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医の知の羅針盤 良医であるためのヒント [ ロバート・B.テイラー ]医の知の羅針盤 良医であるためのヒント [ ロバート・B.テイラー ] 楽天

超名著です。

英語で少しハードル高かったのが、ようやく日本語訳されました!



英語の原著の方が、表紙みて「知ってる!」という人や、「あ、それ持ってる。何回も読んだよ」という人が多いかもしれません。

Medical Wisdom and DoctoringThe Art of 21st Century Practice【電子書籍】[ Robert Taylor ]Medical Wisdom and DoctoringThe Art of 21st Century Practice【電子書籍】[ Robert Taylor ] 楽天電子書籍版


「家庭医療をきちんと学ぼうと思ったら洋書や英語webサイト読むしかない」という時代の終わりかけくらいにこの業界に入ったので、特に外部研修で家庭医療研修しにいったときは、たった3ヶ月ですが洋書を本棚一段分ごっそり書い、webブラウザのブックマークにも1ページに収まらないくらいの海外サイトを登録しました。

そのときに買った本でもありますが、3ヶ月の間ではこれを読むところまで到達できず、その後も「この本を読みたい」と思えるきっかけがなく(中身をしらないので、普段読むべきフラグがたっても気づけないですしね)、ずーーーっと積読でした。

しかし、最近Facebookでこれを読んで初診に立ち戻ったよとおっしゃっていた先生がいて、その投稿で日本語訳が出たことを知り、webサイトで目次と内容紹介をみて即買いし直してしまいました。


以下、内容紹介と目次を引用します。

内容紹介
私は本書で,われわれ医師が数千年の医療の実践を通じて身につけてきた知恵と,その知恵を日々の患者ケアにいかす医の技術の話をする。本書に登場するのは,あなたが昨日の午後に治療した肺炎の高齢女性や,今朝診察した胸痛を訴える中年男性だ。夜中に呼吸困難に苦しむクループの子供や,われわれが日常的に用いる薬物だ。あなたのリーダーシップを期待する同僚や,あなたが指導する医学生だ。医師という尊い職業の末席に連なる私とあなた,そして,われわれを支え,その幸せのために心を砕いてくれる家族だ。

われわれ医師が(そして,すべての医療従事者が)自分の職業の尊さを正しく理解するためには,過去の世代の医師や学者から受け継いだ遺産を現代に役立てる方法を知っておく必要がある。先人たちはわれわれに,プロの臨床医として思考しながら一人の人間として患者の心に寄り添う方法や,疾患や病(やまい)や死に対処する方法や,患者,患者の家族,われわれ自身,われわれの家族との付き合い方などを伝えてくれた。つまり,われわれが豊富な知識を持ち,賢明で,思いやりのある21世紀の医師になるにはどうすればよいかを教えてくれているのだ。

本書を読み進める読者諸氏は,巻頭の引用句が示唆する3つのテーマの存在に気づかれるだろう。第1のテーマは,われわれが先人から受け継いだ「医学の知識」と「医学の知恵(医の知)」だ。われわれはこうした知識や知恵に日々感謝しなければならない。もちろん,知識と知恵は同じものではない。「医学の知識(medical knowledge)」は,猛烈な勢いで増えてゆく客観的なデータの宝庫で,われわれがエビデンスにもとづく医療を実践できるようにしてくれる。これに対して,「医の知(medical wisdom)」は主観的で,哲学的で,ときに驚くほど直観的だ。第2のテーマは,他者への奉仕の義務だ。これは医療と医術の土台となる使命である。第3のテーマは,Paulo Coelhoが言うところの「自分の運命」を探すこと,すなわち,医師の自己実現への道のりだ。この旅は,治療者を志す者には特別な意味を持つ旅である。

3つのテーマに関して,私は,癒し手であり研究者でもある良医たちが残した不朽の助言を参考にした。以下で紹介する思想や逸話の多くは「口述歴史」とでも呼ぶべきもので,一般的な教科書に記されていることはめったにない。私は本書をできるだけ学術的な著作にするため,こうした教訓や格言を具体例で補足した。具体例には3種類ある。1つめは現在の医学文献からとったもの,2つめは医学史の逸話からとったもの,3つめは開業医の個人的な経験からとったもので,私自身の経験も含まれている。

私が本書に『Medical Wisdom and Doctoring: the Art of 21st Century Practice(医の知の羅針盤)』というタイトルをつけたのは,その内容が今日の医師の仕事と直結していることを強調するためだ。私はここで,今日の診断法や治療法,実践的なコミュニケーション技術,医療に関連した倫理的問題,明日の医療の予兆となるかもしれない動きなどについてお話しするつもりだ。医師であるあなた自身を大切にすることや,あなたの家族やコミュニティーとの付き合い方についての章もある。いずれも,あなたが医師としての能力を十分に発揮するために欠かすことができないものだ。

Moses Maimonides,Ambroise Paré,John Snow,Francis Weld Peabody,Mayo兄弟など,われわれより前の時代を生きた偉大な医師たちの業績にも触れたい。日々の医療経験に磨かれた,名もなき英雄とも呼ぶべき勤勉な臨床医たちのエピソードも多数紹介するつもりだ。こうした良医たちが編み出した概念や技術は,未来の世代にも伝える価値がある。最後に,私自身の40年にわたる医療・教育経験にもとづくお話もしたい。

さきほどの「口述歴史」の話に戻るが,本書には,ベテラン医師から若手医師へ,教師から学生へ,師から弟子へと受け継がれてきた医師の知恵が記されている。こうした教訓や方法論や知恵の言葉は自然に受け継がれていくはずのものだが,なかなかそうならないのが現状だ。若手医師にとってもベテラン医師にとっても,日々はあまりに忙しく,内省的な話をしたりキャンプファイヤーのまわりで腹を割った話をしたりする余裕はない。さらに,医師が身につけておかなければならない科学的知識が膨大な量にのぼるため,医師の知恵を分かち合う時間などないように思われる。それゆえ,本書に書かれていることは,あなたが学生時代にもレジデント時代にも学んでいないことかもしれないし,多忙な日々の中で後回しにしていることかもしれない。

私は本書を医師のために書いたが,その内容は患者ケアに携わるすべての臨床家にあてはまる。本書が紹介する概念は,医学生,レジデント,駆け出しの医師,看護師,医師助手にとっても,医療事故や悲痛な体験学習を回避するのに役立つはずだ。20年,30年と医療に携わっているベテランにも,これまで考えたことのないようなヘルスケアへのアプローチを示すつもりだ。自分が日々行っている診療が,いわゆる「良医」たちの診療とどこまで一致しているかという好奇心を満足させるのにも役立つだろう。

もちろん,先人からの助言のいくつかは,21世紀の医学に合わせて手を加える必要がある。例えば,1903年のSir William Oslerの言葉だ。彼はこの年,医学教育改革の一環としてベッドサイド教育の実施を呼びかけた1)。けれども今日では,治療の短期集中化により多くの患者が数時間しか在院していない上,患者ケアの選択肢が多様化しているため,診察室,病院の救急部,手術室のほか,患者の自宅やナーシングホームでも医学教育が行われることが増えている。だから私は時代を超越した格言を選んで,今日の医療と関係のある具体例で裏付けを与えることにした。なお,個人的に経験した逸話を紹介する場合には,守秘義務との関係で,話の大筋を変えないように気をつけながら,名前や具体的な状況を変えている。

人間的成長のために本書を読むのもお勧めだ。Hippocrates,Pogo*1,Albert Schweitzer,Charles Berkley(もちろん,バスケットボール選手のCharles Berkleyだ! ),Louis Pasteur,漫画『小さな孤児アニー』の主人公Annieの言葉は,あなたを勇気づけてくれるだろう。レストラン「Applebee's(アップルビー)」の成功の秘密,Joseph Listerと洗口液リステリンをめぐる裏話,シャーロック・ホームズのモデルになった人物についてもお話ししたい。何か役に立つことを学びたいという読者諸氏のために,クリニカル・パールも紹介している。眼部帯状疱疹を発症した患者に関して注意すべき点,糖尿病性末梢性ニューロパチーの良い検査法,片側性の右精索静脈瘤に遭遇したときに考慮するべきこと,左肩に放散し前傾姿勢で軽快する胸膜性の胸痛の重大性などだ。先見の明ある教授によって本書が医学部の必修科目の教科書に指定されれば光栄だが,個々の疾患の診断法や治療法について詳しく述べることはしていない。

中世の医師Paracelsus(1493~1591)の「医学は単なる科学ではなく芸術でもある」2)というアフォリズムもあるように,本書は何よりも医の技術について書かれている。ここで紹介する概念はじっくり味わってほしいので,できれば,暖炉の傍で過ごす静かな夕べや,飛行機での長旅の間や,オンコール待機中の退屈な夜などに,じっくり考えながら読んでほしい。
それでは『医の知の羅針盤』をどうぞ。

オレゴン州ポートランドにて
Robert B.Taylor



出版社からのコメント
医師になったら読む本、
10年ごとにもう一度読む本

「偉大な医師(great doctor)」や「名医(top doctor)」にならずとも「良医(good/wise doctor)」でありたい! 「米国家庭医療の父」と称されるロバート・テイラー先生が、半世紀にもおよぶ診療・学究生活の中で、丹念に集めてきた古今東西の医師の「医学の知恵(医の知)」を紐解き、「良医」のあるべき姿を描き出す。心に染み入る助言が満載。


内容(「BOOK」データベースより)
「良医」と「名医」はどう違う?医学部入学から引退までの医師人生の節目節目で、「良医」はどんな選択をするか?「家庭医療の父」が、半世紀におよぶ診療・学究生活の中で丹念に集めてきた古今東西の医師の「医学の知恵(医の知)」を紐解き、「良医」のあるべき姿を描き出す。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
テイラー,ロバート・B.
オレゴン健康科学大学家庭医学科長/名誉教授。1961年テンプル大学医学部卒業。米国公衆衛生局で研修後、14年間診療所で内科医として従事。1978年よりウェイクフォレスト大学医学部教授を経て、1984年より現職。「家庭医療の父」として知られる


目次 
第1章 21世紀における医の知
第2章 患者に寄り添う
第3章 臨床対話とコミュニケーション
第4章 臨床診断の技術
第5章 疾患の管理と予防
第6章 死にゆく患者とその家族に寄り添う
第7章 臨床医として生計を立てる
第8章 医師の生涯学習
第9章 明日の医師を育てる
第10章 あなたの家族とコミュニティーについて
第11章 あなた自身を大切にしよう
第12章 倫理、信用、信頼
第13章 明日の計画を立てる
第14章 良医と21世紀の課題と医術
第15章 エピローグ


なんとなく、日本語のプロフェッショナリズムの本を読んでもしっくり来ないという人でも、これはけっこうストンと腑に落ちると思います。


医大なる医師(Great doctor)と、名医(Top doctor)、そして、良医(Wise doctor)の違いが最初にありますが、この説明はとてもわかり易いし、良医に必要な要素の解説もとてもしっくり来ました。


少し力がついてきた(と自分では思えるようになった)頃に、(自分も含めてですが)少し自信がついて、良医の条件からすると遠のく人が結構いるように思います。

いまは、医学的な知識面の勉強はとてもやりやすくなり、フローチャートやリファレンスやなんちゃらマニュアルを読めばそれっぽくはできるようになった分、以前に比べると「知識量や勉強の要領以外の部分の、医師としての能力や適正の違い」が目につくようになったきもしていましたが。

自分の視点が、知識学習中心から異なるものに向いてきたというのもあるだろうけど、たぶん知識学習の質の底上げがされてきたので別の部分のアラが目立ちやすくなってきたのでしょう。

いままでは、そのどこがずれていて、どこに対して自分が苛立ちや憤りを感じていたのかがうまく言語化できず、表面的なフィードバックをふんわり返して終わりでしたが、これを読み進めると「ああ、そういうことか」とすごく納得できるようになりました。

若手に負けないような圧倒的な知識や技術を身につけたはずなのに、いまいち指導医・上級医として一皮むけきれないような人や、そういう人を指導する更に上の立場になったときに、この本の内容はずしんと響くように感じます。



臓器別專門を狭く深くという志向の人だと、一部は違和感がある部分もあるかもしれませんが、それでも一度目を通してどこをどう採用してどこをどう違うと考えるのかはしておいてもよいかと思います。

総合内科として内科診断・治療に特化した急性期病院の医師でも面白いと思いますが、それ以上に「家庭医療学の実践」に心血を注いでいる人にとにかくドンピシャだと思います。

私は少しかわった「病院家庭医」ですが、臨床医として成長して視野が変わるたびに、教育者として教える対象の人数や世代や職種の幅や内容やメッセージ性が広がるごとにこの本から学び取れることがありそうです。

そして管理者として患者一人一人だけでなく職員や地域住民全体の健康増進と経営や組織運営のバランスをとる立場になって足元がおぼつかなくなったいまのこのタイミングで出会えたのはとても良かったです。

正直、自分の今のやり方に対してとても消極的・否定的な心理状態がけっこう続いていて、珍しくかなり長いこと払拭しきれないまま続いていたんですが、これを読みながら少しずつ背筋が伸び、初心を思い出し、これまでの経験を思い出して新たな意味付けをして、そしてこれまで関わった人たちとのやり取りにも新たな意味をかんじられ、すっと前を向けるようになった気がします。


もちろん、そんなに経験をつんでからでなくても、若手でエビデンス勉強したり手技を身につけてみたものの「若かりしころに思い描いていた医師のイメージと違う」と思ったときなどにもよいかと思います。

臨床経験を積む前の学生が読んでも得るものはあるだろうし、この内容が一度頭を通過した後で臨床を経験し、また次のステージに立ったときに読み直したらどんな感覚が得られるのかを想像すると羨ましいなと思ってしまいます。


少し時間をかけて、ゆっくりと読み進めてみようと思います。

最近、原稿執筆や書籍編集、講演やワークショップなどのアウトプットが過剰になっていたので、そろそろインプット量ふやしてレベル上げしたいところです。


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