人に対して幾らかの有効性が示されているもの(Level 2 evidence)としては 

dextromethorphan(メジコン:鎮咳薬)
guaifenesin(フストジル:去痰薬)
bromhexine (ビソルボン:去痰薬)
dexbrompheniramine/pseudoephedrine(上記の風邪薬と同じ)。

→割と普通に見かける処方薬ですね。悪くはないくらいに捉えておいてもいいのかもしれません。

 
小児では「ハチミツ」が、夜間の咳と、これによる睡眠の中断の減少に役立つかもしれないというLevel 2 evidenceがあるが、1歳位未満の小児には避けたほうが良い(ボツリヌスとか?)。

→ちょっと心が暖かくなりそうなアドバイスですね♪ 


鼻症状に対して(そう、それが重要!!コレが原因で夜間咳嗽がひどくなったり、頭がぼーっとするからね)

抗ヒスタミン薬と鼻粘膜充血除去薬(プリビナとか?)の組み合わせは年長小児と成人の症状軽快にLevel 2 evidenceあり。
 
点鼻、または経口の充血除去薬は、中等度に「短時間の症状改善」に有用。

ipratropium nasal spray(アトロベント(抗コリン薬)の鼻孔スプレー)は鼻閉は取れないものの、鼻汁を抑えられる。
(「びじゅう」と入力すると、Google日本語入力では「尾獣」と変換される。ナルト人気のせいか・・・)。

加湿・加温された空気は、エビデンスは限られているものの有用かもしれない(Level 2 evidence)。

生理食塩水での鼻腔洗浄は、症状軽減と、薬剤使用量と、学校を休むことを、特に小児において減らす(Level 2 evidence)。等張食塩水でのエビデンスであり、高張食塩水では効果なし。

→コレは気持ちいいですよね~♪
部屋の加湿加温と、可能なら塩水(濃度もきっちり指示するか市販のを指定して)での鼻洗浄を指導しつつ、抗ヒ剤とプリビナ点鼻はありかもしれません。


推奨されない治療の一覧(ここも重要。なんでもやればいいってもんではない)

抗生剤は症状軽減に役立たない(膿性鼻汁を伴う鼻炎でも)。
→コレは常識

小児の急性咳嗽に市販薬は役立たない。
→セルフケアは重要だが、小児においては市販薬はいまいちというのは押さえておきたい。

抗ヒスタミン薬単剤は不十分。
→あまり見かけないけど、「単剤では」というところが重要ですね。エフェドリン(総合感冒薬に入ってるし、漢方薬の一部にも使われている)との併用でエビデンスがありました。

ビタミンCを、風邪を引いてからたくさん摂取しても効果はない。

亜鉛は「投与しないように」薦められている。効果がないばかりか、鼻腔投与は嗅覚障害を引き起こすため。

点鼻ステロイドは、風邪の症状軽減には有効とは言えないため薦められないというLevel 2 evidenceがある
→慢性咳嗽+後鼻漏症候群からの推測と、「点鼻薬は風邪の鼻症状にいいんだよ」という噂に流され何度か処方しています。ダメなんだ・・・

水分摂取量を増やしたときの効果についてのRCTはない。水分をたくさん取るようにすすめることは、害をもたらすかもしれないというLevel 3 evidenceがある(ケースシリーズで、脱水のない患者に水分摂取を進めると低ナトリウム血症をきたしたという報告。症状や予後レベルのアウトカムでもない)。
→「たくさん水分とってくださいね」ではなくて、「部屋を加湿してくださいね」が正解だった!


最後に素敵な一文が!1

・より強い情報提供(患者教育)元気づけ(共感や支援)を受けると、抗生剤を処方された時と比べて、より患者の満足度が高くなる!
→これ重要!




調べる前は、「エビデンス調べたって、味気ない内容しかなかったり、現実に適用しづらいんじゃないの!?」と半信半疑でしたが、割と常識的な結論が出ていて面白かったです。

今後も、定期的に知識をアップデートしようと思いました。



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