少し、人生全体を振り返ってみました。


今年で38歳を迎えるため、どこをどう四捨五入しても立派なアラフォーになってしまう時期がやってきます。

管理職の立場で1年働いてみた雑感もいろいろあります(が、個別のイベントを取り上げるのは、守秘義務的に厳しいので心の奥底にたくさん淀んでいます)

あと、医師歴12年を終えた節目ということもあります。

そんないろいろなタイミングが重なりあい、先日はポートフォリオ発表会で専攻医達の成長を強く実感し(初期研修時代から見ていた人や、後期研修で濃厚に関わった人の卒業の挨拶は涙が滲み、心が動きますね。あぶない…)、たまたま連休最終日に日直で午後もバタつかず、ゆっくりと一人で振り返る時間が取れたこともあって着手してみました。



ちなみに、医師歴12年が節目と言うと変な感じがするかもしれませんが、小学校6年、中高6年、(浪人を1年挟んで)大学医学部6年、初期+後期研修6年(後期研修4年間だった)、そしてスタッフとしてこの病院で6年経過したので、なんとなく「6年単位で節目がやってくる」感じがするのです。

その節目感を前面にだして、4月1日に「13年目は新天地で!!」みたいなエイプリルフール記事を書こうとも思ったんですが、過去にも何度かやってイマイチ不評だったのと、副院長の立場でそれやるのもなということもあって止めました。真面目に振り返ります。




で、振り返りの枠として、今回は研修目標や活動目標でも、総合医関係のコンピテンシーリストやマイルストーンでもなく、「ライフサイクルの発達課題」を使ってみました。

自分が卒後4年目のとき、外部の家庭医療センターから病棟研修しに来たMくんが読んでた本とそれをまとめたレクチャー資料をみて衝撃を受けて、自分でも読み進めてみて、自分の働き方や研修指導に活かしているお気に入り理論です。



 

このライフサイクルのフレームにそって、2010年の2月(後期研修3年目の終わり頃)に振り返った資料が、パソコンの「後期研修時代の遺物」フォルダから出てきました。

これをざっと見直しながら、(個人情報を一部隠して修正した上で)今の自分を考えてみようと思います。



ちなみに、今回のフレームは上記の書籍にあったものを使っており、普遍的にこのへんの業界で使われているものではないのでご注意を。

当時の、まだ未熟な人生経験と限られた知識で読み進め、自分視点でまとめなおしているので、原著とくらべてかなり歪んだ内容もあるかもしれませんよ。 

古い外国の男性労働者の分析が元らしいので、今の日本の女性とかには全然合わないかもしれないし、古い労働形態で死ぬほど働いている若手医師であればみんな当てはまるのかもしれません。

あ、あと、これを勉強して自分に当てはめながら理解したことで、思春期から壮年期くらいの患者さんの診療が深くなり、面白みも増えたなと思っています。家庭医療やるならどこかで一度深めてみるとよいかもしれません。



以下、2010年のときの振り返り内容です(→以降は、今書き足した部分)
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個人ライフサイクルの全体像
未成年期(児童期+青年期、0~22)
17~22:成人への過渡期

成人前期(17~45)
 大人の世界へ入る時期(22~28歳)
 三十歳の過渡期(26~29歳に始まり、31~34歳に終わる)
 一家を構える時期(32~40歳)
40~45歳:人生半ばの過渡期(中年への過渡期、40~45)

中年期(40~65)
60~65歳:老年への過渡期

老年期(60~)
多分80歳ころにも過渡期があるらしい




成人前期(17~45)
特徴:
もっともドラマチック
心身のピークを迎えた安定期であるとともに、ストレス・矛盾のピークでもある
本能的衝動も強くエネルギー・能力・可能性にあふれるが、それと同じくらい外圧も大きい 

長所:体力・敏捷性・持久力・生産性
課題:大人として自分の社会をつくり、社会におけるアイデンティティーをつくる
→まさに真っ最中。めっちゃよく分かる。


成人前期はさらに3つの段階に分かれる
  ↓
大人の世界へ入る時期(22~28歳)
特徴:
大人の世界への可能性を模索(態度を決めずにいろいろ検討)しつつ、安定した生活構造を作り上げる(結婚・就職、仲間、価値観などで確固たる外的拘束力を選択する)という矛盾

課題:
自己と大人の社会との間をつなぐ働きをする仮の生活構造を形作ること。
暫定的なものだが、成人期最初の生活構造を築きあげる。
とりあえずの生活をつくって、とにかくいろんな可能性を試す時期。

研修:医学部高学年~初期研修~後期研修前半
自分:学生~初期研修の、自分の可能性追求を最優先して頑張ってる職業人生と、一方ですさんだプライベート生活。初めての本格的な抑うつ状態も経験。
→たいへんだったね、あの時期は。最も学び成長した気がしていたけど、振り返ってみればその成果は小さく、心身ともに病んでいました。 
 

三十歳の過渡期(26~29歳に始まり、31~34歳に終わる)
特徴:
漠然とした不安から始まる(明確な出来事で区切られるわけではない)。
非常に恵まれた時期でもあり、苦労が目立つ時期でもある。
生活がもっと真剣で、もっと現実的になる。
ストレスに満ちた30代の危機。

課題:
成人期最初の生活構造を変える(無理に作ったので重大な欠陥がある)
最初の選択を見直すことで、現状や自己について考える機会
 
研修:後期研修後半~フェロー
自分:
後期研修の中盤までに独身生活の限界を感じ結婚を決断(消極的な理由に見えるが、一人でいたら病気になるか死ぬだろうと本気で思ってた)。
それまでの付き合いや生活パターンをじっくりかなり深く見つめなおし、かなり大きな修正を迫られた。

一日の生活パターンのなかで仕事の時間を減らし、家庭の時間を作り、圧迫された自分の時間の質を上げた。健康管理や時間管理をして生活の質そのものを上げないと仕事が立ち行かないという実感。

職場は総診に固定し、そこを中心に外来・救急・往診と広がるスタイルとなり働き方は安定し、アクティブでモチベーティブな同期・先輩に囲まれ、成人教育・家庭医療などの面で多彩な刺激を受けた。

一方で、自分のスキル・歩んできたキャリア・今後の行く末については根本的な自信はもてないまま、日々不安なまま過ごしており、楽天的な上司の発言にマジギレしたりしてた(このキャリアの先に成功はあるのか?総合診療はあと10年位で消滅するのではないか?など)。
→こういった漠然とした不安の多い時期は、今振り返るとまさに「30歳の過渡期」そのものだった。

後期研修後半は地方1年単位ローテが続いた。
それにあわせ働きなれた病院から見知らぬ職場環境・土地へ、結婚したての新しい家庭をひきつれて移動。ここでうまくいくかどうかが人生の岐路になるなという予感に満ちておりかなり緊張していて余裕がなかったと思う。

教わる立場・現場の切り込み隊長から、徐々に管理し引っ張る役割への変化を自覚し始める。また仕事をしながら振り返り・言語化が進み、今の自分のあり方の社会的必要性や自分の考え方の輪郭がはっきりし始め、病院家庭医療に確信を持ち始める。
→世界観が変わり、仕事観・人生観が変わり、自己認識がどんどん変わっていっためまぐるしい時期でした。


一家を構える時期(32~40歳)
特徴:
青年前期の最盛期
生活の中心となる生活構造(その人にとって最も重要なもの)に全力を注ぎ、若いときの野心や目標を実現しようとする(裏を返せば、安定した基盤の上で、不必要なものには目をつぶりながら一転集中する時期)
 
課題:
自分の属する世界でもっと一人前の大人になること
社会の中で自分の適所を確立
生活の碇を下ろし、自分の能力を伸ばし高く評価される一員になろうとする
成功を目指して努力する

研修:フェロー~スタッフ
自分:
おそらく釧路よりは札幌もどってからか?(振り返った当時はまだ実感がなかった)

→今思うと、今の病院に来てからの6年間はもろに当てはまる。
→中小規模病院の一般内科・総合診療を中心に据えて生活を組み直し、全力を注ぎ、多くの苦難はあったが野心を実現するために脇目も振らずにあるき続けてきた結果、ほどほどこの業界の中では一人前になり、社会における自分の立ち位置と役割も明確に自覚でき、成功を目指しての努力が続いている状態。
→手探りや不安に満ちた三十歳の過渡期に比べると、集中すべき場所や課題に集中でき(脇目をふる余裕すらなかったとも言える)、もっともやりがい・成果を感じられる時期だったと思う。


最後に「一本立ちする時期」というはっきり区別された段階が訪れる
人生設計の目標を達成、自分の属する世界で先輩となる。
よりはっきり自分の意思で意見を述べる、大きな権威を持つ。
この時期がその人の人生の運命を決する。
→そろそろここに足を踏み入れつつあるように感じるが、到達した感覚はまだ持てない。あと一山越えたいところ。


人生半ばの過渡期(中年への過渡期、40~45)
特徴:
激しい衰えは、肉体的・心理社会的な逆境によって発達が損なわれたときのみ起きる。
そういうのがなく、この過渡期の課題をクリアすれば、目標を達成し社会的貢献をする時期。
 
課題:
何ごともなく過ごして発達の好機をのがすより、危険性と可能性を体験して不安と幻想のつまったパンドラを開けたほうがよい。
そうしないともっとあとにより大きくなった問題に取り組むことになる。
若い自己の死を悲しむべきで、それを見ないふりをしてすごすのはあとで代償をこうむる
→おそらく、あと数年で否応なしに肉体的・社会的に制限がきつくなる予測はたっており、それを新たな世代への適応課題として受け入れる心理的準備も整いつつあるとはおもう。
→それを乗り越えた自分がどこで何をしているかは全く想像が付かない。楽しみ半分、恐怖半分。
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というわけで、いまは「成人前期」の第3ステージ「一家を構える時期」が終わりつつあり、最後の山の「一本立ちする時期」に入りつつあり、人生半ばの過渡期やその先の中年期にはまだ入ってないみたいだと思えた。

青年前期は、別の区切りでいうと「壮年期」でもあり、この言葉が最もしっくりくる気がします。
あんまり爽やかな感じはしない言葉ですが、青年期というには年を取り立場も変わりすぎてしまったし、かといって中年期にはまだ隔たりがある感じです。

もう少しの間は、中年期や老後の心配は少し脇に置いといて、「これから一本立ちする」ことを目指して目標の「達成」、つまり成果をだすこと(努力アピールでなく結果で語る)を意識したいと思います。


さしあたってのこの数年は、経営赤字解消、診療成績向上(主観でなくデータで)、論文投稿(かつアクセプト、学会で発表して終わりでなく)、そして地域健康アウトカムの改善(はダイレクトには難しいが中間評価やプロセス評価で成果を実感したい)あたりを意識したいですね。