日本プライマリ・ケア連合学会(JPCA)が出している「プライマリ・ケア」、通称「実践誌」がなかなか面白いです
無題



JPCAは、旧関連3学会が合併してできた日本における総合診療関係で一番大きな学会だと思っていますが、規模が大きくなっただけでなく、研究・学会発表・論文投稿のレベルアップにもずっと力をいれており、最近はほんとにレベルが上がってきています。

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http://primary-care.or.jp/journal/index.html
(ちなみに、ページしたの方に優秀賞とった私の論文が書いてあります。自慢ですいません・・・)


おかげで、しょぼいなんちゃって研究だとなかなか採用してもらえないくらいに・・・(T_T) いいことですけど




で、学会誌(日本語誌と英文誌と両方あります)の学術的なレベルが上ってくると、プライマリケア的にはとっても大切なことなんだけど学術的ではないので学会誌に載らないことが増えてきちゃうんですよね。

もちろん、プライマリケア現場を学術的にきちんと解析してデータ化して発表することで全国のプライマリケア医のレベルアップや、なんなら医療政策をまともな方向に変革させていく基礎資料にしたりは大事ではあります。

でも、そもそもが大学研究とは対局にあるような在野の実践的な医療なので、学術的なレベルの高さだけでは、プライマリケア医にとっての重要性や有用性を表しきれないともおもっています。



なんてことを考えていたら、さすがに学会の偉い人たちはちゃんと考えていて、実践誌というのを別に作ってくれました。

無題


プライマリケア業界で、特定のトピックスについて先進的な医師が(必ずしもエビデンスガッチリでなくても)説得力があり明日から真似できそうな診療について語ってくれたり、学会誌では扱いにくいようなテーマについて座談会などの形式で書いてくれたりしています。

また、EBMerによる原著論文レビューの連載がけっこうよくて、紹介された論文の中身よりも(ここに取り上げられるような論文は、普通に普段から論文チェックしていればすでに知っているものがほとんどです)、その論文をEBMerがどう解釈しているのかのところがとても勉強になります。


個人的に好きなのは、岡田先生の「プライマリ・ケア事始め」で、プライマリ・ケアや家庭医療の特性とか評価について、一般的に専攻医や指導医が言っていたり若手向けの教科書に書いてあるようなレベルよりもめちゃくちゃ踏み込んで、王道レベルの研究者が書いた文献やその他諸々を引用しながら説明されていてとてもおもしろいです。

以前は、岡田先生のプロジェクトチームに所属して、ACCCAの論文レビューをして学会の教育講演で発表したこともあります。そのときに自分が担当したのは、これまたマニアックなAccountabilityですが、今になって副院長という立場で組織全体を考えるようになったり、カナダで医療のアカウンタビリティーを学んでみてとても理解が深まっています。

今回の記事では、スコアリングで各国のプライマリ・ケアシステムを評価する指標の紹介と、これを日本に当てはめると・・・という内容で非常に面白かったです。
医療政策に関わったり、学会の委員会などでそういう活動するような人はそのまま使える概念化もしれませんが、一病院に勤める小医としては「うちの医療機関をリデザインしていくときに、こういう指標を意識するとより効率よく地域に役立つ組織にしていけるかもしれない」というふうに参考にできるなと思いました。
PCシステムスコアのうち、個人で変えられること、組織で変えられること、地域で変えられることくらいまで(SDHのあれでいうMicroとMesoのレベル)について切り出して具体化しつつ、国や政治じゃないと変えられないところ(Macroのレベル)については研究テーマや政策提案活動のタイミングなどで活かせるように頭の片隅に常に置いとくのが良いように思いました。


それ以外に、今回読んで面白かったのは、「親の七光ですけど、なにか?」というキャッチーなタイトルで、医師会活動や医師会に所属し参加することのメリットを自然に伝えている記事がとても興味深かったです。そろそろ、関わりつくるかなぁ。。。

あと、今回一番おもしろかったのは(一般的な指標でよいわるいでなく、今の自分の関心のど真ん中という意味で)、「健康と社会を考える 医師の影響力を自覚的に用いるーアドボカシー活動とパートナーシップ構築ー」でした。
カナダで社会医療を学んできて、「よし、あれを自分のところでもちょっとずつやろう!」とは意気込んだものの、「具体的に、日本の現状を踏まえつつ、自分が個人でも始められることはなんだろうか?」と考えながら煮詰まっていました。
しかし、今回この記事をよんで、凄くイメージが持てました。これならちょっとずつできそうです。

ホントは病院全体で取り組むほうが効果は大きいんでしょうが、自分が上から「よし、お前ら、やれ!」といって動く組織でもないですし(あらゆる決定がボトムアップの民主的な検討を前提としています)、そもそも自分の実績がないと「言い出しっぺが一番使えない」になってカッコつかないですし(カッコつかないのにうまく成果が出てしまうのが理想ではありますが)。

これでちょっとずつ、学んだ成果を形にできそうです。



という感じで色々書きましたが、ほんとにこの実践誌は読み応えがあって面白いですね。

webで無料公開されてないのがほんとに残念。学会員だけの特典という位置付けなのかなぁ・・・

まあ、確かに完全公開したとして、総合診療やプライマリケアの理解がない(というかハナから適ししている)他科の特定の医師・団体がみたら「ほら、こんな低レベル(学術的とはいえない)なことをして・・・」という批判・誤解の材料になるのかもしれません。

けど、それ以上に、学生や研修医、そして一般市民がよむことで「ああ、この学会はこういうことをやっているんだ」ということがイメージできるのは大きいような気もするんですけどね。
学術誌の方(研究の論文が乗っている方)は、専門医としてはとても興味深いですが、初学者や専門外の人が読むにはやや大変ですしね。


あと、紙媒体で届くと保管場所に困るし、自分は全部スキャンしてPDFにして保管しているけど裁断→スキャン→フォルダに入れる作業が地味に面倒なので、最初からPDFで配布してほしいなぁと思ってしまいます。
(学会の中の人をやっていると、希望者だけPDFでメール配信して、それ以外には雑誌で配布というのはまあめんどくさいということも理解はしますけど)



とにかく、せっかくいい内容がおおいので、もっと知られたほうがいいなぁとおもってブログで紹介してみました。

学会員だけどよくわからんから届いたらすぐ捨ててますという人はもったいないですよー



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