病院家庭医を目指して ~野望達成への道~

地域密着型病院で活躍する家庭医を目指し、札幌市内で働いてるDr_kentaです。 病院外来でのプライマリケア、内科急性期病棟の老年・緩和ケア、リハビリテーション栄養を中心に、医学教育や院内システム改善などにも関心を持ちながらいろいろやっている日常を記録していきます。ちなみに「病院家庭医」という正式な呼称はありません(造語です)。 また医師による記載ですが、医学的な内容を自分や身の回りの方に適用していいかどうかは直接診察のうえでの判断が必要です。記載内容を試して発生したいかなる不利益も責任は負い兼ねますのでご了承ください。

EBMの実践

EBMワークショップinJPCA北海道地方会のレクチャー資料共有

2018年7月7日に札幌で開催された、プライマリ・ケア連合学会(JPCA)の北海道ブロック支部地方会で、EBMerの南郷先生を招いてのEBMワークショップを開催しました。


だいぶ前ですが、宣伝した記事がこれです。

EBMワークショップ「論文を読まずにEBMを実践しよう!」のご案内



終わった後、そういえば開催報告とかの記事書いてなかったので、いまさらですが資料をアップします。

学会支部公式企画だったり、外部講師の先生の許可取ったりはしていたので、忘れていたのではなく手続きをしていて遅くなったんです。と言い訳しておいてみます。

EBMwsレクチャースライド by けんた on Scribd




この資料は、北海道の運営チーム(当法人と、手稲グループの家庭医療・総合診療系の専攻医~指導医たち7名)で作った、当日のレクチャーや司会進行に使ったパワポスライドです。

これ以外に、ワークでつかったPICOシートやEBM step4シートなどもあります(パワポスライドの中にもその要素があるので、アップロードは省略)

また、事前配布資料や当日配布資料として、EBMワークショップの要点をまとめた資料や症例の設定の詳細を書いた資料、テーマに関連するUpToDate・Dynamed・日本語診療ガイドラインの抜粋資料と、それを日本語訳(グーグル翻訳丸投げ)したもの、さらに予習してこなかった人や当日参加者用にこの3つの二次資料を1~2ページに圧縮した資料なども作成しハイオフしました。

この辺は、元ネタの本家本元EBMワークショップの資料については勝手に公開できませんし(元のやつは数時間とか数日かけた有料ガッツリセミナーなので、その資料を無料でだしてしまうのはよろしくない)、二次資料のまとめは著作権問題とか、それだけみて安易に診療に反映しちゃう人がいても困るし(そもそも数年たったら中身が最新版ではなくなるし)なのでアップなしにしました。



今回のワークショップをやってみて得られたことを、最後にまとめてみます。

●あの超有名EBMerと一緒にワークショップの準備をした経験は何者にも代えがたい。
とくに、準備段階での繊細な配慮(参加者ファーストの徹底)は大きな学びになりましたし、こちらの運営チームで考えていた内容をブラッシュアップさせるフィードバックもたくさんいただけて刺激もたくさん得られました。

●法人・研修プログラムをまたいで、かつweb会議だけでの準備でもうまく準備できた経験も大きい。
これまでも学会の委員会・若手医師部会活動とか、法人の管理・運営系や委員会系の会議とかならweb会議オンリーはやっていましたが、短期間で密度の高いものを作り上げる必要があるワークショップ準備を、はじめましてのメンバーもいて、前提条件となる常識や文化や学習内容や診療経験の異なる集団で意識をまとめていって形を作り上げた経験は結構大きかったです。

冷静かつ単的に司会進行や実務準備をこなしてくれたリーダーがいてくれたおかげで、自分は茶化し役にまわることができ、ブレスト的にまとまりかけた話の腰を折ったりしながら、先入観や義務感でかたまらずにこのメンバーらしいものを作れた気がします。

また、参加メンバーも、ぶっちゃけこう思うんですと言ってくれて微妙な違和感を壊してくれる勇者や、膨大な量のエビデンスサマライズしてくれたり、初学者がとっつきにくい考え方のところを腑に落とし込むレクチャー作ってくれたり、当日のちゃんとした司会進行・タイムキーピングしてくれたり、最初の盛り上げ的雰囲気を作ってくれたりと、個々人の個性や特性を全員が無理なく惜しみなく持ち寄ってくれたおかげで全体としてまとまった気がします。

●EBM苦手な人に教えるコンテンツを作れた事自体も大きいです。

今まで、うちの本院で初期研修医向けにやっているEBM教育イベントは、率直に申し上げてしまうと割と大失敗な感じですが(イベントに再開したところで前後の価値観や行動が変わらないので)、今回作ったコンテンツをそういう場で提供できれば自分たちや後輩たちのレベルアップに貢献できそうです。今回の地方会でのWS開催自体が、「全国学会でやったところで全国の現場にはなかなか浸透仕切らないので、各地域で自立したWS運営が根付きつつ、その運営者や参加者の所属施設・研修プログラムに反映されるような仕組みを作ろう」を目指しているものだったので、ここは頑張りたいところです。
とりあえず1年後にまた同じ枠もらってやることになりましたし、1年と待たずに別の機会作ろうぜという話にもなっているので、一定のペースで続けてブラッシュアップしていきたいところです。

道内の大学で、学生教育コンテンツとしてお呼びがかかったりするといいですねぇ。
呼んでくれればいきますよ。



以上です。

最近はリハ関連イベントと、あとは自分のストレスが多いわぁという記事ばっかりでしたが、EBMとかの医学ど真ん中っぽいこともやってましたよな記事でした。






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【読書記録】Gノート増刊「動脈硬化御三家」 + 地方会でのEBMワークショップ宣伝

Gノートの、動脈硬化御三家を読みました!



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動脈硬化御三家 高血圧・糖尿病・脂質異常症をまるっと制覇! (Gノート増刊) [ 南郷 栄秀 ]
動脈硬化御三家 高血圧・糖尿病・脂質異常症をまるっと制覇!
楽天ブックス



編者の南郷先生の推薦で、編集社から献本・書評依頼をいただきました。

身に余る光栄です、ありがたやm(_ _)m



1000字くらいでという依頼でしたが、いつもどおり長文になり1700字を超えてしまいまして・・・
頑張って1300字までに圧縮したものが後日Gノートに掲載されます。

圧縮前の原文は「掲載原稿とは別物扱いで、版権とか関係なくこちらのブログにあげても良い」と許可をもらえましたので掲載しておきます。


「本気でいい本だ!オススメっす」と心から思えた良書なので、Gノート紙面だけでなくwebでも宣伝することで売上がのび、日本の総合診療現場がほんの少しレベルアップするのに貢献できたら幸いです。

まあ、すでに周りの総合診療・内科系専攻医は持ってて熟読している姿を見かけるので、今更かもしれませんが・・・



以下、文字数切り詰める前の原文です。長いです、すいません。
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本書は、総合診療医がつくった「総合診療とはこういうことだ!」という考えを具現化した本だと思います。

総合診療医が得意とするCommon diseaseのなかでも、特に頻度の高い3大疾患を対象としています。
最新のエビデンスを論拠としているだけにとどまらず、実際の診療環境や患者の価値観・事情などもきちんと捉えつつ、実臨床でどうすべきかを丁寧に解説しています。
また、「動脈硬化性疾患の予防」という共通の目的でくくれる疾患群を横断的にまとめている点にも総合診療らしさが伝わってきます。


編者の、総合医としての分厚い実戦経験からくる洞察、EBMerとしての深く広く詳細な知識、そして共著者である専攻医たちへの丁寧な臨床教育への姿勢などをひしひしと感じられ、読むだけで一総合診療医として姿勢を正される気分になります。

 


目次を眺めると、全体の構成は総論→各論というよくある形式ではなく、また「第1章糖尿病」のように疾患別でもありません。
診療の流れに沿って「第1章 スクリーニング・リスク評価」→「第2章 生活習慣の改善」→「第3章 薬物療法」とならんでおり、「臨床医のための参考書」であることを強く意識されていることが伝わってきます。
とくに非薬物療法の記述がしっかりしている点が秀逸であり、エビデンスに基づいてどの介入がどの程度有用か把握しやすく、かつ実際の臨床場面でどのように提示・教育すれば成功率が高まるのかの実践的なコツまで理解できます。


4章では「診療場面別トピックス」を扱っています。
総合診療医は同じ施設や地域内の複数セッティングで研修や仕事をすることが一般的ですが、「救急や病棟、外来や在宅と場面が変わると、同じ疾患でもこんなに診かたが変わる」ということが詳述されているため、柔軟な頭の切り替えの訓練をする上でとても有用です。

とくに、「高齢者などの複雑症例に対する家庭医療からのアプローチ」は秀逸で、普段病院で総合内科や救急科で働いている総合診療医が、診療所外来・在宅や地方中小病院の一般病棟で複雑事例を扱うときにはかなり参考になるでしょう。
また、一般的には扱いが無いか薄いことの多い「小児・思春期」や「妊娠期」についても、総合診療医による分厚い記載があり、小児科や産婦人科へのアクセスの悪い地域・医療機関でその穴をカバーする総合診療医にとっても心強い内容になっています。


5章では、領域別の専門医や看護師・薬剤師などの他職種からの視点もあり、総合診療医だけの独りよがり・偏った視点になりすぎないようにバランスが取られています
実際に専門医や多職種を行う際にも、この視点の違いを意識したコミュニケーションをとることで連携の質を高める一助にもなりそうです。

 


本書を読んで得をしそうな対象として真っ先に思い浮かぶのは、総合診療や内科の後期研修医です。
初期研修中に外来研修を受けたことがあったとしても、慢性疾患について本書で解説しているレベルまで深く学び使いこなせる段階までたどり着いた人はまずいないでしょう。
指導医達も、病棟や救急に比べると外来慢性疾患の指導への関心・熱意は薄いことがあるため、独学や同僚との協同学習でこの本を活用するのはとても有用と思われ、実際当院での初期研修医や総合・内科専攻医の外来指導の参考書として使用させていただいています。


また、最新のガイドラインを勉強してから数年たってしまい、「最近のエビデンス更新や新薬登場についていけなくなってきた」と感じているベテラン世代がコソ勉をするためにはかなりおすすめです。
さらに、普段から最新論文を読み続けてはいるが、エビデンスのアップデートが頻繁過ぎて「現時点でのとりあえずの落とし所」が見えなくなってきたような方にとっても有用でしょう。

私自身も、普段から最新のエビデンスをよみ、ガイドラインが改定されるたびに目を通してきたつもりではありましたが、一度ページをめくり始めると「なるほど!」「そういうふうに解釈すればよいのか!!」と納得する記載がたくさんあり、出張の往復時間に拾い読みして済ませるつもりだったのが、気がつけば一気に通読してしまうほど「新しい気づきに満ちて」いる良書でした

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最後にもう一個宣伝ですが、この「動脈硬化御三家」の編集社である南郷先生をお招きして、7月のプライマリ・ケア連合学会北海道地方会で、EBMワークショップを開催する予定です。

北海道ブロック支部ホームページ
http://jpca-hokkaido.jp/

リンク先からイベント情報一部抜粋
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【日 時】:平成3077日(土)1330分〜1810分(受付1230分〜)

【場 所】:かでる2・7(北海道立道民活動センター 札幌市中央区北2条西7丁目)


【プログラム】

4.  ワークショップ,など(15:10 16:40

EBM「論文を読まずにEBMを実践しよう!」
講師:南郷 栄秀先生(東京北医療センター総合診療科)
   佐藤 健太先生(勤医協札幌病院 内科・総合診療科)

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見たところまだ応募フォームとか出てないみたいですが、道外までの飛行機代・宿泊代かけずに最先端のEBMについて学ぶ良い機会だと思いますので、奮ってご参加ください




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EBMワークショップ「論文を読まずにEBMを実践しよう!」のご案内

2018年7月7日のJPCA北海道地方会で、南郷先生をお招きしてのEBMワークショップ「論文を読まずにEBMを実践しよう!」が開催されます!!

無題

 http://jpca-hokkaido.jp/


案内文の文面をコピペします
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日本プライマリ・ケア連合学会北海道ブロック支部第6回北海道地方会

 

【日 時】:平成3077日(土)1330分〜1810分(受付1230分〜)

【場 所】:かでる2・7(北海道立道民活動センター 札幌市中央区北2条西7丁目)

【参加費】:支部会員 ¥2,000  非支部会員 ¥4,000  学生・初期研修医 無料

 

【プログラム】

  1. 開会のご挨拶(13:30 13:40

  2. 総会 (13:40 14:00

  3. 学術発表 (14:00 15:00

    「口演(一般演題)」

    「認知症、在宅医療、緩和ケアでうまくいったケース、いかなかったケース報告会(ポスター発表)」

4.  ワークショップ,など(15:10 16:40

    1. ワークショップ1:EBM

      「論文を読まずにEBMを実践しよう!」

      講師:南郷 栄秀先生(東京北医療センター総合診療科)

      佐藤 健太先生(勤医協札幌病院 内科・総合診療科)

    2. ワークショップ2:ポリファーマシー

      ワークショップ2-1「緩和ケアにおけるポリファーマシーって?」

      講師:名越康晴先生(札幌南徳洲会病院 緩和ケア内科)

      ワークショップ2-2「地域コミュニティとポリファーマシー」

      講師:田村英俊先生(寿都そよかぜ薬局)

    3. シンポジウム:のみこみ・嚥下・栄養

      「チームで取り組む『飲み込み』支援!~在宅への橋渡し~」(仮称)

      講師:橋本茂樹先生(札幌渓仁会リハビリテーション病院)講義

      シンポジスト:管理栄養士、言語聴覚士、看護師、歯科衛生士(指定発言)

    4. レクチャー:
      人気企画「日常診療アップデート」

      今年もリクエストの多いトピックから4部構成でお送りします。

    5. スモールグループディスカッション: 在宅医療
      「在宅医療よもやま話」

      札幌市在宅医療協議会に協力を仰ぎ、在宅医療を実践している医師を囲んでテーブルごとに在宅医療にまつわる課題や現状を話し合います。

5.    基調シンポジウム(16:55 18:05

「プライマリケア医による『認知症』『在宅医療』『緩和ケア』の現状と課題」

各分野のスペシャリストからプライマリケア医・総合診療医へ向けて現状と課題についてお話ししていただき、それぞれの分野におけるプライマリケア医の役割について討論していただきます。フロアからの質問を歓迎します。

座長:小嶋 一(手稲家庭医療クリニック)


シンポジスト

伊古田俊夫先生(勤医協中央病院名誉院長)認知症

矢崎一雄先生(静明館診療所院長)在宅医療

  前野弘先生(札幌南徳洲会病院総長)緩和ケア

 

6.   閉会のご挨拶(18:05 18:10

           6回地方会実行委員長 小嶋 一

           7回地方会実行委員長 木佐 健悟

7.    懇親会(18:30 〜 )

TKP札幌ビジネスセンター赤れんが前(毎日札幌会館5階)

 

   ■託児室(かでる2・7 5階幼児室)を準備しています。ご希望の方は事務局へ

■多職種でプライマリ・ケアを学ぶことができる貴重な機会です。

非支部会員の皆様も大歓迎!ふるってご参加下さい!

 

6回北海道地方会 実行委員長 小嶋 一

(副支部長,手稲家庭医療クリニック)


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私もお手伝いさせていただくことになっていて、少しずつですがご相談させていただきながらイメージを共有中です。

将来的には道内でEBMを学べる環境の構築まで視野に入れていますので、当日はぜひ多くの人に参加してほしいです。

また、「準備段階から関わってより深く学びたい、EBM学習環境構築に関わりたい!」という人はご連絡いただければと思います。



個人的には、久しぶりに地域分析や社会医学、病院管理・教育システム構築ネタではなく、臨床医学ど真ん中のネタなので楽しみにしています!!


でわ!!


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【週に1時間のEBM】ストレスによる心窩部痛に対する、検査なしでの初期対応として、H2 blockerはPPIと比べて劣らないか

久しぶりにEBMシリーズです。



EBMネタをやろうかなと思ったのは、今度のプライマリ・ケア連合学会地方会で、超有名EBMerをご招待してワークショップをやることになっており、少しちゃんとやらねばと思っているのが、理由の一つ。

あとは、2月末の超ハードスケジュールのためか、3月2日から数日間、結構激しい空腹時心窩部痛に悩まされたことです。
手元にあったH2 blocker(以後H2RA:Histamine type2 receptor antagonist)を飲みながらだましだましやっていた、というとても個人的事情・関心で調べてみたくなりました。

「これって適切なんだろうか? PPIの処方を受けるべきだったか? そもそも胃カメラ絶対飲むというのが標準だったら自分のセルフケアは適当だったってことになるな。そういえば外来研修指導でも研修医からPPIはH2RAよりも常に良いんですか?って聞かれて答えたこともあったな」と、派生していろいろ思うところがあり、久しぶりに標準治療や、エビデンスがどこまで明らかになっているか(どこから先はまだ曖昧で、工夫や患者との相談の余地があるのか)を調べてみたくなりました



今回の所要時間は、Dynamedと日本語ガイドラインを拾い読みしながら、それをメモとって調べ終えるまでがちょうど1時間でした。

その後ブログにまとめ直すので15分くらい。たぶん、メモやブログなければ10分もかからないくらいの量だったと思います。



では、以後にエビデンスのメモを貼り付けます。

最後に、それを踏まえて「自分に心窩部痛に対してどうすべきだったか、これから胃カメラやピロリ検査を追加すべきか。さらには似たような年齢と状況の患者が明日外来に来たらどうするか」を述べたいと思います。

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PICOの整理
P:基礎疾患のない若年成人、NSAIDSなし、ピロリ不明、胃カメラ未実施

I:H2 blocker内服

C:プラセボ、粘膜保護薬、市販の粉薬、PPI

O:症状消失率、消失までの期間、再発率

T:RCT、できればSR。ガイドライン等との比較も行う。
 他、費用対効果、副作用頻度、H2 blocker内の違いも知りたい


Backgroundの知識
消化性潰瘍に限っていえば、治癒率はPPI>H2 blocker>>その他

エキスパートオピニオンや低レベルエビデンスでは、H2 blockerの方が速効性あり、投与期間制限なし、夜間の制酸作用が強い、ピロリ検査への影響なしなどがPPIに比較して良いところとされており、反対にPPIは制酸作用が強力で持続性で主に日中に強い効果を発揮するが、速効性がなく投与期間制限あり、ピロリ検査の偽陰性化が注意点とされています。

他PPIのデメリットを一応列挙しておくと、長期使用での消化管腫瘍、ビタミン・鉄欠乏、骨折、感染症(肺炎、細菌性腸炎、SIBO、CDIや、薬剤相互作用(クロピドグレルは有名。他ハイネイーゲルの投与後半固形化阻害なども)、下痢、認知症などはかなり有名になってきていますね。

あと、新しいPPIのタケキャブ(ボノプラザン)は速効性があり、H2RAに負けるところがないというのがアピールポイントの一つらしい(他にも色んな特徴をアピールされています)。


よく出てくる薬の簡単な特徴
ボノプラザン(2015年発売、10mg錠160.1円、20mg錠240.2円)
即効性、酵素代謝されにくい(CYP3A4阻害剤は併用注意。CAM・イトラコナゾールなど)
副作用は8.2-20.4%。便秘・下痢、発疹、肝酵素上昇。ピロリ除菌で重篤な大腸炎。
除菌時以外なら、消化器症状・過敏症・肝障害などはいずれも5%未満。除菌治療では10%で下痢。
H2 blockerとガチンコあるか?→探せてないっす。

アコチアミド(2013年発売、100mg錠・37.2円→1日3錠=111.6)。
食後愁訴症候群に→コリンエステラーゼ阻害作用
副作用16%(下痢2%、便秘2%、悪心1%、嘔吐1%、プロラクチン増加4%、肝障害2%)

六君子湯との違いは?モサプリドは?→とりあえずあとで。


標準的な推奨について
機能性胃腸症のガイドライン2014は無料でみれます。
https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/FDGL2_re.pdf

Dynamedの機能性胃腸症のページの拾い読み
<疫学>
頻度は高い(10%前後)

リスク因子は、急性胃腸炎、ピロリ感染、喫煙、NSAID use、女性(確かに多い)、遺伝的要因。アルコール・カフェインは関連しないらしい。

併存しやすい病態として、GERD、IBSがある(まあ、そうですよね。実際いますね)


<診断>
診断はROME-Ⅳ基準(2016年) 
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000802.html
・症状の原因となりそうな器質的な疾患ではない
・心窩部痛、心窩部灼熱感、食後の胃もたれ、早期飽満感のうち、1つ以上の症状がある
・これらの症状は辛いと感じる、生活に影響する
・その症状は6か月以上前から出現し、週に数回程度、症状があることが3ヶ月は持続する状態
→ROME-Ⅲで知識止まってました。自分は当てはまりそうに思う。

病型は、Rome4では2つ
・心窩部痛・心窩部灼熱感のいずれかが存在する病型を心窩部痛症候群(Epigastric Pain Syndrome: EPS)
・辛いと感じる食後の胃もたれ・早期飽満感のいずれかが存在する場合を食後愁訴症候群(Postprandial Distress Syndrome: PDS)
→今回はEPSタイプですね。一時期はPDSが主体だったこともあり、入れ替わることも多いのかな。


<診断における検査>
血液検査はすべきで、CBCで貧血の除外を、肝機能・膵酵素は病歴から疑われたとき、HP抗体(ただし診療所簡易検査でなくラボで精度管理されたもの)

胃カメラが必要になる状況は、Alarm symptomの慢性消化管出血、進行性体重減少、進行性嚥下困難感、持続性嘔吐。また、鉄欠乏性貧血、心窩部腫瘤触知、バリウム検査で腫瘍疑い、がんの家族歴、55歳以上など
→自分はいずれも非該当!

ピロリ検査が必要になるのは、GERD症状なし・NSAIDS使用なし・内視鏡適応(上記)を満たす場合
→前2者当てはまる。。。でもカメラなしだと保険算定がな。バリウム?


<治療の概要>
・胸焼けや呑酸症状が主要な、もしくは頻回の症状の場合はGERDとして対応
→PPI(短期効果ではH2RAや全道改善薬より有効、PPIの種類による違いはない。心筋梗塞や心血管イベントの死亡率が増え、骨折が増える)、肥満か最近の体重増加があれば体重制限、寝るときの上半身挙上

・NSAIDs使用歴があれば、中止、変更、PPI追加

・中等度以上の摂取があれば、アルコールやカフェイン摂取を控えるよう助言する(エビデンスはいまいち)。食事摂取量を減らすアドバイスも。

・PPIとH2RAはどちらも(非潰瘍性のDyspepsia)には有効。特に胸焼けや心窩部痛ではより有効だが、膨満感には効果が薄い。

・蠕動改善薬(イトプリド、レボスルピリド、ドンペリドン、アコチアミド、メトクロプラミド)は有効かもしれない(エビデンスレベル下がる)

・ピレンゼピン、タンドスピロンも多少のエビデンスがある。

・ハーブでは、ペパーミント(ハッカ油)、キャラウェイ、Celandine、ターメリック、バナナパウダー、カプサイシンなど。鍼灸もレベル1のエビデンスあり。

・精神医学的介入は改善するかもしれない。
→検査で潰瘍の除外ができてはいないが、潰瘍でないという前提で自分に当てはめるなら、H2RAでよさそうで、アルコールとカフェインと食事量をやや減らし、ハッカ油を意識的に取れるといいかな(ミントのタブレットでも効果があると嬉しいんだけどな)


<各種ガイドライン(Dynamedのなかで概説あり)>
・ピロリ陽性や未評価では、(除菌後に)PPI フルドーズで4-8週を勧めている。
 再燃した場合、低用量での投与への変更や、有症状時の頓服などを相談。
 PPI不応性の場合H2RAも検討。
 ピロリ除外できた場合は、PPI低用量やH2RAを4週間、再燃したら再開して最低量まで漸減し、長期・頻回の投与は避ける。
→やはり、ピロリがどうかに結構主眼が置かれていますね。

H2RAはそこそこ有用
H2 blockers vs. placebo in 12 trials with 2,183 patients
54% H2 blocker vs. 40% placebo patients had improvement in dyspepsia (NNT 7, 95% CI 5-21)

PPIもそこそこ有用。
proton pump inhibitors vs. placebo in 10 trials with 3,347 patients
most trials reported dyspepsia cure (no or minimal symptoms) at 2-8 weeks
34% proton pump inhibitor vs. 25% placebo patients had cure (NNT 11, 95% CI 7-33)
→数字だけ見るとH2RAと同じかやや劣るように見えるが…?
→いずれにしてもプラセボがそれなりに効いている。カウンセリングも重要という推奨もあり、病は気からの割合が結構大きそう。

→また、それでもNNTは5~10くらいで、投与する価値はある印象(ただし副作用には注意し、漫然と高用量・常用量の長期投与はせず、せいぜい4~8週までで中止や減量を提案する)

ちなみに、アコチアミドの効果は、食事関連症状消失NNT16、食後膨満感改善NNT17、早期満腹感NNT8、心窩部痛などについては記載なし、副作用が56%。
→いまいち、では・・・?

イトプリドはエビデンス不十分だが、NNT11程度のエビデンスは一応ある。
→ためしてみてもよいかも。副作用少ない印象ですし。

PPI vs H2RAのガチンコ比較試験
Dynamedで言及なし(か見落としたか)。
日本のFDガイドラインではClinical question4-7で扱っており、RCT1個と抄録1個だけあり、有意差なしという結論
→であれば薬価のやすさと速効性?からH2RAから選んでもよさそう。

未検査FDについての検討ではエビデンスレベルの高い報告があり、PPIのほうがH2RAより優位に有効とされている
→おそらく未評価のため消化性潰瘍やGERDの混入する割合が高いためと解釈できる。このエビデンスが各国ガイドラインの推奨に反映されているようだ。
=============================


なるほどでした。


というわけで、FD疑ったら、まずは診断基準を意識しながら当てはめてみる。

薬剤の関与や潰瘍っぽさをイメージしながら、胃カメラの適応かどうかを考えつつ、本人の価値観や事情とすりあわせて検査どの程度何をするかは提示する。
採血は気軽に受けてくれることが多いので、きちんと行っておく。

ピロリ陽性や潰瘍あり、もしくは病歴からその可能性を疑えばPPIからスタートがベター。
そうでなければH2RAの反応をみながらでよい。

それ以外の薬は、それなりのNNTだが、病型に応じて使い分けるともう少し成功率が上がりそうな気はするので、目的意識を持ち投与後効果判定もきちんとしながら経験値を詰みたい。


自分のセルフケアを振り返ると、まあ悪くはなかったかなと思います。

けっきょく1週間ちょいで、ラニチジン飲まなくても大丈夫になりました。

今度職員健診で胃カメラ飲むようにいわれたら、満を持して、意を決して、飲む、かもしれません。



でわ!






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【週に1時間のEBM】抗菌薬の皮下・筋注について

久しぶりすぎて知らない人も多いかもしれない【週に1時間のEBM】シリーズです。

後期研修終わったくらいから、勉強が暗中模索になり、手当たり次第調べては日本語訳してブログに乗っけてた時期がありました。
今でも年数回はやりますが、なかなか時間とれず(読みながら頭で整理するだけのほうが時間はかからんですからね)、でも今回は時間と気持ちと体力のタイミングが一致したので一気にやってみました。
他にも重要な、先にやるべきことは有るんですが、たまには自分のため(引いては担当患者や、自分の病院の他の医師が担当する患者のため)のお勉強くらいしてもいいと思うのです。



さて、ではここからが本文です。

毎度のことながら長いですよ。。。


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添付文書上で筋注可能な抗菌薬はあります(βラクタムやアミノグリコシドなど)が、一般的な点滴静注と比べて臨床成績が劣らないのかという臨床試験は目にしたことがありません

緩和ケア領域や在宅ケアで最近行われつつある、皮下点滴と点滴静注の比較はもっとありません。


しかし、今後も治療継続中に包括ケア病床・回リハ病床・療養病床(医療介護院?)や老健・特養、自宅などにうつるケースがふえてくると考えられ、こういった、比較的簡便な投与方法でも治療効果が劣らないかどうかはけっこう重要なClinical questionだと思います


だって、点滴静注だと「アナフィラキシーが起きるかもしれないから入念な経過観察が必要!」とか、「終了後抜去したりロックしたりしなきゃいけないのに誰がやるのさ?」とか、自己抜去すると血の海になったりとかあるので、在宅診療や、病棟でも看護師数が少ない急性期以外などではけっこうややこしいですよね。
皮下注なら、自己抜去しても大したことおきないし、点滴手技に不慣れな看護師でも失敗のしようがないし、終わったあとそのまましばらく置いといても問題ないです。
筋注だったら一瞬で終わるので、在宅では特に魅力的です。


そういう理屈上の利点はそれとして、自分が一医師でちんまりとやっているクリニックだったら患者や家族と個別に相談して行うのはいいと思うし、雇われの一臨床医であればそれもまあ可能でしょう(上がお固いところでなければ、医療安全委員会や感染管理委員会との闘いがどうなるか次第ですかね)。

なんですが、自分は立場上管理者であり指導者でもあるので、実質自分の言動で内科系医師が全員したがってしまったり、自分が取り決めとして決めたことは科や病院の責任になると考えると、あまりエビデンスないものを「大々的にやりましょう!」とも言えず



ということで、「経験的にはたくさん行われていて、害も少なく、有益性も高そう」な”抗菌薬の皮下注や筋注”についてのエビデンスを調べてみました。




詳細な文献検索にうつる前に、前提となるBackground的な基礎知識を確認しておきます。


常識・耳学問としては、「けっこう有用で、積極的にやっている医療機関や医師も多いが、質の高いエビデンスはなく保険適応外使用になるパターンも多いので個々の裁量の範囲」という認識です。

知人の働いている在宅専門クリニックでは、抗菌薬は筋注が当たり前と聞いています。


テキストやマニュアルとして出版され、どの医師も知っているレベルのものはないと思っています。

緩和ケアや終末期ケア系の本はあんまり読んでないので、もしかしたらいいのがあるのかもしれません。あったら教えてください。

終末期の苦痛がなくならない時、何が選択できるのか?」はいつか通読したいと思いながらの積読状態ですが、セデーション中心で抗菌薬の話ではありません。
死亡直前と看取りのエビデンス」も、看取りがテーマなので、モルヒネや抗コリン薬などでてきますが、治療を念頭に置いた抗菌薬は当然でてないですね。
緩和領域でも、エビデンスベースドなテキストでは、あまり触れられないようです

Hospitalist 2017年 Vol.5 No.4 老年科」特集に期待して開いてみましたが、老年医療一般をいい感じに網羅していますが、抗菌薬の投与についてのマニアックな議論はなさそうです。
J-IDEO」が感染症業界のメジャーな雑誌かもしれません。購読してないのでわかりませんが、全号の目次を眺めた限りはなさそうです。イケイケなトピックス・連載が多くておもしろそうですが。
高齢者のための感染症診療」はいいところまで行っていて、外来や在宅での抗菌薬治療(OPATなど)に踏み込んでいますが、感染症の適切な治療の範囲での紹介で、皮下注や筋注には触れられていませんでした。まあ、そうですよね。
というわけで、感染症領域でも、正当な治療方法ではないという認識か、あまり堂々とはあつかわれなさそうです。


web資料では、「終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版」が割とお気に入りです。日本緩和医療学会の編集ですね。
一般的に、ガイドラインを読むときは、その作成ルールをチェックしてどの程度エビデンスベースドなのかを確認し、その上で個々の推奨も推奨度だけでなく根拠論文のエビデンスレベルの高さをちょろっとみて、自分のプラクティスを変えるレベルの推奨の場合は元論文を読んだりします(そして、たいていは元論文がイケてないか、解釈に歪みがあるかなどで自分のプラクティスがかわることはないのですが)。

今回は、「発刊にあたって」のところで、「本来はエビデンスに基づいた推奨を導出するのが原則だ」と断った上で(AGREE評価なども経ているようです)、緩和医療では大規模RCTが実施しにくく、複雑な病態もあるため一般論・基礎知識や学会としての立場などにも触れていると記載がありますので、エキスパートオピニオン含めてさらっと現状を把握するにはよさげです。

これの「7.皮下輸液法」のところは、以前から愛用していて、適応、投与量や速度、穿刺部位や方法にくわえて、皮下投与が可能な薬剤を「添付文書上皮下投与が可能なもの」と「それ以外の、経験的に使用されているが、安全を保証する論文はない」を分けて記載してあり、自分が薬剤選択する際の参考によくしていました。

のでやや期待しましたが、そもそもが「輸液療法」のガイドラインであり、「感染症治療」のガイドラインではないため、感染症治療や抗菌薬投与に特化した章はありませんでした。
皮下投与可能な抗菌薬としてβラクタム系・モノバクタム系・クリンダマイシン・アミノグリコシド系は提示されています(安全性の根拠論文なしと断ったうえで)
また、筋注については言及ありませんでした。



二次資料であるUpToDateとDynamedでも、いろいろとキーワード入れ替えてやってみましたが、いい感じのページは見つかりませんでした。
最近はエキスパートオピニオンも増えてきて、エビデンス集でなく教科書的になってきたと言われていたので少し期待したんですけどね。


「教科書」ということで、以前に大枚はたいて購入した電子版ハリソンもみてみましたが、感染症の治療・予防アプローチの章をさらっと拾い読みしてみましたが、ダイレクトなところはなかったです。PK/PDのところで静脈内投与以外ではBioavailabilityがね……という記載があり期待しましたが、その後は経口投与での注意点のみで、皮下・筋注の言及はありませんでした。

しかしハリソン、目的意識持って読むと超読みやすいですね。
英語なのでパラグラフ・リーディングでさらさらっと章全体を拾いつつ目的部分にたどりつけるし(電子版は目次からワンクリックで該当ページにもいけるし、2-3ページ読んで間違ってたら戻ってこれるし)、英語の文章自体も洗練されていて久しぶりに英語読んでもさらさらっと読み進められました。また機会見つけてマメに読もうと思います。



というわけで、そろそろ諦めて、Pubmedでの論文検索に移ろうと思います。

キーワードは、"subcutaneous or intramascular" and antibiotics or Ceftriaxone or Cefepime or Meropenem あたりでやってみました。
皮下と筋注両方知りたかったのでor検索にしたのと、抗菌薬一般論のレビューがあれば読みたいのでantibioticsを選択し、他に在宅などでよく使われる広域な抗菌薬の具体的なStudyもあればみたかったので、上記の「終末期がん患者の輸液両方に関するガイドライン」でも皮下注が慣習的に使われていると言われているグループから、特に広域なものを探してみようと思って3つの抗菌薬の名前もor検索にしてみました。

緩和や老年で大規模なRCTがあるとは期待していないので(倫理的にもまだ難しいかもしれません)、RCTなどのスタディデザインでの縛りはかけずに広くみてみました。

結果としては、割といろいろでてきたけど、決め手には欠けるかなという印象でした。


================================
Med Mal Infect. 2014 Jun;44(6):275-80. doi: 10.1016/j.medmal.2014.03.007. Epub 2014 Jun 2.
Subcutaneous and intravenous ceftriaxone administration in patients more than 75 years of age.
PECO:高齢者のCTRXの皮下投与なので、割と関心のどんぴしゃです。
結果:単施設・病院で、後ろ向きに、148名のうち38名が皮下投与。皮下のほうがやや年齢高め、せん妄多く、寝たきりの人も多く、一方でADL数値は高く(動けるので点滴繋いでおけない?)で、検出された菌や感染巣や死亡率・治癒率に有意差なし。
考察:重症度よりも、虚弱度の高さで皮下投与が選択され、治療効果への悪影響なし。
感想:経験と同じだなと思えたのと、自分の経験とくらべてnがすごく多いわけではないけど統計解析してくれているので経験が理屈に整理できて有用な体験でした

Rev Med Suisse. 2014 Oct 15;10(446):1924, 1926-9.
Subcutaneous antibiotic administration in elderly patients
PECO:フランス語の論文で、アブストは英語で読めましたが構造化抄録でない。
内容:オフラベル使用での皮下投与は多くはないが、老年や緩和では行われており、特にCTRXは多く一部の地方議会では承認されたりしているが薬理学的・臨床的に非劣性を示したものはないので、RCTが望まれる。
感想:という意見だけだった。残念。でも、2014年の時点で、自分の疑問に答えるRCTが無いと書いてあったので、「自分の検索や知識がポンコツ」ではないのかなと思えて変に安心しました。

Med Clin (Barc). 2007 Jul 7;129(6):236-7.
[Administration of subcutaneous antibiotics in patients on palliative care].

Med Clin (Barc). 2008 Mar 29;130(11):439.
[Prospective study of subcutaneous ceftriaxone in patients on palliative care].
どちらも良さげですが(後者は前者へのコメントのようです)、アブストすらみれず


10年以上前には、CTRXのPK/PDについての研究もありますね。

Pathol Biol (Paris). 1988 Jun;36(5 Pt 2):702-5.
[Pharmacokinetics and tolerance of ceftriaxone after subcutaneous administration].
これもフランス語だ。
内容:健康ボランティアでは吸収がよく、8人の患者で3日間静注→3日間皮下注したら血漿濃度は維持されたとのこと
感想:まあそうだろうという内容で、治療前半と後半では薬剤分布も違うんじゃないかとか思いますが、これを1988年にやっていたというのがすごいですね。いきなりRCTでプラセボ群や皮下投与のみ群を作るわけにも行かないだろうし、こういうのの積み重ね大事ですね。


この辺から、筋注にも触れられています。
J Vet Pharmacol Ther. 2002 Feb;25(1):73-6.
Pharmacokinetics of ceftriaxone administered by the intravenous, intramuscular or subcutaneous routes to dogs.
PECO:犬に対する動物実験ですが、静脈内、筋注、皮下の薬力学を比較してます。
結果:皮下1日1-2回や筋注1日1回は、静注と同等かもしれない
感想:まあ犬ですが、自分の知りたいことにかなり近い比較対象を置いていますね。これを人間でやってほしいんですが、15年経過しているんだけどな。
とおもって、筆頭著者のRebuelto Mさんの名前とCeftriaxoneで調べてみたらいくつも論文書いていて、新しいのは2014年もありますが全部「dog」、犬対象でした。基礎医学者とか臨床医がパイロット的に動物実験しましたではなく、獣医ってことか。納得。。。

Pediatr Infect Dis J. 1994 Aug;13(8):724-8.
Ceftriaxone therapy of bacterial meningitis: cerebrospinal fluid concentrations and bactericidal activity after intramuscular injection in children treated with dexamethasone.
概要:小児の髄膜炎!に対して、セフトリアキソン筋注の効果をみてます(重症患者で研究するということは、途上国など医療リソース少ないところでの研究かなとおもったけど、著者はオレゴン州・米国の医師なのでそうではなさそう。
PECO:細菌性髄膜炎の小児37名に対して、デキサメサゾン4日間と、CTRXを3・6・9日目に筋注(たぶんそれ以外の日は通常の静脈内投与)して、髄液中濃度を評価した。
結果:髄液中濃度は十分だった。
感想:重症患者に対して全部筋注のStudy組むのは倫理的に厳しいので、経過の良い患者で途中に筋注挟んで髄液中濃度が落ちないかを見たという意味では、苦し紛れというよりはよく考えたなという感じですね。もちろんだいたいアウトカムである髄液中濃度しかアブストには書いてないのでなんとも言えませんが、筋注についてもアグレッシブに検討している人はいるんだなと思いました。

Chemotherapy. 1991;37(4):292-6.
Treatment of acute pyelonephritis in women with intramuscular ceftriaxone: an out-patient study.
概要:今度は腎盂腎炎ですね。元気なこともあり外来治療のオプションとして筋注は確かによさそう。肺炎では外来CTRX毎日通ってもらうor訪問看護でやってもらうとかはありますが、筋注ならより短時間で出来て良さげです
PECO:30名の腎盂腎炎女性に筋注CTRXで治療して、治療6週後の時点で85%の治癒率。
感想:んー、治癒率低すぎですねぇ。治療期間や投与量、患者背景などわからず、1991年の論文なのでおそらく今の標準治療とは異なる可能性が高く、採用できないっすね。

Chemotherapy. 1989;35(5):389-92.
Treatment of various infections in an outpatient practice by intramuscular ceftriaxone: home parenteral therapy.
概要:同じ研究者が、様々な感染症の23名の感染症患者にやったら、治癒率91%でした。
感想:こっちのほうが先ですね。いろいろやってみて程々の結果だったので、疾患絞って、かつ治りやすそうな疾患選んで上の研究したらあの結果だったってことですね。んー、微妙。同じリサーチクエスチョンを上手に調理して、現代の投与量で在宅や緩和患者でやったら結構いい線行けそうです
 
他にも1988年に他の著者で、CTRXの筋注論文がありました(アブストがより雑な感じで紹介は省略します)
調べてみたら、セフトリアキソンの開発は1980年前半に行われたようで、日本での販売承認・薬価基準収載は1986年なので、「1日1回の夢の抗菌薬が出来たぜ!すげー。しかもこれ筋注で使えたらもっと便利じゃね?」という感じでたくさんの研究がされたのでしょう。同一テーマの論文にまとめて目を通すと、時代背景や国・地域別事情など見えてくるのが楽しいですね。


あと、目先を変えて、「筋注時に抗菌薬を溶かす溶液としてリドカイン使うといいよ」というのを耳学問で聞いていましたが、それについて検討した論文を探してみました。ありますね!

Arch Pediatr Adolesc Med. 1994 Jan;148(1):72-5.
Lidocaine as a diluent for ceftriaxone in the treatment of gonorrhea. Does it reduce the pain of the injection?
概要:1994年と古いですが、淋菌に対してセフトリアキソン一発筋注は標準的な治療であり、痛いと評判になると患者が来なくて結果的に淋菌が蔓延するかもしれないという切実な視点から組まれた試験かもしれませんね。
PECO:成人の前向き研究で、淋菌陽性の人39名を対象にランダムにリドカイン溶解と滅菌水(注射水)溶解に割り付けてます。
結果:事前の疼痛不安に差はないが、注射時・10分後・20分後・6時間後で有意な疼痛の差があった(具体的な数値はアブストでみれず)



はい、で、ここまで個別のスタディを見てきましたが、なんからちがあかない感じですね。
答えが出きってないことはわかっていて、CTRXの皮下投与については小規模なものがパラパラあり、2014年の最初に載せたものが一番まともっぽいてところまでかな。
頑張って調べてみた結果、あんまりスッキリせず、自分のプラクティスもあんまり変わらなそうで、こういう「とりあえず論文調べてみた経験」を繰り返すと、やがて「論文調べてもいみないや」→「教科書読んでも以下同文」→「じゃあ製薬会社の説明会やパンフで」まで行ってしまうのかもしれませんね。あぶない・・・

本来なら、Background把握して、二次資料みて、それでもダメなら統合された情報源(をまとめている信頼性のあるサイトのまとめ)をみて、それでもダメで論文を個別にあたるならまずは総説やsystematic reviewから探すのが基本ですね。
というわけで、そういう視点で当然探してみましたが、まともなRCTがないのだから、質の高いMeta analysisのSystematic reviewはないだろうなと思いながら、新しく幅の広そうなものをさがしてみたら、1個ありました。

Clin Microbiol Infect. 2015 Apr;21(4):370.e1-3. doi: 10.1016/j.cmi.2014.11.017. Epub 2014 Nov 23.
Subcutaneously administered antibiotics: a national survey of current practice from the French Infectious Diseases (SPILF) and Geriatric Medicine (SFGG) society networks.
概要:介入研究してどうだったかをみる論文ではなく、とりあえずフランスの感染症と老年業界での、皮下抗菌薬投与の現状を調べた国単位の研究のようです。フランス、抗菌薬皮下投与の先進国なのか?ってくらいちょいちょいでてきますね。
PECO:フランスの感染症科と老年科の医師が、皮下抗菌薬投与をどう行っているのかを調べるNational surveyで、方法はアブストでわからないけどアンケート法かな(回収率わからん)。
結果:367名・96.1%の医師は皮下投与の経験がありエルタペネム33.2%・テイコプラニン39.2%・アミノグリコシド35.1%・アモキシシリン15.3%で経験があり、CTRXは全員が経験していた。皮下を選択する理由は、経口や経静脈、筋注が選択しにくい場合で、特に緩和ケア領域で多かった。有害事象は疼痛70.8%、皮膚壊死12.8%、効果不良19.9%が主だった。さらなる研究で、適切な適応、モダリティー、認容性などの評価が必要である。
感想:これがたぶん現状では一番大規模なデータではないでしょうか?患者でなく、専門医300名以上なのでかなりのnを間接的に調べたことになるっぽいですね。
もちろん海外の現状調査なので、当院でいきなり「みんなやってるからうちもやる」には持っていけませんが、現状の最先端がみえ、おそらくフランスからより詳細な追試が行われそうな気がしてきたので、無理に背伸びしてまで自分でこのテーマの研究しなくてもいいかもしれません
やるなら全日本民医連の総合診療若手医師部会とかでできないかなぁ…(皮下注や筋注を迫られる場面でないと研究されないので、大学病院とか救急病院ではやらないだろうし、海外のエビデンスあっても日本のデータはあったほうがいいしね)。

あと、筋注も選択できないから皮下注を選んだという記述からは、疼痛を与えたくない緩和の状況や、凝固異常で筋注禁忌の場合などが良い適応っぽいなぁとおもったり、「皮下注に行く前に筋注を検討する」という順番が前提となっているのかなと思いました。


ちなみに、日本の研究は、1個、2014年の聖隷三方原病院ホスピス科のがありますね。
Palliative Care Research 2014; 9(4): 121-4
緩和ケア病棟における, セフトリアキソンの皮下点滴使用と奏功率
10例のみの後ろ向き検討ですが、奏効率70%、局所有害事象なし、というだいたい似たような結果です。
====================================

はい!

とりあえず以上です。
検索時間が1時間越えたので、ここでストップとします(日本語になおしてブログに書くのに倍くらいの時間がかかっとりますけど・・・)



それで、「調べて終わり!大満足!!」ではダメで、調べ終わったら「日本の現状で、今いる病院で、自分がどうするかを検討する」のが大事です。

が、皮下投与の適応が通っている抗菌薬は、たぶん、ないはず
筋注は結構あるんですよね。

セフメタゾールは筋注用製剤があります
1回2gを2回に分けて、リドカインで2mlに溶いて投与だそうです。
量と回数が微妙ですが、それなりに使い所はありそうで(ESBL産生菌でそうな軽症UTI、憩室炎などの消化管関連など)、特に腎不全があるとよりきちんと効きそうです(投与した量がそれなりの量血中に移行する前提ですが)。
https://www.medicallibrary-dsc.info/di/cefmetazon_for_intramuscular_injection_0.5g.php

チエナムも筋注用製剤がありますね。
1回1gを2回に分割なので、用量はかなり少ない設定ですが、他に手がない場合にはありかな(ESBL産生菌をカバーしたいだけだったら、セフメタゾンのほうがいいような気もする)
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6139501E2038_2_05
※もちろん、カルバペネム系の乱用はダメですよ!

ほか、アンピシリン、ピペラシリンやセフォタックス、アミカシン、クリンダマイシンにも筋注適応があります

一方で、セフトリアキソンやセフェピムは、ワンショット静注はOKですが、皮下注だけでなく筋注も、添付文書の用量用法では記載が無いんですね。

メロペンはワンショットもだめで、30分かけて点滴静注のみです。



んー・・・、となると、保険適応の範囲で、在宅や亜急性期~慢性期病棟で、よくある感染症に対して皮下点滴や筋注で治療を組み立てるとしたら、以下のパターンが妥当ですかね。
(感染症診療の原則からみて妥当かどうかではなく、あくまで診断はちゃんとしてて、本人・家族とリスク含めて相談の上で、他の一般的な投与経路や薬剤選択が難しい事例での奥の手的な話ですよ)

①皮下点滴が出来る環境(患者家族が抜去や固定など可能なら、訪問看護で繋いで終わったら家族が止めるのできる)なら、
A. 耐性菌を気にしない肺炎・尿路感染症・皮膚軟部組織感染症→CTRX一択

B. 耐性菌のうちSPACEを気にする場合→CFPM(今回の検討では見つからなかったけど、実際には使われている報告を見聞きする)の一択かな? ほか、アズトレオナムやアミノグリコシド(これなら1日1回投与でもよい!)をセフトリアキソンと併用するのはありですが、2本皮下点滴は大変そうです。

C. 耐性菌のうちESBLsを気にする場合→セフェム系は皮下投与可能というエキスパートオピニオンなので、セフメタゾールかな(1日1~2回でいいかは腎機能次第かなぁ)。


②筋注が可能な状況(すぐに終わるので看護・介護環境には依存しない、痛み対策と凝固異常だけ注意か)なら、
A. 耐性菌を気にしないなら→CTRX筋注していいならベター、だめならセフォタックス(筋注かつ腎不全なら1日1回で行ける例もあるか?)か?んー、難しい

B. 耐性菌のうちSPACEを気にする場合→セフェム系筋注+アミノグリコシド筋注併用か、ピペラシリン筋注(1日1~2回、少量投与での治療成績を知りたいがRCTは組まれないだろうなぁ)、あとはチエナム筋注単独ですかね

C. 耐性菌のうちESBLsを気にする場合→チエナムかセフメタゾン筋注ですね(これも投与回数の問題はある)



んー、今ひとつ踏み切れませんでしたが、皮下点滴については考えがだいぶ整理できた気がします

セフトリアキソン・セフェピムやアミノグリコシドの皮下投与については、これまでの理解の延長で良さそうです。

筋注はまだ迷うなぁ。
看護師いる施設で1日2回くらいやってもらえそうなら、腎不全症例であれば耐性菌カバーまで含めてチエナム・セフメタゾン、腎不全なくてESBL検出率の低い施設ならセフトリアキソン+アミノグリコシド1日1回ずつ(両腕や両大腿に1本ずつとか)で行けそうですね。

もうちょい情報あつめてみます。。。




























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論文検索や批判的吟味 以前に習得したい「専攻医」のための Ebm学習会in二木会のスライドシェア

先日、うちの家庭医療後期研修医向け学習会(二木会)で講師をした、「EBM」をテーマにしたレクチャーの資料です。

論文検索や批判的吟味 以前に習得したい「専攻医」のための Ebm学習会in二木会 by けんた on Scribd



webから拝借した情報については極力引用リンクをつけたつもりですが、抜けているものや、お作法上問題があれば修正しますのでご連絡ください。



テーマは「EBM±臨床研究」

以下は、事前に内部メーリスに回した宣伝文です。
====================
テーマはEBM。
ただし、文献検索の仕方や、原著論文の批判的吟味の方法はやりません。
面白くないし、教えてもやらないし、勤医協初期研修経験者は一度習っているので。

ふだん、臨床をしていて疑問に感じたこと(Clinical question)を分類し、
種類ごとの解決の仕方(誰に聞くか、何を調べるか)を提示します。

さらに、人に聞くかマニュアルを見ればよいBackground questionの勉強方法
文献を調べるべきForeground questionについての、手抜きの迅速検索方法
そしてそれらをやっても解決しない問題の対応方法について学びます。

当日、各自がもってきたClinical questionそれぞれをどう解決すればいいか考えるワークを挟む予定なので参加予定者は、一人1~3個の「臨床で困った、分からなかった疑問」を持ってきてください。
特定の患者の問題でも、「●●病の患者の一般論」でも、指導医の意見が割れていて結論が出せなかった難問でもなんでもよいです。
====================


どうしても、EBMというと「論文読むのめっちゃ好きだぜ、俺すげーぜ、お前もやんないの?」みたいなハイな人と、「いやー、大事なのはわかるんすけどね・・・。来年こそは!とは思うんですけど」というローな人の両極端に分かれてしまい、何年語ってもその差が開くばっかりなのが気になっていました。

なんとなく、「EBMは選ばれた天才たちが取り組むもので、プライマリケアに従事する日陰者の私にはて縁のないハイソなものでして・・・」みたいな誤解が根本だと思います。
 
真面目なEBMのワークショップは、講師も参加者もちょっと高次元すぎますし、たまに気合い入れて本を買ってもけっこう難しいし。。。


というわけで、今回は論文の検索方法や批判的吟味の仕方など「EBMのお勉強といえばこれが基本ですよね」というところは一切触れないようにしました。

そうではなく、普段総合医として行っている日常臨床そのものがEBMであり、広い意味でのエビデンスに基づかない医療はしていないし、EBMのエビデンス以外の3要素を重視した意思決定は他の医療機関よりむしろかなり丁寧に教え込まれて普段から実践しているよねというところから入りました。

また、いきなりPubmed使うと撃沈するので、どうやったらそこまで追い込まれずに効率の良い情報検索ができるかも提示してみました。 
Googleなら簡単と思っている人もいますが、同じネタを探すのでも、若手がやると1時間やっても微妙な論文やブログにしか到達できないのが、自分だと2分もあれば狙ったものが出せるので、やはり技術を要する難易度の高いリソースだと思います。

さらに、どんな論文を探し求めるべきかも、エビデンスピラミッドだけでなく、疑問の種類によってBest aveilable evidenceが異なることを提示しながら「SR・RCTばっかり読んでも日常臨床は変わらない」ことを伝えてみました。


内容は、既存の有名なテキスト・webサイト・偉人たちの言葉を継ぎ接ぎしただけですが、全体像を網羅していて一冊・1ページでまとまったものはないので、組み合わせて一つのメッセージにしたという意味では新しい仕事かもしれません。

自分は、もともと既存の理論やツールを組み合わせて新しい理論体系や教育ツール作るのが好きなので、こういう作業は楽しいですね。
(出版関係は落ち着いたし、学会が終われば講演関係も落ち着くので、今年の秋こそは4年放置し続けている新理論の本(CODについての)をまとめたいなぁと思っていますが・・・)



もちろん、普段から超勉強しまくっていてBackground questionの穴がほぼなく、日常的にForeground questionに対して文献検索をしまくっていてその業界の常識がわかっている人なら「どうぞ、こんなレベルの低いレクチャーは無視して先に進んでください」ですが、なかなかそこまでは到達している人はいないのがうちの課題なので、まずは入門編としてこんなところかなと思います。

また、臨床研究する人が皆無なのも絶望的なので、適切に土台を固めてBackground→Foregroundを埋めていった先に、自然とResearch questionが待っているし、やがてそれを解決しなきゃいけない時が来るので、地道にQuestionを溜め込んでおいてほしいというメッセージまでで終わりとしました。


自分が「よし、ここに根を埋めて、この地域と住民に対する医療をおこなうぞ!」と腹をくくれば、自然と研究ネタは蓄積し、試しにやってみれば臨床が劇的に変わる経験が待っているので、早くここまで来てくれる人を育てたいなぁとおもいます。


でわ!

 


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週に1時間のEBM-肺炎球菌ワクチンの効果と「Test-negative design study」

「23価肺炎球菌ワクチンは65歳以上の肺炎球菌肺炎を3割減少させる」
日本におけるPPV23の肺炎球菌性肺炎減少効果の論文、原著全文を朝活で読んでみました。
http://www.thelancet.com/…/PIIS1473-3099(17)30049…/fulltext…


日本語で紹介されているブログはこちらにあります。
https://t.co/P0AThlyku8



最初は「お!すごそうだ!!」と思いましたが、抄録を読んでいるうちに「ん?研究デザインがわかんないな。前向きなのか? 」という疑問も発生してきて、結論は意義深そうなので原文読むことにしました。


結論から言うと、あんまりインパクトを感じませんでした。

過去に言われていることと同じで、血清型と一致する肺炎球菌株による肺炎が減るというだけですね。



混乱してしまった原因として、一番わからなかったのが研究デザインでした。

タイトルにはProspectiveと書いてあるのに、Pが「肺炎と診断された人」だったので「後ろ向きCase -controlじゃね??」となってわけわからんかったのです。



本文のMethodを読んでみると、「Test-negative design study」というのが、今回の研究デザインのようです。

不勉強すぎて全然しらなかったので、このキーワードについてネット検索でちょろっと調べてみたら納得いきましたよ。
http://www.m-review.co.jp/…/tachiyomi_J0026_1701_0035-0038.…
http://zousantsushin.jp/201411773.html



Test negative design studyというのは、インフルエンザワクチンの効果を見積もるときに近年愛用されているようで、それをPPV23にも応用したんですね。

TNDSは、「臨床的にインフルエンザ様症候群を疑った人全例にテストをして(感度の問題から迅速抗原検査でなく、研究用にPCRを使って)、陽性の人をCase、陰性の人をControlとして予防効果を計算する」というデザインでした。

なので、やはり前向き研究ではないし、そもそも「臨床的にfluを疑った」時点でまともな臨床医ならfluとして対応する(検査省略や処方方針決定してしまう)ので、このTNDSというのは臨床的にはあまり意義のない試験デザインと理解しました。



それでもこのTNDSが流行っている理由は、「インフルエンザワクチンは毎シーズンごとに抗原株を変えなきゃいけないので、すぐに効果判定できる研究デザインじゃないと間に合わず(ちゃんとRCTや前向きコホートやったら、そのシーズンが終わっちゃう)、仕方ないのでこれでやっている」んだと思います。


一方で、肺炎球菌ワクチンは毎年新しいものにするわけではないので、TNDSを選択する正当性が無いように思いました。



それを理解して本文をよむと、自分の臨床へのインパクトはないなと思えました。

この論文では

「65歳以上で、臨床的に肺炎として矛盾のない症状があり、XpかCTで新規浸潤影がある人」がPで、

「喀痰培養やPCR、尿中抗原検査で肺炎球菌陽性」の人がCase、

「これらの検査で陰性」の人がControlとして、

過去5年以内1ヶ月以上前にPPV23を打った人(Exposure・Intervention)の割合を両群で比較して、有効性を算出しているということでした。



臨床医が、特に地域の家庭医として興味があるのは「肺炎の発症によるQOL低下や体力低下、治療に伴う身体的苦痛や治療コスト、そして死亡」であり、「肺炎になるのは仕方ないとして、そのうち肺炎球菌によるものだけはなんとか減らしたい」わけではないですね。


ので、TNDSを知っていたら、アブスト読んだ時点で「面白い研究で、日本のワクチン研究としては進歩ではあるかもしれないけど、プライマリ・ケアを担う医師の日常診療に影響を及ぼすまではまだ遠い」と理解できたなと思えました。



そういう視点だと、2010年BMJにのった丸山先生の「Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial」
http://www.bmj.com/content/340/bmj.c1004

の方がインパクトを感じますね。


施設など診療セッティング別にして、実際に臨床的異意義のあるアウトカムで、前向きにRCTすると言う研究活動はいつかやってみたいなぁと思います。



やはり、タイトルやアブストラクトの結論だけではなく、自分の臨床を変える参考にしたいと思ったら最低限アブストラクトはちゃんとよんで、すこしでも「?」となったら本文をちゃちゃっと読む習慣が大事なんだなぁと思いました。

研修医とかが、自分の臨床的な感覚や経験、既存の知識と異なることを言い出して「だってあの論文に書いてあったんだもん!」と行ってきた場合も「ああ、そうなんだ!すごいね、知らなかった」ではすませず、元論文みて、指導医としてちゃんと批判的吟味してからフィードバックする態度が必要だなぁとおもったり。大変だ・・・



理解が間違っていたら、遠慮なくツッコミをお願いします。

 



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週に30分のEBM-尿路感染症の治療期間は14日じゃなくてもOK?

ひさーしぶりに、自分ひとりで論文読んでみました。

最近は、月1のEBM学習会で後期研修医たちの疑問を論文で調べるのばっかりで、たまに自分で調べたくてもグーグル先生と、優秀な先生方の日本語ブログでほとんど解決してしまうのでサボっていました。

今回は、自分が個人的にとっても気になったので、個人的に調べてみましたよ。

時間無いのでざっくりです。



以下、メモ書きをコピペしておきます。

 

今回のお勉強にいたった背景

「腎盂腎炎の治療期間は14日間」と○○の一つ覚えでずっとやってきた。

しかし、最近の本院での治療や、若手研修医の治療をみていると、7日間で終了するケースを見かける。

新しいエビデンスがでたのか、エキスパートオピニオンか、エビデンスの拡大解釈かを区別したいと思った。


先に、Facebookで質問を拡散してみた。

以下の論文が今のところ最新・最大とわかった。

読み終えた人たちの結論は「まあ、ケースバイケースだよね。キノロンは7日で良さそうだけど、βラクタムはわからん。菌血症や複雑性、虚弱度に応じて14日になりやすいんじゃない」という意見が多数。

読んでいない人の大多数は「初期研修時代から、
○○マニュアルor指導医or総合診療科or感染症科の教えにしたがって一律14日でした。7日ってどうなんだろうって気にはなるけどそのままにしてました」という反応でした。


というわけで、紹介いただいたSystematic reviewをよむことにしました。

 
 

一応、もともとの臨床上の疑問は…

P:日本の単純性腎盂腎炎患者(菌血症ナシ、中等症以下)において

E:βラクタム7日間治療

C:βラクタム14日間治療

O:治療成功率(死亡率、治療失敗率、再発率)

T:RCTか、RCTベースのSystematic review

 
 

見つけた論文はこちら

J Antimicrob Chemother 2013; 68: 21832191

Duration of antibiotic treatment for acute pyelonephritis and septic urinary tract infection 7 days or less versus longer treatment: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23696620

 
 

急性腎盂腎炎と敗血症性尿路感染症の抗菌薬治療期間-7日以下と長期治療を比較したRCTのSR・MA

対象はRCTのみ、成人限定、7日以下とそれ以上を比較したデザイン。

プライマリアウトカムは長期治療群の治療終了時失敗率(EOT)

セカンダリアウトカムフォロー終了時の治療失敗率(EOF)・細菌学的失敗・全原因死亡・耐性菌や副作用発生率


→今回知りたいものとほぼ合致だが、βラクタムに限定しておらず、Table1で組み込まれた論文をみると多くがキノロン系を使っており、βラクタムを使った研究はどれも変なレジメンなのでダイレクトな答えは得られなさそう・・・

 

ちなみに、βラクタムでの研究の具体例をあげると(Table1)

1.Ceftriaxone+Cefixime 1g iv/400mg po×1/day 7days

  vs cegtriaxone+cefixime 1g iv/400mg po×1/day 14days

 (第3世代の静注・経口併用?)

2.Pivampicilin/pivamecillinam(1970年代の薬) の7日対21日

3.Anpicillin10g×3 3日間→×2 4日間(合計7日間、普通途中での減量はしないし投与回数も量も変)

  対 Ampicillin3日間→Ampicillin or Pivampicillin 4日間   

    →Pivampicillin2g4回静注→Pivampicillin0.35g×3 6週間

→とてもじゃないけど臨床応用困難。また、第3世代セフェム内服で消化管合併症が増えるのは当然なので、有害事象を検討するときにCTRX静注のみとは比較しにくい(副作用は少し減るのか?)

 

 

それでもめげずに、まずはアブストの結果から流し読み。

EOTは差がない(RR0.63、95%CI0.33-1.18、I=41%→RRが小さいほど

短期治療が良いという解析。見た目は差がありそうな気もするけど1はまたぐので有意差としてはなし)

キノロンに絞った場合も結果に差がない(RR0.76, 95%CI0.49-1.17, I=0%→RRやCIが小さくなるのでより差が無くなる感じ。キノロン以外で差が大きくなるってこと?わからん)

 

EOFでも有意差がなく、菌血症合併サブグループ(少数)でも差はない。

細菌学的失敗は全体では差がないが、尿路異常を高率に伴う群ではある(RR1.78, 95%CI=1.02-3.10, I=21%→これはかなり差がある!、けど細菌学的失敗なので、臨床的には治ったけど尿中細菌は残るというパターンで臨床的意義はないか)。

→まとめると、尿路異常のない単純性尿路感染症であれば、菌血症の有無にかかわらず、7日間治療でよく、キノロンのほうがより差が小さい。裏を返すと非キノロンで、尿路異常がある症例(当院での尿路感染症の大多数)では7日治療では尿中細菌が根絶しないため、排尿障害等がある症例では再発率が高まる可能性はあり(病態生理的推測でありエビデンスには基づいていないのであくまで可能性)、最低限排尿機能検査は必須だろう。

 

本文もよむ

基本的にAs treated(Per protocol)で解析しているようだ(ITTではない)。

EOTについては差がないが、異質性の元になっているのは、キノロン短期とST長期で比較して短期群が有意に良かった研究の影響

→こういう比較は臨床ではあんまりしないので、もしこの研究を無視すると「短期治療のほうが良い」という方向の影響が更に減って、トータルでは「短期治療の方が有意に悪い」という結果になりそう。なお、キノロン同士で短期・長期を比較した研究では差がない(RR0.76,95%CI0.49-1.17, I=0%)。

そもそもキノロンでは短期で良いというのは知ってるし違和感ない(ただし、キノロン耐性大腸菌が増えている日本では厳しいが)。考察で触れられているが、STやベータラクタムも短期でよいかはRCTを待つべき

 

EOFについては、治療終了から22-63日まで(最長で6ヶ月)のフォローアップ期間で定義されている(治療後1~2ヶ月での再発率→現実的だとおもう)。

7つのRCTで有意差なし(RR0.79, 95%CI0.56-1.12, I=1%)。

短期・長期治療群で同じ抗菌薬を使った研究に絞っても差がない(RR1.01,95%CI0.56-1.84, 異質性なし)

菌血症合併の小さなサブグループでも差がない(RR0.54, 95%CI0.15-1.92, I=0)

→とはいえずいぶん博打な95%CI値のばらつきに見えるし、ディスカッションでも触れているが重症敗血症(単なる菌血症のみでなくバイタル異常や臓器障害を合併したケース)についてはRCT出るまで14日が妥当だろう)

 

細菌学的失敗は興味ないので省略。

 

有害事象は、全体2127人で、有意差なし(RR0.93, 95%CI0.73-1.18, I=48%→確かになさそう)。ただし、CDIについて報告している研究はなかった(残念)。報告されているのは治療失敗になる副作用(詳細不明)で差がなく、消化管症状はRR0.51だが一応有意差なし、ST・キノロンのサブグループでも差がない

→ベータラクタム抜き出した検討はなく、ST・キノロンを抜き出したほうが全体よりも差が小さくなっているので、βラクタムでは差が大きい(=ベータ長期は副作用が増える?)、そして消化管症状の一部にCDIがいると考えられるのでベータは短期だと治療失敗が増えるが、長期だとCDI増加やコレに伴う治療失敗が若干増えて、全体では薄めあって有意差なしなのかもしれない。

 

死亡率は2つの報告でしか触れられていないが、1つでは両群で1名ずつの死亡者しかおらず、もう一つの報告では死亡者ナシなので有意差検討困難。

 

Table3でSummary of outcomesの表がある

βラクタムでの治療失敗率については、EOTはNo data、EOFはRR1.03, 95%CI0.52-2.07, I=0%

ディスカッションみると、βラクタムで比較した研究は、古い研究で、現在では腎盂腎炎に使用されない抗菌薬が使われたものと記載あり(最初のβラクタム研究3つの情報参照)→外挿困難・・・

 
 

読んでみた自分内結論

高齢者で排尿障害・尿路異常が除外できていない症例や、重症敗血症まで至った症例βラクタムで治療する場合、よほど治療継続困難な条件(早期退院は必要だが内服管理不能など)でないかぎり14日で治療する

ただし、長期セフェムはCDI含む消化管合併症で治療継続困難となる可能性があり、その場合は7日超えていればフラジール併用で押し切るのではなく治療終了し慎重に経過観察は妥当と思われる。


特定の地域の診療所で、尿路感染症の起炎菌のアンチバイオグラムを作成していてキノロン感受性が良ければ、(どうやって診療所セッティングで結核を除外するかの議論を無視すれば)キノロンスタートで7日という選択肢はあるかもしれない(あるのか?)。


最初からキノロンで治療するパターンは自分の守備範囲ではない(当院のアンチバイオグラムではセフェム系で良い、本院ではキノロン耐性大腸菌が多い)


βラクタムで治療開始し、感受性確認でき、消化管も使える状況でキノロンに移行した場合も7~10日で良いのかは不明なので、この場合も14日にする。


ふつうだったら、この後βラクタムあつかった元文献のRCTを読みにいくが、どのRCTも普通やらないレジメンのものなので、今回は省略。



・・・・・・残念_| ̄|○ 

 

 

 

 

 

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【読書記録】「診療ガイドラインが教えてくれないこともある」を読みました。オススメですね、これ

「診療ガイドラインが教えてくれないこともある」を読みました。




かなり良い本だと思います。


総論でガイドラインの読み方や、米国・英国の状況がかいせつされていて、ガイドラインの扱い方をちゃんと学んだことがない人向けにとても親切でした。

各論では、代表的な疾患について、まずガイドラインを簡単に解説し、そのポイントをまとめ、その後にガイドラインの先の話が書いてあるのがとってもよく類書がなかなかないと思います。

先の話のところが、項目(分担執筆者)によってだいぶことなり、自分はこうしてるとか、別のエビデンス踏まえてこうだとか色いろあるのは今後の改訂で揃っていくのかもしれませんが、なんにせよ「エビデンス・ガイドラインの向こう側」があることをテキストで提示してくれている貴重な本だと思います。

また、外来診療や総合診療研修を始めたての人が、とりあえずざっと標準診療(ガイドラインレベルの診療)をおさえるのにもよいかもしれませんね。あっという間に読めます。




以下、編集者のページから、序文と目次をコピペして紹介しておきます。
序文
 
総合診療医の視点と診療ガイドライン
 2011年,横林賢一先生からのお誘いで,日本プライマリ・ケア連合学会学術大会「Common Disease総ざらいアップデート」の講師陣に入れていただいた.Common Diseaseの診療について,各疾患の専門家ではなく総合診療医が解説する講演であった.各疾患の専門家はより進行・重症化した患者を診療する機会が多く,総合診療医はより早期・軽症の患者を診療する機会が多い.利用可能な医療資源(検査,メディカルスタッフ)も違う.専門家は最先端の診療まで提供するが,総合診療医は「当たり前のことを当たり前に」提供することが重要な役割である.同じ疾患であっても専門家と総合診療医の視点は異なるため,Common Diseaseの診療を総合診療医から学ぶことにも意義がある.
 総合診療医が診療するCommon Diseaseは数多く,すべての患者に当たり前のことを当たり前に提供するだけでも容易なことではない.診療ガイドラインはそのための「標準的とされる」診療についての情報や知見を効率よく確認する有用なツールとなり得る.
 ただし,診療ガイドラインは鵜呑みにするものではない.診療ガイドラインは専門家向けに作成されていることも多く,診療ガイドラインの記載内容を吟味し,目の前の患者に適応できるか検討する必要がある.併存症や年齢,家族状況や生活状況など,患者の個別性を加味し,患者や家族と相談し,推奨とは異なる方針を選択することも日常茶飯事である.
 本書は総合診療医の視点で「診療ガイドラインをどう利用するか」をテーマに企画した.総論では診療ガイドラインの吟味や,イギリスやアメリカの総合診療医(家庭医)が診療ガイドラインをどのように利用しているかを論じていただいた.各論では診療ガイドラインの概要と診療ガイドラインが教えてくれないことを,若手の総合診療医の先生方を中心にご執筆いただいた.ややこしい依頼にもかかわらず,趣旨を踏まえて執筆を引き受けてくださった皆様に感謝申し上げ,本書が読者の診療の役に立つよう願っている.

2016年3月
福島県立医科大学医学部 地域・家庭医療学講座
菅家 智史


目次

Ⅰ 総論
 1 信じていい診療ガイドライン,鵜呑みにしてはいけない診療ガイドライン 
 2 総合診療医の診療ガイドラインとのつきあいかた:イギリス編
 3 総合診療医の診療ガイドラインとのつきあいかた:アメリカ編

Ⅱ 各 論
 4 高血圧 
 5 脂質異常症
 6 糖尿病
 7 高尿酸血症
 8 咳 嗽
 9 気管支喘息
 10 小児気管支喘息
 11 COPD(慢性閉塞性肺疾患)
 12 市中肺炎
 13 医療・介護関連肺炎
 14 胃食道逆流症(GERD)
 15 H.pylori感染症・消化性潰瘍
 16 急性腹症
 17 過敏性腸症候群
 18 NASH・NAFLD
 19 心房細動
 20 慢性心不全
 21 CKD
 22 尿路結石症
 23 頭痛
 24 認知症
 25 睡眠障害(不眠症)
 26 男性下部尿路症状
 27 女性下部尿路症状
 28 腰痛
 29 骨粗鬆症
 30 小児急性中耳炎
 31 アレルギー性鼻炎
 32 アレルギー性結膜疾患
 33 食物アレルギー 

 以上です。



※COI開示
個人的な感想として書いたつもりですが、編集部から1冊贈呈されたため、恩義を感じて若干褒めすぎている部分はあるかもしれません。
なお、編集に関わったり分担執筆したりはしていないので、編集料等はいただいておらず、みなさんが購入しても私の懐は特にうるおいません。

 


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2016年5月のEBM学習会「深部静脈血栓症にアピキサバンってどうなのよ?」を開催しました。対象患者や診療セッティングを考慮して適応を判断するStep4がやっぱり大事

EBM学習会、開催しました。

昨年度後半は流れがちでしたが、とりあえず今年度は4月・5月と継続できています。


前回の4月は新年度初回だったので、簡単に総論的レクチャーしてから論文検索に移りました。

レクチャーは
EBMの考え方(エビデンスに盲従するのではなく、エビデンスも踏まえて本人や環境や医師の考えとすり合わせる)
情報源の検索の仕方(情報源のヒエラルキー、手に入る範囲で最良のエビデンスの利用)
あたりについて10~15分くらい

実際に調べたテーマは、研修医が実際にこまった題材からで
P:日本人中年女性の、冠攣縮性狭心症に
E:カルシウム拮抗薬を内服させると
C:プラセボや硝酸薬と比較して
O:胸痛発作が減るか、心血管イベントが減るか
でやりました。​

​2015年に日本初の研究がでていて、UpToDateに引用されていて、硝酸薬はイマイチという結果がでていました。

ので、「既に答えの出たBackground questionだった」(でも去年までは答えのないForeground questionだった)ということがわかったのと、
これを踏まえて患者に適応するかどうかは患者と相談しないとわからないというところを共有しました。

また、カルシウム拮抗薬はジルチアゼムでのエビデンスが主で、降圧につかうアムロジピンなどのジヒドロピリジン系での研究は無いようでした。

非ジヒドロピリジン系は、心疾患がある人では予後が悪くなるので、UCGで心臓がぼろぼろじゃなければジルチアゼム(非ジヒドロピリジン系)、心臓がボロボロで血圧も高めならアムロジピンがいいかもしれない(こっちはエビデンスなし)。
とかの話もでて、余計に医者が知識・エビデンスだけでは治療方針が決まらないことも見えてきました。


 

今回の5月は、レクチャー無しでいきなり文献検索→批判的吟味→ディスカッションと行いました。
 
テーマは事前に募集をかけて、3つ来たもののうち「DVTにNOACありですか?」にしました。

元になった臨床の疑問:
循環器内科医が「最近のDVT治療はエリキュース使うことが多い」って言ってるけど実際どの程度エビデンスがあるのだろうか?本当だったら訪問診療とかで使いやすいかもしれない(PT採血がいらないから?)

P 心房細動でなく、肺塞栓を合併していないDVTに対して
E エリキュースと
C ワーファリン、またはプラセボとを比較すると 
O 肺塞栓症合併や死亡率減少効果や、出血性合併症は減るのか?



今回は事前に読む論文を指定しておいて、論文検索時間を圧縮して、慣れてない初学者が批判的吟味の手順に集中できるようにしました。

対象論文は、DVTなどにアピキサバンをつかった「AMPLYFY試験」で、事前に全文ダウンロードして共有しました。
http://jaha.ahajournals.org/content/4/12/e002340.full.pdf+html


また、南郷先生のThe SPELLからダウンロードさせていただいている、「はじめてトライアルシート」にそって批判的吟味をしました。
http://spell.umin.jp/EBM_materials_BTS.html 
(うちでのEBM学習会をするときに、基本フォーマットをこれにすることに決めて、事前に連絡取って利用を快諾していただいています)

また日本語が苦手な人が全体像をつかめるように、また二次資料を読んでから原著論文読むと印象が変わることも味わえるように、製薬会社が日本後で解説しているページも事前に共有しておきました。
http://pfizerpro.jp/cs/sv/eliquis/symptom02/evidence/index.html



結論としては、この論文の通りの「併存症が重い人を除外して、WfのINR2-3くらい+低分子ヘパリンと比較すれば、アピキサバンは効果が劣らず出血も増えない」という評価になりました。

製薬会社メインの論文だけあって、都合悪い解析がしやすいような生データが、普通のRCT以上に隠蔽されていて(Appendixとか別論文にデータがあるっぽい)、深い批判までは出来ずややモヤですが、標準レベル以上に頑張ったRCTっぽい感じは伝わってきました。


最初の、論文のPICOを確認する段階で、Patientたちは自分たちの疑問となった患者層と似ているか、Intervention群で使っているアピキサバンの用量用法は日本でも保険適応が通っているのかとか、Control群でのエノキサパリン+ワーファリンは普段自分たちがやっている用量設定と同じかどうか、そして知りたいアウトカムがメインに入っているかなどを丁寧に吟味するところで、論文を当てはめられるかどうかを最初に確認してからはいったのは良かったです。

厳密なことを言うと、当初の疑問とこの論文は合致していないので読む価値なしなのですが、それを理解したうえでRCT批判的吟味の練習と割りきって読んでもらいつつ、後のディスカッションでPICO合致具合を無視するとStep4のところで困ることを体験してもらうことも狙いました。



個人的にいちばん面白かったのは、EBM step4の「じゃあ、実際の患者に適応するかどうか」のディスカッションでした。

当院の「APTTは即検で測れない環境で(だから未分画ヘパリンは使いにくい、でも低分子ヘパリンの使用経験値も高くはない)、でもうちで不安定・有症状の近位DVTや肺塞栓を治療する場合、侵襲的治療や高次医療機関転院を望まない場合など特殊なケースがほとんどで必然的に超高齢者・高度低栄養・腎不全などがある場合も多い。そうなると、そもそも論文のPとはかなり異なるので、用量設定をどれくらい減らしていいかは未知数。だから、安易にこのまま利用できない」という意見がでました。

その一言で、Step3の批判的吟味を終えた時点では「アピキサバンすげーんじゃねーか?」という雰囲気が一気にひっくり返ったのが面白かったです。


となると、コントロールで使われているエノキサパリンが良いんじゃないか?て話になり、各自で調べてみたら年齢や腎機能での細かい用量調節もあるのでいいかもとか、フォンダパリヌクスも用量調整が細かく出来ていいかもという話になり、次にDVT来たらどうするかについて参加者それぞれの考えやモチベーションが高まっていい感じに終わりました。


また、うえのほうで触れましたが、そもそもの臨床的疑問を定式化するStep1では「たまたま見つかった軽いDVTでもアピキサバンでいいのかな?」という疑問と、実際に見つけた論文のP(肺塞栓や近位DVTなどハイリスクの人で、ガッツリ攻める時のアピキサバン」では全然違うので、当初の疑問の答えではない論文を読んでるよね。という指摘が参加者から出たのもとても良かったです。

単に論文に書かれているRRRやP値とかに惑わされないだけでなく、臨床の文脈で、日常の疑問と絡めて行うEBMをイメージ出来ているハイレベルな研修医たちが多くてすごいなぁという感想でした。



やはりこの勉強会は、自分が一番勉強になるし、面白いし、研修医たちの価値観の変容を促して学び方や臨床のあり方を成長させる上でのインパクトが大きいですね。

来月もまたやる予定です。

 


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「胃がんリスク算出のためのスコアシート」でましたね! これとピロリ除菌効果のエビデンス掛けあわせた電子カルテテンプレートが快適です♪

「胃がんリスクチェックシート」というのが公開されてますね!

Facebookで回ってきて知りました。
 

無題
 



これと、ピロリ除菌のエビデンス(Cochrane Database Syst Rev 2015 Jul 22;(7):CD005583BMJ 2014May 20;348:g3174)を組み込んだ電子カルテテンプレートを作りました。

上記のチェックシートの項目をクリックすると、自動で合計得点がでて、胃癌発生率がでて、さらに除菌した場合の胃癌発生率や、治療によって胃癌発生を防げた人数、防げなかった人数、治療にかかわらず胃癌にならない人数を自動計算できるように組みました。

こういうの、得意です。


 
ちなみに、このシステマティックレビューの効果はこんな感じです(原著読み込みでなく、Dynamedで紹介されていた要点をそのまま訳しただけです)
慢性胃炎のピロリ除菌は、全体でのRR0.66(割合として34%減る)

NNT124→ARR0.8%(がん予防としては優秀だが、実数に治療によって癌にならずに済む人数は少ない。レビューの元になった文献でも300-1000人規模の研究での胃癌発生を3人から2人に減らしたくらいなので、1000人中998人は無駄な治療になるともいえます)
 
全死亡不変

胃癌死亡減少も有意差なし(CI0.4-1.11→死亡が増えるかもしれないというのは、治療合併症では説明できないので、除菌したせいで胃がん検診やめちゃったとか(でもRCTなので厳密なフォローアップができる人たちでの検討ですが)、除菌しても時既に遅しとかいろいろ解釈あり)
 
副作用情報なし(実際の経験からの感覚では、年何人かは入院や治療による仕事お休み患者に遭遇しています)


まあ、治療に伴う大きな害はない(虚弱高齢者で下痢を契機にぶっ倒れるのはよくありますし、大規模に除菌進めたら医療費も無視は出来ないけど)ので、必要時はやってよいと思います。

また、うちでは健診課や内視鏡担当医からすでにやる前提で指示や患者説明が入っている場合も多く(日本全国でもそんな風潮なんじゃないかと思います)、その場合は無理に流れをひっくり返して患者が戸惑ったり不信に感じるようなことまではしなくても良いのかなとも思います。


ただし、「胃癌は3分の1も減るのでこれまでの予防医学の中ではかなり画期的ではある。でも、もともと胃癌発生の多い日本人中高年は”除菌して終わり!”にはならず、除菌しても癌になる人もいます。かならず胃がん検診は続けてね」というのとセットで説明し、除菌するかどうかを一緒に相談する姿勢を、とくにうちの研修医たちには口を酸っぱくして説明しています。


前立腺がん検診などもそうですが、「今病気で健康や生命が脅かされている人」への治療に比べると「今元気で普通に暮らしている人」を対象に介入する予防では、害と利益の説明をきちんと行ってShared decision makingを行う必要があり、健康増進・疾病予防を得意とするべきである総合診療医には重点的に教えています。



なれないとエビデンスの数字だけ見て、「RR0.66だからすごく減るよ!!」というのだけに囚われてしまいますが、RRR、ARR、NNTや、治療に関わらずその病気と関係なく過ごす人の人数などもイメージできるようになりませう。



最後に具体例を

42代男性、慢性胃炎なし、ピロリ陽性、 非喫煙、高塩分食摂取あり、家族歴なしだと10点になり、胃癌発生率は10年間で0.4%以下とすごく少ない(「以下」なので測定感度以下でわからんくらいということ)
→ピロリ除菌で胃がん発生率は0.3%以下、1000人治療して胃癌を防げる人数は1.4人、治療しても胃癌になる人数は2.6人、治療にかかわらず胃癌にならない人996人になります。

一方で63歳男性、慢性胃炎・ピロリ感染なり、喫煙・高塩分食摂取・家族歴ありだと22点になり、胃癌発生率は10年間で8.3%とさっきとはかなり異なって大きな数字です
→ピロリ除菌で胃がん発生率は5.5%に減り、1000人治療して胃癌を防げる人数は28.2人もいますが、治療しても胃がんになる人数は54.8人と持っといて、治療にかかわらず胃癌にならない人は917人とやはり大多数。

実際は、年齢層によってとか、胃粘膜所見によってで治療効果が異なるという研究結果もありますが、大規模Systematic reviewを大きく逸脱してリスク推定をするほどのデータの蓄積はない(Dynamed UpToDateでもこのSRデータを最初に紹介している) ので、当面はこれでやっていこうと思います。


※一応つけくわえますが、「だからピロリ除菌なんて無駄だぜ!」とはいっておらず、癌になるのを待ってから早期発見する形式(二次予防)の胃バリウム・胃カメラよりも、そもそも胃癌にならずにすむ人がけっこうでるこの治療(一次予防)は素晴らしくやるべき時にはきちんとやるべきです

一方で治療のコストですけど、「慢性胃炎の診断がないとピロリ検査できず、ピロリの診断がないと除菌できない」という保険診療の前提を考慮すると、「初回胃カメラ1140点+ピロリ検査(尿素呼気試験70+判断料150点+試薬ユービット錠3104円)+一次除菌(ランサップ800で831円)+除菌確認検査(尿素呼気同上)」(1点=10円)で、合計19835円、約2万円なので、上記の例にある40歳の低リスク群1000人から1名の胃癌発生を減らすため(胃癌死亡はへらないよ)に必要な費用は2000万円です。

保険診療で3割負担なら患者個人は6000円ですが、残り7割は医療保険とかから出ているので、決してばかにならない額と個人的には思うので「全員に何でもかんでもピロリ除菌せよ!」よりは、上記のようなリスク評価をして狙いすました対象者に提案し、リスクやメリットを相談してShared decision makingしてというのが大事かと思います。

まあ、他の治療や予防もみんな同じですが、エビデンスがそろっていてかつ頻度の高い問題なので少し詳しく扱ってみました。


 


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2015年12月EBM学習会ー骨粗鬆症新薬プラリアは便利そうだけど値段に見合う効果はあるの?

2015年12月1日火曜日の18時から19時に、EBM学習会をしました。


いつもの、うちの法人の総合診療グループ所属の後期研修医対象で(指導医もいいよにしてますけど誰も参加しませんね・・・)、グーグルハングアウトを使って地方院所ローテ中でも、子供を保育園に迎えに行った後に自宅からでも参加できるようにしてやっています。

今回は、自分と、検討する臨床的疑問を提示してくれた北見の研修医と、以前うちの法人で研修をしていて今は他にいる先生がメーリングリストで学習会のことを見つけて参加してくれたという人の合計3名でこじんまりやりました。

おかげで、批判的吟味の各段階について参加した研修医がわからないところは適宜質問してもらい丁寧に答え、自分からも少し追加で関連情報を解説したり、批判的吟味が終わった後に臨床応用をどうするかのディスカッションを少し丁寧にしたりできて自分にとっての満足度は高かったです♪



ちなみに今回扱ったテーマは、「骨粗鬆症治療の新薬、プラリア」についてです。

地方ローテの先生から、うちの法人で新規採用になるので詳しく知りたいというニーズから選びました。
新薬を採用するかどうかを自分で批判的吟味して決める能力は、病院全体の管理に関わる病院総合医や、院内調剤を行う場合の診療所家庭医にとって必須と言えます。

効果があるかどうか、それはどれくらいか、他の旧薬と比べてどうか
副作用はどうか、相互作用はどうか、薬価はどうか、患者利便性はどうか
などを検討できればと思いますが
とりあえずは研修医が想定したPICOに近い論文を扱うことにしました。 
 


私が事前10分ほどで調べた資料は、以下のDropboxリンクに入れてあります。
https://www.dropbox.com/sh/mnlzq710wgzugn4/AACkBTyVIf9wZJHWjJ1ChONra?dl=0

(余裕があるときは、自分が事前にしらべて、当日の議論のガイドになるような情報をこうやって事前共有しています。時間と関心が高い人は事前に予習する権利があり、また当日も遠方の各地でそれぞれが印刷するか自分のPC画面で資料を見れるので学習会中の進行が円滑になります)


以下、リンク先Dropboxフォルダ内のファイルの説明をしておきます。

一番大規模のFREEDOMか、日本人で調べたDIRECTというRCTを読むつもりです(多分DIRECTを扱うと思います)と事前に指定しました。場合により論文指定する場合と、当日一緒に論文探す場合とがあります。

まだ不慣れだなと思う方は、事前に以下の参考資料を読んでもらうようにもアナウンスしました。

EBMとは?[The SPELL]→EBMの5つのステップの正式版を、詳しく、でも長すぎず開設してあります

日本語のPDFファイルはプラリアを扱った医療系ブログ記事なので、基本的知識(バックグラウンド)を埋めるのに参考にしてもいいです。

RCTの批判的吟味に不慣れであれば、「RCTを10分で吟味するポイント」が一番簡単なのでまずざっとチェックして、意味の分からない用語があればテキストやネットでさっと確認を。

当日の予習をするなら、「はじめてトライアルシート」を使うのでこれにそって論文を読んでおくと良いと思います。



当日、ハングアウト越しに自分が司会進行やレクチャーや質疑応答をしながら、手書きでメモを取ったのをスキャナ取り込みしたのが「151201-EBM学習会_デノスマブRCT」です。

論文読んだりディスカッションする方に頭使うので、メモが雑ですいません。

今後は準備とか当日の司会や記録をほかの人と分担できるといいなぁ・・・



批判的吟味の結果ですが、我々の理解力で読んだ限りでは以下のとおりの解釈です。
(メモ内容の補足程度に書いてます)

読む論文は日本人対象のDIRECT研究にします(参加者の意向で決定)

PICOはある程度イメージに近いが、一番知りたい大腿骨頚部骨折や寝たきり・ADL障害はPrimary endpointではないのでちょっとだけ残念
また、比較対象がデノスマブ 対 プラセボ 対 アレンドロン酸の3つ比較で、実際の臨床でもアレンドロン酸と比べてどうだろう?というシチュエーションは多いので嬉しい(ホントならプラセボ比較ないほうが参加者数をより多く割り振れていいような気もしますが、メインアウトカムをプラセボに対する優位性にしないで有意差でないと研究者的に悲惨だからやむなしなのかなぁ)

割り付け方法が見つけられなかったが、ランダム割り付けであり、ベースラインが同等で、ITTではないがFASという解析をしていてすごく悪いわけではないようだ(FASの意味は、はじめてトライアルシートの解説pdf参照→http://spell.umin.jp/EBM_materials_BTS.html

脱落も1割程度で少ない印象、マスキングはしっかりされているが、皮下注射のデノスマブと内服のアレンドロン酸は流石にマスキングできないのでオープンラベルになっている。
しかし、アウトカムの骨変形・骨折は独立した人が画像評価しているので、オープンラベルにした影響は少なくできているかもしれない。

メインアウトカムでは有意差がでているので症例数は充分で、一応調べてみたらサンプルサイズ計算もしてある。
(セカンダリの非椎体骨折では有意差ついていないが、それはサンプルが足りないからかもしれない→別のより規模の大きいFREEDOM研究では有意差ついてるので確かにそうかも)

結果の評価は、せっかく少し時間あまったので手計算実際にしてみましょう。
→実数が論文には書いてなかったので、割り付けのフローチャートの人数と、結果のRRR・ARRの数値から2×2表の数値を求めて、RRRやARR、NNTを計算してみて、なんとなく実感湧いたね。椎体骨折減らす効果はすごいね!でも非椎体骨折は減らないのか・・・

→FREEDOM研究でミてみると、頚部骨折は有意に減る!! けど、NNTは200くらい
 2年間デノスマブつかうと、1回2.5万円×4回(半年ごと注射だから)×200人で約2000万円かけて1つの頚部骨折が減らせるのか。
 金額の実数だけでもけっこうだし、アレンドロン酸もこれよりは安いけどやっぱりお金かかりますね。
 (リンク先資料の「骨粗鬆症治療薬薬価一覧.pdf」参照)

→前にThe SPELLで読んだ、アレンドロン酸の費用と骨折治療の費用、非薬物療法の転倒予防効果を経由した骨折予防効果なども加味すると相当割にあわないね・・・



という感じでした。



結論として、採用されてしまったものは仕方ないけど、多くの症例に考え無しで使う薬ではないですねという結論になりました。

ビス剤が使えるならそちらを優先する、

よほどのコンプライアンス等の問題で6ヶ月に1回投与が魅力的な症例に絞るならいいけど、そういう人はそもそも骨粗鬆症治療の適応があるのか(ビス剤内服後剤取れないADLの人に期待する効果は?とか、今回のRCTはビタミンDとカルシウム製剤をきちんと飲める人かつ併存症や二次性骨粗鬆症などを除外されてかつ椎体骨折しかない人だから適応できる人殆どいないんじゃとか)

そもそもの転倒予防の非薬物療法を徹底する必要があり「プラリアうっとけばOK」という考えだと返って骨折が増えるかもしれない

生活保護など治療費が本人以外から出ている場合はなおさら費用対効果的には適応を絞るべきだが、そうでない人も自分では3割しか払っていないのでやはり微妙では

ということでした。


ちなみに、UpYoDateなどでも、基本的には悪性腫瘍の骨転移に対する記載が主で、単なる骨粗鬆症に対してというのはワリとおまけ的な記載なので、自分もそういうスタンスで行こうかと思います。

そもそも、悪性腫瘍の骨転移でも、なんでもビス剤やプラリアというわけではないんですが、それはまた別の機会に。




こんな感じでした。

解釈間違っているところあればご指摘いただければ幸いです。


次回は多分2月の第1火曜日だとおもいますので、参加希望の方はご連絡くださいな。

でわ!
 
 


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【論文紹介】国内へき地における心血管イベント遠隔治療

(※ブログ更新後、複数の方から情報をもらい、実例のところに書き足しています→2015年10月6日19時12分最終更新)


ちょうど1ヶ月くらいまえに、「へき地に専門医をたくさん配置するんじゃなくて、いろいろやれることがあるんではないか?」という趣旨の記事をかきました。



北海道のへき地に循環器・脳卒中専門医をくまなく配備すべきか? →そうではなくて「専門医療機関前対応の充実」が先だし現実的では?という意見を書いてみました




へき地では「専門医療機関前の血栓溶解療法」を検討すべきというガイドラインの記載を紹介している部分を一部引用します
=================
 参考資料のひとつはACS/STEMIのガイドライン

日本循環器学会のは無料・日本語で読めるのでリンク貼っときます(すばらしいですね!)。

これの11ページに専門医療機関前の血栓溶解療法のことが記載されています。



もう一つは脳卒中ガイドライン2015年版

2015年版はwebでの無料閲覧できません(残念ですね・・・)が、その49ページ(遠隔医療システム)・50ページ(病院間搬送:Drip and ship法)に記載があります。
(無料でwebからみられる2009年版では該当する章はありません)
=================


海外ではすでに実践されているし(だって米国やカナダやオーストラリアとか広大すぎるしね)、日本のガイドラインにも載ってるのに、なんで日本では「とにかく専門医と最先端の医療施設を全国に配備すれば日本は良くなる!」というバブリーな発想から転換できないんだろうというモヤモヤがつのっていた時期です。

先々週、北見にいってみてなおさら「オホーツク地域とか、特に厳しいな」という実感を伴う感想も持ちました。



が、最近時間を見つけてパラパラめくっている日本プライマリ・ケア連合学会誌で、面白い記事を見つけました。

109_166


「医療過疎地域における急性期脳梗塞患者に対するrt-PA静注療法」
日本プライマリ・ケア連合学会誌2015, vol. 38, no. 1. p18-22
https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/38/1/38_18/_pdf


徳島県で行われた、「搬送に時間がかかる地域において、画像遠隔診療支援システムをもちいて搬送前にrt-PA1分静注し、搬送しながら残り1時間点滴するDrip and ship法を実践」した報告です。

4例が適応となって、割といい感じになったようです。

ないものねだりではなく、実際の地域の現状を分析して(この地域の脳卒中患者の平均搬送時間は長くてrt-PAの恩恵を受けられないとか)、それに対してエビデンスがありガイドライン推奨もある治療を適応して、かつやりっ放しでなくきちんと振り返り次に活かす姿勢というのは素敵だなと思います。


他にもグーグル検索で見つかった範囲では(Pubmed検索とか医中誌・J-stage検索すればいいんですが・・・)、

熊本県でも視野にはいっているようです
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000095086.pdf

北海道で検索した範囲では残念ながら見つからず、例えば上川地域の医療計画では「とにかく早く運んで治療する」ということしかなく遠隔診療支援などの記載はあまり見当たらないかんじでした。
http://www.kamikawa.pref.hokkaido.lg.jp/hk/hgc/grp/kamikawatyuubutiikisuisinnhousinnikkatu.pdf

せっかく日本一広大なんだからいろいろやったら世界に誇れる研究ができると思うのですが。


(ここから追記)
医学書院の方から、週刊医学界新聞にのっている、京都の福知山での実践報告記事をご紹介いただきました。

「専門医不足の地域中核病院で rt-PA治療をどう実現させたか」鈴木 龍児(市立福知山市民病院地域救命救急センター・副医長)
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03100_04

これは、かなり詳しいし、手の届きそうな感覚の持てる記事ですね。自分も地方にいったら・・・と思います(さすがに、医療機関ひしめき、専門医うごめく札幌市内でやろうとは思いませんが)


さらに、うちの関連病院で研修していた後期研修医から、長崎県の五島列島でも画像遠隔診断支援のもと、離島でtPAをしているという情報をもらいました。

教えてもらった情報は、長崎救急医学会の抄録の、一般演題F5に演題があります。
http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/emc/nsam/data/23rd_program.pdf

自力検索では、公的なweb情報は見つかりませんでしたが、ブログでこんなのはありました。
http://oizukam.blog.bbiq.jp/blog/2015/06/post-2ae9.html

離島でもできること、その研修医も関わったことなどから、更に心理的ハードルが下がりました。


また、道内でも「奥尻でtPA施行してから市立函館病院に搬送された事例」があるそうです。

ブログコメントに頂きました。

「北海道は全然ダメなのかよ!?」と不安になっていたところなので心強いです。もう少し行政や大学が主体的になってもっと全面に出してもいいのではとは思いますが(それで劇的に適応症例が増えたり地域の予後が改善するわけではないかもしれませんが、インフラとして、選択肢の一つとして用意される意義はあるのではと思います。画像遠隔支援システムは、脳卒中急性期治療にかぎらず応用範囲広そうですし)


にしても、ブログって、すごいですね。いろんな情報が集まってとてもうれしいです。

(追記、ここまで)



ほかにも、もし「あ、この大学で、この病院でやってますよ。ほら、報告もここにあるから」という情報があれば教えて下さい。

それを見て自分や、自分の所属する法人でやれるというわけではないですが、そういうのがあれば遠隔支援を受ける側のプライマリ・ケア医を育てるものとしていろいろやれることはあると思うのです。

 

とりあえず、今回はこんな研究論文が存在し、しかもプライマリ・ケア連合学会誌に乗っていて「うをー!!」と興奮したので紹介してみました。

 


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勉強メモ-脳卒中サバイバー(生存者)の長期予後・死亡原因について。脳卒中で亡くなることがすごく多いけど、心臓や肺も注意です

今日のお勉強のお題は「脳卒中サバイバー」について。



日本人の死因として、疾患の中では悪性腫瘍、脳卒中、心疾患、肺炎などが多いです(疾患以外では事故や自殺や老衰も多いですが)。

で、今は救急医療や専門医療がいい感じなので、これらに罹患してもしなずに退院する人はたくさんいます。

そしてこういう病気から生還した人たち(サバイバー)は、完全無傷で社会復帰できることはまれで、悪性腫瘍であれば手術や化学療法や放射線療法のダメージを受け心理社会的にもいろいろおきるし、脳卒中なら麻痺や高次脳機能障害などわかりやすい障害があるうえに心理社会的にもいろいろ、心疾患でも心臓障害として身体機能等にいろいろあり、肺炎も認知症やADL障害のある患者の繰り返す誤嚥性肺炎をみている人たちなら多くは語らなくても色々感じるものはあるでしょう。


しかし、今の急性期偏重の医療では、「無事救命されて助かった人たちの退院後の生活」までは手がまわらないことが多く、こういった人たちの苦悩のケアはまだまだ不十分です。

病院によっては専門医が退院後ケアまでしていて、癌の治療後もがんサバイバーケアを専門的に扱う部門が手厚いケアを継続しているところもあるそうですが、まだまだ少数派なので住民の多くはそういう恩恵には預かれていません。

ましてや、これらのサバイバーがその後被る障害や二次的に発生する疾患は、必ずしも元の病気と同じ系統ではなく、消化器癌患者が心不全や肺炎を起こしたり、脳卒中患者が感染症を起こしたりするので、治療の専門医たちがその後のサバイバーケアを抱え込むことはもしかしたら専門外のケアが足りなくなる可能性があるんじゃないかと心配していたりもしています。

ので、普段の生活に寄り添って、多くの患者さん達を地域ベースで、特定の臓器・疾病に偏らずみることのできる総合医の出番だと思うのです。

 

というところまでが私個人の意見というか思いであり、実際にはいい環境でのサバイバーケアもあるかもしれず、ひとりよがりにならないためにもこういう「自分的にアツい領域」については意識的に定期的な勉強をして知識のアップデートをするようにしています。



というわけで、今日はとりあえず後期研修医たちの外来振り返りで話題になった「脳卒中サバイバー」に絞って、こういう人たちの生命予後や死因を踏まえて適切な予防策を打てるようにお勉強してみようと思います。

せっかく脳卒中なので、海外とは発症頻度や病型分布も違いますので、日本人のデータを元にしてみようと思います。


ので、いきなりUpToDateやDynamedにとびつかず、Google日本語検索でいろいろ調べた中でよさ気なものを読み解きます(そういう意味では、本当にBest available evidenceという証拠はないですが、お勉強ということで甘く見てください)


今回参考にする資料は、以前からネットで見つけてはちょくちょく参考にしていたこちらです。

栃木県脳卒中発症登録生命予後追跡調査
http://www.pref.tochigi.lg.jp/e04/welfare/kenkoudukuri/kenkoudukuri/documents/pdf-1-16_2.pdf


対象は1年間の間に登録された栃木県内協力医療機関の脳卒中患者5000人規模で、その後約5年ほど追跡して死亡の有無、死因、死亡場所を調査したものです。

前向きコホート研究ですね。

知りたい「日本人で、一度脳卒中を起こした人たち」という集団と完全に合致しています。

nも充分に大きそうなので統計学的には意義が出そうだし、脳卒中非専門である研修医や指導医が医師人生の間に経験する患者数よりは多そうなので「オレの経験的には・・・」で語れる範囲よりは視野が広そうです。


結果の詳細はリンク先を見ていただくとして、以下に重要な図表の貼付けと、本文から印象に残った重要な点だけ抜粋します。
無題

無題1



5年間の追跡で、全死亡率40%、脳血管疾患による死亡が22%でした(リンク先資料は生存率で数字出してますがわかりにくいので100から引いて死亡率に置き換えてます)。
→死亡率はかなり高いが、脳卒中再発による死亡は半分くらいしかない。


病型別で死亡率は結構違くて、SAH>脳出血>脳梗塞の順で死亡率が高く、同じ疾患による死亡の比率もこの順で大きい
→SAHはSAH発症時にそのまま死ぬ人が多いが、脳梗塞は脳梗塞初発時に死なない人が多いが退院後にじわじわ死ぬ人が多くかつ脳卒中以外で死ぬ人が多い


年齢が高いほど5年生存率は悪く、65歳未満では84%も生存しているが、75歳以上では43%しか生存していない。
→これはまあ当然当然


医療機関でなくなる患者の割合はSAH>脳出血>脳梗塞なので、脳梗塞は病院以外(施設や自宅)でなくなる確率が比較的高い
→家庭医の出番ですね。


脳卒中以外の死因では、循環器系が第2位、悪性新生物が第3位だが、脳梗塞と75歳以上集団では呼吸器系が上位に食い込んでくる。
→肺炎が多い患者層では、誤嚥予防や肺炎予防が特に重要でしょう(生命予後延伸だけでなく、QOL確保のためにも)

→また2位・3位と並べると同格に感じるが、1位の脳卒中死亡(発症してそのまま亡くなる人と、いったん落ち着いた後再発して亡くなる人の合計)が圧倒的に多く、循環器死亡は4~15%、呼吸器死亡は13%程度、悪性新生物死亡は4~5%とかなり小さい(図4参照)。

→「脳卒中患者は癌で死ねるほど長生きせず、脳や心臓といった心血管系の再発か、それがなくても機能障害の結果としての肺炎で死ぬ確率が高い」といえるため、脳卒中後往診受けている患者に延々と癌検診をやるのは効率が悪いだけでなく、コストや患者侵襲の面からも不適切と思います。


75歳以上に限定すると、死因は脳卒中44%>呼吸器17%>循環器14%>悪性腫瘍10%くらい(数値書いてないので表からの推測)
→かなりバラけて来るので、脳卒中サバイバーを脳卒中専門医が抱え込むのは結構厳しいのではないかという気がします。

→また、高齢者なので悪性腫瘍の比率がそれなりにありますが、だからといって頑張ってがん検診するかは患者や家族と相談が必要ですね(苦しい思いをして癌検診をしても耐術能や化学療法適応がなくて絶望するだけというケースもありますし)。


以上をふまえた脳卒中サバイバーケアの自分なりの考えをまとめなおしてみます。

脳卒中サバイバーは5年間で亡くなる可能性が高い(一部の癌の5年生存率より悪いくらい)ので、がん治療中患者やガン再発患者と付き合うのと同等の「今後の生き方、死に様」についての相談(Advance care planning)が必要。

また、脳卒中再発で亡くなる可能性が圧倒的に高い(正確には発症時にそのまま亡くなる人の数字も含まれているので、純粋な「退院後再発」はそこまで多くないですが)ので、その再発予防のための血圧管理や抗血小板・抗凝固剤の使いこなしに習熟する必要があるし、再発した場合の早期発見・連絡・搬送方法や治療コード(どこまで侵襲的な治療をするか)の事前確認が必要。

SAHは発症時にそのまま亡くなることが圧倒的に多いが無事退院すればそのあと脳卒中再発は意外と少ない(図2の曲線傾き参照)。一方で脳梗塞は生存退院後の全死亡の傾きが一番大きく、かつ比較的病院外死亡が多いので、「診療所家庭医だから脳卒中の終末期ケアや看取りは知らんよ」では済まされないと思って力をつけておいたほうがよい。あなたのかかりつけ患者のうち、「既往歴:脳梗塞」って書いてある患者さん、大丈夫ですか?

それと、意外と心臓や肺で持っていかれることが多く、こっちは不意のACS以外であればそれなりに予防・コントロール可能(心房細動の塞栓、慢性心不全の増悪、誤嚥性肺炎、COPDなどの増悪等)なものが多いので、疾病進行予防や増悪予防などの「予防医療」に今まで以上に習熟し、診療所家庭医が行う一般住民に対する健康増進・疾病予防とは異なる「超ハイリスク患者に対する濃厚で重点を絞った予防医療」をきちんと勉強して身につけたほうがよい。

癌の死亡割合は高齢者で無視できないくらいにあるが、同時に高齢者脳卒中サバイバーは認知症やADL障害などの併存も多いはずなので、単に「ガシガシ癌検診続けるぜ-!」ではなく、やはりShared decision makingが重要。


と思います。

言葉としてまとめてしまうと当たり前すぎて、「普通の慢性疾患フォローと予防医療をきちんとやる」に集約されてしまうのですが、やはり一般住民や脳卒中歴のない慢性疾患患者のケアをは少し重点が違うので「脳卒中サバイバーケア」として意識して勉強したほうがより早く質高い診療を身につけられるのではないかと思います。




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プライマリケアカンファ抄読会資料公開「超早期リハは穏やかに、回復期はしっかりじっくり」という結論から、「はじめチョロチョロ、中パッパ理論」へ

明日のプライマリケアカンファで発表する資料ができました。

イベントの説明とかは、昨日の記事参照をhttp://blog.livedoor.jp/gp_ken/archives/8900648.html 


完成した資料がこっちです。

リハの強度とタイミング-はじめチョロチョロ理論atPCC by けんた




最初に簡単に背景を紹介し、結論もだすことで、参加者であるプライマリケア医とか診療所の医師にも「あ、オレも関係あることだ。聞いたほうがいいかも」って感じてもらった上で、
 
「超早期にガッツリとリハやると死亡率あがるよ!」という脳卒中・COPDの論文を簡単に紹介し、

逆に予後が良くなるリハ栄養的論文と対比しながら、

「超急性期~回復期移行までカバーする、適切なリハ開始時期、リハ強度」についてまとめることができたと思います。

(細かいことをいうと、予後悪化論文の2個は本文含めて読んだけど、それ以外はざっと二次資料見ただけなので曖昧ですが、そこはメインメッセージではないので許してくださいな) 
 


個人的には「はじめチョロチョロ中パッパ」理論がお気に入りです。

なんとなく、結語をまとめていたら頭のなかに「はじめチョロチョロ」って浮かんでみて、その後webで語源とか意図する意味とか、炊飯器の開発の歴史まで調べているうちに「ああ、これ、同じだわきっと。少しアレンジすれば覚えられるんじゃないかな」と思いました。

スライドにもあるように、急性期は他職種でのシステムケア、退院後も地域の他組織・他職種で継続的に関わる必要があるので、医者しか理解できない英語の理屈だと広がりにくいなぁという思いがあり、なんとか日本語でイメージしやすい感じにできればいいなあという思いが根底にあったので、それでひょいと浮かんだのかもしれません。


もう少しエビデンスレビューができればちゃんと出版とか論文書いたりできそうですが、とりあえず言い出しっぺとしての証拠は残しとこうとおもって公開してみました。

どうですかねぇ・・・。ワリとイケてると思うんですが
 


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7月22日のプライマリケアカンファ(全国web学習会)で抄読会発表担当します。「超急性期強化リハでの予後悪化についての論文」紹介と、その一般化について

今度の7月22日水曜朝7時半からのプライマリケアカンファで、私が発表を担当します。
 
札医大の地域医療総合医学講座がやっていたプライマリケアレクチャーシリーズ(木曜日)の水曜日版で、週によってケーススタディーや抄読会などになっています。


直近の予定表をコピペしておきます。
http://web.sapmed.ac.jp/chiiki/ 
=================
【7月PCC・PCLSののテーマ】
第525回 7月16日(木) ■プライマリ・ケアレクチャーシリーズV-CUBE 
 心房細動のガイドラインから学ぶ
      講師: 吉野 光晴先生
      所属: 松前町立松前病院(北海道)

7月22日(水) ■プライマリ・ケアカンファレンス V-CUBE
 抄読会
      担当: 勤医協札幌病院(北海道)

第526回 7月23日(木) ■プライマリ・ケアレクチャーシリーズV-CUBE 
  孤独死とAi(死亡時画像診断)
      講師: 森 利光先生
      所属: せたな町国保病院(北海道)

7月29日(水) ■プライマリ・ケアカンファレンス V-CUBE
 番外編
      担当: 松前町立松前病院(北海道)
===================


今回は「抄読会」担当なので、単独でそれなりにインパクトのある「論文」を紹介しつつ、そこからプライマリケア医・総合医がつかえそうな一般化された知識を提供できればと思います。
 
具体的には、
「超早期にガッツリリハやると死亡率あがるよ!」という脳卒中・COPDの論文を紹介し、
そのリハ内容や患者背景を深めつつ
逆に予後が良くなりリハ栄養的論文と対比しながら
「超急性期~亜急性期における、適切なリハ開始時期、リハ強度、栄養の必要性」についてまとめる予定です。


論文自体は手元にありますが、
スライド作成に使える時間があと1時間位しかないのでざっくりやるつもりです。
関心と時間があるかたはぜひご参加ください。


このwebカンファ・学習会システム自体は、道内に限定せず広く全国から参加あるみたいなので、「田舎すぎて学ぶ機会がないぜ-」と悩んでいる方は気軽に連絡取って参加してみたらいいかもしれませんね。
 
地理的条件を理由に医学的な勉強が遅れるという言い訳はすでに通用しない世の中ですが、そうは言っても普段からスーパー指導医やめっちゃ勉強している研修医に大量に暴露される教育病院にいるか、地方で内科医数名で死ぬほど頑張って日々ギリギリという環境にいるかでは、意識せずに自然に暴露される情報量には限りがあり、MRさんの情報提供やM3・日経メディカルなどだけではかなーり偏るので、いい機会ではあると思います。

 


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2015年6月EBM学習会「痛風発作後に尿酸降下薬使う時って、必ずコルヒチンを投与すべきなの!?」。ガイドラインの拡大解釈っぷりを理解できとても面白かったです

15年6月のEBM学習会の事後報告です。


5月はゴールデンウィークが重なり、日程ずらすと他の予定も全部ずれてしまってメンドイということでスキップしており、今年度2回目にあたります。


今回の参加者は、

当院からは自分と後期研修医4人

本院からは3人

北見の小規模病院からも研修医1名
 
診療所から後期研修医1名

でした。

初回の4月は準備不足・広報不足で参加できなかった人も加わりいい感じに参加者の輪が広がってきています。

やる気がでますね。

 
テーマは事前に参加者から公募して、当日は文献検索から始めました。

今回もEBMのStepに沿って進めたので、ステップごとに紹介します。



Step1:疑問の定式化
 
本院の総合診療センターの後期研修1年目の先生からもらった疑問で、先日痛風発作で入院した患者を帰すとき、尿酸降下薬を処方しようと思った時「ガイドラインではコルヒチンなど抗炎症薬を開始すべきとかいてあって、ほんとに必要か指導医に聞いてみたら『別にいらないんじゃね?』と言われて迷っている」というのが元ネタでした。

ガイドラインと実際のプラクティスとの差は日常的に経験しますが、それが医師の怠慢でエビデンスを無視しているのか、ガイドラインのほうが実際の診療経験豊富な医師からすると頓珍漢なことを行っているのか、特に経験の浅いうちは区別が難しいですよね。

ということで、ガイドラインの推奨がどれくらいちゃんとした根拠に則っているものなのかを少し意識しながら進めてみることにしました。

ちなみに該当するガイドラインはこれ
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』2012年追補 ダイジェスト版
http://www.tukaku.jp/wp-content/uploads/2013/06/tufu-GL2.pdf
(フェブリクが発売されたのをきっかけに出されたもので、フェブリクの推奨を足した追補版=フェブリクを売るためのガイドラインとも読み取れなくもない)です。

該当するのは14ページの「痛風発作(痛風関節炎)時と痛風間欠期の治療」のステートメントで
「尿酸降下薬の投与開始初期は、痛風関節炎を防止するために少量のコルヒチンを併用投与すると良い」エビデンス1b・コンセンサス2・推奨度Bというところで、
本文では「尿酸降下薬の投与開始初期は少量のコルヒチンを併用投与すると,痛風関節炎の発症を防止することができる」の部分です。

ネットで見れるダイジェスト版では 詳しい根拠は書いていませんが、ダイジェスト版じゃない方では、この記述の根拠として「Colchicine for prophylaxis of acute flares when initiating allopurinol for chronic gouty arthritis」という論文を引用しています(後でこの論文読むので詳細は以下を参照)。
 


まずPECOにすると、

P:痛風発作を起こした高尿酸血症の患者で、アロプリノールを開始する場合(フェブリクや尿中排泄促進薬などはエビデンス少なそうなので敢えて割愛して)

E:コルヒチンを併用した場合(コルヒチン以外の抗炎症薬も推奨があるようですが、今回の疑問は副作用など心配なコルヒチンがガイドラインで推されてて、指導医も使わないのにほんと使うのかよという疑問なのであえてこの薬単独で)

C:コルヒチンを併用しない場合と比較して

O:痛風発作の再発率は減るのか?

T:治療効果の判定なのでRCTで、なさそうだけどもしあればSystematic reviewで。

になりました。



Step2:情報収集

10分間時間をとって各自でネット検索しました。


情報源は、みんなで分担をしてくれていて、UpToDate、Dynamed、Google scholar、Pubmed、Google日本語検索などでした。

まあいいですが、それ以外のツールの使い方も今後提案して使ってみるといいかもしれませんね。


で、見つかったのはSystematic reviewが1コ。

ここで引用されているRCTが2コ。

また、Dynamedでも紹介されているRCTが1コ(上記と同じもの)。

そして、日本のガイドラインの推奨の解説で引用されている論文が、ここに出てきたRCTと同じなので、そもそもの疑問を考慮して、この「ガイドラインで引用されているRCT」を選びました。


タイトルは
Colchicine for prophylaxis of acute flares when initiating allopurinol for chronic gouty arthritis
 2004 Dec;31(12):2429-32.

Pubmedの該当ページはこちら
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15570646

大学図書館や本院の契約などつかっても本文が見られませんでしたが、Google scholarでタイトル全文を入れると1個だけ本文のPDFが見つかりました(最初に取り寄せFAX伝票があるので、誰かが取り寄せてそれをうっかりか意図的かわかりませんがネットにあげちゃったんでしょうね)



Step3:批判的吟味

ここからは、「はじめてトライアルシート」という、評価ツールにそってやりました(作成者、リンク先のwebページ作成者の先生に個人的に連絡し、学習会で利用する許可を頂いています)。


結果としては

キチンとRCTで二重盲検らしいが、盲検の仕方や3重・4重盲検になっているかどうかは不明、ITTかどうかの記載は見当たらないなどはありますが、全体としてはまずまず。

割付後の患者背景に若干偏りがありますが、効果を誇大評価する方向の差ではないのでよし。

結果は患者数では記載が無いため、ARRやNNTを計算しにくい表現(%とRRRでしか書いてない)ので不親切(NNTを計算されたくないのかと勘ぐってしまう感じ)。

で、結果は割と予防効果が高いけど、副作用が多く、特に下痢が多い(その割に治療完遂率が高いのでかなり選ばれた患者達なのか、途中で脱落した人たちを除外したのかカウントしたのか?(IITについての記載がないので斜め読みではよくわからない)、下痢が多いけど実際は問題にならない軽微な下痢なのかは判断不明)でした。
 

最大の問題点は、この研究の対象は「慢性の痛風患者」であり、関節液で結晶が証明されたもののうち、痛風結節がある、尿酸過剰産生がある、年に3回以上の痛風発作がある、慢性腎臓病で尿酸値が高い、腎結石があるなどかなりの「痛風発作再発ハイリスク群」を対象に研究されているという点です。

「過剰な研究参加者を募らずに治療効果を見るためにハイリスク群を対象に研究する」事自体はまっとうなことで、事実この研究は少ない参加者できれいな結果を出せています。


そこはいいんですが、これを引用した学会とガイドライン作成委員の方がダメです。
 
こんなハイリスクでないと効果が証明されておらず、かつ一定以上の割合で副作用がでるのに、あたかも「一度でも痛風発作を起こした人には、基本的にコルヒチン併用すべきだよ」のように記載されてしまっています。


また、この研究ではコルヒチン0.6mgを1日2回投与ですが、ガイドラインでは「少量で良い」とかいてあり、ということは日本の添付文書の適応の0.5mgを1日1回投与になるということだと思います。

この過小投与量でほんとにこの原著論文と同じ再発予防効果があるかは完全に謎ですが、副作用だけは起きるかもしれないということです・・・



Step4:患者への適応

患者を担当していた研修医に意見を聞くと、とりあえず今回の患者は初回発作だし、原因と思われる過剰飲酒は辞める方向だったので、コルヒチンは投与しなくて正解だったという結論になりました。

また、以前当院に入院していた痛風結節があり、尿酸降下薬を入れたあとに何度も痛風発作を起こしていた患者に対してであれば、入院期間が長く副作用モニタリングもしやすかったので、コルヒチンを投与しておくのは一つの手だったかも知れないという話にもなりました。


やはり、ひとつのエビデンスを実際にどう使うかは、患者背景やセッティングによってだいぶ変わりますね。 


Step5:Step1~4の振り返り

今回は時間がなく次の会議の時間までズレこんでしまったので省略しました。

全体で1時間位でした。



今回も、グーグルハングアウトでの遠隔参加やドロップボックスリンクでの事前資料共有などやりましたが、初回参加の人たちがなれるまではしばらくもたつくのはしょうがないですね。

次回くらいには、最初の立ち上げ・接続の時間ロスが無くなってステップ5まで行けるかなという感じです。

 



なお、次回もおなじく第1火曜日18時~19時で考えています。

2週前に告知メールながし、1週前にはテーマ決定しますので、臨床的疑問ストックしておいて下さい。


以上です。




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院内学習会資料「がんのプライマリケア~癌の自然史から予防医療まで」の共有

久しぶりに、院内学習会資料をアップします。
当院の初期・後期研修医向けのレクチャー資料です。

昨年は間に合う範囲でざっと作り、今回不足していたデータを補いました。
厚労省や他の人が作ったweb資料を多用しており、できるだけ参考文献に載せましたが不適切でしたらご指摘ください。すぐに直します。
(参考文献には最新版を載せましたが、スライド上に引用した図表は古い版のままだったりします。直すヒマが取れませんでした。次回更新時には直します・・・)

資料をざっとみるだけではなく、私がポイントを強調しながら説明し、また事前に「健康増進・疾病予防」のレクチャーも理解しており、普段から疾病予防やBest supportive careや家族ケアを意識した診療をしている人でやっと腑に落ちるレベルの作りですが、勉強の参考になれば幸いです。


がんのプライマリケア~癌の自然史から予防医療まで~ by けんた




このへんまで意識しながら、何でも相談される総合外来・家庭医療外来で、1~2年継続的に診療しているととっても面白くなってくるし、「ああ、これは確かに総合医しかできない専門領域だな」とわかってきてやり甲斐も出てきます。

もちろん他の科の専門医もできなくはないと思いますが、全臓器バランス良く、かつ今診断・治療されている癌以外もきちんと配慮を続けつつ、しかも癌以外の状態(がん治療中に心筋梗塞・脳卒中や肺炎でなくなることも多いですし、治療の合併症、診断・治療中の日常的な健康問題の通常ケア、患者の心理社会面ケア、家族のケアなど)までバランスよくできるのはかかりつけの総合医のほうがより上手にすんなりできるだろうと思います。

このへんの実力が他科にも理解され、お互いの良さを発揮しあって協力していけるようにするのが目標ですね。

今のところ、自分が外来でみている患者で、途中で癌が発生してからも高次医療機関専門医と連携できている症例では(全例とはさすがに言い難いですが)いい感じにできており、これを若手も同じ質で再現できるような教育手法も検討していかねばです。




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2015年4月のEBM学習会「ヘパリン使いにくい状況でのDVT治療で、アリクストラってどうなの?」-初めて参加する後期研修医向けに丁寧にやってみました

15年4月のEBM学習会の事後報告です。
総合診療グループのメーリングリストで流したものを転用します(個人情報消して、著作権問題になりそうな配付資料リンクは消して、若干の説明を付け足してはいます。また、研修医に対してEBMのインパクトを伝え「ちゃんと学ぼう」という動機付けするのが目的なので、批判的吟味の正確さはかなり犠牲にしてますので、内容を鵜呑みにせず皆さんで責任持って批判的吟味してください)。
 

書記までやる余裕がなかったので、私が覚えている範囲でのぼんやり報告です。読みにくくてすいません。
 


今回の参加者は、
当院からは自分と研修医4人(後期研修2年目1人と1年目3人)
当院の小児科ローテ中の研修医1人(後期研修3年目)
本院ローテ中で当院週1外来研修に来ていた研修医1人(後期研修2年目)。

本院からはゼロ

釧路の地方中規模病院から研修医2名(後期研修3年目と2年目)
 
北見の小規模病院からも研修医1名(後期2年目)
 
診療所から後期研修医1名

自宅からの夫婦参加(後期研修終了直後、後期研修3年目)
 
と大勢の参加がありました。


やる気がでます。ありがとうございました。

そのうち、総合診療以外の後期研修医や指導医、地方院所の指導医、多職種にも開いて自由参加にするといいのかもしれないですが、参加者増えると運営しにくいかもしれないですね。



テーマは事前に公開していた「フォンダパリヌクス(商品名はアリクストラ)」です。

参考資料はこちらのリンク先フォルダに入っています。
https://app.sugarsync.com/・・・・・・・
(Sugarsunc使ったことがない人いたら、このリンクから登録してもらえると無料のままでボーナス用量があなたと私の両方についてお得です)




最初にEBMの考え方について基本的なレクチャーをしてから、文献を読みました。

レクチャーで使った資料は、リンク先にある・・・の3つです。
(一部著作権引っかかりそうなので削除しますが、2つはweb上無料公開資料なのでリンクを下につけました)

http://www.slideshare.net/akinarimoriya/ss-23577924

http://spell.umin.jp/EBM.htm




要点としては
 
・どんな疑問でもとりあえず文献検索すればいいわけでなく、Backgroundクエスチョンなら教科書やマニュアルや指導医・同期からの耳学問でさっさと知識の穴を埋めよう(あとで裏を取るのは重要ですが)。

・個別性・具体性の高いForegroundクエスチョンなら文献をしらべるが、その場合も情報源のヒエラルキーを意識してまずはDynamed・UpToDateで、それがダメなら順次深い階層を調べて、Pubmedは最終手段だ。

・EBMのステップは5つつあって、特にStep1を間違うと検索しても見つからなくなってEBM嫌いになるからここが重要。

といったあたりです。



その後、EBMのStepに沿って進めたので、ステップごとに紹介します。

Step1:疑問の定式化
 
先月、当院で私と後期研修医が担当していた症例で

「DVTに対して抗凝固療法したいんだけど、APTT即検できない当院でヘパリン以外、かつすぐ効かせないとマズイくらいひどいからワーファリンだけでなく、しかもAFやDVT予防でなくDVT・肺塞栓の治療が保険適応になってるのってどれだろう→あ、アリクストラがいけそうだ。とりあえず使ってみるけど、ホントのところこれってどうだったの?」という疑問でした。

(自分はある程度予備知識ありましたが、研修医が同様していたので、後日のこのEBM学習会のテーマにしてみることにしました)



これを参加者に振りながら定式化し

P:日本の高齢者で、できれば整形術後のDVT患者(できればPTE合併なし)で、

E:アリクストラを使うと

C:ヘパリンを使った群と比べ(命にかかわる疾患の治療なのでコントロールとして無治療は選べず、知りたいのはほかの低分子ヘパリンではなく札病で使えなかったヘパリンとの比較なのでこれ)

O:死亡、肺塞栓、歩行やDVT再発などのハードアウトカムと、あとは出血リスクなど副作用のアウトカム

T:治療効果の判定なのでRCTで

になりました。



Step2:情報収集

これは、今回ミニレクチャーが頭に入って時間が押す計算だったので省略し、事前に論文を私が用意しました。

Randomized trial of fondaparinux versus heparin to prevent graft failure after coronary artery bypass grafting: the Fonda CABG study. - PubMed - NCBI http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21748448



Step3:批判的吟味

この論文がPECOに合致していて読む価値があるかを、最初に評価しました。


ここからは、「はじめてトライアルシート」という、評価ツールにそってやりました(作成者、リンク先のwebページ作成者の先生に個人的に連絡し、学習会で利用する許可を頂いています)。
 

結果としては

PECOのところは、患者層が肺塞栓を起こした患者という論文なので少しずれるけど、コレ以外にアリクストラvsヘパリンのいいRCTがないので、ヘパリン以外との比較の論文よりはどうせ肺塞栓起こすハイリスク患者だからということでこの論文を読むことにしました。

また不安定なDVTと無症候性の肺塞栓症は同じような初期治療が推奨されるというDynamedの記載からも外れてはいないと判断しますが、この辺は私が持っている予備知識=Background知識による補足なので、論文の批判的吟味の時点でも関連領域のBackground知識が必要ということを強調

ランダム割付を中央割付形式でやっているが、隠蔽化はされていないオープンラベル試験。

ベースラインは同等だが、表に統計学的検定の情報を載せておらず怪しい。

ITTかどうかはっきり書いていないのは怪しいが、追跡率は高い、マスキングはアウトカム評価者に対してはされているが患者・治療者にはされていない(オープンラベル)で、しかも主観的アウトカムを一部含む複合アウトカムなので、明記されていないがPROBE法なのかもしれない。
 
→PROBE法は(極端かつインパクト重視の表現をすると)製薬会社による種まき研究(Seeding trial:どうでもいい薬を売るために都合のいい結果を出すための研究)の可能性があり(全てがそうではないですが)、なのにPROBEと明記してない、しかも主観的アウトカムを含む複合アウトカムで設定しているなどのキーワードからはかなり怪しい=無理やり有意差をひねり出そうとしている可能性があるかもしれないし、さらにCOIの記載に独立した段落と見出しをつけずわざわざ小さいフォントで目立たないように書いてあり超うさんくさい。
 
→昨年度参加してない人はPROBE法分からないだろうということで、説明はこの程度にして、後日資料提供とした(リンク先資料の「Seeding trialとPROBE法」と「文献の批判的吟味スライド_PROBE法」を参照)。



症例数が十分か事前に計算されているかはやや曖昧だがきちんと読んだら書いてありそう(時間制限のため省略)

結果の評価は詳しくはやらなかったが、これだけしつこく有意差をひねり出そうとしたのに「差がない」という結論を書いてあるので大したことはなさそう。

主観的評価が入りにくそうな副作用で「有意に多くない」と言うのは朗報かも。

コストのことはわかりませんね。



Step4:患者への適応

患者を担当していた研修医に意見を聞くと、セッティングによっていろいろだけど、使っても悪くないかもしれないけどいいかもしれないという返答(ちがかったらすいません)

→批判的吟味をして一定の見解を持っても、その文献の結論を患者にそのまま当てはめればいいわけではなく、当てはめる段階もかなり難しいし、セッティングや患者条件などで変わってくるという、EBMのもっとも重要なポイントがわかるコメントですねと解説を追加


その他、複数名の先生からどう思うかや過去の経験などを共有してもらいました。

去年と比べて何とかついていけましたという意見、

全然わからないところがあって大変だけどポイントは伝わった(今はそれでいいので3年後の専門医試験の頃には独立して批判的吟味を短時間でできるようになりましょうとコメント)、

NEJMに載った論文なら正しいと信じていたけどそうでもなくてショックだった(実際は医学雑誌もスポンサー≒製薬会社のお金なしには運営できない(自分たちが無料で多くの論文を見れているのはそのおかげもある)ので、ブランドだけで信頼せず自分で批判的吟味しないとダメだねとコメント→このリンクなどはわかりやすいですが、この記事だと特にNEJMはいろいろありそうですね。裏は確認していませんが)



Step5:Step1~4の振り返り
今回やったEBMのステップをもう一度振り返りながら要点を強調。

最後に、すでに時間オーバーしていましたが、参加者全員に感想等をもらって終えました。




全体で1時間10分くらい

グーグルハングアウトでの遠隔参加やドロップボックスリンクでの事前資料共有などやりましたが、遠隔参加の人たちが慣れてきているおかげもあってスムーズにできたと思います。


今後は、事前のハングアウト設定、議事録メモ、今回のようにメモをまとめなおしてA4で1-2ページにまとめる人などを分担もしくは持ち回りでできるといいのかなと思いました。

やりたいという人がいたら手上げお願いします。

いなかったら次回EBM学習会の時に再度相談します。


なお、次回はおなじく第1火曜日18時~19時で考えています。

2週前に告知メールながし、1週前にはテーマ決定しますので、臨床的疑問ストックしておいて下さい。


以上です。



追記:今後もこんなかんじでやっていく予定ですので、他施設の方でも、興味あればご連絡下さい (ブログコメントでも、私と繋がっていればSNS経由でもよいです)






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2015年3月EBM学習会「心血管イベント起こしてないこのおじいちゃんに、アスピリンてホントにいるの?」について、RCT・PROBE法を題材に考えてみました

今週の火曜日に、定例のEBM学習会を開催しました。


今回のテーマは
P:日本人高齢者・心血管イベント低リスク群(具体的には頸動脈プラークや糖尿病だけで脳卒中や心筋梗塞起こしてない元気そうな初老期の人たち)に対して
I:アスピリンを使うと
C:使わない場合と比べて
O:どれくらい心筋梗塞・脳卒中・全死亡が減り、出血性合併症などが増えるのか
でした。

少しまともにエビデンスとかガイドラインとか勉強し始めて、真のアウトカムとか、NNT/NNHとか、一次予防と二次予防の違いとかがわかってきて、かつポリファーマシー対策や老年医学についても関心が高まってくると必ず気になり始めるネタですね。

ちょうど、いい感じに日本人のスタディーも出ていたのでタイムリーだったこともあり、このネタにしました。



また、今回は今年度最後ということもあって、基本に立ち返ることにしました。

最近は、当日に文献検索して、定型的な研究じゃなくてもなんとなく読んでというふわっとした感じになることも多かったので、今回は先に論文を指定して、RCTの批判的吟味の仕方をきちんと復習することを目的にしました。
 
事前にDropbox共有フォルダで、The SPELLの批判的吟味シート、課題論文、関連資料を共有しておいて、予習も可能、遠隔参加者も各自で印刷や閲覧可能な状態にしておきました。



最後に、今回の流れをざっと紹介して終わります。

==================
Step1 疑問の定式化

P:日本人高齢者・心血管イベント低リスク群(具体的には頸動脈プラークや糖尿病だけで脳卒中や心筋梗塞起こしてない元気そうな初老期の人たち)に対して

I:アスピリンを使うと

C:使わない場合と比べて

O:どれくらい心筋梗塞・脳卒中・全死亡が減り、出血性合併症などが増えるのか


Step2 情報収集

今回は、事前に今回のネタを提案してくれた後期研修医と、20分位で検索してこれに決めました。

Low-Dose Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in Japanese Patients 60 Years or Older With Atherosclerotic Risk Factors A Randomized Clinical Trial.
 http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1936801

The Japanese Primary Prevention Project (JPPP) がやった試験のようなので、愛情を込めて「ジェイピッピ」と呼ぶことにしてみました。


Step3 批判的吟味

いつもお世話になっている「The SPELL」の初めてトライアルシートを使って定型的な吟味をしました。
http://spell.umin.jp/EBM_materials_BTS.html

「PICOはいい感じだねー。介入は日本で自分たちも使う100mgのアスピリン腸溶錠使ってるところがいいねー。複合アウトカムはかなり幅広くとっているし、臨床医の主観で判断できる微妙なのが入ってるけど知りたいのは網羅されてるねー。治療の検討だからもちろんRCTだねー」あたりまで順調に来て、「盲検化は当然、、、ん? 盲検化??」あたりで不穏な空気が・・・

で、盲検化についてや、今回の研究で採用しているPROBE法について、web上で検索して簡単に書いてあるものを共有 して、盲検化大事だし、きちんと盲検化が達成できたかはもっと大事なのに、PROBE法でアウトカムに主観的なの入れたらもう全然だめじゃん!というところを腑に落としてもらい
http://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/graduate-school-of-medicine-jp/basic-skills-for-public-health-researchi/pdf/03.pdf
 
「じゃあなんでこんなPROBEなんてやるのさ!?」というところを、「Seeding trialの発見とPROBE試験の危うさ」という資料で、Seeding研究とPROBE研究の怪しい関係について理解を深めてもらいました。



その上で論文に戻って、アウトカムの設定、ランダム割付の方法、盲検化についての記載を確認し、その上で結果がフォレストブロットで記載してあるFifure4を見ると驚愕。

ここまでして有意差を練り上げようという意図が感じられるデザインなのに、トータルでのプライマリアウトカムは有意差なし、有意差がでたのは主観的アウトカムの部分のみ、そして合併症の出血リスクについては有意に悪化するという結果でした。


事前にPROBEや複合アウトカム、Sheedingについて理解していたので、結果の表を見せるだけで後は勝手に解釈を深めたりディスカッションしてくれていました。

最後に、「ほんとにSeedingなの?」かどうかを確認するためにCOI(利益相反)の記載部分を探してみると、通常記載すべき部分に記載がなく、Conclusionの後の参考文献を記載するところに、参考文献と同じ小さなフォントと扱いでいっぱい書いてありました。目立たなせない工夫が泣けてくるくらいでした。

で、記載してあったのは、名前知ってる大きな製薬会社がいろいろとか、厚生労働省とか。



Step4 患者への適応

研修医が疑問に感じた患者については「アスピリンやめる」でOKでした。

やめることのデメリットがどれくらいかを気にしていましたが、続けることでの出血合併症の数字と、使っても使わなくても心血管イベントの絶対数がそんなに多くないし臨床的に有意と感じられるような差がないことをみて、なんとなくの不安も解消されたようです。

あとは、「長年飲み続けてきた良い薬」という患者の世界観にどう乗っかっていって、同じように中止の不安を感じるかもしれないあのおじいさんとどうやってコミュニケーションとるかは自分で考えると楽しそうに行ってくれました。



というところでちょうど1時間でした。


Step5 Step1~4をフィードバック

は、終わった後のフリーディスカッションでいろいろ深められて良かったです。

そもそも気軽に始めない、気軽に始めたくなる所見が出る検査を低リスク・無症状の人にしない(外来の経営改善したいので予約枠の余っている頚動脈エコーやABIをルーチンで入れるとかダメっすよね)という話になり、Choosing wiselyの話に繋げられそうでしたが、タイムオーバーなので触れませんでした。




個人的な感想としては、後期研修医たちの成長を実感できて嬉しかったなーと思いました。

RCTの批判的吟味の流れに普通についてこれていたり、英語論文を読むことに対する抵抗感が消えていることにすら気がついていなかったり、批判的吟味で読み込むべきポイントがどこに書いてあるかがパッとわかるようになっていたりと枚挙にいとまがないくらいでした。

提案される疑問の質も、疑問を定式化するスキルも、論文検索のスピードやセンスもだいぶ良くなっています。

なにより、論文をきちんと調べるべき疑問とそうではない疑問(教科書や耳学問で済ませたほうが良い疑問)の区別が付くようになったことや、調べるべき疑問をきちんと調べると自分の臨床が良くなるし面白い!という実感を持ってくれたことは、この1年間の学習会の最大の成果ではないかなと思います。


来月からは、後期研修医がほぼ入れ替わって新しい体制になるため、また基本中の基本からやりますが、自分は基本を繰り返し教えることは意外と嫌いではない(教えながら自分の中の理解が深まるので楽しい)ので、またいろんな視点から基礎をきちんと教えられる人を目指してやっていければと思います。


でわ!



あと、

遠隔参加希望の方いれば、とりあえず連絡下さいね。ハングアウトなので10ヶ所くらいまでは多分気軽に繋げられると思います。

 


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プロフィール

けんた

家庭医療をベースに病院で働く「病院家庭医」なるものを目指して爆進中です。
病名や年齢にかかわらずどんな人の悩みにも対応できる診療能力を身につけることを目指して、北海道各地の病院で初期・後期研修を受けました。

総合内科を中心に研修を開始し、途中から家庭医療学や医学教育学、臨床研究などに興味を持ちながら学習し、2011年に家庭医療専門医を取得しました。
現在は札幌市内の小規模病院で、家庭医療学をベースにした病院総合診療を行ったり研修医・学生・多職種の教育に関わったりしながら、プライマリケア医のためのリハビリテーションフェローシップに参加し学び続けています。

将来は病院をベースにしながらも病院内だけにとどまらず、各医療機関の連携、さらには教育、政治・行政、娯楽などを含めた広い意味での地域共同体を作っていく橋渡しをして、健康に楽しく暮らせる街づくりに貢献できたら面白いなと思っています。

日々の研修での気付きをつづりながら、何か大きな発見が得られないか、blogを通して模索中。

少しでも面白いなと思えた記事があったら、拍手アイコンを押してもらえると、モチベーションがアップしたりします。

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