病院家庭医を目指して ~野望達成への道~

地域密着型病院で活躍する家庭医を目指し、札幌市内で働いてるDr_kentaです。 病院外来でのプライマリケア、内科急性期病棟の老年・緩和ケア、リハビリテーション栄養を中心に、医学教育や院内システム改善などにも関心を持ちながらいろいろやっている日常を記録していきます。ちなみに「病院家庭医」という正式な呼称はありません(造語です)。 また医師による記載ですが、医学的な内容を自分や身の回りの方に適用していいかどうかは直接診察のうえでの判断が必要です。記載内容を試して発生したいかなる不利益も責任は負い兼ねますのでご了承ください。

家庭医療

日本人の死亡原因の統計2017年版を、疾患名・診療科別とは違う視点で切り分けました。5大Common Disease群が見えてきませんか?

何年か前から、日本人の死因統計や総合病棟・総合外来の患者層等のデータを弄って、総合医が診るべきCommon disease群をざっくり示すというのを趣味でやっています。



以前にブログに乗っけた、「慢性臓器障害」という概念を教えるためのレクチャースライドを公開した記事がこちら → http://blog.livedoor.jp/gp_ken/archives/8894692.html

この記事の中にはったプレゼン資料のなかで、Common diseaseをグルーピングしています。
https://ja.scribd.com/document/271596413/%E6%85%A2%E6%80%A7%E8%87%93%E5%99%A8%E9%9A%9C%E5%AE%B3Ver1-150713#fullscreen&from_embed

感染症と悪性腫瘍のほか、心血管救急(StrokeとかACSとかの、動脈硬化でリスクが上がっていき、発症したら急いで救急対応する群)と急性臓器別疾患(イレウスとか膵炎とか)、慢性臓器障害と代謝内分泌疾患などに分けてみたり、死因統計からは悪性腫瘍・心血管救急と感染症っていうか加齢性疾患と慢性臓器障害とその他(自殺・事故と老衰)というふうに分けてみたりしています。



「死因を10個覚えよう」とかよりも「似たような特性で圧縮して5個だけ理解しよう」のほうが、総合医である自分が対象とすべき敵の全体像が把握しやすいし、無限に勉強できてしまう一部の人を除くと初期研修医や後期研修医が疾患の勉強を始めるときの取っ掛かりとしても「まず全体像を把握し、共通点でざっくりまとめて、その上で個別の疾患の枝葉を詰めていく」というプロセスのほうが効率的なんですよね。




んで、ながらく2011年に出た死因統計をもとにレクチャーなどしていたんですが、最近になって「2017年の統計では肺炎が3位から5位まで下がったらしいよ?なんか、レクチャーの内容とずれてきたんじゃない?」という声が聞こえてきたので、再度検証してみました。



もとにした厚労省のデータはこの2つです。
実際の細かい数字がはいった表→
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/h6.pdf


無題2

これが、最近独り歩きしている図です。

よく見ると、肺炎が下がったというよりは、「肺炎が、肺炎と誤嚥性肺炎に分割された。合計すれば7.2+2.7=9.9でやっぱり3位だよ」ですよね。

また、肺炎が減ったんじゃなくて老衰と診断する医師が増えた(以前は老衰の結果亡くなった症例でも心不全や肺炎と各症例も多かった)というのもあるでしょう。

あと、見慣れたCOPDや腎不全や肝疾患が消えていますが、実際に表をみると死亡数はへっておらず、誤嚥性肺炎と認知症がランクインしたせいでTop10から消えただけでした(表の方をみると、2016年と比べてこれらの臓器別疾患の死亡数は増えています)




この表のデータをエクセルに転記して、臓器系別、疾患の原因別、5大Common disease別に円グラフ作り直してみました。
無題


ちなみに、臓器系別にまとめ直したときの各グループに含めた疾患群の定義はこちら。
呼吸器=呼吸器+気管~肺癌  263599
循環器=循環器-脳血管疾患  240364
消化器=消化器+胃腸肝胆膵癌 238057
神経系=神経疾患+脳血管疾患 154876
泌尿器=腎尿路+泌尿生殖器癌 70130
精神疾患  21501
代謝内分泌 22352

原因病態別のまとめ方はこちら
悪性新生物 373178
動脈硬化(高血圧性疾患+糖尿病+心筋梗塞+その他虚血性心疾患+脳血管疾患+血管性及びその他の認知症) 151896
加齢性疾患(老衰+誤嚥性肺炎) 136527
感染症(感染症+肺炎) 121472
心疾患(心不全+その他心疾患) 86006
呼吸器疾患(BA+COPD+その他-誤嚥性肺炎) 53974
消化器疾患(潰瘍・腸閉塞・肝疾患) 51163
神経変性疾患(その他の精神及び行動の障害+神経系疾患-髄膜炎) 46664
腎尿路生殖器疾患 37989
事故 40395
自殺・他殺・その他外因 28097

5大Common Diseaseの分け方はこちら
悪性新生物 373178
心血管救急(心筋梗塞+その他虚血性心疾患+脳血管疾患+大動脈瘤・解離) 198812
老年症候群(老衰+誤嚥性肺炎) 136527
慢性心疾患(高血圧性心疾患・心腎疾患+心不全) 85874
慢性肺疾患(COPD+喘息+間質性肺炎) 38830
慢性神経疾患(アルツハイマー病+血管性及び詳細不明の認知症) 36813
慢性腎疾患(慢性腎臓病+詳細不明の腎不全、糸球体・尿細管疾患除く) 22515
慢性肝疾患(ウィルス性肝炎+肝硬変(アルコール性除く)+その他肝疾患) 20727
感染症-ウィルス性肝炎+肺炎 20931





結論から言うと、私のいつもの「5大Common Diseaseの視点」(慢性臓器障害、心血管救急、悪性新生物、老年症候群、感染症)で整理すると、2011年版とメッセージ性は特に変わりませんでした。


それを踏まえて、レクチャー資料や今準備している書籍の原稿に書き足した本文の一部がこれです。
まだ適当で雑な文章ですが。
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死亡原因を臓器系別でまとめ直したもの(臓器別にまとめられない感染症・老衰・傷病/外因を抜き、悪性腫瘍は分かる範囲で臓器別に割り振ったもの)をみると、呼吸器23%>循環器・消化器21%>神経系13%>腎泌尿器系6%>代謝内分泌・精神疾患2%、その他12%となり、いわゆるメジャー内科が担当する臓器系の比率が高く、見慣れた印象の結果となる。


次に、疾患の原因となる病態別でまとめ直すとだいぶ印象が変わってくる。
悪性新生物28%>動脈硬化性疾患11%>加齢性疾患10%>感染症9%>これら以外の原因による臓器別疾患6~3%>事故3%>自殺・他殺・その他外因2%となる。
長い経過による動脈硬化(と、同じリスク因子を持つ悪性腫瘍)、加齢に伴う老衰や嚥下機能障害、感染症など予防や早期発見が可能な病態が多く、地域や外来で大勢の患者に関わるプライマリケア医の重要性を想像しやすくなったと感じる。

また、「これら以外の原因による臓器別疾患」は、悪性腫瘍や動脈硬化(心筋梗塞や脳卒中)を除いた、つまり専門医の特殊な検査・治療が必要となる確率の低い疾患群であり、合計すると27万人強・20%を占め、悪性新生物に次いで第2位になる
この数を、専門医のいる高度急性期病棟ですべて診ることは難しいし、診る必要性も低い(カテーテルインターベンションなどが不要な疾患である)が、現時点ではこれらの「専門医の出番や関心が薄い臓器別疾患の診療」を総合医の仕事として認識している医師は(特に医学生や初期研修医~後期研修医などの若手では)少ないのではないだろうか。


最後に、筆者が上記のような基準で診療の特性別にまとめた「5大Common disease群別」で並び替えると、悪性新生物28%>心血管救急15%>老年症候群10%>慢性臓器別疾患6~1%>感染症2%(その他30%)となる。
また、慢性臓器別疾患をすべて合計すると20万人強・15%程度を占め第2位に入るが、これも悪性腫瘍と心血管救急を除外しているため専門医の専門性が役に立つ場面は少ない。

この視点でも、やはり「慢性の経過で臓器機能が徐々に落ちていく疾患を、年単位の長期間で診るための視点や訓練」は必要と考えられる。現在の救急外来と急性期病棟に偏った初期研修や内科専門研修ではこの点が抜け落ちているだろう。」
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まあ要するに、「もっと総合診療の病棟や外来での研修しましょうよ、初期研修でも内科専門研修でも、ましてや総合診療専門研修でも」ってことでした。

臓器別内科の病棟を全部回っても、悪性腫瘍や心血管救急や急性臓器別疾患をのぞいた「慢性臓器障害」や「老年症候群、加齢性疾患、老衰」などは全然診れるようにならず、急性増悪のあと退院してきた患者を継続的に診続ける外来診療や、臓器別専門医が「これは、まあうちの科の疾患ではあるけど、やることないので総合でもいいんじゃない」的に押し付けられた疾患を主体的にみる意欲的な総合病棟や地域包括ケア病棟での研修もしないとぜんっぜん足りないんですよ。ということです。


単一施設の総合診療病棟のデータとかでなく、国の全国統計が根拠なので、割と信憑性ある内容だと思うんですよね。

どんなデータも切り方次第、見せ方次第ですね。



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カナダの家庭医療・社会医学視察旅行の報告ー5日目:アルコール依存やトランスジェンダーをテーマに病院における公正な医療を学ぶ+全体振り返り

はい! 今日でカナダでの医療視察の全日程を終えました!!

超長く、濃く、脳みそトロットロに疲弊しましたが、発見や気付きもたくさんあり、とても得るものの多い5日間でした。


今回のレポートは、最後に自分の振り返りや今後の課題などをながながと1ページかけてまとめました。

2018年9月28日カナダSDH視察旅行レポート最終日 by けんた on Scribd




5日目の午前中は、ちょうでっかいWemen's college hospitalでアルコール依存やトランスジェンダーなどをテーマに病院での公正な医療についてのレクチャーアンドディスカッションで、

昼はオンタリオ州の庁舎やトロント大学などを眺めながら中華街にいって昼食をとり、

午後は自由時間で、オンタリオ湖畔やトロントのダウンタウンをぶらぶらしたりしてました。



今日の分も含めたこの5日間のツイート+出発前にブログにまとめたカナダ医療の予習記事リンクをつけて、Togetterまとめておきました。
aaaaa

カナダの家庭医療・社会医学視察旅行の報告ー1~5日分+事前予習資料




全日程が終わった高揚感と、昼に調子乗って2杯飲んでしまったビールのおかげで、疲労が溜まっていたのを忘れてあるきまくってしまったため、夕方にホテル戻ってきてすぐにぐったり死んでしまいましたが、まあ明日はゆっくりと帰るだけなのでいいでしょう。

土曜は早起きできたら近隣の散歩して、10時に出発、13時40分のエア・カナダでトロント空港を出発、約13時間のフライトを経て日曜15:35分の羽田空港につく予定です。

ちょうど台風が来るらしいので着陸できるかどうかと、羽田→新千歳の便が予定通り飛んでくれるかという試練が待っており、それらを無事に乗り越えても深夜帰宅して翌日すぐに通常業務(2018年度後半期初日で大変そう・・・)を時差ボケのなかで乗り越えるというハードモードが待っていますが、受けて立ってやろうじゃないかー(棒読み)



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カナダの医学教育・プライマリケア制度の予習してみました。視野が広がって面白いです!

カナダのトロントへの医療視察があと1週間に迫ってきています。


しばらくは「いきたくないなぁ」とか「行っても英語わからんし」とか「ていうか海外の制度学んだって意味ないし」とかいろいろ言い訳していましたが、いざ間近に迫ってくると腹がくくれたというかなんというか、前向きになってきています。

海外旅行保険とか、海外でのスマホ・Wi-Fiとか、スーツケースその他の旅行用品レンタルや買い出しとかしているとだんだん実感湧いてきますね。
お土産選びもなかなか楽しいです。

あと、ウィキペディアやその他のwebサイトをみたり、高校時代の地理や歴史の教科書を引っ張り出してみてて、「ああ、今読むと面白いなぁ。当時は何も興味もてなかったけど」としみじみ感じたりしています。



そのへんの「プライベートの旅行っぽい雰囲気でむりやり上げていく」作戦が功を奏した勢いで、本題の「カナダの家庭医療や社会医療の歴史や制度」についてのお勉強もはじめました。

今回の視察旅行は、企画していただいている上の方の人たちが現地と連絡取って、その都度メーリスで情報共有もしていただいているんですが、肝心の「目的」とか「狙い」とか、終わったあとに何をするか(どっかに報告書出すとか、組織内での何らかのアクションにつなげるとか)が全くわからないままなのでふわふわしたままなんですよね。
まあ、いつものことですけど、「とりあえず行ってみるか。見てみて話しして、お酒飲んで仲良くなったら何かいい感じになるんじゃない?」というノリが見え隠れしますが、それはそれとして自分は何かを掴み取って返ってきたいと思うので、「理論武装派」な自分は予習をしたいのです。



とりあえず目を通してみた、カナダの医学教育や仮定医療制度についての簡単な資料はこの辺。

カナダにおける医学教育と医師国家試験
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mededjapan/45/4/45_284/_pdf

カナダのプライマリケア ~カナダの家庭医学の歴史と現状分析~
http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/kaihatu/center/staff/pdf/2006thesis3.pdf

なかなかに興味深く、日本はこれから数十年遅れてるなぁと感じます(というか、数十年くらいで追いつくというか同じような方向に行くとは想像し難いっす)


だんだん楽しくなってきて、他の「広大な僻地があり、かつ家庭医療・プライマリケア制度がきちんとしてそうな国」にも興味が広がり、日本語でまとまっている紹介資料もいくつか目を通してみました。


オーストラリアの家庭医の特徴
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000153186.pdf

豪・タスマニアで見えてきた 家庭医と地域医療の未来像
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03034_02

家庭医とは何か―諸外国の最新事情
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/4/105_736/_pdf



ふむ、なかなかに面白そうです。

日本でやったらいいのにと思えるような部分もたくさん。

特に北海道は、僻地の広大さを考えると英国や米国以上に、カナダやオーストラリアから学ぶべき部分が結構あるんじゃないかなと思うので、カナダ見に行くの楽しみになってきました!







ちなみに、手元にある日程表にあるキーワード(見ること、聞くことリスト)をみるとこんな感じです。

興味が沸く部分と、そうでもない部分と、単語の意味がわからない部分と、「英語で討論とかおそろしや・・・」なところと、観光やショッピング♪な部分とあって、見ればみるほど気持ちが複雑に入り乱れますが、楽しいところだけ見つめようとおもいます。

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月曜午前
Family Health Team modelの紹介(プライマリケア槐角の成果として編み出された多職種によるチーム医療推進モデル)
SDOH(カナダでは、Social detarminants of healthをSDHでなくSDOHと略すそうな)の委員会や歴史、概要の紹介
所得保障ヘルスプローモーション(社会的処方プログラムの一つ)
ヘルスジャスティス(性ミカエル病院のFHTと法律家とのパートナーシップ事業→法的課題のあるときの連携システムらしい)
リーチ・アウト・アンド・リードの概要紹介(社会的に恵まれない家庭の子供達への、リテラシー工場のための支援活動)

月曜午後
SDOH委員会の活動2.0の概要説明(Equity-Oriented Community Engagement、人種差別と健康、Health Equity Impact Assessmentなど)
公正に焦点を当てた医療の質へのアプローチ
意見交換、振り返り

火曜午前
Upstream Lab研究所からまんだこと(?)

火曜午後
Inner City Health Association(ホームレスなどへの医療支援を行う団体)など(その他薬剤乱用者の感染予防や助産師センターなど)の、コミュニティーにおける新基軸の活動の見学
ディナー企画あり

水曜一日
ナイアガラの滝ツアーヽ(=´▽`=)ノ

木曜午前
意思のアドボカシー活動の紹介
活動グループの紹介(Health providers against proverty、Decent Work and Health Network)

木曜午後
カナダ家庭医協会にいって、全日本民医連のSDH活動のプレゼン
社会的説明責任とカナダ家庭医協会活動の説明
学会の社会的説明責任作業部会(Accountability working group)のレクチャー
Accountabilityについての討論
ディナー企画あり

金曜午前
病院における公正(Women's college hospitalの副院長から。薬物使用、嗜癖、トランスジェンダーの健康など)

金曜午後
自由観光

土曜午前
ショッピング
午後に帰国、日曜到着
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外国語で外人とワイワイディナーとか、つらたん(T_T)

雑な日常会話英語くらいは身につけて、がんばってきます


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夏休み明けてみての体調変化と、外来診療振り返り再開

夏休み明けてからの勤務も、もう少しで1週間終わりそうです。

体感的には、「ずいぶん長いな」と感じます。
今までは疲弊した頭で無為に過ごしていて、日々の考えがたりず、感動や気付きも少なくてただただ毎日流れていたんだなぁと思います。

あと、「寝れば疲れが取れる」という当たり前のことに、新鮮さも感じますね。
今まで何だったんだとおもうくらい。
同じ睡眠時間でもベースラインの疲労蓄積度によって睡眠効率が変わるのか、もしかしたら飲酒量がおおかったのか(あんまり変わってない気もしますが)、単に疲れすぎて睡眠が深くて睡眠時無呼吸が出ていて睡眠の質が悪かったのかもしれません。

まあ、何にしても健康的な体に戻れてよかったです。
まだ可逆的でした。



あと、今週から、久しぶりに外来振り返りをはじめました。自分のね。

最近は忙しすぎて、というよりは、外来終了後は疲れすぎてそんな気力がわかず、外来から上がってきたら急ぎのデスクワークをなんとかこなして、気がついたら夜22時過ぎてて溜息ついてみたいな感じでした。

夏休み明けて頭が回る状態だと、外来を半日とか一日やっても脳が疲れ切るほどには疲弊せず、余力をもって上がってこれます。
(単にお盆ウィークで外来患者数が少ないから。かもしれませんが)

また、夏休み終盤で溜まっていたデスクワークを結構処理できたことや、振り返りをして今の立ち位置と当面のやるべきことにメリハリがついたことで、毎日のスキマ時間で「あ、いま15分あるならあれやっちゃおう」と時間を効率よく使えるおかげで、診療終了後の夜にやるべき残務が劇的に減った気がします。


それで、個別の事例をいっこいっこ書き出して「できたこと、できなかったこと、気付きや成長、Next step」みたいに丁寧にはやっていませんが、1日分をざっと眺め直して、どんな症例がいて、どんな気付きや学びが合ったかを全体として振り返ってみました。


月曜午前は、今年度から人手不足で始めた一般外来(内科全般の外来)。
お盆休みなので数は少なく、そこまで馴染みの患者や複雑過ぎて疲弊する患者もおらず、スラスラと進みました。

月曜午後は、総合外来。複雑度が高い事例を中心に、一般外来より予約枠を少し長くして診ている外来で、7年半ずっとやっています。
数年前まではとにかく濃くて疲弊度が高くて、「全身全霊を持ってとりくみ、すべてを消耗して上がってくる」という感じでした。
今でも、いわゆる「大物」に該当するような、かなり困難度の高い事例もいますが、それ以上に「長い年月を経て徐々に良い方向に向かってきたことを実感できる事例」や「多くの困難を乗り越えて卒業できた事例」の比率が高くなってきています。

複数科にまたがってそれぞれ重たい疾患をもっているおかげで、処方重複や、急変時受け入れ困難、家族の受診付き添いや途切れのない連日の介護での疲弊などがあった症例でも、各科・病院と連絡をとって重複処方を減らしたり副作用を伝えて減らしてもらったり、感染症などどの科も取らない病気で入院したときに一気に問題を整理したり、老年・介護面もどこの科もこだわらないのでそっちを固めて負荷をとったり、家族の方も一緒に診療するようにして不眠不安や疼痛のケアをしつつ慢性疾患の内服も単純化して負荷へらしたりしているうちに、嘘のようにシンプルな症例になり、予約してから長年待っていた特養があいて、入所後の本人の同様や家族の生活パターン変化のフォローもしてようやく一段落した事例とか。
親をずっと見ていたらそのうち付き添いの息子も一緒にかかるようになって介護面の介入がぐっと進んだり、逆に勤労世代の子供を夜間診療や土曜日に見ていたのをきっかけに総合外来についてくるようになり、気づいたらその親と子供もくっついてきて3世代ずっと診ているうちに家族志向ケアが進んで全体的に病的な家族関係を少し緩めたら身体症状が取れて受診理由がなくなってしまったり。
夫婦関係のストレスから始まった受診から、そのうち離婚騒動が発生して親子も巻き込んで話が大きくなった問題の身体症状や不眠不安の対応をしつつ経過を見守り、ようやく諸々落ち着いた頃には老年医学的問題もでてきてそちらにケアをシフトしてきた複数の事例とか。

総合診療をちゃんとやって、「がんばれたな。報われたな」と感じるには、やはり年単位が必要だなぁと改めて思いました。
だからといって、後期研修のときからローテなしの外来固定にこだわりすぎても研修の多様性が犠牲になるかもしれませんが、可能な範囲でローテしちゃっても外来枠残してかよってもらったり、せめて後期研修終わったら年単位で固定外来持ってもらえるような配慮はしたいなと思います。

火曜午前も、今年度から始めた一般外来ですが、「午後はいろいろあってこれなかったの」という総合外来かかりつけ患者が一気に流れ込んでしまって、余り時間の取れない総合外来みたいになってきています。
それでも、上記のように長らく診ていた患者であれば短時間でも見れる程度には、全体像の把握と長期見通しもできているので一応なんとかはなります。
その中で、「週頭の月曜は仕事休めないけど火曜なら・・・」という勤労世代が割と目立ってきて、引退後の高齢者世代とは、内服の用法をかえたり、生活指導の重点の置き方を変えたりが楽しいですね。

木曜午前は、昨年までいた糖尿病に特化して診ていた医師や、とにかく数をみてくれて患者の希望に応じて薬を足すタイプの医師が抜けた穴を埋めるために入った一般外来で、他の医師が数年診た事例を一手に引き受けているのでいろいろと発見が多くて新鮮です。
だいたい2~3回診察を重ねて、患者側が総合医というものを理解し始め、自分との距離感も見えてくると「あの先生はこの問題しか対応してくれなかったけど、総合医の先生ならこれもいいですか?」と問題リストが1-2回の診療で3倍くらいに膨れ上がったり、「そもそもこの薬って、この検査ってさ・・・」とこれまでの診療に対する疑問を一気に拭き上げてきたり、「先生にこういう相談していいのかわかんないけど」と心理社会面の相談が始まってその結果慢性疾患の診療も質が跳ね上がったりという事例がとても多いです。
まあやりがいはあってもよいのですが、やはりかかりつけは総合医にしておいて、稀に発生する専門性の高い疾患が出た場合に(かつ心理社会的に複雑すぎず専門医受診することで複雑さが高まらない条件に合致すれば)短期間紹介するというパターンのほうが効率的なんだろうなと思ったりしました。
認知症があることを認識しつつ一切診療上は考慮せず、糖尿病や高血圧の薬を増やし続けている事例をみたりすると(要するに薬を飲めてないからデータが悪化してるんだけど)、特に高齢者では単一疾患に特化した外来診療では限界も多いなぁと思ってしまったりします。


そんなこんなを感じながら、「自分の、総合医としての、病院外来での、役割は?」とか「今後自分が伸ばすべき能力はなんだろうか?」というのを日々考え、発見し、実践し、また考えるというのを繰り返しています。

夏休みに振り返りをして「もっと勉強しなきゃ!」と思っていましたが、日常に戻ってみれば何のことはなくて、「ただ日々診療を真面目にして、ちょっとだけ振り返る時間をとれば、そこには無限の学びの源泉がある」ということに気づけてよかったです。


しばらくは、外来振り返り続けてみます。


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カナダに勉強しに行ってきます!

カナダに行ってきますよ!!

今の病院や法人に嫌気が指して、新天地を目指して海外留学!!というわけではなく、1週間だけのツアーでいろいろ学んでくるという企画に乗っかることになりました。




うちの病院も所属している全日本民医連では、以前から健康の社会的決定要因(Social detarminant of health:SDH)を重視して日常臨床で取り組んだり、最近は海外の書籍を翻訳したり、オリジナルの臨床研究も始めたりしていて結構やる気ある感じになっています。

健康格差
マイケル・マーモット
日本評論社
2017-08-25
Amazon

健康格差 不平等な世界への挑戦 [ マイケル・マーモット ]健康格差 不平等な世界への挑戦 [ マイケル・マーモット ] 楽天

↑民医連のベテランドクターたちが訳した本です


https://www.min-iren.gr.jp/?p=26969
↑民医連のホームページにいろいろ乗っている、SDH関係の特集です。



プライマリ・ケア連合学会にもSDH関連部門があり、今後は民医連の若手・中堅が参加していける・声がかかっているらしいという噂も耳にします。いいですね!

https://www.primary-care.or.jp/sdh/
↑学会の、健康格差に対する声明

健康の社会的決定要因委員会@日本プライマリ・ケア連合学会
https://www.facebook.com/sdhxpc/





んで、今回いくやつは、日本HPHネットワーク(HPH:Health promoting hospitals & Health services)の活動のつながりです。

このネットワークはうちの院長(自分の直属の上司、総合診療とか部門立ち上げの基本を教わった師匠)も関わっていて、このJ-HPHネットワークの活動でつながったカナダの家庭医療の教授に声をかけて具体化された企画だそうで、参加しませんかと声をかけてもらいました。


まだ参加者募集中のようで、内容も確定とまでは言えないのかもしれず、詳細までは出せないと思いますが、なかなか面白そうです。

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企画名:カナダ医療施設~カナダにおけるSDH研究と貧困治療の実践~

期日:今年9月の1週間
場所:カナダ・オンタリオ州トロント

参加対象;中堅世代医師、看護師、事務、ソーシャルワーカ
ーなどと、全日本民医連の偉い人も数名
予定定員:20名くらい

スケジュールの一部:
プライマリケアにおけるSDH介入モデルと関連する活動の紹介
SDH介入に関する研究、地域の新機軸の活動
健康格差対策プログラム、ホームレス支援
国、州、地域やカナダ家庭医協会のアドボカシー活動の紹介と討論
病院におけるSDH介入の取り組み
他、ナイアガラ滝などの観光、まちなかでお買い物タイム、ホスト宅でのホームパーティーなど
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という感じで盛りだくさんです!

社会医学とかSDH関係は、関心もあり、なんとなくの実践もしてきて入るつもりだし、昨年度はワークショップを学会でやったりもしましたが、いまいち勉強が足りていないんですよね。

正書など読めてないですし(本棚に何冊もありますが)、世界の最先端や実践例なども知識が足りないし・・・

それをまとめて学べるのはとっても魅力的!!

しかも、ちゃんと観光の時間もとれるし!!!




なんですが、自分は二つ返事で「行きたい!」とはいえず、2週間位躊躇しまくっており、「行きます」と返事した後もひたすらビビり続けています・・・

一つは、上にかいたように、知識不足すぎる自分が行ってもいいのかという自信のなさ。

もう一つは、圧倒的で絶対的な「英会話コンプレックス」です。



高校時代に、片思いだった女の子が帰国子女に鮮やかにかっさらわれた経験や、現役で受験した大学医学部でリスニングがあったものの問題文すら聞き取れず、面接で「君は英語抜きで合格する自身があったようだけど、すごいね(鼻で笑いながら)」みたいな経験もあり、トラウマレベルでだめなんすよね。

以後、海外留学のチャンスや、外人さんと個人的に仲良くなる機会などは結構あったと思うんですが、全部全力で逃げまくっていました。

医者になってからも、外来や病棟診療で日本語話せない人が来ただけで全力で逃げて、英語喋れる研修医や上司に振ってしまっていました。すいません。


いちおう、受験のときに頑張ったので英語を読むとか、英文を苦労しながら書くとかはギリギリできたのと、医学英語は構文簡単だし単語はもともと頭に入っているので仕組み(RSSリーダーで読む方法)だけつくったら英語論文は読めるようになったんですけどね。

しゃべる勇気がないと改善に、聞き取る能力が絶望的に無いので、コミュニケーションに踏み切れないのです。


でも、そうも言ってられないなぁという思いも年々積み重なっていました。

外来や病棟に外人さんは増えてきていて、一方で院内の英語ペラペラ医師は徐々に減ってきていて、これ以上逃げ切れない感も強いです。なにかトラブル起きて責任者として前出るときに英語喋れずしどろもどろでも困るし。

札幌市内にも外国人は増えてきていて、そのへんで英会話が耳に入る機会も増えました。

そして、子どもたちが普通に流暢な発音で英単語喋ったり、英語で自己紹介したりし始めてるのをみて、お父さんの威厳的なものも怪しくなってきていたり・・・


というわけで、一念発起をしました。


1つ目は、「健康格差」の原著を英語のまま読んでみようと思います。
The Health Gap
Sir Michael Marmot
Bloomsbury Publishing PLC
2016-05-05


耳で聞き取れる前提として、その業界の専門用語や言い回しが頭にないと厳しいとおもうので、長い間本棚に寝かしていたこの本を読んでみようと思います。


もう一つは、避けて通れないリスニングの練習を始めようと思います。

ポッドキャストで、医学英語系(NEJM this week, JAMA Editor's Audio Summary, Annals of Internal Medicine Podcast, BMJ group podcastsとか)と、一般ニュース系(Voice of AmericaとかBBCとかNHKオンライン英語版とか)を聞くことにしました。

アンドロイドスマホのアプリにいれて、じゃまになったり聞こえなくて事故ったりしないように片耳方のBluetooth式イヤフォン買って、毎日徒歩通勤の往復とか、朝の身支度中とかにとりあえずひたすら聞きまくっています。


意外と医学英語は半分くらい聞き取れて、「あ、気管支喘息の抗体製剤のレビューで、RRがいくつくらいらしい」というのがわかったりはしました。成長!!

一方で一般ニュースとか、インタビューなどでの掛け合いを聞き取るのは絶望的で、ニュース番組では「トランプが!」くらいしか聞き取れずです。やばい・・・


それでも、徐々に耳に馴染んできて、単語が聞き取れる確率は上がってきたので地道に続けてみようと思います。


幸い、買ってみたBluetoothイヤフォンが快適過ぎて、耳にかけてみたくなるので習慣化できそうです。

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また、アンドロイドアプリもいい感じです。
無題


ワイファイに接続するたびに新しいポッドキャストのデータをダウンロードしつつ「ダウンロードしたよ!聞きなよ!!」的なメッセージを通知欄に出してくれるので、これも自動化された習慣に持っていくのに良さげです。

通知を見なかったことにして右スワイプで消す罪悪感や、スマホを見るたびに視界に入る圧迫感は、なかなかよいプレッシャーでちょうどよいです。




そんなこんなで、英語論文を読むRSS習慣化のノウハウを活かして英語リスニングを身に着け、この何年も積読にしたままだった社会医学の教科書的な知識での理論武装も済ませ、最強状態にバージョンアップしてカナダに乗り込んできます!!

これで自分が明後日の方向に変化するのか、外を見てきたことで視野が広がり自分の立ち位置がしっかり見えて日常に戻るのか、どうなるか楽しみです。



でわ!!












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日本リハ医学会での「若手リハ医のための総合診療」教育講演のプレゼン資料公開

今日のリハ医学会、教育講演で「若手リハ医のための総合診療」のお話をちょこっとしてきます。


全体で90分の企画ですが、15分のミニ講演4つ(病棟発熱診療、総合診療、内科的知識、整形外科的知識)と総合討論30分に分かれており、自分の持ち時間は15分しかありません。

しかし、自分が総合診療を学んだあとにリハ医学を学び、その共通点と、微妙に異なるがゆえに互いを拡張するポテンシャルの高さ、それを後期研修が終わったあとでも刺激的に学べて日々ぐんぐん成長して面白かったあの感覚を伝えきりたい!!とおもったら、90分の基調講演並みの資料になっていしまいました。

これでも半分くらいに削ったんですが、本番では更に削るか、駆け足でポンポンしゃべるため、先にブログに資料をあげておきます。

180629 Jram教育講演「リハ医のための総合診療」公開資料 by けんた on Scribd



リハ専門医にとってみたらリハ視点が浅すぎて、家庭医療専門医にとっても家庭医療学の提示の仕方が浅すぎる・雑すぎると写ってしまいそうな「広く薄い」内容ですが、あえてそうしたからいいんです。

リハを学んでいる最中に、もしくはリハを学び終えたあとのどこかの段階で、家庭医療専門医(→新専門医制度の総合診療専門医)と一緒に働いたり、お互いの知識や技術を教え合う・学び合うような研修を組んでみてほしい!というのが狙いなので、たくさんぶつけてみて1個でも「お、それ面白そう。どこで学べるの?誰が詳しいの?」と引っかかってくれれば幸いです。


では、あとは当日の会場で!!





 

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【講演資料】白石区民医連アカデミーの基調講演「個々の事例と近隣地域を深く知って、民医連事業所の役割を考える」の資料です

近隣・区内の法人関連事業所が集まって、毎年度末に活動報告・学術発表の場として「白石区民医連アカデミー」というのが開催されています。

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第4回の今回2018年3月16日は、「地域」がテーマでした。



その基調講演でわたしが発表したときのスライドです。

180316 白石区民医連アカデミー「地域分析と民医連の役割」佐藤健太 by けんた on Scribd





スライド・話の構成は以下の通りで

1.簡単な病院の紹介

2.患者・利用者・住民個々人の周辺や過去といった「上流」をみることで地域が見えてくるというSDH・SVSの話

3.地域の歴史や地理的分布を知ることで地域自体が見えて患者・利用者・住民の見え方が変わってくるという地域分析の話

4.それを踏まえて法人の歴史や立場や綱領を再確認してこれから考えていく材料を提示する

という形でした。



当日は100人弱は集まってて、眠そうな人は1-2名、けっこう多くの人が激しく頷きながらメモを取りながら聞いてくれていました。

こういう院外の人も招くイベントでは、内科外来や急性期病棟からの参加が少なくて、「外部は盛り上がるのに、内部が変わらず残念」というパターンになりやすいんですが、今回は各病棟や外来からも参加者があり、また管理者クラスの参加も多くて影響がきちんと残りそうな感じでした。

実際、翌日のベッド調整会議でも「うん、昨日の話を踏まえると、こういう人こそうちがうけなきゃね」と現場がかわりつつあるのを感じています。


せっかく外部にたくさんお呼ばれして講演力(?)的なものを磨いてきたし、うちの病院の機能や役割を隅々まで知り尽くす努力を続けてきて、周辺地域もここに住んで生活しながらデータ取ったり人に聞いたりして少しずつ詳しくなる工夫もし続けてきたので、それをうちの病院や連携している近隣介護・歯科関係者と共有できたというのは、わりと感無量な感じがしています。

満足♪



で終わってはだめなので、このあと具体的にまた動いて、動かして、それを定期的に再評価して微調整して、そうこうしているうちに組織間の壁やしがらみがほどほど減ってきて、気がついたら経営も黒字で余力もついてきて、周辺地域にとけ込んだ新病院の建設に踏み込める!くらいを目指したいなぁとおもいます。

某病院のように、患者集め・経営に特化しすぎると大事なものが損なわれてしまうので、地域住民の信頼や、地域におけるオンリーワン的な役割の発揮とその自覚を育みながら「私は誰のためにどういう力を身につけ、どういう形でどこに還元することでやりがいを感じたいか」をはっきりさせ、その上での発展ができるように頑張りたいです

書いてみて気付きましたが、良い病院の運営は、望ましい総合医の育成とスタンスが一緒なんですね。通りで違和感なくできるわけだと今納得しました。




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複雑性と不定性のレクチャー資料共有

総合診療をするうえで避けて通れない不確実性の分析や扱い方について、複数の理論体系をまとめ、かつ実践可能な形で整理したレクチャーの資料です。

複雑性と不確実性_完成版.pptx by けんた on Scribd



自分は準備の指導にはかかわりましたが、後輩がたくさんの参考文献を読み込み、膨大な該当事例を分析しながら落とし込んでくれました。

個人的には、これだけ難しく、かつ総合診療的に専門性の高い内容を、自分自身がではなく後輩がこのレベルで喋れるようになってくれたということが一番嬉しいと感じたポイントでした。


内容のレベルとしては、総合診療後期研修2年目以降くらいが程よい対象学年かなと思います。

初期研修医や、後期研修1年目だとピンと来ない部分もまだけっこうあるかもしれません。



いつでもこの分類で小難しいことを考えるべし!というメッセージではなく、なんかうまくいかない、ツライ、大変だと感じる事例に出会ったとき、安易に「モヤモヤを抱えながら中腰で粘るんだ」とか「複雑なものを複雑なままとらえよう」とか「とりあえず患者さんに寄り添えばいいんだよ」とかではなく、「複雑な状況そのものも分析し、分類すれば、対応がシンプルに決まることもあるよ」ということを伝えたかったです。

中には曖昧なまま付き合い続けられる特性をもった若手医師もいますが、たとえそれができても多職種と共有したり、次の医師に引き継いだりすることは出来ないため(分析して言語化できていないので伝えようがない)、すでになんとなく対応できちゃっているひとでも習得する必要性や意義はあるだろうと思います。

その逆で、内科診断学とか理詰めで全部整理したくて、複雑さとか心理社会的問題とかそういうのは苦手ですというタイプの人にとっては、普段の「勉強して、その理論体系を事例に当てはめて、理解が深まって、自ずと対応が決まる」といういつものパターンで複雑な事例をみれるようになる便利ツールなので、習得すると良いだろうとおもいます。




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レジデントノート増刊「入院患者管理パーフェクト Part2」で、専攻医と一緒に「入院患者の慢性疾患管理」の記事を書き、「慢性臓器障害」の概念を扱いました

レジデントノート増刊 Vol.19 No.14

主治医力がさらにアップする! 入院患者管理パーフェクト Part2

に、記事が掲載されましたヽ(`▽´)/


Amazon



うちの総合診療後期研修医が執筆するのの指導医という立場で、自分が開発し、この数年研修指導や臨床実践に応用している「慢性臓器障害」の視点で、それを急性期病院の初期研修医でも理解できる形にまでなんとか落とし込みました。


明日11月8日水曜朝のプライマリ・ケア・カンファで、慢性臓器障害のレクチャーします!



担当したのは、第2症の5です。

目次

第1章 病棟仕事術を身につける

1. 効率的に働こう!病棟医のためのタイムマネジメント【天野雅之】

2. プロブレムの立て方と仕事の進め方【長野広之】

3. 診療で行き詰まったときの対処【小林正尚,左近郁絵】


第2章 病棟でよく出会う症候・疾患マネジメント

1. 病棟での発熱対応【上月友寛】

2. 院内で出会う肝障害【宮里悠佑】

3. 感染症トラブルシューティング【井藤英之】

4. 整形外科に相談,その前に 〜転倒,腰痛,膝痛【藤井達也】

5. 入院患者の慢性疾患管理【田木聡一,佐藤健太】

6. 糖尿病管理アップデート【桝田智仁】

7. シンプルに考えよう,抗血小板薬・抗凝固薬の扱い方【飯塚浩也】

8. 不眠・不穏・せん妄への対応アップデート【佐野瑛子】

9. 輸液と栄養【大西規史】


第3章 病棟で欠かせない基本的手技のコツ

1. 中心静脈穿刺【芥子文香】

2. 安全確実な穿刺〜腰椎穿刺・胸腔穿刺・腹腔穿刺【前田 遥】

3. 病棟で役に立つ“POCUS”(Point of Care Ultrasound)【官澤洋平,山田 徹】

4. 病棟で役に立つ肺エコー【森川 昇】

5. 「管物」を安全に管理しよう【國谷有里,舩越 拓】


第4章 複雑な問題にチーム医療でとりくむ

1. 「チーム医療」と「看護」を知り,看護師さんと上手な関係を築こう【蛭沼恵美,森本将矢】

2. フレイル・サルコペニアと多職種連携【山田哲也】

3. 疾患から生じる障害とリハビリテーション【桂井隆明】

4. 薬剤管理とポリファーマシー【小澤 労】

5. 誤嚥性肺炎にチームで取り組む【大浦 誠】


第5章 退院・転院を見据えたマネジメント

1. 上手な患者・家族説明のポイント(応用編)【﨑山隼人】

2. アドバンス・ケア・プランニングと診療のゴール設定【松島和樹】

3. 病棟で患者を看取る【岡村知直】

4. 自宅退院か?転院か?【稲葉 崇,吉本 尚】

5. はじめての主治医意見書【櫻井広子】

6. 自宅退院を支援する【花本明子,片岡 祐,和田幹生】

7. 転院を支援する【安藤崇之】

8. 社会的背景が複雑な患者への対応〜健康の社会的決定要因を診療に活かそう〜【長谷田真帆】

9. 質の高い医療と経営の両立のためには【松本真一】



記事の簡単な構成をまとめておきますので、気になった人はぜひ購入して読んでみて下さい(購入されても、印税として私の手取りが増えることはないので、一応COIなしかな?)

Point
高齢者の肺炎では心不全を合併しやすい
心不全があれば保管臓器障害もあると考える
複数の臓器にメリットがある一石二鳥薬剤を知っておく
入院中に全部できないので、外来主治医に上手く申し送る


はじめに
一般的な疫学データで、Multimorbidity対応が必須なことを提示

症例
肺炎で入院したけど、その後の経過で臓器障害がボロボロ見つかった症例

本文
1.肺炎で入院すると心不全を合併しやすい
2.心不全を見越して、入院時に何を評価すればいいか
3.臓器障害を見つけたらステージングを行って予後を見通し、他の臓器障害も探す
4.複数臓器障害があれば、優先順位をつける
5.退院時の引き継ぎの具体例

Advanced Lecture
慢性心不全は、進行性で予後の悪い疾患と考え、「急性増悪改善後」の対応が大事


という感じです。


今後は、これを元に、慢性臓器障害のレクチャーを専攻医に譲ったり、今後の更に下の若手にも「教える側」を広めていきたい。

うちの総合診療後期研修医向け学習会のルーチンネタ化していきたい。

他のメディア等もつかって、慢性臓器障害の概念の魅力を広めていきたい。

数年以内に、あるていど注目が集まった段階で、満を持して「慢性臓器障害」についての単著を出したい!


と考えています。

「慢性臓器障害」という言葉が地味なので、書籍化の前にある程度普及の地道な努力をしようかなと思うのです。

先日のプライマリ・ケアカンファでレクチャーしてのも、今回のこの記事もその一環なのでした。

ほんとは、学術誌に総説として投稿するのがよいとは思うんですけど、学術界で評価してもらう体裁の論文だと味気ないものになりそうかなと思ったり(自分の個人的体験や熱い思いも書きたいので)、そもそも自分の書いた論文はもう今後は学術誌のPeer review通らないんじゃないかという自己評価の低下などがあり(この数年はなんども一発Rejectされているので)、そっちは諦めております・・・


4つの学術活動のうち、「統合」と「適用・実践」「教育」、そしてDisseminationができればいいんです。いいの、ほんとに。
http://tadao-okada.blogspot.jp/2008/02/academic-value-vs-fidelity.html



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外来診療。少し達観し始めたか、ようやく肩の力が抜けてきました

わたし、実を言うと、外来診療に対して苦手意識があるんですよね


嫌いでやりたくない、というわけではなくて

ヘタクソで失敗ばっかり、というわけでもなくて(のはず)

なんというか、いつまでたってもぎこちなく、時間もかかり、異常に消耗してしまうのです。

専攻医たちには「もっと肩の力抜いて、リラックスしてやったほうがいいんだよー」なんて言っときながら、有言不実行。口ほどにもない。



まあ、原因を探せばいろいろあります。


自分の要因だけでもたくさんあるでしょう。

かなり限られた時間で次々診療を行うプレッシャー(自分は時間かけたいし、一つの診療終わったら気分転換挟んで次に持ち込みたくないし)

全部きっちり把握&管理したいけどそうもいかない(病棟で死にかかっている人と異なり、元気で今困ってないので医者の言うことをそうそう聞くわけでもない、生活習慣や内服アドヒアランスの影響も大きいので患者主体の部分が多い)

そもそも病棟診療が好きで、外来診療は後天的に少しずつ学んできたものという意識もある(卒後3年間くらいは外来はオマケ扱い、4年目に地方でてからいきなり毎日長時間外来になりその時の苦痛感が今でもありありと残っている)など。


患者要因もそれなりにはあるかな。

上述の通り「今差し迫って死にかけてない」人達なので、自由度が高い。それが面白みでもあるけど、きっちり死体自分にとっては苦痛感が半端ない。

お互い時間取って話したいし、症状が不安定だったり心理的に不安があるときにはマメに会いたいが、外来予約枠にも限界がありそうも行かない。

パート医や研修医・専攻医では相手ができないような、心理社会面含めた超複雑事例や、他の病院・科で対応できず流れ着いた困難事例などを惹きつける立場なので、必然的にとっても濃ゆい。など。


環境要因は結構あると思います。

特にうちの外来は(初めて赴任したときにびっくりしましたが)、声が筒抜けでプライバシーもクソもない、狭い診察室もある(寝かせて腹部診察したりエコーするのが大変だったり)、夏暑く冬寒いという物理的な要因が相当苦痛でした。

人的要因もあり、普通の病院外来とは比較にならないくらい患者数が多い(一般的な採算ラインの倍以上来ている)、パート医や週1の専門医もいて医者も多くて複雑(お医者さんは個性いっぱいですし)、そして看護師も裏に隠れてコソコソしてたり大声でやり取りしていたり、事務も親身な対応もなく笑顔もないとか。

まあいろいろあります(それなりに改善が進み、やや過去のことになりつつあるので、ここに書いてしまっても許してください。問題あれば削除します)



ちなみに、苦手意識の分析で自分・患者・環境の3要因に分けて分析するのは、「Trouble encounter」という概念のレクチャーで使われる図式からパクリました。

「Trouble patient(問題患者)」と呼ぶと(というレッテルを貼ると)、臨床が起きたときに全部患者のせいにしたくなるので、「困難に満ちた出会い(の場)」と言葉をかえてみるだけで「患者以外にもいろんな要因が関わって、この出会いを困難なものにしたのかもしれない」という気持ちが働き、少し冷静になって周囲を見渡せるようになる。というもので、けっこう気に入っています。

ので、今回も「外来そのものが嫌い」なんではなく(そもそも「外来」という人も物体もないですし)、いろいろ分析したら見えてくるかもねという発想からでした。




なんですが、今年くらいから、急にふっと楽になってきた気がするのです。

診療修了後の、性も根も尽き果て、あらゆるものにイライラし、この世界がもう終わればいいのにと思うほどの絶望感でいっぱいになる感じが薄れてきてるんですよね(というか、外来半日した程度でこんなになるなんて、今考えると異常ですね…)



振り返ってみると、最初にそういう感覚に気づいたのは、何名かの当院見学者がきて、「自分の外来を見学してくれた日」くらいからかもしれません。

「こんなクソ外来見せてもつらいかも・・・」みたいな微小妄想でいっぱいでしたが、診ている最中も関心深げにメモったり頷いたり途中で質問してくれたり、終わった後の医局での雑談でも興奮気味にいろいろ語ってくれたりして。

そういうふうに、外の人から客観的な視点でフィードバックをもらうことで、「意外と良かったのかな」と、自分に深く刻み込まれていたネガティブラベルが少し剥がれたのかもしれません



そういえば、昔は学生や初期研修医や後期研修医が外来見学に入ってくれていたけど、最近は自分の外来を見てもらえる機会が少ないんですよね

学生見学がきたら、昔は指導リソースがたりなくて他の人に任せられなかったので、自分が外来中は外来見学について貰って、その合間で指導していました。
でも、今では指導外来があるので、そこにはいって「研修医が外来診療を行い、指導医の指導・保護を受ける」様子をみて「ここでの研修は面白そうだなぁ」と感じてもらうようにしています。

初期研修医が来た時も、以前は月曜午前が外来でローテ初っ端に相手できなかったので、とりあえず1時間程度同席してもらって当院外来や患者層を掴んでもらうことでオリエンテーション代わりにして、午後からじっくり面談したり新患カンファしたりでした。
でも、今では医師体制がやや余裕出て月曜午前は管理単位(土日おきた様々なトラブル・相談の吸収、一週間病院全体がフルパワーで稼働するよう立ち上げのための諸課題処理と、学生・研修医受け入れ初日の対応など)を持つことができ、結果的に「必要に迫られて外来見に来てもらう」必要性がゼロになりました。

後期研修医も、以前は外来指導の仕組みが充実していなかったので、とりあえず体で覚えてもらって週1の振り返りで少しずつブラッシュアップするけど、それではわからない部分があればガンガン見学に来てもらっていました(当時は自分が外来のときに、後期研修医が自由に動ける単位のことも多かった)。
でも、今では外来に慣れてもらうための工夫(外来の種類わけ、マニュアルづくり、継続的な外来に上手く馴染むためのレクチャーなど)が少しずつ揃ってきたので、見に来てもらわなくても半分以上の人は「なんとなく出来る」まで持っていけるようになってしまいました。

そうか・・・、見てもらう機会が減って、主観的な自己評価しかなくなったせいで、余計に「苦手な外来がもっと苦手に感じるネガティブループ」を引き起こしていたのかもしれませんね。なるほど。。。



もう一つは、「病院家庭医による、複雑度の高い患者群を対象とした、継続的な外来診療の方法論」が確立してきて、シンプルに実施できるようになってきたのも大きいかもしれません。

これまでは、患者の抱える健康上の問題点や特性については「全部ひきだして、全部列挙」することや、「いちど視界に入った問題点は、エビデンスベースドに完璧な管理を目指す」ことを目標にやっていたので、そりゃもう大変でした。


エビデンスについては、最近になってMultimorbidityの診療のポイントについて、論文がでたり、有名な家庭医療指導医がFacebookやブログに記載するようになったりして来ました。

「ガイドライン通りにしない、足し算でなく引き算や一石二鳥、虚弱度や予後におうじてDe-intensificationがより予後もQOLもよい」みたいなことが勉強できる世の中になってきました。

でも、この辺の知見は、論文だと2015年くらいからようやく出始めたし、日本語に訳されたものなんて2016年とか2017年でようやく充実してきたところです。

2年ほど前に始めた「RSSで最新論文をよみまくる」という勉強スタイルと、ちょうど時代が合致して、タイムリーに一番欲しかった情報がガンガン入ってきて、「自分の中での世界観が、英語論文の勉強によってガラガラと変わっていく音が聞こえてきた」という感覚があります。


全部把握して扱いたい欲については、まあ自分の性格や学習スタイルがそうだという先天的に同しようもない部分も大きいですが、総合医を名乗ってしまったという後天的なレッテルも自分を縛っていたかと思います。

でも、多少手を抜くとすぐにひっくり返される(軽視していたプロブレムに足元を救われる)経験も少しずつ蓄積していくので、どんなにその日・その場が辛くても「手を抜いたらどんなしっぺ返しが来るかわかったもんじゃない」という恐怖感はなかなかに拭いきれず。

でも、そこについても、「型が身につくカルテの書き方」を書いたことをきっかけに、変わってきたように感じます。

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その後、色んな病院に呼んでいただいて講演し、その後の質疑応答で様々な診療上の悩みと、それを同カルテ上で扱うべきかの相談を受けて、視野が広がった気がします。

さらに、別の雑誌などで「電子カルテでの書き方」、「総合診療特有の書き方」の記事に発展し、徐々に概念が拡張されてきました。
http://blog.livedoor.jp/gp_ken-portfolio/archives/16716474.html

さらに今年は、大学医局に呼ばれて「大学病院や市中中小病院や診療所や往診専門家でも誰でもかける総合医っぽい書き方」というお題を頂いて考え直すきっかけをいただき、さらにその延長で内科学会誌(12月号に載る予定です)にも「一般内科医(総合医としてこだわっていない人含む)でも、Multiomorbidityな超高齢時代に立ち向かえる問題リスト」というお題を頂いて書き上げたのが大きな経験になった気がします。


普通の診療の流れや一般的なカルテ記載ルールを意識して、他の医者が代診しても負担があまり大きくないような方法を考え続けた結果、自分がみても辛くないカルテがようやくかけるようになってきて、予約外来で「数ヶ月前の自分の記録をよんで今回の診療を立ち上げる」ということがあまり辛くなくなってきた気がします。



さらに手法としては、小病院の研修の責任者として毎年多くの研修医・専攻医に関わってきたことでReflectionやSEAのスキルが高まり、それが患者診療にも応用されてきたことも大きいです。

また、学会教育講演でACCCCについて文献的に深く学び、それを専攻医レクチャーに反映させて喋るようになったのもこの2年くらいで、継続性や包括性などについての理解が深まり、実践にも反映されてきたのも大きいように感じます。

そして、最近各所で喋っていますが、「慢性臓器障害の視点で外来診療を整理すると、メリハリが付いて効率も上がる」というのも、この数年のひたすら繰り返す専攻医向けレクチャーでだいぶ腑に落ちてきて、実践に反映出来てきたのも大きいように思います。

あとは、初期研修医の外来指導で、患者満足度も診療内容もレベルが高いなと感じる時、大抵は知識の多寡やマネジメントの詳細さよりも(そこは指導医の自分が補っているということもありますが)、患者の「かきかえ(感情・期待・解釈・影響など)」をきちんと把握して対応できた場合、そういうのを自然と把握できる研修医の場合だなということも実感するようになりました。
知識としては知っており実践しているつもりだったナラティブベースドな診療が、人に教え、教わって実践し、成長して成果を出すさまを見せてもらうことでようやく体に染み込んできて血肉になってきた感じもあるように思います。


そんな感じで、知識としては「肩の力が抜けていても質の高い外来診療を実践するための理論的背景や技術的体系」を知ってはいたものの、それだけでは「第3者の目が入らず、フィードバックも得られない個室」で行われる外来ではなかなか身にならず、研修指導で「研修医という鏡を通して自分に反映させていく」行為で馴染んできたのかもしれません。



あとは環境面の変化もあります。

大きいのは、研修医・専攻医が増えたことで、病棟入院患者を直接担当する機会が激減し、そこに経営的課題も加わって外来診療単位を増やしたこともあって、「外来こそが、自分の臨床の主戦場になった」という変化は大きいです。

「病棟の合間」にやっていた仕事が「メイン」になったのは、心理的にたぶん大きいと思います。病院で働く総合医ならではの、刷り込み(外来は二の次感)があったのかもしれません。


そこに来て、家庭医療専門医の更新のときは、その資格の特性上「外来患者をテーマにポートフォリオを書く」という経験をしたことも大きかったように思います。

「自分がこの病院に来てからの5年間で、より自分の能力が反映され、達成感も大きかった外来事例」をひたすら探し、それを言語化し、文献で理論的裏付けもした行為も「外来は面白い、自分の専門性が発揮される」と再認識させるのには十分なきっかけでした。たぶん、今考えるとね。


また、当院に来て最初の4年くらいは、肩書なし~病棟医長という立ち位置だったので病棟第一でよかったですが、内科副課長→科長・副院長となると、立場・肩書的にも外来の環境改善にも主体的に関わる必要性が出てきました
この頃から、ようやく外来看護師やクラークの顔と名前を覚えようとしたり、出張のお土産も外来に買うことが増えてきました(出張が金曜にかぶることもふえ、外来医師体制に穴を開けて恐縮する頻度が増えたというのもありますが)。

さらに、昨年度からは外来医長も1人配置でき、たくさんたくさん助けてもらいながら様々な外来診療環境の課題(特にルール整備や、物品配置など)がだいぶ整理されてきたのも大きいきいです。

そこにきて、これまた経営的な課題からですが、外来の再編を行う必要性がでて、もう一度外来の地域における・病院内における立場や役割を意識しながら、医師や看護師や患者の導線を考え直して再設計した経過とその成果が(予算的にはツギハギで十分ではないものの)、以前に比べればかなり快適になった外来診療環境につながってきたと思います。
これはけっこうでかいですね。

やはりハード面は大事で、しかもそれが機能やビジョンと擦り合わされていることが重要だなと思いました。
まだまだ全然足りないとは思いますが、自分が来た頃は「臓器別内科の各医師が、それぞれ好き放題にルールを作り、ばらっばらな外来を、肝っ玉母さんみたいな外来師長がなんとか束ねていた」状態で、建物も継ぎ足し継ぎ足しでまあ大変で、途中で大したビジョンも議論もなく内装工事してみたら返って働きにくくなったりと、それはもう紆余曲折ありました。



まだ他にも要因がありそうですが、話が驚くほど拡散したので一旦まとめます。
もうちょいコンパクトに「ああ、外来たのしーなー」という記事を書くつもりだったんですけど。。。

まとめると、密室だった外来診療に第3者の目が入り、自分の中での断片化された知識が講演や執筆や教育を通して体系化され血肉となり、責任や立場とともに主体的に関わった環境改善も作用して、徐々に好循環に入っていったように思います。



おかげで、最近は患者を呼び入れる前のカルテ読み込みや気持ちの準備は少し楽になり(いまでも体調悪い時や、特別重たい患者さんのときは大変ですが)、

診療スピードも少しアップして

自分以外の要因で診療を乱されることも減り

その結果、かえって診療の質も高まったような手応えがあり(長年くすぶっていた患者が少し元気になったり、なかなか踏み込めなかった背景を掴んで関係性が一気によくなったり、その他もろもろと)、手応えらしきものを感じます。



昔は、当直明けだったり、休みが全然なくて「余計なことを気にする余力すら無い、疲労困憊状態」でしか実現できなかった「無理なく、気張らず、お互い幸せになれる診療」が、そうでないときでも再現できる率が高まった気がします。

ああ、嬉しい♪




今日はずいぶんとダラダラと語ってしまいました。

若手からすると、自分の外来はレベルが高いと思いこんでしまうかもしれませんが、そんなことはないんですよね。

日々精進、日々成長です。

(一応補足しておきますけど、成長最中でも一般的な外来診療よりはちゃんと診ているという自信はありますが、自分のめちゃくちゃ高く設定した理想に対してまだまだというニュアンスです。私の外来では、未熟で実験的な変な診療が繰り広げられているということではないので、誤解なきように・・・)



でわ!





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奈良県総合医講演「地域に根ざした病院で働く 総合診療医 の 深い専門性、充実したやりがい、10年かけて極める方法」

奈良県庁の総合医育成関係の部門から声をかけていただいて、総合診療の魅力をがっつりと学生・研修医に伝える系の講演をしてきました。

170922-奈良県総合医講演「地域に根ざした病院で働く 総合診療医 の 深い専門性、充実したやりがい、10年かけて極める方法」 by けんた on Scribd




以前当院に見学に来てくれた、当時後期研修中だった先生が「見学していて、総合診療ってこんなにおもしろいのか!と目から鱗が落ちたので、あの体験を奈良県の若手にもさせたい」というラブコールをくれて、「そいつは応えてやらねば!」ということで意気込んで準備しました。

気合い入りすぎて、70分の講演時間に200枚近いスライドになってツメツメですが、リアクション見ながら少し割愛したり、雰囲気見て多少押してもいいかと開き直ったりしながらなんとかやってきます。


わざわざ呼んでもらえるくらいなので、いま自分がやっている「病院家庭医」と名乗りながらやっている活動は相当珍しい・変わっているのだと思うし、でもそれでもはたから見ると面白いみたいだし、「そういうのを自分もやりたかったんすよー!」という人が思っていたよりも多くて、面白いもんだなぁと感じています。

病院総合医を目指して、このブログを開設してから8年くらいたちましたけど、どうやら自分が野望達成のために進んだあとにはしっかりと道ができているようです( ̄ー ̄)ニヤリ








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総合診療×リハビリ×緩和ケア×精神医療の統合的フレームワーク

先日、毎月やっている家庭医療学習会で、精神面・理解力などに違和感を感じる患者の捉え方と対応方法についてのレクチャーをやりました。



※総合診療の初学者向けに、話を極端に単純にして説明しています。家庭医療の大家や、精神医学・リハビリ医学の専門家からみたら「おいおい、何を適当なこといってやがんだ」とお怒りになられる方もいるかと思いますが、初学者向けに意図的に単純化して説明していますので笑って流してあげて下さい(そんな大家はこのブログを読まないとおもいますけども)


家庭医療学習会は、当院にローテ中の内科or総合診療後期研修医向けのアドバンストな内容のもので、毎月第一火曜の18時から1時間程度やっています。

うちは半年から1年で後期研修医が入れ替わるので、最初の頃は医学的な問題の処理の仕方や、日常的に接する複雑さの分類と扱い方、そして超Commonな慢性臓器障害などのレクチャーをして、日々の当たり前の臨床を深くかつ簡潔に捉える方法論を教えています。

そして、中盤からは、プライマリ・ケアや家庭医療の特徴を理解してもらうために、ACCCC/Aの要素のうち、特に他科ではイメージしにくいCoordinationやContinuityの話をそれぞれ1回ずつつかってじっくり伝え「なんでこんな仕事を医者がやるんだろう?」という非医学的だけど、どう考えても患者のケアで重要なアレやこれやを腑に落としてもらいます。
これは、実体験を幾つか経験してから出ないと腑に落ちないので、ローテ前半ではやっても無駄なんですよね。


そして最後の方で必ずやるのが、この「精神面・理解力などに違和感を感じる患者」の話です。

単純に精神疾患に当てはめることができず、だからといってTrouble patientというレッテルを張って遠ざけるのは主治医力がついてきた時期では気持ち的に難しく、でも周囲が付き合い方を変えたり支援を入れたりするのは高齢認知症以外では経験値が少なく患者自身も受け入れなくて・・・という、にっちもさっちもいかない難事例の対応方法について、全体像や理解の仕方を伝えて「あ、そういうことなんだ。簡単」と思ってもらうためのレクチャーです。

これは、そういう事例を専攻医全員が経験してないとダメだし、経験したてで専攻医自身の心理面が不安定な時期だとできないので、「一定経験し、時間が経って自分なりに心の整理ができ、でもまだスッキリはしておらず、でもあるていど力がついたので同様の経験が今もリアルタイムに振り続けている状態」で初めて入るレクチャーなので半年の最後に持ってきています。




流れとしては、以下のような感じにして、普段やっている総合診療の経験や知識から、徐々に話を広げて地続きな実感の伴う世界の延長に見えるようにしています。



1.内科診断学や、エビデンスに基づく標準治療ではうまくいかない事例がたくさんいるよね!

「うんうん」



2.家庭医療学のBPS model(生物心理社会モデル)について、理論的な話やテキストでの勉強はあんまりさせてないけど、1みたいな事例では、患者の心理面や周囲の人や環境にまで視野を広げて、他職種で全体をカバーしないと良くならないのは経験したよね

「うんうん、そうなんだよなー」

そして、それは特殊な複雑事例にかぎらず、どんな事例でも基本であり、ここをサボるとうまくいかない事例ばっかりだよね

「そうなんすよー。最近それがわかってきました」

で、経験してそういうのが体で体感できてから、BPSモデルというフレームを与えられるとなんかスッと腑に落ちるんだよね

「あー、そうかもしれません」



3.で、このBPSモデルを拡張させると、特定の問題がこじれて扱いにくくなった「超困難事例」でも、ふだんの延長で問題点の全体像を捉え、問題のバランスが分かり、優先順位をつけて「とりあえず簡単で害の少ない対応方法」が見えるんですよね。

「え、そーなんですか?」

そういう拡張方法、知ってますか?

「・・・・・・・しらないです」

そうだよね( ̄ー ̄)ニヤリ



4.まず、一番馴染みがある(当院で初期研修した人の場合)フレームは「臨床倫理四分割法」だね。

n3059_16

「モヤモヤよさらば! 臨床倫理4分割カンファレンス」
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03059_02

あれは、Bio→M:医学的適応、Psycho→P:患者の意向、Social→C:周囲の状況はBPSモデルとおんなじで、あれに、QOL、つまり患者の生活や人生の充実度や辛さなどを加えたもの、つまりBPSの拡張とも捉えられるんだよね。

生活が上手く行かなかったり、病気の治療は終わったのに(もしくは病気は治らず固定したんだけど)それにとらわれて新しい人生が踏み出せずうまくいかない事例とか、ゴールが見えずに医療者がモヤッとしてるときに力を合わせて問題の全体像と個々の重み付けや関連性を共有することでチームが同じ方向を向いて前にすすめるツールですよね。

「あ、それはわかります。たしかにQOL追加しただけだ」



5.あと、似た感じですけど、患者さんの実存的苦痛(S:スピリチュアルとか、人生の意義とか、生きがいとか)をBPSに加えたものに、SPSSモデルというのがあります。

あ
https://www.researchgate.net/figure/7734220_fig1_Figure-1-An-integrated-systems-based-model-of-medical-care-The-patient-with-his

これも、身体:Somato、心理:Psychological、社会:Social、そして実存:Semioticの4つのバランスを見て、そのバランスを取ることを他職種で頑張ろうぜというモデルなので、BPSの拡張とも、四分割の変形ともとれます。

生きがいとか今後の人生とかを考えていくような、終末期ケア・緩和ケアの場面や、これまでの生活に戻れなくなったStrokeなどの後のリハビリや、臓器障害が進んで仕事をやめざるを得ないレベルになり身体障害を撮った人のケアなどでとっても有用ですね。

「SPSSはよくわかんないけど、たしかにBPSや四分割の延長ぽいですね」



6.じゃあ次。生活する能力が落ちていて、自立した生活が出来ず、訪問サービス導入とか退院調整の対象となる人を相手にするときの、BPSと類似したフレームは知ってますか?

「生活・・・? 障害・・・?」

わからんかー。身体障害とかを分類する、ICDから派生した古い分類といえば?

「あー、えと、あれです。ICなんとか」


そう、ICIDHです。
251002g01-2

それは、障害を3つの階層に分けて、それぞれにアプローチしようぜって言う感じで、どっちかというと総合診療のBPSよりは、内科のBio-medicalモデルという感じ。悪い原因を見つけて、取っ払ったらみんなハッピーという感じです。そうはいかないっすよね、なかなか。

「たしかに」

それを拡張して、もっと全体像見ようぜ! できればいいところも見ようぜ! 各要因の間の相互作用もみながら、一番介入効果の大きいレバレッジポイント探そうぜ的に発展したのは?

「あい・・・、ICFだ」

正解!
251002g02-2
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n251/n251_01-01.html

これは、健康状態のところに病名とかはいってBioな感じで、個人因子がその人の個性や考え方なども含めるのでPsychoで、環境因子はもろにSocial。

で、他では扱っていない機能・構造と活動と参加が、「BPSに加えて、このモデルで特化して細分化して深めた部分」です。

何かが出来なかったり悪くなったせいで望むような人生が歩めなくなったときに、心身機能などに分解して把握することで、介入するポイントが分析されたり、単なる筋トレでなく楽しく山に登って写真取る(参加)のためにどんな機能が必要か逆算するとショートカットが見つかったりするという経験はしてますね。

「たしかに!」

で、リハビリの話で出てきたフレームですが、最終的には「参加」なので、けっきょくQOLとか生活とか人生が目指すべき大目標で、その下位分類の視点・切り口がちょい違うだけなんだよね。

だから、リハビリの指導医・専門医と喋っていると「こいつ、総合医か?」と錯覚するくらい話があうのは、土台となる問題の捉え方が一緒だからなんだよね。内科疾患が重たいとか、他の要素も絡むなら自分たちが前に出るし、心身機能とか活動のところがよりネックになっているならリハ医に積極的な参加を依頼するとよいんですよ。



7.したら、ようやく今日の本題だけども、精神面や理解力がちょっと違和感があって、内科の診断と治療でうまくいかないときの、BPSを拡張した感じのフレームはなんか知ってる?

ICDをリハっぽくしたら、BPSニュアンスが加わってICFになったしょ?

ICDを精神科っぽくしたら、ICDと並ぶ精神科病名リストといったら・・・?

「あ! DMS・・・じゃなくて、あれの5です」

おしい!

DSMの、個人的にはⅣが、総合医の既存のフレームと相性がよいと思います。

四分割法やSPSSの4つとか、ICFの6つとかみたいに、DSMも幾つかに分けるんだけど知ってますか?

「3つ?」少ないわ。 「4つ?」おしい。 


というわけで、「5軸診断」です。

「あ~・・・、知らないかも。卒試ででたかなぁ」


5軸、正確には多軸診断システムはこんな軸です。

第Ⅰ軸……精神疾患 
第Ⅱ軸……精神遅滞(知的障害)とパーソナリティ障害(⼈格障害) 
第Ⅲ軸……⾝体疾患 
第Ⅳ軸……環境的問題(⼼理社会的問題) 
第Ⅴ軸……機能の全体的な適応評価

Bioは第Ⅲ軸、PsychoはⅠとⅡ軸、SocialはⅣ軸、QOLとか実存とか生活機能とかはⅤ軸ですね。はい、一緒。


で、リハでは心身機能・構造と活動と参加に特化して深めてましたけど、DSMはPsychoがなんか2つに別れています。


正直Ⅰ軸は、割と楽勝です。

診断基準がICD・DSMで示されていて素人でも「それっぽいかな」と思うし、学生・初期研修の精神科ローテでは典型例を経験し、テストでも勉強するし、エビデンスの示された薬物療法があるし、いざとなれば精神科医に紹介すれば断られることもないですね。

初期研修医なら、4SADsにある、特に4Dを押さえておけばとりあえず生きていけますね、認知症・うつ病・せん妄・統合失調症です。

もう少し広く捉えるなら、4SADsを丸暗記するのでなく(どうせ忘れて、現場で使い物にならんので)、古典的な精神疾患の分類である心因・内因・器質因でわけた、このグラデーション的なラダー的な図を頭に入れると良いです。
無題
自分が学生時代に偶然であった「精神医学ハンドブック」に乗っていた衝撃の表で、外的な要因に心が反応したのか、そういう要因がなく了解不能な経過ででた気分か知覚の歪みか、脳の病気で急な意識変動か慢性の知的レベル低下かで分けて行く感じで、病歴聴取などで比較的分類しやすく、隣の症状も出うるという幅のある理解をすると非典型例でも「自分で理解できそうな範囲」に落とし込みやすくなります





あとね、心因のところの人達は、本人の現状と周囲とのギャップからでた不和が、どんな方向に表現されているかを冷静に観察できると落ち着いて対応できるのよね。
20130730222856848

もなかのさいちゅう http://m03a076d.blog.fc2.com/blog-entry-1648.html

これでみると、心因でこじれた人が、身体化して「この症状を良くしてくれ、あの薬くれ!」となっているときに「どの薬を出せば正解ですか?」という質問がややずれているのがなんとなくわかりますよね。
対症療法薬は、焼け石に水をかけて少し冷ましながら、そもそも石が焼けた原因になっている「石がかまどのなかに入れっぱなしの状態から取り出す」ための時間を稼いでいるようなモノなので、薬の副作用が少なく、依存性が少なく、患者の世界観で納得できる説明とともに処方されていればなんでもよく、その点で漢方薬は割と使いやすいんですよね。

そして、表面的な病状に対して、背景の生い立ちや立場や心理的状況や周囲の人達やなんやらという背景を観察して、「じゃあ、○○サービスを入れよう」とか「少し気持ちが軽くなるように、最適な治療ではなく、第二選択治療を患者の世界観に沿った説明で処方しよう」とかやるのは、ふだん日常的にやっていることなので、意識すれば「あ、ギャップからストレスでてるので、本人の成長か、周囲との適合のどっちから攻めるほうがこの事例では楽かな。その時間稼ぎのために必要最低限の検査を出し、有害性の低い対症療法でまずは対応しよう」でよくない?

→以後、しばらくこの表の使い方というか理解の仕方について、実際の経験や専攻医の質問に応じて深めて楽しむ時間が続く。



で本題にもどりますけど、我々が困る問題、そして日常的に頻繁に遭遇する問題、そして精神科医に丸投げもできず「総合医こそが自力でちゃんと分析し対応できるべき」な真の問題はⅡ軸なんです。

知的障害と人格障害とありますけど、自分は知的障害(MR)と発達障害、そして人格障害あたりを入れています。


遺伝的要因や周産期の脳の障害ででる、脳機能の四すくみは知的障害、脳性麻痺、てんかん、そして発達障害で、オーバーラップもしやすかったりするので1個みたら他も探すのも大事です。
でも、これらは「小児科の病気」って思ってるでしょ。確かに知的障害や脳性麻痺や(小児の)てんかんは、たいてい小児期に診断されていて、そのままおとなになっても小児科にかかっていたり、内科では「既往歴」にかかれているので困らない感じですね。

でも、「他があんまりなくて、発達障害だけの人」って、寿命は短くないことが普通なので、内科に普通にたくさんいるはずだよね。

「あ! そうですね」

一般的な頻度は(みんなでその場で調べると)ADHDで3%、ASDで1%、LDで7%とかと言われていて、細かい数字はどうでもいいけど超Common diseaseで、うつ病よりもしょっちゅう視界に入っているはずです。
でも、それなりに社会に適応すると目立たないし、適応できないと「変な人」扱いで救急や病棟から追い出しちゃうので、単に「いるけど、視界にいれてない」だけなんですよね。

そして、結構偏った能力をもっている(劣っているという意味でなく、特定のことについてはむしろ得意だったりする)ので、特定の地域やコミュニティーに集積しやすくて、特徴的なのは医学部にけっこういますよね、こういう人達。学年に数人いなかった?
「あ、顔と名前が何人か思い浮かぶ・・・。ていうか、自分もそうかも・・・」

で、この人達は「偏った特性がある」けど、全般的に能力が低いわけではないので、その特性に合わせた生活指導や薬物療法設計をすればむしろ「優秀な糖尿病患者」に化けたりするんですけど、それって内科では習わないんだよね。

こんど、自分の予約外来や、過去に入院で受け持った患者眺めて、当てはめてみて、納得行くケースがどれくらいいるか見てみましょう。
あくまで、「レッテルを貼って患者を蔑むことで自分が楽になるツール」ではなく、「患者の少し理解しがたい言動を共感して理解することで、より良いケアを行って患者のQOLを高める一つの視点」として使いこなすとよろしいかと。


人格障害は何個あるでしょうか? 10個越えると覚えられないので、さっきのハンドブックの目次をみると3つの群にまとめられてますね

1群は統合失調のあるていど落ち着いた時期っぽい人達。

2群は神経症ぽい不安や抑うつや脅迫的な傾向があるけど障害までは行かず、でも偏ってるなぁ、そこまで心配線でもという人達。

3群が、有名な境界性人格障害とか非社会性とか演技性とかの「厄介だわ、この人達。はい出禁ね、もしくは誓約書」というイメージの人達です。

(別の分類ではA群・B群・C群というのもあるけど、順番が違うだけで中身は似た感じ→ https://www.igaku-shoin.co.jp/misc/medicina/mental4408/ )

どの人達も病気とはいえず、何かが足りないとも言えず、言動のパターンが偏っているだけで、偏り具合にはグラデーションがあって、極端だと社会との折り合いがつきにくくて、医療現場含め色んな場面で本人も周りも困っちゃうことが多いですね。

なので、3群の超端っこの人のイメージしかないと「ああ、あれはダメです。関係持ちません。全部コードホワイト」で終わっちゃうけど、もう少し真ん中編のグレーゾーンはうまく対応してその人の偏りにこちらが合わせたり周りを合わせる支援をして生き辛さを和らげられるといいし、総合診療専門医の最後の砦的立場の自分の場合は超極端の人でも安定して対応して打率8割でなんとか出来るところを目指していたりします。

「ほぇ~。そうですか~。じゃあ、今日のあの人は・・・。先月のあの人は・・・」と具体的な事例を出しながらここまで出したフレームを縦横無尽に試験適応しながら考えが深まっていきました。



8.で、いろいろやってきましたけど、こんな感じで患者の全体像を、患者の内臓だけでなく周囲まで視野に入れて捉えつつ、患者の人生や生き辛さや生活何かを支援する専門家は、みんな根底は同じフレーム使っているんですよね。

好みで1個を極めてもいいし、せっかく総合医なので全部知っておいて状況に応じて使い分けるとかっこいいと思います(実際、そのほうが対応できる範囲の桁が上がって、最強に一歩近づけます)


「なんか、そういうのが本にまとまってるのないんですか?」

ないですよ。

自分が総合診療やって10年目くらいでようやく片鱗が見えて、去年ようやく1時間でまとまって説明できるレベルまでつなげて話できるようになったばっかり何だから。


「あれ、でも何かで見た気がしますよ」

そう、それはあの、「総合診療流の患者中心のリハビリテーション」の総論です。




あれの「第1章 総合診療 × リハビリテーション」に自分が書いた「総合診療とリハの共通点・親和性」に載せた表がそれです。

無題11

羊土社のページで見本ページも見れます。
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758123204/


ここまでの半年間の経験があり、今日のレクチャーを聞いて、事例に基づいたディスカッションも聞き終えた状態でこの表をみると「あ、分かった!そういうことか!!」と初めて思えるでしょ。

本だけでは総合診療は学べないってことですよ。


逆に言えば、ちゃんと計算された現場で半年間きちんと学び、振り返りを指導医としながら、適宜レクチャーで「知識ではなく考え方」を教わると、こんな短期間でこの領域まで来れるんすよね。

自分が12年でようやくまとめた世界観に、大変だったとは言えたった半年で到達できたんならいいんじゃない?


総合も、精神も、リハも、全体像や複雑性を扱う領域は、予習やお勉強だけでは習得が難しく、経験しながら振り返り学ぶという成人学習スタイルがもっとも良いんですよね。

だから、最初にレクチャーせず、半年ローテの人の最後の最後出やりました。

「たしかに、4月にこの話きいても、ほー、へーで終わってました」


まあ、これを全部使いこなして、どんな困難事例(全病院で出禁になり、全科で対応不能と言われ、総合の専攻医でもスタッフでも対応できないレベル)でも、「はいはい、じゃあ私が対応しときますね」といって、実際高い確率で対応できるというのは、君らはまだ出来なくていいから、意気込みすぎなくていいですよ。

外科でいえば、ヘルニアとアッペの手術を覚えて、これから胃癌切除術の執刀を始めるかどうかという人が、いきなり「よし、手術所読み終わったから、あしたPDするわ!」ていったらみんな全力で止めるし、そもそもそんな発想する若手はやばいていうのはわかるでしょ。
今日来てた人はPDレベルだし、今の自分は、外科でPDを自由自在にこなすあの先生レベルと思えば、「今できないから凹む」のはお門違いってわかるよね。

「あー、スゲー納得しました。このレベルはPDなんすね」

そう。でも基本的なフレームで考え方や捉え方を学んだので、少なくとも学生や初期研修医が見学にはいって術野みてわかるレベルよりは高くて、胃癌切除術の前立ちしてカンペキに先読みしながら戦えるレベルにはなったってくらいだから自身持っていいし、明日からの臨床を楽しみにしていいと思います。



一同「おー」



という感じでした。


文字だけでは伝わってない感でいっぱいですが、ワークショップとか企画しても「うちの病院で濃厚な研修をして、日々の振り返りで触りだけしっていて、いろいろと切実な疑問ではちきれんばかり」の人でないと120%は満喫できないネタなのでこれでいいのです。

書籍化は狙わず、総合医向けの超マニアック学習会とかで、ちょいちょい披露しようかなとは思っています。




以上、「病院からの地域健康増進・SDH」や「慢性臓器障害やサバイバーケア」、「四次医療」と並ぶ、持ちネタでした。






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法人間での「地域連携」を考えるシンポジウムを開催しました。地域とは?連携とは?を考え、関わる個々人の顔や考えが見えてくる良い会でした

2週間ほど前に、医療機関からなる勤医協グループから当院(主に地域連携室メンバー)と、介護系組織(訪問看護やヘルパーやケアマネや施設管理者や病院食のセンターなどの集合体)からなる勤医協在宅グループで集まって、合同での「地域連携シンポジウム」を開催しました

北海道勤医協 http://kin-ikyo.jp/

勤医協在宅 http://www.sapporo-zaitaku.jp/



タイムテーブルはこんな感じでした
===============
18:00~ 開会の挨拶 

18:10~ 自分の講演
 「病院家庭医が考える地域連携とは」
 

19:10~ シンポジウム:テーマ「地域医療を支える医療福祉連携に必要な事とは何か」
シンポジスト① 看護小規模多機能 責任者
シンポジスト② 特養 責任者
シンポジスト③ 地域住民 代表者
シンポジスト④ 当院地域連携室 師長
シンポジスト⑤ 当院 外来医長・各部門連携担当

20:10~ まとめの言葉
20:20  終了
===============




他の方々は、口頭での報告だったり、具体的な事例に基づいた報告が多いので公開はしにくいので、自分の資料の一部を載せておきます。

170825-勤医協在宅と札病合同学習会_地域ケアシンポ.pdf by けんた on Scribd




自分の話は、以下のような流れにしました。

1.家庭医についての紹介
遅刻してきた人がいても本題のところを聞けるようにという前座的なところと、連携する前にうちの病院にいる家庭医という人達は何を目指しているのかを知ってもらうために長めに。
地域連携をおまけやボランティアや経営的圧力でやっているのではなく、本業でやりたいと思っているが、なかなか病院からでられないので協力していきたいというメッセージを根底に

2.白石区の地域分析結果
地域連携の「地域」って何なのかと、対象地域の特性を個人的に分析した結果を伝え「この地域で何をしたらいいのか」を考える材料を提供。
どうしても介護集団だと高齢者や障害者にしか目が向きにくくなるが、そこに至るまでの「まだギリギリ大丈夫」な人や、そこに行きそうな若い世代など「上流」にも目が向き視野が広がることを念頭に。

3.専門職連携の様々な形態と理想
いろいろな専門用語や分類を敢えて羅列して、「今後どのように誰と連携していけばいいのか」を考える際のフレームを提供。
自分たちは今どのへんにいて、次はどこを目指し、将来的にはどうなりたいかと未来志向になるように意識

4.最後に問題意識の提示
ハードルをあげるというよりは、今回の1時間もの話を要約しつつ、このあとのシンポジウムにすんなり入り込めるような繋ぎとして



シンポジウム部分も、けっこう盛り上がりました。
当院からの難易度の高い事例の退院を受けてくれた、看護小規模多機能施設の責任者から、エクセレントな連携事例の紹介とその裏側の努力の提示

住民代表(友の会の方)から、自分の親が勤医協グループにお世話になってきた患者家族側視点で、感謝や願いをとても心に響く言葉で

当院連携室師長から、今の連携室の機能や事情と思い入れのある事例を提示し、制度面や経営面からの限界や制限と、それを踏まえてでもやりたいイメージの提示

当院の中堅家庭医から、各部門を繋ぐ仕事をしてきていてわかってきた・できてきた現状提示と、それを医療・介護で上手くやるイメージの提示

という感じで、10分位ずつでしていただきました。


人選に尽力していただいた在宅法人側のイベント責任者と、呼ばれてきたシンポジスト個々人の全てがそれぞれに持ち味を最大限はっきしており、聞いている自分も引き込まれ、様々なことを考え、多くの気づきや発想がでたとても刺激的で学びのある会になりました。


最後に意見交換して、今後の連携強化に向けての空気・流れを少し強化して終わりました。

具体的な成果としては、在宅側で作っていた連携チームにうちの医師も入れてもらうことになったのは大きなことでした。
病院側の組織に介護側が入ってもらうのは、医療→介護の一方通行な権力勾配が強くなりそうでいやだったので、「相手フィールドにすでにあるものの末席に、こちらがお邪魔させてもらう、入れていただく」形はとても良かったです(そういうチームがあったことを初めて知ることができたのも、入りたいなーと自分や医長が思っていたら声をかけてもらえたこともどちらも嬉しかったです)

また、半年後に再度同じメンバーであつまって、今回学んだことや気づきを元に実践した事例を持ち寄っての振り返りをするぞというイベント告知と、それに向けて意識的に事例経験を積んで行こうねという宿題提示も出来ました。



当院のように、高度専門医療や重症診療、救急医療を十分にはできない「地域密着型中小病院」が、地域にどう向き合ってきたのか、そして今後どうなりたいのかを、一方通行や独りよがりでなく、ともに考えるきっかけとなるような会に出来てよかったなと思います。


合わせて、地域や住民とのインターフェースとなる、当院内部の各部門の機能改革なども少しずつですが目が出つつあるとは思うので、「外との連携」ばっかりで外面だけよいハイテンションな人で終わらず、「内部の充実」もきちんとバランスを取り、この大変な地域での地域医療を少しでも良いものにしていければと思います。

その辺については、今週後半に一つ目のおおきなヤマが、また再来週にはもう一つのでっかいヤマがあり、また並行して飛んで火に入る夏の虫というか鴨がネギ背負ってきた感じの外部からの別視点の連携の提案もあり、これからまた盛り上がっていきそうです。


盛り上がりに自分がついていけるように自分自身の体調管理・ワークライフバランスと、特定の部門や人に負担がかかりすぎないような人材確保。育成などのマネジメントとをよりいっそうしっかりやっていかねばですね。






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普段どおりでないことがたくさんあり、とても充実した一日でした。いろんなことをちょっとずつやるのが楽しいみたいです

今日はいろいろと「普段通りではない」ことがたくさんあって、とても楽しく過ごせました。


普段通りではない理由は、単にお盆で医師の休みが多いため自分が穴埋めに入ったというものですけど、午前は「普段でていない曜日・時間帯の外来」の代診、午後は「今年度しばらくやっていなかった訪問診療」への復帰2回目でした。



外来は、予約無しで来られる臨時受診や慢性疾患定期処方の方の診察を担当する「一般外来」というものでした。

お盆休みの影響で患者の受診数も多くはなかったんですが、予約外来のおなじみの人達とはまた違う出会いや驚きがたくさんありました。

様々な理由で自分の予約外来から外れたり、急性疾患の治療で他院に行ってからしばらくそちらの外来に通っていて久しぶりに戻ってきたタイミングで久しぶりにお会いして、再開を懐かしみつつずいぶん乱れてしまった慢性疾患含めた包括的管理を軌道にもどしたり…

割とヘビーな疾患があったけど、適切に治療につながっていない諸々の背景があった人との初めての診療で、カルテの行間から読み取り、簡潔な問いかけで背景を引き出すことができ、10年以上に渡るわだかまりを上手くほぐしながら標準的な診療にもどしていったり

普段MultimorbidityやComplex~Chaoticな複雑度の事例ばかり診ているとなかなか味わえない、何の変哲もない若年女性の鉄欠乏性貧血や、何の併存症も心理社会的困難もない高血圧症のみの方とかの診療で、単一病名に対する一般的な薬物療法に加えて生活習慣の相談や動機づけ、その他の生活全般や健康上の相談を通しての予防医療の提供などができて、家庭医療の外来ぽいなぁと楽しめたりでよかったです。



訪問診療は、今年度から体制を調整して小児科外来にでて楽しんでいたんですが、諸事情によって小児科外来をやめて、今月から訪問診療に出るようになっていました。

諸事情というのは、法人内の他の医療機関の医師体制不足に対してヘルプを出した穴埋めを誰かがしなきゃならないとか、経営的な課題を考えると私個人の研修の充実度よりは診療報酬上伸びしろがまだある訪問診療をたくさん診たほうが良いと非情な経営判断を下して自分で受け止めるという切ない経過があったり、ほかにもいろいろなものがあったりでした。

マネジャー&プレイヤー兼ねてると、こういう時つらいですね


昨年度はいろいろあって管理患者数も減っていたんですが、今年度は一気に回復させようということで新規訪問診療受け入れ基準や多職種導入時検討カンファなどの仕組みを導入し、順調に増えていたところでした。

しかし受け入れ基準を緩めたことでかなりの困難事例の新規がたて続いたこともあり、それを自分が吸収して他の若手の在宅診療に負担が出ないようにという感じでやっております。

悪性腫瘍進行期の方の在宅診療新規導入や2回目で、病棟診療内容やそこでの医師患者関係や面談内容などの文脈を読んで、上手く引き取りながら「在宅だからね・・・」というワケワカラン理由でケアの質が下がらないように色んな手を打ってみたり
(外来でいままで主治医していた患者や、病棟入院時に副主治医・指導医として診ていた患者だったりするので、この辺の「セッティング移行にともなうケアの分断を防ぐような、シームレスな診療」の演出は得意とするところです)

介護介入拒否で夫婦共に様々な課題を抱え、経済的にも家屋環境的にもこの夏場は大変そうな家にいって、じっと座っているだけでも汗だくになる環境のなかで頑張って情報収集して流れに乗せつつ、戻ってきてからあらゆる情報を集めて整理して次回につなげたり

認知症メインで他の医師がずっと診ていた人を、夏休み体制のため代診で自分がみて、リハ認定医視点を活かして運動器系のケアや、今の運動器機能を考慮した環境設定の助言をしてバランス取ってみたり

心理社会面が激烈複雑だけど本人は飄々としている某疾患を抱えた人のところにいき、事実と異なる証言(家のゴミ箱の様子や訪問看護師・ケアマネ情報との突き合わせから)をどのように受け止め返していけば、患者のナラティブの否定にならず医師患者関係を深めていけるかと、かといって甘やかしすぎて依存や病態コントロール悪化に行かないところはどの変化をリアルタイムにモニタリング&熟考しながら、本人や同居家族や処置中だった訪看や同行している当院看護師が三者三様に喋るのを同時処理しつつ程々にまとめつつ、移動中の車の中で世の中の無情や疾患の不条理さについてかたりつつ当院の課題を深めてみたりとか

まあ色々あってとても充実しました。



その他にも、夕方からいろいろありました。

月に一回のベッドコントロールセンターの定例会議がまず最初。
この1ヶ月の病床運用について経営・管理視点での振り返りをして、3ヶ月前と比べるとクリアできた課題が幾つかあって確実に前進できたことを表や図から読み取ったり、困難だけど数が絞られ対応策も明確になってきた残りの課題の対策を考えたり、それだけだと現場が大変なので負担軽減策や満足度・やりがいが高まる提案をしてみたりも楽しかったです。


また、月一定例のEBM学習会もその後やりました。
今年度バージョンの「事前にしらべず、当日専攻医がもってきたリアルな現場の疑問を、その場でPECOにして、調べるべき情報源やエビデンスレベルを設定して、10分以内に調べて比較検討しながら現場への落とし込み方をディスカッションして、明日から参加者全員のプラクティスが変わる」というのを2例やりました。

「O-SAS患者に減量させるかC-PAPせるかで心血管予後が変わるかどうか」について調べてリスクや年齢別にどうすべきかが具体化されたり、
「認知症進行期患者で、QOLを無視してでも一日でも長生きさせたいので胃瘻を作りたいという家族に対して、どういった文献的根拠を元に医学面の説明をするのが現代の日本医療では正解か」という深い話題に対してエビデンスの限界やわかっていることを明確にしつつエキスパートオピニオンも交えて説明の仕方を深めたり出来たのも面白かったです。


あとは、他院との連携について非常に難しい案件が発生して、その臨時対応もしたりしてました。
そのイベントの矢面に若きホープの医長が当たってしまったので、自分が回収して対応すれば早いといえば早いんですけど、それだと医長としての成長にもならないし、この案件が発生しうちに繋がった流れにもいまいちそぐわないので少し遠回りして…

医長の心理面ブリーフィングと、トラブルが起きた全体的な背景や相手側背景について分析し共有したり、自分含め責任者クラスで臨時で問題認識や対応策を討論したり、その上で科長と医長と院長の具体的な行動プランを設定して今後に向けてなんとか前に進める方向にまとめてみたりしました。
だいぶ、ManagementとEducationの両立とか相乗効果のイメージが持てるようになってきた気がします。


さらに、旭川医大の看護学生の卒業研究で、うちの職員を対象に質的研究をしたいという申し出があり、その初回打ち合わせもその後しました。

以前自分が地域分析ネタを発表したときに、その抄録を見て関心を持っていただいた教授&院生と面談をして出来たつながりがきっかけです。
そして、今年の地方会でまたそのネタの発展版を発表した時にその看護学生たちが聞いてくれていて、また以前お話していたうちの職員の不思議な能力を質的研究で解析したら面白いねという雑談が看護研究の題材としてきちんとした研究計画書の形になって戻ってきて、なんだか感慨深い感じでした。

事前に倫理委員会で(自分が委員長なので)倫理的に受け入れ可能な研究か検討し、看護師対象の研究になりそうなので師長室にも打診して、今日は大学の教授・学生とうちの総看護師長・副総看護師長の面通しということで来ていただいて間を取り持つ予定でしたが、上記のトラブル対応がちょうど重なってしまったのでホント最初のあいさつだけ顔出して他にいき、顔合わせの最後の10分位だけ戻って少しお話してみたいな感じになりました。
結果的には上手く盛り上がったようで、このまま研究が動きそうなので、自分の理想とする「とても面白く興味深い現場ではたらく現場医療者がネタを発掘し提示し、それを解析し論文にまとめる能力のある大学・研究機関の人が嗅ぎつけてきて一緒に研究し、こちらはデータ提示、あちらは解析というかたちで強みを活かし、無理なく持続可能なスタイルで大学では出せないおもしろ現場ネタを量産し続けるシステムづくりに貢献する」がまた一歩前進した気がします。

また、顔合わせの場で短時間ですがお話ができて、また別のネタもでてきそうな予感があり、とても刺激的でした。


更にその後に、自分がオリジナルネタとしてずっと温めてきている(そしてそろそろ書籍化しなきゃと思いつつ時間がとれていない)、臨床現場で熱心に臨床に取り組み続ける若手~ベテランの総合医・一般医への受けもよい「慢性臓器障害」を軸にしてMultimorbidity時代の急性期病棟管理についての原稿を、うちの専攻医と合同で書いていて(自分は執筆指導と言うかたちで相談に乗る程度で、実際に調べて書いて行く作業は専攻医が頑張ってくれています)、その打ち合わせを最後にしました。

イメージや方向性のところは相談しながら(やや自分が誘導し過ぎの感もあって反省ですが)、専攻医の臨床経験や完成や調べてきた論文や雑誌記事などの情報をまとめ直し、俯瞰し、整理し、一本の線で繋ぐ作業をしばらく繰り返したところ、自分でも当初は想像できなかったような「類書で診たことがない、全く新しい、でも地に足がついて研修医でもやってみようと思える有用な提案」をする原稿にまとまりそうな手応えがでてきました。


やっぱり、自分の場合は1人だけで深く深く潜るよりも、誰かの相談にのったり協力する形の方がいいものが作れるような気がしています。

単独だとどうしても手を抜いてしまうんでしょうね(時間がないから、疲れたからとかの理由で)。




明日も初期研修新コース立ち上げの山場の会議のために久しぶりに本院に乗り込んだり、専攻医の研究の相談にのるためメンタリングの時間を設定したりと盛りだくさんなので、興奮冷めやらずまだまだ仕事出来てしまいそうですが大事を取ってそろそろ帰宅し早く寝ようと思います。

でわ!



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産業医講習は、病院で働く家庭医にとって必修だとおもいます

うちの医長が、産業医大での一週間缶詰方式での産業医講習を受講しています。

お願いしてFacebook上で参加報告を日々流してもらっているんですが、当時自分がオモシロイと思ったところに対して同じように関心をもったり、自分が衝撃を受けたアツく特徴的な先生が2年経っても同じくアツく変わったレクチャーしていることを知って、当時のことを色々と思い出しました。



自分も参加した時には細かく参加報告書いていました。

明日から、産業医の短期集中講座に参加してきます(`・ω・´)ゞ

産業医研修5日目・最終日-家庭医療研修・リハビリ研修に並ぶ「医師人生の大転換期」となる経験でした!

ほんとに、色んな意味でアツく、濃厚な学びを得た日々でした。



また、そのときに学んだ気づきをもとに、家庭医にとっての産業医療、産業医療にとっての家庭医療という視点で記事を書かせてもらった経験もありました。

【雑誌投稿記事共有】「家庭医にとっての産業医療に魅力、産業医療の担い手候補としての家庭医療後期研修医」という記事を書かせていただきました。この領域、アツいと思うのです



その当時の熱はだいぶさめていて、学びたてのアツい感動が薄れてきてしまったことや、日常診療に当たり前に組み込まれすぎていて普通になってしまったこととかが影響しているかとは思いますが、後輩の報告を見てその時の思いや考えがありありと蘇ってきて、専攻医向けに報告してもらったFacebookに対して自分ばっかり長々とコメントしまくってしまいました…


受講してからの自分の変化としては、外来や病棟での労働世代患者や、失業後生活保護や精神疾患と闘病中の方から聞き出す情報、聞いた情報の解釈、そして助言の内容などがガラッと変わり、臨床医として一皮向けた感覚がありました。


また管理者としても、職員全体が健やかに過ごせる工夫や、体調を崩した職員のケアの仕方などが具体的にわかるので、少なくとも医長とか副所長とかの肩書をもったら受講できるとよいのではとも思ってます。


実際、その後に関心をもって、病院の労働安全衛生委員会に参加したいと立候補して名前を加えてもらったり(けっきょく、運営会議の開催が自分の予定と丸かぶりで動かせなかったため参加できず、かわりに今講習受けている医長を参加できるように今年から手配できたところですが)、HPHの3本柱のひとつ「職員の健康増進も」というところの具体的な筋道が見えて、HPH加盟組織で家庭医としてはたらく意義が言語化される気がします。


とはいえ個人の努力だけでは、一週間丸々潰して講習に参加するのは、医師体制上も参加費の捻出という面でも大変なので、総合診療グループとして専攻医を受講させるための仕組みを作っていければとは思います。

現状では、自分や、今年参加した医長は「しばらく病院にいる見込みで、学んだことを病院に還元してくれる可能性が高い」という前提があるため病院から参加費補助を出せましたが、ローテートが前提で、後期研修が終わった後の所属が不明確な後期研修医に参加費用を出すかどうかは(一指導医としては当たり前じゃんと思いますが)経営をあずかるものとしては簡単ではないでしょうね…

ましてや、地域との関係が見えやすい診療所ならまだしも、急性疾患の治療して帰してなんぼの急性期病院では指導医クラスの理解も得にくいでしょう。

ほんとは、病院のほうが職員の労働安全衛生を守るためには必要度が高いし、学んだことを組織に直接還元しやすいので有意義だと思うんですが、そう思えるための前提条件として「家庭医療学が当たり前の志向フレームワークとして組み込まれている」ことや「病院が職員の健康増進に関心をもつ(HPH登録や病院の活動目標への組み込みなど)」などが重要なのかなと思いました。


とりあえずうちの環境は色々好都合なので、今後も医長クラスについては積極的に参加してもらい、視野を広げ、院内活動のレベルを上げていってほしいなと思います。




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久しぶりの健診で、就職先や業務内容に注目してみたら面白かったです

昨日、久しぶりに健診に入りました。

うちは内科の通常診療コーナーと健診コーナーが別れているため、普通に内科外来やっていると健診を行うことはめったにありません。


診療所だとわけずにどっちも見れて面白いんですが、いちおう国のルールなどでは「感染症患者が来る内科診察と健康な利用者がくる健診診察の場所は物理的に分けること」というのがあるので、スペースと人員が許せば別にすべきらしいんですよね。

普通に考えれば、内科外来だって感染症にかかっていない高血圧の定期受診や、むしろ感染症に弱い認知症要介護高齢者の受診だってあるんだし、逆に無症状の人しか来ないと思いこんでいる健診にだって「調子悪いけど、診察料金は高いしちょうど職場健診サボってていけって言われてたから敢えて健診にいく」という人だっているんだから、意味のないルールだなぁとは思うんですけどね。

まあでもたしかに、ガッツリやっているところはそもそも建物も管理システムも分けて、独立した検診センターにしているくらいですね、そういえば。


うちも健診コーナーは物理的に離れたところにあり、内科医師が絶滅寸前まで減った時代に全科医師で健診診察を担うことになった名残で、内科所属の自分が健診に行くことはほぼない状態で残念な感じでした(診察室が2つなので、すでに他科医師で2名いるところに3人目入る場所がないのです)

それでも、研修としてのニーズは高いし、自分を始め家庭医療専門医の関心もあるし、そもそもうちは「働く人のための医療機関(勤労者医療協会)」なのでそこに力いれないと!という思いもあります。

人員に穴があれば積極的に埋めるよういろいろ工夫してきたつもりだし、今後はより家庭医が主体的に関わって「単に大量に検査して病人引っ掛けて、精査治療で病院が儲けるためのシステム(という扱いの病院が実際はけっこう多いんですが)」ではない、「地域の健康増進や健康寿命延伸に貢献できる健診センター」に成長していく過程に関われればいいなぁとおもうのです。




前置きが長くなりましたが、ようするに自分は健診が好きなんですが、ようやく、久しぶりに健診に入れたので嬉しいという話です。

初期研修中とかは、指導医たちが健診に全く興味関心がなかったので「適当に流せばいいんだよ」といわれたり「正常の身体所見を取る練習の場所だよ」とわかったようなわからないような説明だけでオリエンテーションが終わったことにされ、急性期病棟での研修の合間で「あ、健診当番ですよね、患者来たので診察に降りてきてください」とランダムに呼ばれるのでとても苦痛でしたけどね。


実際、最低限の健診の検査項目で死亡率などの予後が改善するものはほぼ無いので、研修医が身体診察の練習をして、セットされた検査を一通り実施してとやっても、ほぼ医学的な意味はないんですよね。

メタボ基準にちょっとだけ引っかかった人を一生懸命痩せさせるとか、他にリスクがないLDL142の人にスタチンを飲ませるとかするのもちょっと、ね・・・


むしろ意義があるのは、うつを検出するスクリーニングの質問をするとか、職業ストレスや不眠のチェックをするとか、各疾患の診断基準には満たないけど徐々に心血管リスクに関連する生活習慣が重なってきた人を早めにチェックして簡単な指導で少しだけ軌道修正するとか、喫煙者への禁煙指導だとか、ハイリスク飲酒者に警告を発して簡単なアドバイスするとかの「声をかけて、質問して、説明する」という人が耳と口で行うことのほうが効果が高かったりします。

でも、現状では多くの検査を回してなんぼのシステムなので、診察自体は短時間しか与えられていない中でいかにこういうことを実現していくかが重要と考えています。


というわけで、今年からは家庭医療専門医を一名配置して、内科との連携システムの助言とか、禁煙外来のシステムを変えて繋げやすくしたりとか、健康教育に必要な資料の配置とかをちょっとずつやってもらったりとかをちょっとずつやってもらっていました。

少しずつですが効果はでていて、より重要な介入を健診の場で提案し実行されやすくなってきたし、そういうふうに引っかかった人が円滑に内科につながる割合が高まりつつある感触はあります(まだまだですけど)。


また、せっかく勤労者医療協会だし、自分も配置した家庭医も産業医資格をもっていて「働く世代の健康増進」に力を入れたいと思っている人達なので、企業健診にくる働いている元気で健康な人達への対策をちゃんとしたいなと思ったりしています。


現状では事業所別に結果を分析し、業務内容などとリンクさせて改善策を検討し、提案・フィードバックして、「企業や組織というコミュニティーのレベル」に関わることで、そこで働く人たちが特に健康を意識せずに日々仕事をしていても自然と健康度が高まるような分化・風土づくりに貢献したいなぁと思ってるんですよね。

まだまだそこまでには越えるべきハードルが何個もあるんですけど、今回は第一歩として、検診を受けた人の職場や業務内容を細かくチェックしてみました。

臨床医としては、ビッグデータから入るよりは、目の前の一人ひとりから感じたり学んだことから拡げていくのが王道だと思うので。


で、10人程度の診察しかありませんでしたが、診察前に所属企業名をチェックしてネットで所在地と規模と主な業務やアピールポイントを簡単に押さえて、診察の前半で業務内容(肩書や業種だけきいても何もわからんので、どれくらいの時間かけて、どういう環境で、どういった仕事をしているのかを詳しく)聞いて、その内容を踏まえながら症状や既往や身体所見を具体化させ、簡単に日常的にできる健康に良さそうな工夫をフィードバックしたり、後日届く健診結果通知内容を予測して「こういうのが届いたらこういうふうに捉えてこうするとよいよ」とお伝えするようにしてみました。

これがけっこう面白くて、「○○という企業の何歳くらいの男性社員は喫煙率が低いものの肥満度が高く、就職して3-4年たつとみんなけっこう太りだす」みたいなことが見えてきて(nが少ないので全体を反映しているかはわからんけど仮説くらいは立てられる)面白かったです。

こういうのが見えてくると「じゃあこの企業に対しては個別の結果通知送付だけではなく、事後措置として企業に対してこういうフィードバックをしたいな」とか、「産業医がいるところだったらこんな連携したいな」とか、「こちらが産業医として連携している企業ならこんなことを雇用者に伝えたいな」とかが浮かんでとても刺激的でした。


また、毎年雇用時健診をうけに来ている=就職先が安定していない人も何人かいて、人によっては会社の社会に適応するのが困難で・・・という人もいるだろうし、逆にプライベートやより重視している本業が別にあるけどそれでは食っていけないのでその都度最低限の収入を得るために敢えて点々としているひととかもいて、いろんな人生が垣間見えて面白いです。

一方で、こういうキャリアパターンだと将来的にこういう健康問題がでやすいだろうなというのは、収入がない・少なくて困っている人が多く集まる医療機関で長く医療をやってきたプロの知見としても、社会医学のエビデンスを学んできた身としてもいろいろ見えてくるものがあるので、おせっかいとは思いながらも失礼にならず不快に思わせないように配慮しながら少しだけアドバイスしたり、困ったときに使える制度を簡単にお伝えしておいたりと小さな布石を置くことからちょっとずつやってみたりしました。


この辺のことをシステムとして、また医師以外の職種でも当たり前に実践できるようにしていきたいなと思います。

自分個人としては、これらの会話をよどみ無く最短時間でできるように、身体診察の流れと組み合わせて段取りを練り上げたり(○○の診察をしながらこれこれの質問や指導したり)、説明を短縮できるように多彩でわかりやすいパンフ等を用意していったりも重要かなと思います。

また、ある程度活動と知見が蓄積してきたら、きちんとまとめて企業へのフィードバックも実践していきたいし、学術の場で発表して地域の医師集団全体にも広めたいし、文書として報告書を作って行政等にも意見を出して地域ニーズに合わせた健診助成内容に徐々に変えてもらえるような活動もしていければと思います。


とまあ、いろんなことは考えているんですが、とりあえず赴任してからの5年間はほぼ動けなかったので(他の課題がいろいろありすぎて)、次の5年の課題としてじっくり向き合いたいと思います。

でわ!

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地域連携室の活動について、色々考えるきっかけの多い今日このごろ

この数日は、いろいろと地域連携について考える機会の多い日でした。

あ、地域連携室の室長になったんですよね、今年度から。その件については近いうちに熱い思いをまとめて書きたいと思っています。



今日は、地域連携室の振り返りの部会があり、4月の成果、5月の現状、6月以降の課題を整理できてよかったです。

昨日の全職員会議でも、他の方からベッドコントロールや地域連携について簡単にまとめてプレゼンしていただいたり、自分も締めの挨拶で思うところを簡単にしゃべったり、先程参加者のアンケートを眺めて個々の職員の様々な発想をみて感化されたり


あと、前にうちで後期研修していて、今では連携を深めたい関連診療所の所長になったが病院に来ていて、実際はニアミスで会えなかったけど、その後にFacebookでやり取りできて今後のことで考えていることを簡単に伝えてみたり。


それと、同じく前にうちで後期研修していて、今では地元の病院に戻っていろいろやっている人からもたまたま連絡がきて、地域連携・相談センターのセンター長になったけど丸投げな感じなのでどうしたらいいもんでしょうか?文献ありますか?と聞かれたので、文献はあんまり読んでないなぁと思ったり、それでもこの2ヶ月ほど地域連携室長としての言動のベースになっている理論やテキストを思い出せてそれが自分にとっても発見だったり、それ以外の小さな工夫やコツの積み重ねを少し自分なりに解きほぐしながら書き出してみたり(読む方からしたら無秩序なメモ送られたように見えて大変かもしれませんがすいません)で、とても良い振り返りになりました。


この勢いで、地域連携とは!? 地域連携室の室長とは!!ということをあつく語り尽くしたいところですが、今月いっぱいが家庭医療専門医試験のポートフォリオ提出締め切りで、「やっと完成して書類出しました!」という報告に混じって「あと3個あるっす、どうしましょう」という連絡も来ているので、今日はそれのチェックや助言に時間を使うことにします。

ギリギリでも間に合うだけ偉いとおもいます。ほんとあれは大変ですから。


というわけで、また明日!!



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富山大学の総合診療部で「総合医のためのカルテの書き方」の講演してきます!

富山に行ってきます!
 
あちらのボスに学会の委員会のお仕事などでお世話になっている縁や、うちの後期研修プログラム卒業生が関連施設にお世話になっていることなどもあって、今回遠路はるばるお呼ばれしました。



配布資料はこんな感じです(発表資料から半分くらいスライドを差っ引いて作ったものです)

170428 富山大「総合医のカルテ」配布資料 by けんた on Scribd






総合診療部としてのカルテの記載ルールを統一して取り組み始めたところで、「一般的な記載方法だけだと総合診療の特性を反映しきれない」という壁があり、そこをなんとかしてもらえないか?という要請を受けました。


ので、単に「Sにはこういうこと書いてー、Oはこういうことなんだよ」という基本的な話はすっ飛ばして、「総合診療医の診療特性ってのはこういう感じで、それをカルテに反映させるにはこんな感じだよ!」と自分の専門領域の話を思う存分できるのでめっちゃ楽しみです!!


しかも、うちとは地域性が当然違うし、一般市中病院と大学病院との違いもあるし、電子カルテシステムだって根本的に違うので、「自分的正解」を押し付けても適応不能なはず。

なので、レクチャー部分をぐっと絞って、レクチャーを踏まえつつ「では、我々の環境においてはどうすべきか?」を考えるワークの時間を多めにとってみました。


上手く盛り上がって、オリジナルのいい感じなカルテ記載法が生み出されれば楽しげだし、大学の強みを活かして一定の研究にして発表して国内の情勢を大きく揺るがしていただければとても嬉しいなぁと夢想したりしています。


さて、どうなることやら・・・




 

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【読書記録】Common Diseaseの診療ガイドライン

「Common Diseaseの診療ガイドライン」という本が出ました!


Common Diseaseの診療ガイドライン〜総合診療における診断・治療の要点と現場での実際の考え方 (Gノート別冊)Amazon

【送料無料】 Common Diseaseの診療ガイドライン 総合診療における診断・治療の要点と現場での実際の考え方: Gノート別冊 / 横林賢一 【本】楽天


羊土社のGノートで連載をしていたものを、大幅加筆してまとめ直したものとのことです。
guideline
https://www.yodosha.co.jp/gnote/series/guideline.html


 
 羊土社ホームページのほうには、この本の内容見本や目次など載っています。
https://www.yodosha.co.jp/medical/book/9784758118095/


どんな本かつかみやすいとおもうので、目次の一覧をコピペさせていただきますね

呼吸器疾患

01 急性上気道炎(かぜ)【岸田直樹】

02 インフルエンザ【菊地由花,河原章浩】

03 喘息【田原正夫】

04 COPD【菅家智史】

循環器疾患

05 高血圧【永田拓也】

06 慢性心不全【加藤雅也】

07 心房細動【紺谷 真】

消化器疾患

08 ヘリコバクター・ピロリ感染症【小林知貴,長澤佳郎】

09 B型慢性肝炎【忍 哲也】

10 C型慢性肝炎【忍 哲也】

内分泌・代謝疾患

11 脂質異常症【瀬野尾智哉】

12 糖尿病【黒澤聡子,片桐秀樹】

13 甲状腺機能低下症【五島裕庸,北村友一,川島篤志】

14 甲状腺機能亢進症【金子 惇】

15 高尿酸血症・痛風【藤原昌平】

筋骨格系疾患

16 腰痛【白石吉彦】

17 変形性膝関節症【池尻好聰】

18 骨粗鬆症【池尻好聰】

19 関節リウマチ【遠藤功二】

精神・神経疾患

20 頭痛【茂木恒俊,横須賀公三】

21 うつ病【森屋淳子】

22 不安障害【木村一紀,井出広幸】

23 慢性期の脳卒中【臺野 巧】

24 睡眠障害【横林賢一】

25 アルコール関連問題【山梨啓友,前田隆浩】

26 認知症【山口 潔】

アレルギー疾患

27 アレルギー性鼻炎【加藤洋平】

28 アトピー性皮膚炎【岩本修一,横林ひとみ】

29 蕁麻疹【瀬尾卓司,横林ひとみ】

その他

30 急性中耳炎【杉山由加里】

31 慢性腎臓病【孫 大輔】

32 (鉄欠乏性)貧血【本村和久】

33 熱中症【佐々木隆徳】

診療ガイドラインの質を見極める【南郷栄秀】


以下、読んでみた感想です。

(ちなみにこの書籍は、昔お世話になった編集者のご厚意で贈呈いただいたもので、執筆者陣にも知り合いやお世話になった方々が沢山います。この本が売れても私の懐は潤わないし中立的な記載を心がけたつもりですが、COI的にも気遣い的にも少し盛った内容かもと思って差し引いて読んでいただければ幸いです)



この本の特徴は、タイトルそのものズバリですが、「Common diseaseを扱っている」ところがまず第一です。

最近は外来マニュアル系の本がいろいろありますが、割と内科よりのものが多いなぁという印象でした。

その点、この本は総合診療医視点なので、整形疾患や精神疾患など、内科テキストでは扱わないが内科外来(や総合診療・家庭医外来とか診療所とか)でよく遭遇する問題をまんべんなく扱っているのは便利だと思います。現場視点の項目選定ですね。


国内の代表的なガイドラインの丸写しではなく、海外のガイドラインや最近のエビデンスも提示しながら、ギャップや矛盾についても言及しつつ、実際の現場で総合診療医の立場でどう考え実践しているかについても、「ビヨンド・ザ・ガイドライン 総合診療医の視点」と言うコーナーで必ず解説してあるのもいいところですね。

ガイドライン丸うつしならガイドライン見たほうが正確(転記ミスがない)ですし。全部買い揃える財力や、外来にイチイチ持っていく体力という面では助かるけど。

また国内外の複数のガイドラインを紹介するだけで、内容の違いや国内の医療情勢などに言及してないものだと放り投げっぱなし感を感じますが、そこに配慮してあるのは気が利いていますね。


また、(今回の総合診療×リハビリテーションの雑誌編集をしていて痛感しましたが)編集者が他の人に執筆を依頼してそれを取りまとめたスタイルの書籍の場合、全体の統一感を出すのが難しいんですが、そこが割とクリアされていて読みやすい本だなぁという印象は受けました。

執筆者の経験年数や、病院総合内科ベースor診療所家庭医療ベースorそれ以外で多少論調の違いはありますが、総じて「うん、総合診療医の常識としてこんな落とし所ですよね」と言うところにまとまっているなと感じます。すごいですねー




もちろん、ガイドラインレベル+αくらいの設定なので、普通に慢性疾患を扱う外来で主治医として1年程度きちんと研修を積んだ人であれば、だいたいは頭に入っている内容なので新奇性はほぼ無いかと思います。

正直なところ、私も一から通読しようとは思いませんし、うちで1年程度研修をした後期研修医に「これ絶対読めよ!」と勧めようとも思いませんでした。


最適な対象読者は、序文でも書いてありますが「外来での診療経験がまだ少ない総合診療後期研修医」「これまで専門科での病院診療をしてきたが、新規開業したり外来・プライマリケアに転向したばかりの医師」に最適だと思います。
来年度からうちに来る総合診療・内科系の後期研修医にはお勧めしようかなとおもうし、頂いた一冊は後期研修医用共有本棚に置いとこうと思います。



贅沢が叶うなら、電子書籍版を早めにリリースしていただけるとうれしいですね。

もしくはうちの関連院所の電子カルテで閲覧できる、「今日の診療 電子版」に入ると助かるなぁと思います(最近、ジェネラリストのための内科診断リファレンスは今日の診療に入ってくれたおかげで、けっこう便利に使っています)

1項目あたりのページ数はそこまで多くなくてサラリと読めるんですが、なんせ扱う範囲が広い分、紙版書籍だとでかくて重い(811g、iPadより重い)のがたまにキズなんですよね。
A4版で300ページ強あるので、毎日医局から外来に持っていこうとは思えません。

外来メインの診療所研修の人とか、研修医が使う外来ブースが固定されているならそこに一冊置きっぱなしにするとかなら問題ないでしょう(うちでは、後期研修医が入る新患外来ブースに置いとこうと思います)

求む、電子化!!

 


 

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【読書記録】「健康格差社会への処方箋」めっちゃ面白いです。社会経済的要因の評価が苦手な人にも、関心あるけどどうしていいかわからない人にもおすすめ

「健康格差社会への処方箋」、先週の出張の移動時間を使って読んでみました。

健康格差社会への処方箋 [ 近藤 克則 ]健康格差社会への処方箋 [ 近藤 克則 ] 楽天


健康格差社会への処方箋健康格差社会への処方箋 [単行本] Amazon





結論から言うとかなり面白かったです。

予備知識がなかった人や、関心はあるけどなんとなく二の足を踏んでいた人、いいとは思うけどエビデンスとか知らないし医者がやる仕事なのかな?と懐疑的だった人でもグイグイ引っ張られるし、

普段から経験的に色々考えて活動してきた人には、頭を整理し、現状やエビデンスや今後どうしたら良いかを整理する良いきっかけですし

頭でっかちにエビデンスをきちんと理解してから考えたい人にも、きちんと論理的に構成されていて説明の穴がなく構成されているのできっちり読めて気持ちよいです。



出版社のページから、解説と目次を引用します。
序文・まえがきや書評ものっているので、元ページもご参照ください。
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=89174

健康格差に挑むための「根拠」と「戦略」を実証的に示す!

社会・経済的因子による健康格差の実態とその生成機序を「健康格差社会」と命名し各界にインパクトを与えた著者が、その後の研究や社会の動向を踏まえ、「どうすべきか」を示す「処方箋」。格差の要因を示すだけでなく、「格差対策に取り組むべきか」という判断の根拠をも提供、その上で国内外で実証されつつあるミクロ・メゾ・マクロレベルの戦略を紹介する。医療政策関係者や公衆衛生関係者に必読の1冊。


【目次】

序章 処方のために何が必要か

   日本にみられる健康格差

   処方のためには何が必要か

   本書で検討したいこと


第1部 なぜ健康格差が生まれるのか 「病理」編

 第1章 ライフコース・アプローチ 足が長いとがんで死ぬ?

 第2章 仕事と健康 長時間労働・不安定雇用・成果主義と職業性ストレス

 第3章 遺伝と環境 「生まれ」は「育ち」を通して

第2部 根拠は十分か,治療を試みるべきか 「価値判断」編

 第4章 歴史に学ぶ 科学は理論・仮説に始まる

 第5章 「遅ればせの教訓(レイト・レッスン)」に学ぶ

 第6章 社会保障は経済を停滞させる? 事実か仮説か

第3部 では何ができるか 「処方箋」編

 第7章 「健康格差」対策の総合戦略 ヨーロッパの到達点を踏まえて

 第8章 個人・家庭レベルの危険因子への戦略 肥満・教育・貧困児童を例に

 第9章 メゾレベルの危険因子への戦略(1) 職場・職域における対策

 第10章 メゾレベルの危険因子への戦略(2) 健康なまちづくり

 第11章 メゾレベルの危険因子への戦略(3) ソーシャル・キャピタル

 第12章 マクロレベルにおける対策-社会政策

 第13章 ハイリスク・アプローチの限界とそれに代わるもの

 第14章 ポピュレーション・アプローチの具体化

 第15章 国内外にみる変化の兆し

 第16章 健康格差対策のための7原則




もしこういうのに関心あるなら、近藤先生の三部作や、その他の社会医学系の本も読んでみるといいかと思います。








The Health Gap: The Challenge of an Unequal World
Michael Marmot
Bloomsbury Publishing PLC
2016-05-05






まだまだありますけど、このへんで。

全然読み込めてませんけど、時間見つけてちょっとずつ眺めてて、今度5月に高松で開催される日本プライマリケア連合学会や6月に北海道で開催される同学会北海道支部地方会では「健康の社会的決定因子:Social determinants of health」のWSもやるので少しずつよむペース上がってきてます。


民医連系の病院で働くなら、この辺の視点無いと病院の理念や活動の意味がわからなくて「なんでこんなことやるんだよ」と不満感が無駄に高まるし、逆にわかるとすげーな!と思えることもたくさん出てくるのでよいと思います。

そうでなくても、家庭医療やるのであれば、生物心理社会モデルで患者の人間関係や就労環境、地域の文化や社会格差などの影響は日常的に遭遇して対応しているはずですので、役に立つこと間違い無しだと思います。
逆に全くこの辺の書籍・文献的知識がないまま家庭医療やっていると、リハとか救急の知識がごっそり抜けたままやっているような感じで不安定になるのではと思うので、苦手意識がある人こそ、とくに診療所や僻地研修する時には時間取って読み込むと良いかと思います。






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プロフィール

けんた

家庭医療をベースに病院で働く「病院家庭医」なるものを目指して爆進中です。
病名や年齢にかかわらずどんな人の悩みにも対応できる診療能力を身につけることを目指して、北海道各地の病院で初期・後期研修を受けました。

総合内科を中心に研修を開始し、途中から家庭医療学や医学教育学、臨床研究などに興味を持ちながら学習し、2011年に家庭医療専門医を取得しました。
現在は札幌市内の小規模病院で、家庭医療学をベースにした病院総合診療を行ったり研修医・学生・多職種の教育に関わったりしながら、プライマリケア医のためのリハビリテーションフェローシップに参加し学び続けています。

将来は病院をベースにしながらも病院内だけにとどまらず、各医療機関の連携、さらには教育、政治・行政、娯楽などを含めた広い意味での地域共同体を作っていく橋渡しをして、健康に楽しく暮らせる街づくりに貢献できたら面白いなと思っています。

日々の研修での気付きをつづりながら、何か大きな発見が得られないか、blogを通して模索中。

少しでも面白いなと思えた記事があったら、拍手アイコンを押してもらえると、モチベーションがアップしたりします。

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