病院家庭医を目指して ~野望達成への道~

地域密着型病院で活躍する家庭医を目指し、札幌市内で働いてるDr_kentaです。 病院外来でのプライマリケア、内科急性期病棟の老年・緩和ケア、リハビリテーション栄養を中心に、医学教育や院内システム改善などにも関心を持ちながらいろいろやっている日常を記録していきます。ちなみに「病院家庭医」という正式な呼称はありません(造語です)。 また医師による記載ですが、医学的な内容を自分や身の回りの方に適用していいかどうかは直接診察のうえでの判断が必要です。記載内容を試して発生したいかなる不利益も責任は負い兼ねますのでご了承ください。

健康増進・行動変容

Gノート「患者にきちんと届く!届ける!予防医療プラクティス」、思っていた以上に良い、他に例を見ないコンセプトの特集でした!!

羊土社のGノート、2017年4月号の特集患者にきちんと届く!届ける!予防医療プラクティスがかな~り良かったです。

https://www.yodosha.co.jp/gnote/book/9784758123211/index.html

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Gノート 2017年4月号 患者にきちんと届く!届ける!予防医療プラクティス (Gノート) [ 岡田 唯男 ]Gノート 2017年4月号 患者にきちんと届く!届ける!予防医療プラクティス (Gノート) [ 岡田 唯男 ] 楽天



うちのスタッフと一緒に書いた「
思い出のポートフォリオを紹介します 第17回 臨床研究〜育児休業期間も有効活用したアクションリサーチ〜」の原稿が載ったので、掲載号を頂いていたんですが、読むヒマがなくて積読になっていました。

もう少し正直な所をいうと「もう、若手医師向けの特集読むのはめんどいな。そもそも予防医療のエビデンスとかだいたい知ってるし、ふだんから実践してるし、今更お勉強し直してもな」という思いもあり、「まあ、読まなくてもいいかな。誰か読んで面白いって言ってたら手を付けよう」と思ってました。


しかし、意外と自分の回りでは話題になっておらず、先週たまたま時間があいたのでパラっと開いてみたらかなり面白かったです。

「面白い!」と感じて、続きを一気に読もうと思ったきっかけは、冒頭の「特集にあたって」です。


羊土社のページに一部抜粋があったのでそこを引用しますね。

エビデンス・パイプラインの概念にいつどこ出合ったのかは覚えていませんが,現実主義者(pragmatist)である僕の頭にこびりついて離れなくなり,僕のところの研修医には必ず早い時期に教え込む概念です(詳細は別稿「エビデンス-診療ギャップとエビデンス・パイプライン」参照).

羊土社さんからGノートで予防医療の特集号をと依頼をいただいた際に,すぐに考えたことがいくつかあります.

  • 予防医療については何をするべきか(What)は多くの良書やサイトが存在するため1~3),それらの二番煎じである“me too”特集にしない
  • 新しい知見を発見する研究だけが学識かのように捉えられている研究至上主義の学問の場に統合と適用,教育も立派な学識であると一矢報いたい
  • そのために,どうやって現場に落とし込むかにこだわった,何をするべきか(What)ではなくどうやって届けるか(How)についての特集にしたい

ということでした.

本特集は,このことに応えるべく,エビデンス-診療ギャップ(evidence-practice gap:EPG)が生じる理由についてのモデルである,エビデンス・パイプラインを利用して,7つのAの各段階の減衰を減らすための枠組みやアイデアを,

  • 医師の認識レベル
  • 医師-患者のコミュニケーションレベル
  • 患者レベル
  • それらを取り巻くシステムレベル

の大きく4つに分けて提示しました.

多くのエビデンス,ガイドライン,成書に書いてあることは,科学的根拠のある知見のみを,するべきこと(What)として書いてあります.しかし,現場の臨床家は「わかっちゃいるけど,そうは言っても…」となかなか実践に結びつかないのが現実です.

狭い診察室の平和で手一杯な在野の臨床家であるわれわれは新薬を開発したり,大規模な臨床研究をしたりすることは困難です.しかし医師たるもの,皆サイエンティストの端くれ,学問の世界に何らかの貢献をしたいものです.

(中略)

多くの人が大変な労力を割いて作成されたガイドラインや現場の診療レベルまで生き残ってきた質の高いエビデンス.その多くが患者さんにまで届かないことを当然の前提として使い散らかしてよいのでしょうか? どうせなら,丁寧に愛おしみ,患者さんのところまで,確実に届けたく,この特集を担当いたしました.

(後略)



という感じで、最近流行りのエビデンス列挙特集にはなっておらず、現場にこだわって活躍している家庭医・総合診療医だからこそできること、だからこそ重要な考え方などを丁寧に紹介していました。

編集者の岡田先生が、以前にブログで書いていた「学術活動は4つあって、新たな知見の発見だけではなく、それをまとめ直す統合や、現場への適用、教育などで播種させることも同等かそれ以上に重要」というのをみて、「おお、そうだよね! じゃあ、自分が頑張っている、ふだん勉強したことをまとめなおして研修医レクチャーや症例カンファで伝えることとかも意義があるんだな」と思えて、「研究できてない自分」への罪悪感みたいのがフッと軽くなったのを思い出しました。

一方で、「じゃあ、臨床家なのに研究する人は何をしたらいいんだ?いらねーのか?」と思った頃に、「現場のプライマリ・ケア医だからこそできる研究、プライマリ・ケア医じゃないと出来ない研究、プライマリ・ケア医が欲しがる研究」が重要だという話がでたりそういう研究者を育てる育成プログラムもできてきて、「自分が行うべき研究、統合、適用、教育の4要素の、それぞれの重み付けや、各要素の中で自分がすべきこと」が見えてすごくしっくり来た経験もありました。

いまは、その延長でしばらくがんばれている感じです。


今回、「特集にあたって」を読んだときに、当時の思いがいろいろとこみ上げてきて「そうだよね、エビデンス紹介書籍が飽和したいまだからこそ、エビデンスパイプラインを意識して現場に落とし込む勉強だよね」と思えて、一気に目を通せました。

また、今は臨床家や教育者だけでなく、管理者のウェートも大きいので、「この特集の考え方をどのように活かしたら、うちの病院全体でよりよい予防医療の実践のレベルが高まるか」という視点で読めて、とても新鮮でした。

管理者・責任者クラスにもまだまだ誤解や知識不足が多いので(治療医学ばかり求めていた時代に成長し成果を残した人達が今の責任者達だから当然なのですが)、院内での学習会や企画検討のときに使っていこうと思います。


まずは内科や健診課、あとは管理部とかでの共有からですかね。

あと癌検診に関わる婦人科や外科、予防接種に関わる小児科とかでも共有できそうです。



というわけで、今勉強し始めたばかりの専攻医よりは、医長とか科長とか診療所(副)所長とかの立場で総合診療や予防医学をデザインせねばならん人に特におすすめの内容だと思います。




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「胃がんリスク算出のためのスコアシート」でましたね! これとピロリ除菌効果のエビデンス掛けあわせた電子カルテテンプレートが快適です♪

「胃がんリスクチェックシート」というのが公開されてますね!

Facebookで回ってきて知りました。
 

無題
 



これと、ピロリ除菌のエビデンス(Cochrane Database Syst Rev 2015 Jul 22;(7):CD005583BMJ 2014May 20;348:g3174)を組み込んだ電子カルテテンプレートを作りました。

上記のチェックシートの項目をクリックすると、自動で合計得点がでて、胃癌発生率がでて、さらに除菌した場合の胃癌発生率や、治療によって胃癌発生を防げた人数、防げなかった人数、治療にかかわらず胃癌にならない人数を自動計算できるように組みました。

こういうの、得意です。


 
ちなみに、このシステマティックレビューの効果はこんな感じです(原著読み込みでなく、Dynamedで紹介されていた要点をそのまま訳しただけです)
慢性胃炎のピロリ除菌は、全体でのRR0.66(割合として34%減る)

NNT124→ARR0.8%(がん予防としては優秀だが、実数に治療によって癌にならずに済む人数は少ない。レビューの元になった文献でも300-1000人規模の研究での胃癌発生を3人から2人に減らしたくらいなので、1000人中998人は無駄な治療になるともいえます)
 
全死亡不変

胃癌死亡減少も有意差なし(CI0.4-1.11→死亡が増えるかもしれないというのは、治療合併症では説明できないので、除菌したせいで胃がん検診やめちゃったとか(でもRCTなので厳密なフォローアップができる人たちでの検討ですが)、除菌しても時既に遅しとかいろいろ解釈あり)
 
副作用情報なし(実際の経験からの感覚では、年何人かは入院や治療による仕事お休み患者に遭遇しています)


まあ、治療に伴う大きな害はない(虚弱高齢者で下痢を契機にぶっ倒れるのはよくありますし、大規模に除菌進めたら医療費も無視は出来ないけど)ので、必要時はやってよいと思います。

また、うちでは健診課や内視鏡担当医からすでにやる前提で指示や患者説明が入っている場合も多く(日本全国でもそんな風潮なんじゃないかと思います)、その場合は無理に流れをひっくり返して患者が戸惑ったり不信に感じるようなことまではしなくても良いのかなとも思います。


ただし、「胃癌は3分の1も減るのでこれまでの予防医学の中ではかなり画期的ではある。でも、もともと胃癌発生の多い日本人中高年は”除菌して終わり!”にはならず、除菌しても癌になる人もいます。かならず胃がん検診は続けてね」というのとセットで説明し、除菌するかどうかを一緒に相談する姿勢を、とくにうちの研修医たちには口を酸っぱくして説明しています。


前立腺がん検診などもそうですが、「今病気で健康や生命が脅かされている人」への治療に比べると「今元気で普通に暮らしている人」を対象に介入する予防では、害と利益の説明をきちんと行ってShared decision makingを行う必要があり、健康増進・疾病予防を得意とするべきである総合診療医には重点的に教えています。



なれないとエビデンスの数字だけ見て、「RR0.66だからすごく減るよ!!」というのだけに囚われてしまいますが、RRR、ARR、NNTや、治療に関わらずその病気と関係なく過ごす人の人数などもイメージできるようになりませう。



最後に具体例を

42代男性、慢性胃炎なし、ピロリ陽性、 非喫煙、高塩分食摂取あり、家族歴なしだと10点になり、胃癌発生率は10年間で0.4%以下とすごく少ない(「以下」なので測定感度以下でわからんくらいということ)
→ピロリ除菌で胃がん発生率は0.3%以下、1000人治療して胃癌を防げる人数は1.4人、治療しても胃癌になる人数は2.6人、治療にかかわらず胃癌にならない人996人になります。

一方で63歳男性、慢性胃炎・ピロリ感染なり、喫煙・高塩分食摂取・家族歴ありだと22点になり、胃癌発生率は10年間で8.3%とさっきとはかなり異なって大きな数字です
→ピロリ除菌で胃がん発生率は5.5%に減り、1000人治療して胃癌を防げる人数は28.2人もいますが、治療しても胃がんになる人数は54.8人と持っといて、治療にかかわらず胃癌にならない人は917人とやはり大多数。

実際は、年齢層によってとか、胃粘膜所見によってで治療効果が異なるという研究結果もありますが、大規模Systematic reviewを大きく逸脱してリスク推定をするほどのデータの蓄積はない(Dynamed UpToDateでもこのSRデータを最初に紹介している) ので、当面はこれでやっていこうと思います。


※一応つけくわえますが、「だからピロリ除菌なんて無駄だぜ!」とはいっておらず、癌になるのを待ってから早期発見する形式(二次予防)の胃バリウム・胃カメラよりも、そもそも胃癌にならずにすむ人がけっこうでるこの治療(一次予防)は素晴らしくやるべき時にはきちんとやるべきです

一方で治療のコストですけど、「慢性胃炎の診断がないとピロリ検査できず、ピロリの診断がないと除菌できない」という保険診療の前提を考慮すると、「初回胃カメラ1140点+ピロリ検査(尿素呼気試験70+判断料150点+試薬ユービット錠3104円)+一次除菌(ランサップ800で831円)+除菌確認検査(尿素呼気同上)」(1点=10円)で、合計19835円、約2万円なので、上記の例にある40歳の低リスク群1000人から1名の胃癌発生を減らすため(胃癌死亡はへらないよ)に必要な費用は2000万円です。

保険診療で3割負担なら患者個人は6000円ですが、残り7割は医療保険とかから出ているので、決してばかにならない額と個人的には思うので「全員に何でもかんでもピロリ除菌せよ!」よりは、上記のようなリスク評価をして狙いすました対象者に提案し、リスクやメリットを相談してShared decision makingしてというのが大事かと思います。

まあ、他の治療や予防もみんな同じですが、エビデンスがそろっていてかつ頻度の高い問題なので少し詳しく扱ってみました。


 


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読書記録「ぼくらのアルコール診療」、総合医・プライマリケア医におすすめです

一気に読み終えました。

ぼくらのアルコール診療



今まで精神科医が書いたアルコール依存症診療についての資料しかなく、軽度のアルコール問題をわかりやすく書いた本がなく、それでもいろいろ勉強して実践してきた自分はよくても研修医に教えるのが難儀でした。

で、この本の出版社の方とお話する機会があった時に「プライマリ・ケア現場で使える、プライマリケア医と精神科医の両者がバランスよく書いた実践的な本が読みたいです」といったら実現してしまいました!!

元1個上の先輩や、元精神科指導医の先生たちが編者にいて文脈も読みやすかったです。


目次はこんなかんじです。
I これだけは知っておきたい!

II お困りシチュエーション別! クイック・リファレンス
 A 一般外来 スクリーニング・診断
 B 救急室(ER)
 C 病 棟
 D 往診先

巻末資料
 アルコール依存症を本人・家族に説明する際に使えるツール
 全国の精神保健福祉センター
 専門医との繋がりをもてる学会・研修
 実践! 困ったときの対処法
  
column
 γ-GTP のnon-responder
 酒は百薬の長ってホント?
 誰でもできる! 二日酔い対処法
 依存症治療は何回再飲酒しても回復することができる
 これってアルハラ?
 私のアルコール失敗談
 幹事になったときの心得
 飲んでいる人を診療拒否していいの?
 「百薬の長」から「60以上の病気のもと」へ
 飲みニケーションは本当にいいの?

セッティング別のところで、具体的な、かつよくあるシチュエーションで、ありがちなまずい対応→知識面の補強→適切な対応例と解説があるので、困ったときのレファレンスとしても便利です。



総合医であればぜっっったい必読だと思います。

自分はこれで学んだことを混ぜ込みながら、禁煙外来と並んだアルコール外来を立ち上げるつもりです(最終的には普通の外来診療の中でこれらを実践したいですが、研修医や他職種が学習してチカラをつけるためにも最初は特殊外来扱いでと思います)

 

最後に一応COIの開示ですが献本は頂いたものの、特に編集者や著者からの金銭はもらっておらず本心での推薦です。 
 


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【EBM学習会】高齢者に対するプレベナー13(PCV13)は、患者が希望したらポンポン打ったほうがいいですか?

感染症・リウマチ内科のメモEBM学習会で行った、プレベナーについての文献検索とディスカッションの内容を共有します。



現在当院の総合診療後期研修では、月に1回、第1火曜日18時から19時までの間、当院研修医室と他の病院の後期研修医(本院、釧路、東京、子育て中の人は自宅からなど)をGoogleハングアウトでつないで、EBM学習会をしています。

ハングアウトベースなので、他組織の方でも参加希望あれば声かけて下さい(Facebookの知り合いか、私の個人メアドを知っている人限定とします)
 


基本的な流れとしては・・・

2週間前に総合診療グループのメーリングリストで開催告知と調べたいネタ募集をして、

後期研修医から希望のテーマがあれば事前にPECOに落としこんで各自文献検索してから、

特にテーマが決まらなければ当日の最初の10分でテーマを決めてそこから文献検索を開始し、

一定のルールで批判的吟味を行い(こちらのサイトのフォームを使わせて頂いています。事前にブログ主の方にメールで許可を頂いています)、

その結果を踏まえて「自分の外来だったら、自分のかかりつけ患者のあの人だったら、うちの診療所全体の戦略としてどうするか」を15分ほどディスカッションしています。



どちらかと言うと、事前にテーマ応募があり、「この前担当した患者さんに言われたこれがわからなくて・・・」というスタートのほうが、批判的吟味後に「じゃあその結果をその患者さんにどう当てはめるか」のディスカッションのほうが面白いし、参加者の中でも盛り上がったり学びが深まる印象です。



で、今回は事前にテーマの応募がなかったので、自分から「テレビでニューモバックス(PPSV23、肺炎球菌ワクチン)の宣伝が始まって、よくわかっていない人も含めて(というかよくわかっていない人の方が)、『あのテレビのワクチン、よろしく頼むぜ』 ってくるようになったよね。この勢いだと、新たに承認されたプレベナー13(PCV13)の情報を嗅ぎつけた人が『どっちがいいの?両方打ったらもっといいの?』って聞いてくるかもしれないので、その前に理論武装しとこうぜ」というテーマを提案しました。

ちなみに、以前に一人でニューモバックスについて調べた時のブログ記事はこちらです。


結論としてはやってみてよかったなと思いました。


ひと通り論文検索してみたものの十分な「真のアウトカムで検討された、妥当な研究デザインによる、まともな研究」が見当たらななかったんですが、その後ワクチンに詳しい方のブログ情報や、IDATENという感染症関係者が集まるメーリングリストで流れていた情報でも調べた通りのことが書いてあったため、「この1年間のEBM学習会の成果で、自分たちの論文検索能力や批判的吟味能力はわりと普通のレベルにまでは高まった」と思えたのは大きな収穫でした。

また、「エビデンスはけっこういまいちなので、個別の患者の事情に応じて接種を検討するのはいいけど、考えなしに希望者全員に打ったり、診療所の方針として『◯歳以上の人には全員強く勧める!』とかはまだ先の話ですね」という一定の見解でみんなが一致したのも良かったです。



では、最後に、実際のEBM学習会の流れをコピペします。

EBM初学者がその基本的な型を身につけられるようにと、毎回「EBMの5つのステップ」に沿って進めるようにしています。
===========================
step 1:疑問(問題)の定式化

元々の臨床上の疑問、というか問題意識(再掲)

「テレビでニューモバックス(PPSV23、肺炎球菌ワクチン)の宣伝が始まって、よくわかっていない人も含めて(というかよくわかっていない人の方が)、『あのテレビのワクチン、よろしく頼むぜ』 ってくるようになったよね。この勢いだと、新たに承認されたプレベナー13(PCV13)の情報を嗅ぎつけた人が『どっちがいいの?両方打ったらもっといいの?』って聞いてくるかもしれないので、その前に理論武装しとこうぜ」



その他の候補(開始最初の10分で集めたテーマと、その後複数回答ありで挙手で多数決取った数字)

PCV13の効果は? 5

インフルエンザワクチンの効果は実際誰にどれくらい? 2

高HDL血症はほんとに問題ないのか? 2

咽頭痛にステロイドは実際どうなの? 1

ラクナ梗塞にアスピリンの効果はあるの?どれくらい? 3



曖昧な疑問の定式化(≒PECO化)

P:高齢者、65歳以上?の
日本人?せめてアジア人?難しければ人種問わず
合併症ない人(自分で聞いてくるのはそういう人が多そうなので)

E:PCV13(±PPSV23)

C:肺炎ワクチンなし

O:個人的に知りたいのは肺炎発症率・入院率減少
だいじなのは死亡率
検討されてるであろう有名なアウトカムは重症化、IPD(侵襲性肺炎球菌感染症:肺にとどまらず血液を介して全身にまで菌が回る重症な状態)の予防効果
できれば費用効果比も

T:RCTか、あればシステマティックレビュー
理想的には市販後大規模コホート調査

 


step 2:情報収集
Licensure of 13-valent pneumococcal conjugate vaccine for adults aged 50 years and older.

上記のPECOTを元に、参加者各自が持っているパソコンやタブレット、スマホを用いて文献検索を実施。

10分間。

それぞれ、良さ気なものを見つけたらPubMed ID(PMID→これをPubMedの検索画面に入れると一発で該当論文が出てくる)を共有したり、ざっとアブストラクトを読んでみた印象を喋ってもらったりしながら進めます。


けっこうみんな同じような文献にたどり着くが、肝心の「知りたいアウトカムで検討した、条件としている研究デザイン(RCTとか)の研究」にはなかなか辿りつけず、ましてや日本人での研究は全く見られずでした。

出てくるのはACIPなど、海外のワクチン接種を検討する委員会等の声明文や、製薬会社の情報ばかり。

その中でも、とりあえず目を通してみた情報は以下のものたちでした。



■製薬会社情報

http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2014/2014_02_27.html(PCV13が成人でも成果を示したCAPiTA研究がでたぞ!という2014年2月の記事)

→CAPiTAを見つけたい!!という話になったが、その文献は簡単に果てに入らず・・・?どうやら2014年3月の学会での発表だけで論文化はされていない(つまりまだピアレビュー受けてパブリッシュされていないてことか)


http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2014/2014_06_20_02.html(PCV13が、国内での高齢者に適応かくだいされるぞ!(これまでは小児限定だった)という2014年6月の記事)

→「患者からしつもんされる”かも”」ではなく、すでに保険適応となって製薬会社も大々的に売り出しているので、その日は遠い日ではなく現実として目の前まで迫っているねという意味で脅威。



■米国の感染症・ワクチン関係の団体の英語論文

Use of 13-Valent Pneumococcal Conjugate Vaccine and 23-Valent Pneumococcal Polysaccharide Vaccine Among Adults Aged ≥65 Years: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6337a4.htm?s_cid=mm6337a4_e

→CDCという感染関係の偉いところのホームページに乗っている、ACIPという米国のワクチンスケジュールとかを決めるところが出した2014年9月発表内容の情報。

これに乗っている図がこちら。
PPSV&PCV順番
「PCV13を打ってからPPSV23の順番がいいべよ」という風に読めます(実はその根拠はそんなに強くないんですが、いろいろ踏まえてACIPさんはこう考えるというスタンスの一つと思って下さい)


Use of 13-Valent Pneumococcal Conjugate Vaccine and 23-Valent Pneumococcal Polysaccharide Vaccine for Adults with Immunocompromising Conditions: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6140a4.htm

→同じようなタイトルと出所ですが、微妙に違っていて、高齢者ではなく成人で、免疫機能に応じた内訳に関する2012年のもの

これに乗っている図がこちら。わかりやすい。
PPSV&PCVと免疫機能別適応

割と細かく区別されていて、ざくっと「糖尿病あるから免疫落ちてるだろうし、PSV13+PPSV23両方打ったらいいべやー」ではダメだよんというふうなことが読み取れます。



Recommended Adult Immunization Schedule United States - 2014
http://www.cdc.gov/vaccines/schedules/downloads/adult/adult-combined-schedule.pdf

→いろいろな学会も加わって提示しているCDCが出している、他のワクチンも含めた適応の一覧が乗っているところ。カラフル。
ワクチン各種適応一覧inアメリカ
細かすぎるので暗記というよりは、持ち歩いていつでも見られるようにしたほうが懸命ですね(かつ、日本の適応とは別なので、保険適応とか無視してアメリカンな判断で打たないでくださいね)


Licensure of 13-valent pneumococcal conjugate vaccine for adults aged 50 years and older.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22647745?dopt=Abstract

→CDCが50歳以上に対してのPCV13を承認した時の論文


FDA expands use of Prevnar 13 vaccine for people ages 50 and older
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm285431.htm

→FDAが適応拡大した時の記事



■その他の論文など

Rationale and design of CAPITA: a RCT of 13-valent conjugated pneumococcal vaccine efficacy among older adults.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18990781

→成人へのPCV13についてのCAPiTA試験に対しての解釈、オランダの学術誌(Neth J Med)に乗っているもの。
2008年? あれ?CAPITAって今年のことじゃなくて?? 雲行きが怪しい・・・


CAPITA試験自体がみあたらない。
 ↓
最初のファイザーのページに戻って探してみると、CAPITAってのはこの事のようだ
Pfizer Announces Positive Top-Line Results of Landmark Community-Acquired Pneumonia Immunization Trial In Adults (CAPiTA) Evaluating Efficacy of Prevenar 13* 
Data to Be Presented at 9th International Symposium on Pneumococci and Pneumococcal Diseases (ISPPD) on March 12, 2014
 ↓
ファイザーのページの中に、詳細についてのリンクがあった!
がリンク先でうまくCAPITAまで辿りつけず。


元のページに書いてある日本語の記述はこんな感じ

CAPiTAについて

米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認制度における薬事義務の一環として、ファイザーは、ワクチン型肺炎球菌感染症予防におけるプレベナー13の有効性の評価を目的としたCAPiTA試験を実施しました。

CAPiTAは、成人を対象とした二重盲検、無作為割付け、プラセボ対照のワクチンの有効性試験としては最大規模であり、65歳以上の成人約85,000人が参加しました。

本試験は、ユトレヒト大学メディカルセンター、Julius Center for Health Sciences and Primary Careに属する医療機関であるJulius Clinicalによって実施されました。

関連所属病院58施設が市中肺炎と侵襲性肺炎球菌感染症のサーベイランスに参加しました。

CAPiTA で観察されたプレベナー 13の安全性プロファイルは、これまでに成人を対象として実施された臨床研究の結果と同様のものでした。なお、安全性データは、ISPPDでの発表に含まれる予定です。
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2014/2014_02_27.html 

まあ、二重盲検のRCTのようですが詳細はわからず。



各自がPubmedの各種検索方法、UpToDate、Dynamed、Medlineなど使って調べてみても、肝心の「ガチでPCV13の高齢者に対する効果を見た研究の原著論文」まで辿りつけない状態のため、いったん原著論文検索は打ち切り。

代理エンドポイントとして免疫応答を確認した論文はあるけど、人対象の臨床試験はあるのか??という疑心暗鬼・暗中模索状態に・・・




■次に、日本語でグーグル検索をして、詳しそうな人が書いているまとめ情報などをあさってみて現状をさらっと俯瞰してみることに。



「国際医療について考える」
http://blog.goo.ne.jp/mugenu/e/042205159075bb3f868b33929d6556e9

→ACIPの推奨について日本語で要点のみまとめてくれています。同様のまとめ記事の中では一番簡潔明瞭でした。
内容は上記で紹介した英語リソースと同じ(当たり前ですが)。

肝心の予防効果についてまとまっているところのみ引用します。
CAPITAの結果では、65歳以上の高齢者において、PCV13に含有される血性型の侵襲性肺炎球菌感染症を75%、菌血症を伴わない肺炎を45%予防可能とした(前回のACIPで費用対効果評価の際にはPPSVではそれぞれ74%と0%と計算)。
 
また、PCV13及びPPSV23の65歳以上における予防接種費用をCDC price listからそれぞれ85米ドル、44.5米ドルと計算(実際にはCMS<The Centers for Medicare & Medicaid Services> priceで、ぞれぞれ78米ドル、154米ドル)
こちらではIPDだけでなく、肺炎も45%も減らしたとありますね!

今回求めていたPECOのアウトカムが評価されており、PPSV23では成し得なかった「IPDでなく肺炎そのものを減らす」効果があるようです。

よーく読むと、「PCV13に含有される血清型の」という条件付きなので、「全ての肺炎の」ではないところが味噌ですが、成人に対してPCV13がほとんど打たれていない日本ではけっこう有効かもしれません。開始当初は。



別のブログでは、こちらが詳しくまとめてあって、今回の自分のこのブログ記事入らないんじゃないかという気持も漂うくらいまとまっています。

感染症・リウマチ内科のメモ
成人に対する肺炎球菌結合型ワクチン

→ただ、ACIPの勧告が出る前の記事らしいので、最初に挙げた英語論文の内容は扱われていませんでした。




■ちなみに、日本の厚労省で肺炎関連のワクチンの情報の新しいものはこれ。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/haienkyukin/index_1.html

PCV13のことは出ておらず(自分が探した範囲では)、PPSV23のことで、しかも5歳刻み(5年刻みではなく)という不思議な感じの例のページのみでした。



■最後に「少し前に、IDATENのメーリングリストでこの話題やってたから少し見なおしてみようか」と、その場でGmail開いて過去メールを確認。

クローズドメーリングリストの情報なのでそのままのコピペは割けますが(会員以外が出典の元情報を直接閲覧できないので)。。。


国内外の感染症専門家たちが上げている根拠論文・webサイトは、上記のものと一致していました(調べた範囲外のリソースはなかった)


ある先生の私見として、以下の様なものがありました。

・日本でも65歳以上の全員にPCV13を打たなくても良いと思うが、免疫不全の状態を個々に判断して現場判断で適宜打つのはありでは?

・そもそも現在のエビデンスでは、高齢者全員にPPSV23を打つことですら懐疑的なんだが、定期接種化されてしまったので接種割合は上がるだろう。コストを考えなければ悪いことではないでしょう。

・PCV13の高齢者認可についてはあくまで代理エンドポイントについてしか確認していない(肺炎発症を人間でみたのではなくて、免疫機能を実験室的に確認しただけ)。とはいえ理屈上はPCV13+PPSV23が、それなりに免疫不全のある高齢者ではIPDに関してはPPSV23単独よりは減らすかもしれないのでリスクの程度に応じて接種を勧めることはあるだろう。肺炎予防じゃなくてね。

と言った意見が印象的でした。

自分たちで調べた範囲の研究結果や推奨内容と一致していました。






step 3:情報の批判的吟味

Step2で得られた情報の概略でいうと

・PPSV23はそもそもIPDしか減らせない。

・PCV13は、理論的には高齢者のIPDを更に減らすだろうし、もしかしたら侵襲性ではない市中肺炎も減らすかもしれないが、高齢だけでなく免疫不全を起こしそうな合併症などリスクの高い人であれば期待できるかもくらい。

・ガチで検討された人間対象の大規模試験で、ピアレビューを受けてパブリッシュされ、EBMerたちにガッツリ批判的吟味されたものはまだない。

・それでもアメリカではけっこう積極的に「高齢者に対するPCV13→PPSV23」を勧めてきている。

・一方で日本の行政レベルではまだPPSV23の話でとどまっている。

・それでも保険適応にはなったし、うちには小児用として小児科に在庫があるのでいざ「打ってくれや!」と言われたらすぐに打てる環境は整ってしまっている。

という感じでした。



批判的吟味の対象となる原著論文が見つけられなかったのでStep3はモヤっとしましたが、いま出ているエビデンスのレベルがこんなもんだとか、一番まともそうな研究はまだ批判的吟味を受けておらずかつCOIガッツリのものしかないということは、簡単な説明で理解できるくらいには参加者の批判的吟味能力は上がっていることはわかりました。

製薬会社のお弁当付き説明会(そんなのは当院ではありませんけど)の話を鵜呑みにしないくらいにはなったかな。




step 4:情報の患者への適用

で、以上を踏まえてどうするかですね。

今回は、疑問の発端となった具体的な事例はいないので、その患者への適応についてはディスカッションできず。

最近入院している呼吸器疾患の患者さん達や、外来で出会った「よくわからんけど、テレビでやってるあれ(ニューモバックス)お願いね」という人たちを思い浮かべながら、そういった人たちに勧めるかどうかを簡単にディスカッション。

まあ、「全員に打とうぜ」にはならんよねという意見では一致。

どの人に打つのかは、現時点では明確にはイメージ定まらず、その都度個別に考えて相手とも相談して考えるという当たり前なスタンスに落ち着きました。

ただ、今回得られた情報はあるので、患者のナラティブだけでなく、エビデンスの客観的判断とバランスとって相談できるようにはなったでしょう。


 
step 5:step 1~step 4のフィードバック

今回は良い論文が見つからず、Step1~4について自信が持てないままの流れでしたが、最後にIDATENメーリングリストの議論をみて「自分たちの調べ方や解釈と一致しててよかった」という形でフィードバック出来て良かったです。

もちろん、あくまで一専門家たちの個別の意見と合致していることが、科学的真理との合致(そんなものがあるのかどうかは別として)かどうかは別ですし、個々の患者でベストかどうかはもっとちがう問題ですが、EBM初心者・感染症やワクチンについてもエキスパートとは呼べない集団での拙い議論だけよりは補強出来てよかったなと思います。

============================ 

みたいな感じでした。


以上でちょうど1時間くらい。


このブログ記事をまとめる作業のほうが意外と面倒でさらに1時間かかりました。。。
 
議論の流れのメモを追いながら、情報源のリンクを張りながら、図表を見やすく切り貼りしたりという作業が地味に面倒なんですよ。

EBM関係の記事がなかなか更新できない(月1回はEBM学習会しているし、他にも週1回は自分で批判的吟味ガッツリの論文精読もしてるんですが、記事は数ヶ月に1回)のは、この「ブログ記事として読みやすくする加工処理の手間」が一番の原因ですね。

こういうのサラサラとやってくれる後期研修医やスタッフが居ると楽なんですが、そんな人はなかなかいないので地道にたまにこうやって更新していきます。



 

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公衆衛生学会第3日目参加報告-エンパワメントを起こす質的研究、自殺予防対策

さて、公衆衛生学会参加報告も最終日のぶんになりました。


翌日に熱海で開催される全日本民医連医師養成集会の前泊・事前打ち合わせ会議に向かうため、最終日の参加は午前中だけとしました。

参加したのは、朝一の教育講演「質的研究」と、午前中のシンポジウム「自殺対策」の2つです。

昨日ので飽きたのでランチョンセミナーはパスして近くのカフェで昼ごはん食べながらこの記事完成させてしまい、午後はリハビリ認定臨床医レポート最終仕上げチョットしてから熱海に向かいました。

 

 ではまた内容の一部抜粋のみ。



2014/11/07 教育講演 質的研究


 

1.質的研究とは

質的研究の特徴3つ

グループダイナミクス                    人が複数関わる力動的なもの。静的ではない。場の理論

トライアンギュレーション             複数の方法を組み合わせて科学的妥当性を高める

エンパワメント                               研究者にも参加者にもプラスの変化をもたらす

 

定義

複数の人間の関わりから生まれるあらゆる情報を

体系的に整理して

科学的根拠にする方法。

具体的ななになに法という縛りはなく広い概念。

現場で使いやすい根拠が得られる。

    

2.実施のコツ

実際の観察動画供覧

歓迎とお礼:飲食物提供とか雑談から初めてアイスブレークしてから

自己紹介:簡潔に

解説:実施主体や目的・趣旨説明など始める。

   あんまり詳細に説明すると答えにくい(答え方が狭まり模範解答しか言えなくなる)ので、漠然としたテーマ説明のほうが良い。半構造化であれば「話し合う点は3つあります」など全体像を示すのも良い。

グラウンドルール:ニックネームは日本ではうまくいかないので、番号札のほうがいいことも多い(初めて合う人が1名でもいる場合)匿名化も記録も簡単。名前を覚える・間違えるという余計なプレッシャーが減る。

 

始め方:理想や提案などでなく、体験談や参加動機など参加者の前提条件から始めると話しやすい。

(できれば堅い話する人からでなく砕けたはなしする人から、遠慮がちな人よりは思い切った人から入って、場をほぐすことに前半は集中したほうが良さそう。)

(誰かが話している時に聞きながらかなり考えている人の表情もわかるので、そういう人に適宜振っていくスキルもあればよさそう。)

司会のコツ:司会がですぎるとグループダイナミクスが潰れる。道案内程度で適宜方向性や進捗の確認をする程度で、自分がしゃべる比率を減らして、参加者全員の話に等しく深い関心を示す(特定の人に深く反応すると他の参加者が引きづられてしまってデータが歪む)

一番最初の質問は、全員に対して行って順番に全員一回り喋ってもらったほうが、日本人の場合は良い(全員に伝えて好きな人が自由にだと盛り上がりにくい。ただし、司会が順番に指名して司会に対して喋ってもらうのではなく、順番に全員に対して喋ってもらって、1週したらあとはそれに対しての自由追加コメントや次の質問に移って良い)

 

クロージング:御礼の言葉、感想、今後への活かされ方(参加者がやってよかったと思えるように)を伝える。

   

3.分析のコツ

逐語記録、観察記録の作成

 記憶が鮮明なうちにやらないと質は落ちていく

レコーダーを業者に依頼するのも今は安価に可能

グループダイナミクスが動く重要なときは、日本人の場合は言葉よりも動きや雰囲気に

でるので、感情の動きについての観察記録のほうが重要(ACLS記録用紙みたいに、参加

者別に表情・動きなどを記録できるようにしておくと反応を定量的・経時的に見られるか

も)。

これをもとに、グループ全体の相違なのか、特定の背景を持つ一部の意見なのか、個人の

意見なのかを区別する重要アイテムの意味をグループダイナミクスを元にして判断し

ていく。

研究・論文として認められるかどうかは、このデータの質次第(量的研究であれば

生データが間違っている・曖昧ではそもそも話にならないので)

②一次分析

重要アイテム(キーワード)の抽出

 全てのデータのなかで、重要なものをマーカーなどで取り出す。

 どうしても主観的になるが、質的研究ではそれでよい。ただし、観察記録の情報を活かしたり、「モッテユキカタ(後述)」を意識しながらの抽出をすることや、複数の研究者ですり合わせや相談することで妥当性を高め、考察の限界で解説すればよい。

③二次分析

重要カテゴリの抽出

キーワードをカテゴリにまとめていく

カテゴリーは、出てきた意見をもとに新しい概念を作るのが目的だが、論文アクセプトを目指す手堅い形を目指すなら、既存理論に則ったカテゴライズしたほうが安全ではある。

一次・二次分析の方法はなんでもよい。KJ法でもなんでも。

④複合分析

 一次・二次分析の結果をまとめていく。

 (ストーリーラインとか理論モデル作るところ?)

 

分析の方向性は「モッテユキカタ(頭文字とった)」を意識するのが大事

目的                     →そもそも何のためにやるのか

提供対象    現場?学会・全国?自治体?

到達点(行方) 現状把握、改善策提案、政策提案?

強調点     どこにウェートを置くのか

活用法                 →どこでどのように使うのか

他の可能性          →他の研究方法ないのか?

(研究デザインを考えるときのFINERFIRMNESSと同じ感じ?)

 

質的研究は、かならず複数名の研究者で行い、データ抽出も分析も相談しすり合わせることでトライアンギュレーションして妥当性を高める必要がある(一人だと、その人の主観で歪みまくっても気づきにくい)

 

質的研究の評価基準(瀬畠、2001)

デザイン

 質的研究を用いた理由の説明

 適切な質的方法の選択

 倫理的配慮

サンプリング

 対象者特性の明治

 対象者の選択過程の明示

調査・分析

 具体的な分析プロセスの記述

 妥当性と信頼性を確保する努力

 データと解釈の区別は明確か

 結論の導き方は明確か

Methodのところがかなーり重要、結果と考察も例生活客観性担保が重要)

 


参考文献

ヒューマンサービスにおけるグループインタビュー法 基礎編・活用事例編・論文作成編

いのちの輝きに寄り添うエンパワメント科学

フォーカスグループインタビュー法の概要(ホームページからダウンロード可能)


 

感想:

FGIは、情報収集ツールというよりは、これ自体一つのインターベンションだなと思った。


新しい案のトップダウンの提示にならずに、こちらが事前に思いつく範囲にとどまらない現場から湧き出るアイデアがでて、かつ同時にメンバーがモチベートされるのでとても効果的。


ネゴシエーションでは越えようがなかった壁を、これで越えられるかも。


今回の学会で学んだり思いついた取り組みのアイデアを、具体化する方法を理解できた気分。  

 


職域の労働衛生管理のために、コホート研究を開始する前段として
FGIでプレの質的データをとって見つつ新しい仕組みやデータ収集を軌道に乗せる。


待ち時間短縮やネーベン業務・カルテ配分業務改善などの手段からでなく、外来をどうしたいかというところから初めて見ると、こういった手段にとらわれないもっと良いアイデアがでて看護師が勝手に取り組むかもしれない。


まず師長・主任や、常勤看護師など少人数で初めて、ある程度まとまってきたら全体ワールドカフェなどしていくといいのかもしれない。できれば外部からインタビュアーが来てほしいところ。S先生?



2014/11/07 10:00 シンポジウム23

多角的視点から見た自殺対策の今後の課題


1.地域自殺対策緊急強化基金を通じた地方自治体における自殺対策の検証評価

日本の自殺者数は金融危機後に跳ね上がり、そのまま高止まり。

それを受けて国家戦略が出た。

自殺対策基本法2006年、自殺総合対策大綱2007年、地域自殺対策緊急強化基金2009年の3つが立て続けに出ている。

 
考察:

対策と取る方向に向かう自治体には取り組む動機と人でが背景としてあった


これらがない市区町村に取り組みを促すべきか?わからない。


普及啓発は自殺対策の最初・当座のとっかかりになっている


市区町村が長期的な展望のもと対策を行える制度・枠組みが必要(基金は単年度で打ち切られてしまうので本腰入れにくい)


事業内容の均質性や自殺対策の標準化と、地域の実情に応じた展開とのバランスはどうあるべきか。


自殺対策の適切な規模(市区町村、二次医療圏、都道府県)は?

わりとわからないことのほうがたくさんわかった。結果的に良かったかどうかの評価はできていない。さすが行政の施策であってやりっ放しだった)

 

感想:

状況を踏まえて内閣府が動いたのはいいとおもったが、さすが「根拠レス」「評価レス」で日本の残念さを痛感した。お金も手間もかけてるんだしもうちょっとまともにやってくれよ。

 

 

. 地域における自殺予防対策関連活動の広がりと課題

秋田の現状

H15年に全国と一緒に自殺者数が増えた(559)が、其後10年で自殺者数が減ってきている(297人)。一方で全国では34427人から272832割は減っている

(秋田の人口減は1割なのでそれ以上の減りではある)

男女とも1020台の増加が顕著だった。

県内地域別では中核の秋田市はもともと低く更に下がってきているが、他の地域や町村レベルでも軒並み下がってきている。(それでも全国平均と比べると率としては高い)。

メンタルヘルスサポーター(傾聴ボランティア等)

 24団体、490人で県全体をカバー

 市町村や圏保健所が実施した養成講座の受講者

 日常的な心理的支援とゲートキーパー機能の両面

 世帯訪問やイベント・交流サロン開催など、社会参加機会や相談窓口の少ない地域柄を反映したものを行う。関わりたいと思っている側の人も結構いる土地柄。

 精神疾患や受診歴とは関係なく、孤立、悩み、社会的つながり不足などのある人も広くひっかけ、クラッシュする前に適切につなぐ。

 

いわゆるボランティア団体、活動

 22団体、739

 いのちの電話などその他、既存のあらゆる関連しうるもの、県が把握できるもの

 経済問題・生活再建、遺族支援など専門性を持ち個人やサポーターから相談を受けるものも、地域に根ざしたものもあるが、アルコール関連などメインターゲットが別のものは登録されていない

   

感想:

ボランティアベースの活動は面白くて、友の会でもできそう。

ただし、田舎だから出来る面もあるかも。札幌ではどうか?でも、昔から住んでる高齢者対象なら大丈夫そうだし、月間での訪問活動もしているので、これの定期化や目的明確化などでの発展はできそう。

「自殺予防」だけだと狭いが、孤立や孤独死、寂しさ対策まで視野に入れれば共感は得られそう。活動資金、組織内位置づけ、活動結果評価などは必要で、できれば先行成功事例データがあるとプロセス評価だけで済むのでありがたい。

 
 

. 精神医療政策と今後の自殺対策

G8認知症サミット、その後継イベント、OECDの日本のプライマリケアの評価など世界的な動きが日本に注目している。入院中自殺率と退院後自殺率などの統計が取られたりしている。

WHO自殺予防ガイドラインの日本語版がダウンロード可能
 

日本の誇るツールである母子健康手帳を参考に、脳卒中や認知症の手帳も各自治体で開発されていて、10代発症の多い統合失調症などに使えるように精神疾患手帳を検討している。

糖尿病管理手帳に加えたり、アルコール外来の手帳に加えたりなども。

手帳はGuided Self-helpのツールであり、様々な精神疾患患者支援のメタアナリシスの結果ではこのGuided self-helpが唯一有意差のあった方法だった。(手帳すごい!)


感想:

印象に残ったのは手帳の活用、全入院患者へのパンフレット、退院後フォローの難しさとデータのなさの問題(プライマリケア領域では拾い上げや外来継続のほうが気になるが)など。

ゲートキーパーの機能とはなにかというテーマとの関連がよくわからないまま終わった。


要は、日本の自殺について、国レベルや国際規模で最近になって注目されてきた領域だが、政策レベルでは全然具体化されておらず介入方法は模索中だし、現状把握データもあんまりない状態だということがなんとなく分かった。精神医療という視点であり、公衆衛生の視点や手法があんまり意識できていない感じで残念。まあ量的評価の難しいジャンルではあると思うし、難しさは先行する発表で理解できた。


. コミュニティー・アプローチによる自殺対策の可能性:JAGESプロジェクトの知見から

近藤克則(千葉大学予防医学センター 環境健康学研究部門)

 

JAGES(じぇーげす、じぇいえーげす:日本老年学的評価プロジェクト)

1.対策の根幹となる自殺のリスクや、「原因の原因」(うつの原因)の解明

 社会参加が重要だった

2.コミュニティ・アプローチのための自殺関連要因に関する地域診断支援システムの開発

3.ソーシャル・キャピタルの涵養方法の開発と効果検証


H26年版 厚生労働白書

地域の健康づくりに関する国の指針について

ソーシャル・キャピタルの考え方の導入が特徴で、地域に根ざした信頼や社会規範、ネットワークなどの資源を重視しよう。

となっているが、ほんとにこれが重要なのかを検討しようと思った(昔の海外の研究では示されているが現代の日本の高齢者ではどうか? →またもや根拠レス)

 

ただ「社会参加」するのではなく、「役割を担って参加」したほうが、男性についてはうつ発症リスクが7分の1へる。役割も参加もない人が19%、参加しているが役割のない人手は8.5、両方ある人は1.2%。「男性は名刺に肩書がないと寂しい」のかもしれない。

女性では同じ傾向はあるが有意差がない。

 

うつ状態高齢者の市町村間比較もしたが、やはりばらつきは大きく、前期高齢者で3.59.5%、後期高齢者で6.0~14.4%の地域格差がある。うつっぽい町と明るい町。

 

頻度(今回の研究やその他のデータで分かったこと)

社会参加は424

うつは前期410、後期614

自殺は人口10万人あたり1040人=0.010.04%しかいない。

イベント数が少ないので、介入で自殺者を減らすことの証明が結構難しい。

相関はあることを示せたので、「自殺者数を減らす」ではなく測定しやすくnも大きい「うつを減らす」「社会参加を増やす」の変化で測定しようという方向へ。



まとめ

コミュニティーアプローチによる自殺予防は可能か

社会参加は打つ余病につながる

自殺率はうつやソーシャル・キャピタル指標に相関

ベンチマークによるマネジメント支援のための見える化システムを開発

 地域診断で課題設定、研究で手がかり発見、地域介入でSC履くァル、実践後の変化モニタリング・効果検証

コミュニティーづくりによる自殺予防は可能ぽい。

 

感想:

面白かった。

意外と社会参加うつ自殺の関連がまだ証明されていなかった(高齢者以外は証明済?)のは割りと衝撃的で、かつそれを証明した過程を知ることができ、研究の現実性を考慮して代替アウトカムでとりあえず介入というのも参考になった。

普通のサロンで自殺予防につながる(かもしれない)こととか、既存の活動・組織につながる効果があるとかは結構面白い。友の会ベースで初めて、継続して、その結果広がるかどうかは疑問だが(現在はかなり閉鎖的なので)、参加しやすい場所や広報の工夫からきちんとこちらがやれば変わってくるかもしれない。

 

 


全体の参考資料

WHO自殺予防ガイドラインの日本語版がダウンロード可能

 http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/link/tebiki.html
 http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/pdf/tebiki.pdf
JAGES
ホームページ
 
http://square.umin.ac.jp/ages/



 

全体の感想

自殺対策も、事故対策と同様かなり関心を持っていたが、今回の学会でこの2つについての知識が身についてとてもよかった。


自殺対策について、外来でうつのスクリーニングをするだけではいまいちだったなと思っていたが、実際に地域にアウトリーチしてやる方法について高齢者に関してはかなり具体的にイメージ出来た。


労働世代についてはまだ不明確だが、まだ国内エビデンスのない領域ということもわかったので、労働衛生関係の研究のニーズは大きそう。

今回の近藤先生研究は老年領域だが、海外の含めて青壮年での代替指標とうつや自殺との関連をまず調べて、効果のある介入を計画して、その前後で質的・量的アンケートをとりつつ、一部は
FGIで実施することで現場改善につなげることができたら面白そうだ。


高齢者部門は地域レベルなので外来家庭医に(
GPMECリサーチプロジェクトチームで振ったり、家庭医療センターに提案してもいいかも)、組織レベルでは外来看護師業務や札病外来のあり方は病院総合医に、職員全体の労働衛生は自分でやれるといいかなー。

 

 



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公衆衛生学会第2日目参加報告-ヘルスリテラシー(健康教育を超えて)、コホート研究と政策提言(地域に還元できる研究)、セーフティープロモーション(事故予防活動)

さて、今日は公衆衛生学会の2日目でした。

朝からぎっちり頭に詰め込んだり頭を使ったりでぐったりですが、寝ちゃう前に参加報告をまとめてしまいます。



今日参加したのは、
教育講演2 ヘルスリテラシー
奨励賞受賞講演
ランチョンセミナー5 肺炎球菌ワクチン
シンポジウム16 コホート研究と政策提言
シンポジウム20 セーフティープロモーション 
の5つでした。

時間と体力がもたず、口演やポスターまでは回れず。


今回も参加報告全部のせたらブログ文字制限オーバーしたので、抜粋のみです。



2014/11/06 8:50 教育講演2

働き盛り世代におけるヘルスリテラシーと健康教育

順天堂大学医学部総合診療科 福田洋

 

ヘルスリテラシーの定義についての解説の部分抜粋。

定義はいろいろある。

The ability to access, understand, and use information for health

健康に関する情報力

(わかりやすい。)

 

また、health literacy as a clinical “risk factor” ともいわれる。

背景というよりは、直接のリスクファクターの一つでもある。


そういう意味では喫煙に対する疾病予防という視点と同じでそこまで面白くない。


むしろ、
Health literacyというのはAssetsでもある。資産であり育てるべき基盤でもある。順守から調整へ、ConplianceからCoordinationへ。

(この視点なら面白い!!)

 

ヘルスリテラシーが高まると、生活活動全般が良くなり健康アウトカムが良くなる。

それだけでなく、集団でみると、ヘルスリテラシーの高い人が増えると、コミュニティー全体の行動やルールや文化が変わっていき、健康な組織が増え、最終的に政策形成や資源配分につながっていく。かも知れない。(おお!、面白い!!)

 

 3つに分類すると

機能的(もしくは分別的)ヘルスリテラシー 個人を変える

相互作用的ヘルスリテラシー 組織を変える

批判的ヘルスリテラシー 社会を変える

 

これらを縦軸に、横軸に収集、蓄積、判断・活用の3つをおいて9分割表での記載もある 
(なるほど)

以下、評価方法とか、評価結果の活用とかとても面白い話が続いた。全部紹介したいところですが残念。


参考資料

健康の社会的決定要因(第二版)WHO2003、日本語版。I

→Podメモ集「A.予防・健康増進」内にもデータあります。

 →リンクはこれ:http://www.tmd.ac.jp/med/hlth/whocc/pdf/solidfacts2nd.pdf

ヘルスリテラシー by Wikipediaもわかりやすい


ヘルスリテラシーと健康格差、社会格差と健康、
2,006 杉本裕樹


Ask Me 3
 →米国で、「診察中に、3つの質問を追加して、ヘルスリテラシーを高めよう」という活動がある。

 →調べてみたら、医者がでなく「患者が質問する」だった。
  参考ページ:
https://www.ihs.gov/healthcommunications/documents/AskMe_8-pg_NatAmer.pdf 



感想:

おもしろかった!!


ヘルスプロモーションを実践し、地域住民や組織職員をエンパワメントするための視点と方法を得たいと思っていたが、やっと具体的な方法が見えたと思えた。


いきなり何かする前に「まず測定する」という視点で職場でもやってみようと思う。


まずは評価尺度を得て、職員で下調べして患者にもという建前で職員調査してみるか。
HPHの概念にも沿うし。 




2014/1106 10:00 奨励賞受賞講演

 

きちんとした研究を見たい、公衆衛生の王道を知りたいという欲求で参加した学会なので、口演やポスター発表をだらだら聞くのではなく(それだと時間がかかる割に暴露されうる発表数が減る)、ポスターは自分で見て回って、口演はレベルが高いであろう受賞講演だけに絞った。

 

内容紹介は割愛。 


感想:

あまり自分にとって印象に残るような発表は見られず。

研究方法がどうこうとか成果がどうこうよりは、こういう背景があって問題なのでこんな活動をしたという活動報告レベルのものが多い印象。

きちんと成果は出しているので「さすが!」だけど、理論的背景や方法論の科学的妥当性とかはあまり注目されない?(→この疑問は次のシンポジウムを聞いていて腑に落ちた)


たまに発表を聞きながら抄録集をよんだりレポート書いたりしてすごした。

 

 

 

 
 

2014/11/06 13:30 シンポジウム16

コホート研究と政策提言

 

 

座長からの最初のお話

時間の経過に伴ってデータを取って政策につなげていく、時間も手間も金もかかる大変なもの。そのため日本ではあまり実践されず、政策提言につながることも稀だった。


しかし、時間軸があるため原因と結果を示せる、公衆衛生学には無くてはならないもの。
欧米では
50年以上前からたくさんの研究があり、貧困と健康や認知症の早期対応など多くの政策につながっている。

 

日本で一番長いものは25年。

データだけでなく、住民の変化・成長が見えてくるし、研究者・公衆衛生学者も一緒に育っていくエンパワメントの効果もある。

 

今日は4つのコホート研究を紹介します。

学際・学融合効果を目指す。

 

1.出生コホートから

子供が生まれた時からずっと追跡していくコホート。

小児科医の立場で関わったコホート。

 

成果:

乳幼児期の行動観察で、社会性の測定が可能である。発達を予測できるかもしれない。

保育場面の観察で社会性の測定が可能である。同世代のなかまとのこうりゅうのしつてきへんかが社会性の成熟度を予測できるかもしれない。

ゲームをしている時の頭部の動きで社会能力を測定する方法の開発

親子の交流場面の観察を評価する「関わり指標」の開発。

 

主な結果:

・褒める行動は社会性の発達を促進する

・褒めることは金銭報酬と同様に報酬系に関連する脳の領域と一致している

・「家族機能」が子供の社会性の発達に関連している

・睡眠時間、妊娠前期の母親の飲酒、母親から子供への語りかけも子供の社会性の発達と関連している。

→いずれも横断研究では示唆されていたが、コホートできちんと因果関係を初めて確認できた。

 

ポイント:「家族が大切」

家族機能は重要

 困ったときに助けになる。話しあったり苦労を分けあったりする。なにか新しいことを

するときに助けになる。自分の感情に答えてくれる。団欒する。

FOPC的ないろんな種類の関係というよりは、家族内の良い関係の中身を具体的に提示)

 

まとめ

地域コホート研究で得られた治験は、地域にフィードバックすることが大切である。

(そういう研究と還元活動をしたいと思う)



 

2.地域コホートから-生涯発達効果-

日々住民と関わりながら、実践の中での取り組みをしている。

愛知県海部郡飛鳥村(とびしまむら)役場 保健師


4437人、高齢化率26.6%、後期高齢者14.9%(全国平均より高い)、要介護率・特に要支援は全国より低い、検診受診率が51%と高い。

元気高齢者対象の一次予防対策で多くを拾えていて要支援まで行かないで済んでいる結果らしい。

 

元気高齢者876名、介護予防必要83名、要支援23、要介護184

高齢者全員に対して年1回全員の実態把握を行い、講演会・相談会を年85回で延べ3400人参加、介護予防教室を年280回で述べ5300人参加している!


で、介護予防が必要な高齢者はケアマネジメント追加し、要支援者以上だと介護保険サービスとインフォーマルサービスなどを順次追加していく。

早期から全例に関わることで、入り口を広く広い漏れをへらし、短期間身体機能等がおちても回復していく方向に向かいやすいと感じている(早期介入なので回復する余地が大きいのはそうだろう。これを病院でやるのは無理だけど保健師・役場単位でやっているのは理想的なきがする)


以下、具体的な活動や工夫、成果の紹介など。

 

感想:

小さな村ならではのきめ細やかさが正直羨ましいとおもった。
しかし小さな村で予算も意識もなかったところからのスタートでありすごいとも思う。

やはり現状調査に則した提案、それに住民の意見を徹底して聞き取って生かしていくこと、行政も巻き込むこと、定期的に再調査や情報の広報をすることなどエンパワメントや地域志向がすごく良いのだと思った。


札幌でこれをやるにはどうすればいいか。やはり、まずは友の会に限定してスタートすべきか?




3.多世代交流コホートから

特にエンパワメントに焦点を当て、住民のやる気を引き出し自分たちのこととして活動を継続させるかに着目している。

 

住民主体、多世代交流の要素を取り入れた自治体オリジナル体操を市民とともに開発し、その効果を評価した。 

 

体操種目は市民の投票、歌詞は一般募集で決定、新たな要望に答えて新バージョンを追加、施設ごとの独自バージョン・アレンジも推奨、個人や仲間で体操開発や推進に関わる楽しさも提供した。

(このへんは、友の会新聞などつかって双方向かつ継続的にできそう!)

 

曲に合わせる、歌いながらの運動にすることで、複数の領域を同時に刺激できるし、だれでも同時に同会場で実施でき動きも同調できることで、ゆるやかな一体感、仲間意識を共有できた。いろんなバージョンが合っても基本が同じなので、あったことのない遠い地域の人とでもすぐに打ち解けられる。

また、みんなで楽しめる工夫として、大きなイベントを開く体操教室型にしなくても子供から高齢者までちょっとした機会で体操ができるので、活動機会が増えた。

 

最後に動画供覧

意外と初音みくボイスがしっくりくるし、振付もバージョンのどれかはどこかの世代にヒットしそうで、しかも結構ハードで効果も出そうだなと思った。

 
 

感想:

さっきの村の報告のような全例対策ではないが、既存の運動教室を自発的・多発的なイベントに変えていったり、基本的なアイデアやITツールのみ提供してアイデア出しなどは公募で広くやったりと言ったところは現実的だし、行政レベルや病院レベルで実施しやすいと思えた。
 

世代を超えてというところでは難しそうだが、校医をしているところとつながって地道に信者を増やすとかはできるかもしれない。


これを、質の高い研究者が音頭を取ってやっており、
CBPRのイメージがかなり見えてきた。友の会であればできそうだと思う。相談し実行するための活動単位が欲しい。

やっぱり外来や指導を担ってもらえる人を捕まえて病院どっぷりではない立場をゲットし、管理運営や地域ケア、研究に集中できる時間を確保したいと思った。もしくは研究者側の仲間をみつけて実行部隊を依頼するか。



4.保育コホートから

パートナーシップ効果専門職として親・子・研究者が、ITを活用しながら色々やった報告

 

98年に「保育パワーアップ研究会」発足した

 

5つの支援ツール開発

発達評価ツール

育児環境評価ツール

保育環境評価ツール

気になる子供支援ツール

社会的スキル尺度

 

支援設計として目標、課題、背景、影響要因、支援方法、根拠など、得られた根拠やツールで得た情報を活かす方法も作ってきた。

 

ホームページでの発信と4冊の本を作った。

 

 

現場で保健師をしていた経験から、現場の保健師・保育士の持っている情報やノウハウを共有する仕組みの構築を考えていた事もあり、webプログラムを書くのも得意だったので、開発した5つのツールと支援設計をweb錠で動かせるシステムを立ち上げ、クラウド環境下で実行し、子育て専門職や保護者がスマホからでもいつでもアクセスできるようにした(もちろん研究者も常にアクセス可能)。


大きめの画面表示、タッチしていくと評価結果が即時にわかりやすいグラフでビジュアル表示される。その子供の発達のバラ付きだけでなく、全国平均と園単位での平均値を比較したりもできる。新米保育士でも気づきがでるように。、結果に応じてアラートや関わりのヒントが出る用にした(
EPSSで項目入力すると、結果出るだけでなく解説ページも出るような感じで)

支援設計レポートページで、自分で考えながら支援設計ができるようなサポート画面も作った。

 

また、連結可能・匿名化された演じ情報を継続的に集積できるため、研究者にとっては園児の発達に関する経時的な情報記録活用ができ、学童期に及ぶ経年分析を行い、さらなる根拠を生み出せる仕組みにした。(便利!最初は大変だが、きちんとした目的と設計にもとづいていちどシステム作れば後が楽ちん)

一度軌道に乗れば口コミが広がって、自分で宣伝に回らなくてもよくなった。個人が端末を持つ時代になったのでアプリさえあればあとは勝手に広まる時代にもなった。

 

子供を叩かない、一緒に買い物をするのが粗大運動に関連、一緒に歌う・一緒に遊ぶのが生活技術に、たたかないのが言語表現・言語理解に好影響だった。

1歳時の育児環境と5歳時の社会的スキルでは、一緒に本を読む、家族で食事をする、配偶者と子供の話をするのがこの順番で(後ろほど強く)5歳時の社会的スキルに好影響が大きかった。他にも多くの、小さい時の育児環境や生活習慣、保育者支援と、学童になったときの社会能力との関連がたくさんわかった。

 

保育形態や時間帯は影響はなく、育児環境、保護者の相談相手、保護者の育児協力者の有無などの人的支援・工夫のほうが影響が大きいことがわかり、深夜保育業者やそれを利用する親を安心させるデータがとれた(なんとなくの不安をとれたこと、具体的な改善策がみつかったことなど、研究の意義はかなり大きいと感じた! しかも、日常的に保育者がデータを入れると具体的な保育工夫がわかるツールもできたので、大きな視点でも日常の視点でも有意義!)

 

また、このシステムを利用するようになった認可保育園の保護者1万人の調査では、子供を叩く行為が6~7割減少、家庭の中での望ましい関わりは3~8割増だった。

(保育者など中間ユーザーの行動変容・心理的変化だけでなく、(子供の保護者の有害な行為減ることを通して)エンドユーザーである子供の育児環境が良くなった(そしてこの有害な保育行動が少ないと子供の発達に良い影響があることもコホート研究で示しているので、間接的に子供の発達アウトカムも良くなっているはず)。

 

今後は国際化させたり色々やっていくよてい。

(純粋にはRCTではないので、このツール導入が良いのかどうかは分からない状態。導入施設を増やすだけや導入している施設の前後比較だけでなく、施設間のクラスター比較をすることはできるのでは?その辺は臨床医のほうが強い視点なのか?シンポジウム最初の話でも「コホートバンザイ!」な話だったし)

 

参考webページ:

保育パワーアップ研究会研究会の成果が載っている

子育てエンパワメントコホート結果が出ている。

体験版もwebで申し込めて、体験版IDで使えて、気に入ったら本格版の登録ができる。

 

フロア質問:

入力の手間大変では?

お誕生月の子供が表示されて、1年間の変化がわかるシステムになっており、利用者がログインすると最初に「今月誕生日の子供」一覧がでて、入力すると一覧から消えるので入力するプレッシャーになる。また、自分が関わった子供の成長が視覚的にフィードバックされるので、付けたい内的動機付けにもなる。(なるほど)

 

その他(質問聞き取れず)

住民やステークホルダー巻き込みにはアウトリーチや対話も必要だが、結果を彼らにフィードバックすることでやる気や満足感を出すのも重要。

 

感想:

これぞコホート研究!と思える説得力のある研究デザインとデータ提示。学会賞これでもらえないんですか?という気もするが、臨床研究の発表ではなくシンポジウムの一部なので仕方ないのか?また、論文化するぞという雰囲気が会全体を通してあまり感じられない(他の学会もそうだけど)のは少しもったいない。


そして
IT活用の様々なメリットも痛感。やはし、ITリテラシーの高い仲間は必須。自分で勉強してもできそうだけど時間的に多分無理だが、この壁を超えられればできることはかなり多くなり、リーチ出来る幅も広がる。

院内だけ考えると電子カルテなどの制限が大きいが、友の会や地域住民を対象にホームページやその他webツールをできると良い。

 

 

 

シンポジウム全体の感想

「コホート研究」の研究手法とか統計学的正しさに対する囚われが全体として薄く、それは大前提として「研究結果をいかに住民に還元するか。良いデータを取るためや還元した結果が取り入れられやすくするための工夫としてどのように巻き込み・エンパワメントをするか」という話が多かった。


自分が参加するような内科学会やプライマリケア連合学会は、研究の視点が全くなくてめちゃくちゃか、逆に統計学に縛られすぎて正しいけど臨床的な応用が効かないの両極端になっている気がして、今まではそれでもまずは「きちんと統計学的・学術的な批判的吟味に耐える研究をする」という方向にこの数年偏ってきていた事に気がついた。検査や治療と同じで「知識が曖昧なほど過剰に崇拝してしまう」傾向が研究手法についても当てはまるんだなと思った。もっと詳しくなって一定のラインを超えて「研究手法なんてどうでもいいから、結局その研究でどんな地域貢献したいのよ?」と素で思えるようになりたいと思った。

 

自分が医師を志した時の「超高度で最先端な科学的治験を地域や住民に還元できる科学者になる」という視点を思い出し、このような研究・活動(いわゆるCBPRのジャンルになりそう)ができるようになりたいと思った。町や村単位での活動は病院にいながらできるとは思えないが、病院職員や友の会に限定したところから始めるのはHPHの使命とも合致するしやれそうな気がした。

 

また、やはりITは使えるところは使ったほうが、最初のユーザー獲得とデータ解析上は有用で、そこからキャズムを越える段階で紙とかアナログを何とかしたらいいんじゃないか 




2014/11/06 15:50 シンポジウム20

セーフティープロモーション  ―公衆衛生アプローチによる安全・安心づくり 理論と実際―

 

 

座長からのシンポジウム全体の解説

 

セーフティープロモーション

病気でなく傷害で死ぬ人を防ぐための仕組み

暴力、事故、自殺などを含む

 

1人目

セーフティープロモーションとは? ヘルスプロモーションとの関係を含めて


アクシデントは偶発的で予測も予防もできないが、インジャリーは人体に起こることだし予防策がいろいろあるのでこっちに焦点が移ってきている。ので予知可能で予防可能な健康問題という意味を込めてInjury preventionになってきている。 

セーフティープロモーションは、Injuryだけでなく、それによる安全・安心への脅威を保健医療上の課題として捉え、公衆衛生的アプローチにして予防しようとする取り組みを示す。


ヘルスプロモーション
                    セーフティープロモーション

疾病を念頭に置いている。             傷害を念頭においている。

ライフスタイル志向                        環境を志向しつつライフスタイルも

プロセス評価が有意                        効果の評価が重視される(死亡率減少とか)

予防することだけでは十分でなくより良い健康を希求            到達目標は予防(安全を推進することも支持するが) 


2.日本におけるインターナショナルセーフスクール(International sage school:ISS)の活動について

 

ISS認証の8つの指標

組織を作る、方針を基底、それに基づいて計画策定し、根拠に基づいて評価するというPDSAサイクルが基本となっていて、最後に共有・Shareが強調されているのが特徴。

 

もともとは怪我や犯罪予防(生活安全)だったが、日本ではこれに加えて交通安全、災害安全も強調されている。さらに組織活動(施設等の安全点検、家庭・地域の連携)も含めて4大領域がある。

これら項目を8つの指標と掛けあわせたマトリックス表になっていて、これが全部出来ているかどうかではなく、できていないところを明確にして改善策が決まっていれば認証される(これは現実的。うちの病院の労働衛生環境改善策としてもできそう。労働衛生・産業安全のジャンルで似たような指標がほしい)


ISSの考えと、UNICEFChild friendly schoolなどを基盤に、新たに我が国独自の学校安全の考え方を基盤とした「セーフティープロモーションスクール」の概念を作った。

(もともと法で規定されている学校安全を、具体的に決めて進めていくための方法論?)

ISSは国際標準だが、きちんとやろうとすると海外から認定員を呼んだりとお金がかかるので、新しく日本国内用の認証制度を作ろうという流れでできた。(ベースはISSで、かつ日本の災害安全も盛り込んでいるので劣化版というよりはバージョンアップという印象)

 

3人目、交通事故による傷害を減らすために効果的予防対策の実践

法医学者の立場で、事故死症例を丁寧に見ながらやってきた。 

 

自動車は必須という前提で、自動車事故を減らすことを考える。

道路交通傷害は、重大であるにもかかわらずなおざりにされてきた公衆衛生上の問題

毎年130万人が死亡し、5000万人が負傷している。

世界の死因として、2004年は9位だったが、2030年には5位になるだろう。

 

今までの日本において、普通に交通事故死があると、注意力散漫として警察に処理されるが、きちんと解剖するとAMIとか脳卒中とかがたくさん見つかるので、きちんと検討する必要がある。

運転中に病気が発症すると、無制御状態の自転車が暴走してしまい、気合で止めることは不可能。

→ハンドル操作やブレーキ痕などがないのはそういうのが原因だと思われる。

 

その結果、ヒューマンエラーだと勘違いされ、運転手法律順守や運転者への警告を前提としたシステム(アラートが出る・なるなど)に誤って向かっていった。それではダメ。

運転中に、運転者が急に意識消失や死亡しても事故被害が広がらないためのシステムが必要(てんかん発作やAMIを起こした運転手が子どもや住民を巻き込む事故の報道が続いているのに反省がなかった。警察はすべて運転者不注意で処理していた)

 

職業運転者における運転中の病気発症原因別分類

今まで認識されていなかったのできちんとした統計なんてあるはずがないが、国土交通省では職業運転者に関しては運転中の事故の報告義務を出していてデータが有った。非公開だったがこの先生が初めて引き出した。これ以外に国内のデータがない

脳血管疾患や心疾患が4分の1、湿疹や消化器疾患が8%ずつ、めまい、精神疾患、その他(咳とか普通の症状)が事故を起こしている!身近。

 

外国ではきちんと統計をとっている。

フィンランドでは、交通死亡事故の10%が体調変化、半分が病死、残りが事故死

カナダでは、1割がACSによるもの。

 

日本損害保険協会の自賠責運用拠出事業に加わってデータをとってきた。

すべての事故で、丁寧に聞き取りや調査をしてみると、事故前に意識消失が先行したのは7.5%あった。低血糖3、向精神薬使用2、常用薬休薬1の順。

意識消失以外もふくめるとやはり1割は体調変化による事故は国内でもある。

他の研究では、てんかん、めまい、糖尿病などがやはり多い。

 

症状を良くする治療はよいが、アドヒアランス改善で飲み過ぎ・飲むタイミング間違い・飲み忘れを防いだり、治療しすぎの低血糖を防ぐ責任は医師にある。

しかし、頑張って指導しても守らない人はいる。

  

道路交通法が昨年変更された

いくら言っても聞かない人について、医師は病気で危ないと思うが免許を受けたものを知った時は守秘義務の適応範囲外として通告できる義務がある。

 

特に事故を起こしやすい人は職業運転者。バスやタクシー運転手など。そういう人の健康管理はもっと厳しくしないといけない。歩行者巻き込みだけでなく乗客まで全滅してしまう。

    

4人目以降は、集中力が燃え尽きたので参加せず終了。

 

 

シンポジウム全体の感想:

死亡原因の上位に「事故」「自殺」があるのは、家庭医療や疾病予防・健康増進を学んだ頃からずっと気になっていたものの、診察中に少し話題に出すことはあっても具体的な知識や体系的な取り組みはできていなかった。
 

今回「事故」の現状をしり、具体的な考え方や評価方法、活動内容などを学べてすごく面白いと思えた。小児領域だけでなく「はたらく世代」でこそ重要な概念だなと思えたので、これも労働衛生に活かす形でうまくやっていきたい。


今回の学会で得たものをまとめなおして、具体的で実践可能そうなプロジェクトを
1個立ち上げてCBPRやアクションリサーチの形で再来年くらいに学会発表まで持って行きたい。病院総合医の組織管理と臨床研究を具体化する一つの象徴になるかもしれない!

    



ランチョンセミナーは、予想通りデータや論理構成をうまくずらしながら「とにかくたくさんこのワクチンを打ちまくってね」というメッセージの嵐だったので載せません。

きちんと詳しくわかっている先生が、わかった上で上手に嘘のない範囲でしゃべっている技術自体はとてもすごいと思った。





以上です。

元レポートは、法人内のメーリングリストで流しておきますね。
 

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公衆衛生学会第1日目参加報告-健康影響予測評価(HIA)、家庭医と視点の同じポスター発表たくさん、メインシンポ「学校保健・地域保健・産業保健の連携」

参加報告です


参加したシンポジウム、講演、ポスターごとに5~10ページ単位の参加報告(というか自分のお勉強メモ)を作ったんですが、あまりに長いのでそのままは公開しません。

が、プライマリケアや家庭医療とものすごく関連の深い内容ばかりだったので、参加セッション名と感想や参考資料だけ貼っておきます。



初日は、「健康影響予測評価」のシンポジウムと、「学校保健・地域保険・産業保健の連携」というメインシンポジウムと、あとはポスターをいくつか見て回りました。


シンポジウム5 2014/11/05 14:30

健康影響予測評価(HIAHealth impact assessment)と地域保健:理論と実践


内容のメモは省略

感想、追記
HIAの基本的な説明やその効果についてのエビデンス紹介がなく、HIAのやり方や、やりました報告だけと感じて、後半は聴講せず。
余った時間でポスター発表会場に行き、時間がもったいなかったので発表は聞かずに発表していないところのポスターを片っ端から眺めて感想を記録した(別紙)。毎日ポスター変わっちゃうらしいので大変。
そのあと、別会場のメインシンポジウムに移動した。

もう少し抄録を読み込んで予習もしていけばよかったと後悔。聴衆の想定が自分より高めに設定されていた(当然ですが)。
学会員ではなく参加できるかもわからなかったので事前登録せず、抄録集は事前に見られなかったのが地味に痛手。


参考資料(学会後、夜にネットで集めた資料たち)

健康影響予測評価ガイダンス - 日本公衆衛生学会
https://www.jsph.jp/pdf/JSPH%20MR9%20HIA%20g.pdf
 ↓一部コピー
HIA とは
HIA とは、新たに提案された政策が健康にどのような影響を及ぼすかを事前に予測・評価することにより、健康の便益を促進し、かつ不利益を最小にするように政策を最適化していく一連の過程とその方法論のことです。

HIA は主に環境分野で発展してきましたが、今日では特に欧州を中心に国や自治体などの政策形成のツールとして、雇用、教育、都市開発などさまざまな領域で適用されています(WHO European Centre for Health Policy, 1999, 藤野善久 and 松田晋哉 , 2007a)。

なぜ必要か?
人々の健康は、医療技術や保健医療政策のみならず、雇用、教育、住宅、食料、環境、経済などさまざまな分野の政策によって大きく影響を受けます。しかしながら、保健医療政策以外の政策分野において、健康に関する配慮を求める機会は限られています。そこで、特に保健医療政策以外の政策分野において、健康配慮を求める社会的なメカニズムとして HIA が発展してきました。

コラム
近年、国内においても海外と同様に、健康格差の存在に関心が集まっています。健康格差は主に教育、所得、住居、職業などの社会的健康決定要因(いわゆる保健医療以外の要因)に起因するとの指摘もあります。そのため、健康格差を指摘した多くの報告書が、健康格差の取り組みとして HIA を提唱しています(Acheson et al., 1995, CSDH, 2008)。

公衆衛生や医師が担う「保健医療政策」以外の政策について、健康への影響を予測する方法論であり、目的は「推奨意見の作成」であり「未来予測」をすることではないともあり。

→やっと納得。シンポジウム出るよりこの冊子の方が、自分のレベルではよほど役に立った。


総説 政策評価に社会医学の視点を —ツールとしての HIA(健康影響予測評価)の必要性
http://jssm.umin.jp/report/no30-2/30-2-07.pdf

要約のみ引用
健康影響予測評価(Health Impact Assessment、以下 HIA と略す)とは、提案された政策、施策、事業によって生じる可能性のある健康影響や健康事象に関連する要因(健康の社会的決定要因)の変化、影響を受ける集団及び集団の属性の違いによる影響の違いを事前に予測・評価することによって、健康影響に関する便益を促進し、かつ不便益を最小にするように、提案された政策、施策、事業を適正化していく一連の過程と方法論のことである。

公平性を重視し、健康格差も含めて社会格差を是正する手段として HIA の活用が提案された。健康の社会的決定要因への対応には保健医療政策の範囲に留まらず、保健以外の多岐に渡る政策分野での取り組みが不可欠である。そこで本総説では、HIA の導入背景、定義、具体的手順、実践例、今後の展望について概説する。

→シンポジストのスライドに出ていた概念図やステップの説明の図があり、こちらのほうがわかりやすい


以上です。

地域の健康の現状や介入を評価するときに、どうしても「医療」の側面だけから考えがちだけど、それ以外の政策や出来事が健康に及ぼす影響も大事だし評価方法があるよということが、今回得られた大きな気付きでした。
言われてみれば当たり前、でも医師アタマでは意外と難しくなっていたことにショック。
実際にやるかと言われると、いつか取り組む日がくるのかもしれないですが、まだ遠い印象。




2014/11/05 ポスター発表メモ

発表は聞かず、自分で勝手に見て回った。

 

ポスター内容のメモ箇条書き


65歳以上で転居した人は、身体活動や社会活動が低下している

転倒恐怖感といろいろの関連


施設高齢者に対する化粧プログラムの効果。普通の運動プログラムより参加率がよい

 施設によって介入群と対照群(運動プログラム)に分けて比較していた

 おもしろい。こういう介入型の研究やりたい。


高齢者における、
SOCSense of coherence)と介護度や生活習慣や身体活動との関連
 研究目的や意義は微妙だけど、AADLや参加を見る方法として面白そう
 同じコーナーに主観的健康観の指標や、健康関連QOLもあった

虚弱や低栄養と咀嚼力、主観的味覚・嗅覚などとの関連


採血栄養指標と地域在住高齢者余命・健康余命との関連 
by東京健康長寿研究所
 アルブミンは両方、ヘモグロビンは健康余命と関連
 体力指標では、余命は握力、最大歩行速度、開眼片足立ち時間が、健康余命に関しては

通常歩行・最大歩行速度、開眼片足立ち時間で関連が見られた

東京都健康長寿医療センター研究所は好みのが多い

普通にリハ栄養だ。こういうネタでもいいんだ。

・虚弱の1 3次予防 ポスター
4つ並べて大々的にやっていた


全体の感想

大学がほとんどで、保健機関や企業の発表も目立つ。プライマリ・ケアの人は皆無

でも、内容は地域保険、地域ケアネタなので家庭医療ドンピシャ。

手法や視点の違いもない。研究の質がピンキリなことも。


立場(地域全体とか行政・国のレベルで公衆衛生に関わる高い視点の人たちか、そう言うのに基づいて現地で町・校区単位で地道に「実践」する人たちか)の違いだけの印象。


交流、もっとあっても良いのでは?
お互いの学会に出向く若手が多くなってもいいと思うし、日本のプライマリケアの現状や必要な開発を探す上で公衆衛生学会の力を借りてもいいと思う。


個人的には、公衆衛生につよい家庭医が当院外来・往診部門にいて地域ケアや外来・往診教育を担ってくれて、自分は病棟・外来
Common diseaseや総合診療の真髄を教えながら病棟・病院に集中できるというのが理想で、かつ地域分析や病院評価に公衆衛生分野の人の手を借りれるとベターかも。
向こうは良質な現場とリサーチクエスチョンを求めているだろうし、こちらはネタはいくらでもあるが解析する手間暇やノウハウや資金の問題でうまくいかないということがあり、利害がすげー一致すると思うのだが。

 




2014/11/05 16:10

メインシンポジウム 学校保健、地域保健、産業保健の連携



シンポジスト発表タイトルメモ
1.地域と職域をつなぐもの 新しい可能性へ
職域と地域を自由に出入りできるような設計、その隙間を埋めるのにNPOやボランティアが結構重要という提言。
でてきたある職場での事例で、家庭医がみるような超混沌事例を職場保健師が自分なりに考え走り回って対応したというのを聞いて、「それ、家庭医に相談してくれればいいのに」と思った一方で、家庭医の認知度の低さも痛感したり。


 2.学校保健との連携・協働、その現状と課題
Health promoting school活動に取り組む学校で働いたりしている人の話。

後で調べた追加参考資料
学校における労働安全衛生管理体制の整備のために(リーフレット)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/__icsFiles/afieldfile/2012/08/23/1324759_1.pdf
教師の労働衛生管理についての基本的なことが簡潔にまとまっている。校医として関わったり、養護教諭と連携したり、一緒に活動する場合には一度目を通しておくと良いかも。

感想:
とにかく面白かった!!

校医は小児科や診療所というイメージをなんとなく持っていたけど(もちろん家庭医ならどまんなかですが)、個人的には学校の先生の労働衛生管理というジャンルはとてもヒット。

産業医活動にも関心あったし、地域連携・地域ヘルスプロモーションの基点としての学校というのも関心があったので、これならうちが登録しているHealth promoting hospital(HPH:地域健康増進拠点病院)としての理念にも合うし、自分の「病院家庭医」というジャンルにもあうし、所属方針の「勤労者のための医療機関」というスタンスにもドンピシャだ。

今度の、近隣高校の学校保健委員会参加は、自分は参加できないけど、自分の指導医と教え子の後期研修医・初期研修医たちが参加することになったので、事前に情報提供して一緒に作戦会議したいというモチベーションが一気に高まった。


3.子供の健康支援における、地域保健と学校保健、産業保健の連携

連携の2つという話がおもしろかったので、そこだけメモをコピペ

横断的連携
 本人を中心に家庭、地域・乳幼児健診、保育、企業、医療機関で情報を共有して健康支援

縦断的連携
 ライフステージに応じて健康情報の突合や、介入結果の活用
 引き継ぎの連携、精度管理、PDSAサイクル

 発達障害早期発見→家庭・保育で介入(で止まりがち)
 →その後の学校生活での困り具合をきちんと評価して、
  
 それを早期発見の精度管理やPDSAサイクルにつなげる
 (面白いし、必須で言われてみれば当たり前の発想。今までなかったほうがむしろびっくり)
 
たしかに、「やっておしまい」というのが多い気がするが、小児の保健だと年齢が上がるごとに管轄が変わるので、公衆衛生や行政の立場で縦断的連携を実践するのは難しいんだろうなーと思った。



4つ目の発表の途中くらいでこの辺りで少し眠くなってしまい、結局最後のフロアディスカッションまでは参加できず。ポスターをもう少し見て回って早めにホテルに帰った。


4時に起きて、移動時間6時間もあったので、まあしかたないです。

 
明日も頑張ります。

 


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週に30分のEBM-「慢性胃炎+ピロリ陽性患者では、全例ピロリ除菌をすべきか?」

慢性胃炎の診断がつき、ピロリ検査をされて、「除菌お願いします」と入ってくる患者が最近急増しています。


慢性胃炎患者に対するピロリ除菌が保険適応になったのが大きな理由だと思います。

日本ヘリコバクター学会からパンフレットがでていて、そこにも「慢性胃炎や萎縮性胃炎に対しては胃がんを予防する目的でピロリ菌の治療が強く勧められます」と書いてあります。
http://www.jshr.jp/pdf/info/topics/jshr_pylori02.pdf




ちょうど昨日の医局会議でも、ある医師から「健診で慢性胃炎が見つかったら全員にピロリ検査と除菌を勧めるようにしているが、システムの問題もあり結果通知書では全員に推奨のメッセージがとどいていないようだ。医療機関として必要な検査治療を提供できないのは問題である」という趣旨の発言がありました。

たしかにシステムの問題で必要なことができていないとすれば問題ですが、そもそも「全員にピロリ検査して除菌することが有益なのか?」は疑問視しており、自分のなかではもやっとしていました。

確かに、「胃癌を起こした患者では、前がん病変とも考えられる慢性胃炎・萎縮性胃炎が進んでいても癌抑制効果がある」というのは文献付きで聞いたことがありますが、それを発展させて「胃癌の既往がない患者でも、慢性胃炎さえあればピロリ除菌で癌が予防できる」というのはよく聞くものの根拠は見つけられた試しがありませんでした。

普通に考えると、慢性胃炎があってもピロリ除菌で癌が減るなら、「ピロリ感染→慢性胃炎→癌」という流れ以外に「ピロリ感染→癌」のダイレクトな流れもあるかもしれず、「ピロリ除菌をすると慢性胃炎がよくなるから癌がでなくなる」とか「慢性胃炎だからピロリ除菌で癌を予防」というのは論理の流れがよくわからない気がします。
(ごちゃごちゃしてすいません)


また、昨日の研修外来でも「ピロリ陽性患者の除菌」目的の患者があたったため、その場では研修医に一般論のみ教えた上で患者と相談して方針を決めてもらい、診療後の宿題として「慢性胃炎+ピロリ陽性患者における胃癌予防効果」のエビデンスを調べてもらうことにしました。



そんな流れもあって、自分でも気になっていろいろ調べてみました。



今日の午前中に、昨日外来で一緒に見た研修医と一緒にUpToDate・Dynamedをみてみました。

効率のよい根拠の調べ方を学んでもらうチュートリアルも兼ねて、多少面倒で時間かかっても研修医とは一緒に調べたほうがいいかなと思っています。



ですが、「慢性胃炎に対するピロリ除菌効果」で有意な結果を提示している、質の高い研究は見つけられませんでしたΣ(゚д゚lll)ガーン


あったのは、「胃がん治療後の患者に除菌すると胃癌発生が3分の1に減る」という、最近良く引用されている「胃癌”二次予防”」についての論文が唯一目立っていました。
Effect of eradication of Helicobacter pylori on incidence of metachronous gastric carcinoma after endoscopic resection of early gastric cancer: an open-label, randomised controlled trial.
Lancet. 2008 Aug 2;372(9636):392-7. doi: 10.1016/S0140-6736(08)61159-9.


この論文の結果自体は文句なさそうですよね。

自分も、早期胃癌EMR後の患者が紹介先から戻ってきたら「ピロリ除菌もしましたか?除菌成功の判定のための受診予約もされてますか?」と積極的に確認しています。

うちと連携がある病院で除菌しないで返すところはないみたいなのでたいていは取り越し苦労で終わりますが、たまに入院中に主治医とトラブル起こして途中で退院してきた人とかがいて、そういう人ではこっちでフォローアップしっかりするうえで大事な注意点かなと思います



他には中国の研究がいくつかありましたが、慢性胃炎があるようなハイリスク患者でも胃癌の一時予防効果を証明できたものはなく(患者数が少ないなどの問題もあり有意差でていない)、胃癌発生だけでは有意差がないけど慢性胃炎などまで含めた複合アウトカムにすると有意差がでるという微妙なものだけでした(慢性胃炎の判定は主観も入るし、一番知りたい癌の発生率に差がない時点でこの複合アウトカムに意義があるとは思えない)。



「海外と日本はちげーんだよ」というのは、特に消化器領域では強調されることではあるので、今回は珍しく医中誌も調べてみましたが、意見とかシンポジウム報告とかはあってもまともな研究は見当たらず。

5分位しかみてないので、根性入れてやったらいろいろ出てくるんでしょうが、今回はこれ以上突っ込まず。



Googleで日本語情報を調べてみると、日本語で書かれた、日本の消化器内科医による意見は見られますが、やはり明確な根拠が提示されていなかったり、根拠となる論文の拡大解釈(二次予防の論文を一次予防に勝手に流用)とかがほとんどでした。
 
 

比較的しっかり根拠付けて書いてあるページの参考文献を幾つか見ていくと、上記のLancetの二次予防論文のほかに、これも同じく日本発でしかも一次予防の論文を1コ見つけられました。
The effect of eradicating helicobacter pylori on the development of gastric cancer in patients with peptic ulcer disease.
Am J Gastroenterol. 2005 May;100(5):1037-42.

胃潰瘍や十二指腸潰瘍を治療した後の患者を追跡すると、十二指腸潰瘍患者では胃癌発生がゼロで、胃潰瘍患者ではピロリ除菌が失敗していた群の方が除菌成功した群と比べて有意に胃癌発生が多かったという結果です。


ピロリ除菌による潰瘍再発効果はすでに証明されていると言っていいと思いますが、潰瘍はあったけど胃癌はまだ起こしていない患者の胃癌予防効果は初めて見つけました。

脱落が多めで追跡期間の短い人もけっこういること、そもそも「除菌治療を行う群」と「行わない群」の比較(ITT)ではなく、「除菌治療をしてみた結果除菌成功した群と除菌失敗した群」の比較なのでその辺は突っ込みどころかもしれません。


また、同じ研究者が、この患者の背景を調べる追跡調査を出していて、そこでは治療失敗してピロリ感染が遷延した人、萎縮性胃炎が高度な人で胃癌発生率が高かったという結果が出ています。
Baseline gastric mucosal atrophy is a risk factor associated with the development of gastric cancer after Helicobacter pylori eradication therapy in patients with peptic ulcer diseases.

ピロリ感染や萎縮性胃炎が胃癌の発生素地であることはすでに知られていることであり、ピロリ除菌で胃癌が減るかどうかという疑問とは微妙にちがうのですが、ネット上でこれを引用している人は解釈をすり替えていて「だから萎縮性胃炎・慢性胃炎のある患者ではピロリ除菌をすべきだ」と書いてあってなんだかなーと思います。




実は、最初に提示した学会のパンフレットにも、早期胃癌の内視鏡的治療後(つまり癌が一度出てしまった患者が次に発生しないようにという二次予防)の欄には「ピロリ菌の除菌治療により、内視鏡治療後の異時性胃がんの発症を約3分の 1に抑制できることが報告されています」と具体的な数字(おそらく例の論文が根拠)で書いてありますが、慢性胃炎の欄は(おそらく意識的に)表現をぼやかして書いてあるんですよね。

「慢性萎縮性胃炎の大部分はピロリ菌が原因です。胃がんは、萎縮性胃炎から発生しやすいことが確認されています。また、ピロリ菌の除菌治療により、大部分の萎縮性胃炎の進行が止まり、萎縮が改善します。このため、慢性胃炎や萎縮性胃炎に対しては胃がんを予防する目的でピロリ菌の治療が強く勧められます」

と、具体的な数字や根拠がなく、しかも少し話が飛んでいます。



わかりにくいと思うので説明を追加してみますが、

「Aピロリ→B慢性萎縮性胃炎」や、「B萎縮性胃炎→C胃癌」の関係は確認済。

「Aピロリ除菌でB萎縮性胃炎も改善する」も事実として述べている。

しかし、そこからいきなり「だからピロリ除菌(A除去)→胃癌予防(C減少)」とすっ飛ばされています。


「A=BかつB=CならA=Cである」は、数学とか論理的思考では使えますが、

人間の体は単純ではないので「A=BかつB=Cだけど、A≠C」というケースはたくさんあります。


「心筋梗塞後の不整脈は致死的になることもあるので、不整脈の治療をしたら心筋梗塞患者の死亡率が減ると思ったら逆に死亡率が増えた」というCAST study
は医学部の公衆衛生などの授業で習った人も多いんじゃないでしょうか?

私とEBMとの衝撃的な出会いだったので、薬理学教授のドヤ顔含めて鮮明に覚えています。


A→B、B→C、C→Dと個々の関係をつなげて、だからA→→→Dとダイレクトに結論付けることは、人間を対象とした医学では間違っていることが多いですが、特に日本の医師ではこういう推論を頼りすぎる人が多いと言うのを聞いたことがあります。

確かに、自分もEBMを学ぶまではそういう傾向がありました。

でも、AがまわりまわってCを起こす場合に、「じゃあAを治療したらCが減って良くなる」かどうかは、「実際にAという治療をする群、しない群に分けて、Cが減るかどうかを比較する」RCTでの研究して見ないとわからないんですよね。



つまり、わかっている人はわかっているけど、そこはうまくごまかしてピロリ検査や除菌を増やしたいというニオイがそこはかとなく漂ってきます。

陰謀論??



あと、二次予防の結果を一次予防に流用するのはめちゃくちゃ慎重に(というか普通はしない)という点も重要ですね。

二次予防は、すでにその病気が出てしまった人が、更に同じ病気にならないように予防すること。

一次予防は、まだその病気にかかっていない人が、将来もその病気にかからないように予防すること。


当然後者の方が地域の総患者数を減らすという意味で重要ですが、一次予防の対象となる患者は発症率が低いため研究しようとすると膨大な研究参加者数が必要になってしまいます。

そこで、とりあえずは発症率の高い二次予防患者を対象とした研究がされることは多いです(一度発生した人は、その病気が発生する素地がいろいろ集まっているので明らかに再発率が高く、少ない参加者数でも統計解析し易いから)。


胃癌が3分の1に減るという論文を出した研究チームの先生も、少ない患者数で解析するために二次予防の患者群で研究したと、消化器病学会ホームページに書いていますね。
http://www.jsge.or.jp/citizen/2010/hokkaido.html

【2. ピロリ菌除菌による胃癌予防の試み】のニ段落目
「これまでの研究をベースに新たな前向き研究の方向性を検討したところ、症例数が少なく、観察期間も短く済む臨床試験としては、胃癌発生率の最も高いEMRを施行された後の早期胃癌患者を対象とするしかないという結論が得られました」

とある部分です。

これ自体は適切な判断と思いますが、それをいつの間にか一次予防に理論を飛躍させるのはダメなんだと思います。




そんなことを調べた上で、Googleの検索キーワードを工夫すると、EBMで有名な「The SPELL」のページにダイレクトな答えが乗っていました(というか載ってるだろうなと思って最後まで見ない努力をしてました)。

The SPELL なんごろく_消化器「ヘリコバクターピロリ菌除菌による胃癌予防(項目新設2010/6/24,最終更新2013/3/15)」
http://spell.umin.jp/nangoroku/nangoroku_gastroenterology.html


UpToDateに引用された論文も紹介しながら説明されており、UpToDateしっかり読んだあとだとなおさら説得力がありました。
 
結論としては「胃癌が診断された患者の”二次予防”としての効果は確立されているが、慢性胃炎に対しての除菌治療で癌が経るというエビデンスはない」ということです。

これを日本では拡大解釈され、学会等の圧力で慢性胃炎にも適応が広がったという背景があるようです。

このサイトに書いてあるから鵜呑みにするのはまた微妙な態度だと思いますが、自分が疑問を持ち自分なりに調べて行った結果たどり着いた結論と一致していたのでちょっと自信付きました♪




というわけで、今回の文献検索を踏まえた上での、今後の私のスタンスは

ピロリ除菌のメリット・デメリットを説明したうえで、それでも希望する人には止めない。

しかし、慢性胃炎とピロリ感染の証拠があるからといって、全例に強制的にとか積極的には勧めない。

というこれまでの態度を継続する方針です。


前立腺がん検診を始めとした多くのがん検診と同じですね。

「これをやったら貴方は100%幸せなので絶対やるべきだ」 といえるものって案外少ないものです。






※いちおう医者以外も読んでいると思うので補足します。

胃カメラ、ピロリ検査、ピロリ除菌がムダとか有害と言っているわけではありません。
今まで胃癌になったことない人への検査治療が確実に胃癌予防に有効といえる証拠はまだないというだけで、今後証拠が出るかもしれないし出ないかもしれません。

なので現時点では保留・中腰の上記のようなスタンスを取ります。


しかし、証拠が出るまでのあいだも多くの患者と出会い、中にはこういった検査を受ける人もいるのでそれなりの「現時点での暫定的な見解」は必要です。

そういう時に、こちらから適切にリスク・ベネフィットについて提示し、患者の価値観や事情を踏まえながら患者と議論し、その上でお互い納得行く方針を決められるように、できるだけ正確な知識をもち、自分なりのスタンス(ある程度幅のあるもの)を持っておきたいという態度が重要だと思っています。
 

そのためのお勉強なので、これを見て「じゃあ、オレは検査も治療もしないわ!キャンセルキャンセル!!」と個別・自身の医療判断に直結させず、かかりつけ医としっかりご相談頂ければと思います。

 


長くなりましたが、以上です。


日常診療の中に、そして研修医など若手の素朴な疑問の中に、学びの種は豊富に転がっていますね。

今日もとても勉強になって良かったです(*´ω`*)
 


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健康増進をさらに拡張するという視点での「健康生成論」のご紹介

「健康生成論」って知ってますか?
 

私自身は、卒後5年目・後期研修3年目の冬に行った外部での家庭医療研修の中で出会い、ものすごく面白い!!と思って勉強しまくった概念です。

それまでは病院の急性期部門で重症患者の治療・救命や診断困難例の鮮やかな診断推論が好きな病院総合医としてやっていたんですが、これを知ることで今まで気が付きながらどうにもできなかった「いろいろ病気や不幸な事情はあるけど元気に生活したい人たち」にどう関わればいいのかとか、「色々あるけど幸せに過ごしている人たち」がなんで幸せなのか腑に落ちて、目の前がぱーっと開けた思いがあります。

これをきっかけにして、健康増進・疾病予防や地域ケアなど家庭医療のコアになる部分の理解が一気に進み、教養としてのお勉強ではなく、日常臨床に活かせる強力なツールとして家庭医療関係の考え方が自分の血肉になってきました。



簡単に説明すると・・・


単に病気があったら原因を取り除いて病気じゃなくなったらいいじゃん。という病気ありきの、マイナスをゼロにする視点ではなく、

たとえ病気だらけでも、そして一生続くストレス続きの人生の中でも、活き活きと元気に幸せに生活するためにはどうすればいいのか?そういう風に生きている人たちに共通するのはどんなことか?を突き詰めた考え方です(すんごいざっくりですみません。プロの方に叱られそうなくらいざっくりです)。


で、その要因として、Sense of coherenceという概念があります。

いま自分が置かれている生活世界に対して、納得して腑に落ちていてなんとかなるさ~と思える状態のこと(ここもざっくり過ぎてすいません)。


で、この感覚を構成する下位概念が3つあります。

1.把握可能感
自分の置かれている状況を把握し、理解でき、予測できる感じ。

2.処理可能感
今の状況をなんとかやりこなせそうな、いろんな資源を活用できそうな感じ。

3.有意味感
この日々のいろいろに自分なりの意義を見いだせる感じ。


この3つがあると、「ああ、今日はいい一日だったな-」と、たとえ忙しくて殺人的な一日だったとしても思えたりするのです。



実際自分でもそうだし、イライラしてダメだった日はどれかが破綻していることが多いです。

後期研修医のモチベーションがぐらついた時とかも、この3つを丁寧に探っていくとまたやる気を取り戻せることが多い印象です。

一方で、初期研修医だと裁量権が狭く、ローテ期間も短く、自分の意志に反したローテや研修内容もあるためこの3つが損なわれやすいのも特徴で、それゆえに事前の目標設定や定期的な面談が必要と感じています。

また、患者対応やスタッフ対応でも、この辺を意識していると、うまくモチベーションを引き出せていい感じに回っていきます。



すごくわかりやすくまとまっているネット上の資料はこれ
(PDFファイルへの直リンクです)



自分が勉強に使ったおすすめテキストはこれ
(けっこう内容みっちりなので、通読には気合と関心と時間を要しますが)





現時点では、自分にとってそういう考え方・視点が当たり前になってしまっているので取り立てて話題にすることもなかったんですが、そういえば研修医向けレクチャーやこのブログでは全然扱っていなかったことに気が付きました。


今ちょうど、超多忙な看護管理者向けのタイムマネジメント・タスク管理関係の原稿を書いていて、何のためにどうやって仕事を管理するのかを突き詰めている中で、健康生成論のことを思い出し、改めて勉強しなおし、「ああ、そういえばブログでまだ紹介してないや」と気づいたわけです。

単にビジネススキルを羅列してもつまらん記事になるし、たぶんすでに多忙な人たちは知識として知っているはずなのでその辺はさらっと、医療現場で役立つものに限定して自分なりのアレンジを簡単に紹介して終わりにして、「多忙で思い通りにならない管理職としての苛立たしい仕事の中で、以下に幸せかつ元気に仕事に取り組み良い成果を生み出していくか」という基本的な考え方・姿勢についても話をしたくて、それにこの健康生成論がしっくりはまりそうなんですよね。


この勢いで原稿書きながら医療現場や管理職と健康生成論についての自分なりの考え方をもう少しスッキリさせて、その後は研修医向けの「健康増進・疾病予防」レクチャーに組み込んでより幅広く、かつ臨床研修や自分の人生に生かせる内容にしていけたら面白いな-と思います。

さ、がんばるぞー!! 

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週に1時間のEBM:我々プライマリ・ケア医は、無症状な一般住民に対して末梢動脈疾患(PAD)のスクリーニング検査を、どれくらい熱心にすべきか?

PAD(末梢動脈疾患)、昔でいうところのASO(閉塞性動脈硬化症)のスクリーニングについて調べてみました。



先日ウチの病院で、本院の循環器内科の先生が来て、最近の循環器領域の検査や治療の動向についてご講演頂きました。

幸い自分は「へー知らなかった-」という内容はなくてホッとしましたが、研修医や内科以外の医師にとっては新しい知識が得られたり驚きもあり、いい機会だったなーと思います。

終わったあとに、医局でご飯を食べながらの雑談もあり、普段の連携やお互いの状況についての話などもあってよかったなと思います。

ちなみに、うちの総合診療グループも、自分たちの実践や連携の提案をもっとやっていくべきだと思いました。



で、その中で、疾患頻度やスクリーニングの推奨についてより積極的な推奨・提案があり、うちの総合診療の後期研修医が混乱していたので知識の整理をしておきたいと思います。

あやしい患者が紹介されてきてたくさんの二次性高血圧や虚血性心疾患患者を見ていたり、誤診で長らく間違った治療をされてきた患者もプライマリケア医よりは見ているとおもうので、どうしても専門医の推奨はプライマリ・ケア医のそれよりも積極的な方向に偏りがちです(だと感じています)。


それ自体が悪いわけではないし、専門医が提示する推奨の根拠も間違っているわけでは無いのです。

ただ、それを鵜呑みにして「専門医が働いている高度な専門病院に適用出来るエビデンス」を「プライマリ・ケア医が日常的に日常病をたくさん見ているセッティング」にそのまま応用するのはプライマリ・ケア医としては残念な感じです。

極端な例を出すと、「平均年齢85歳を超える、心筋梗塞や脳梗塞の既往があり、糖尿病・高血圧・高LDL血症・喫煙が揃っている症状もあり、疑わしいということでプライマリ・ケア医が紹介してきた、専門外来の患者100名で得られた疾患頻度やそれを前提としたスクリーニング検査の適応」と

「30-60歳の、そういった心血管イベントの既往がなく、あっても血圧か脂質がちょっと引っかかるくらいで無症状な地域住民10000人を対象とした場合の疾患頻度とスクリーニング検査の効果・デメリットのバランス」とでは全然違いそうだということがわかりますよね。

NipponData80の表を使うと、前者の集団は(そもそも表の適応がないですがおそらく)10年間の冠動脈疾患死亡率が10%以上、後者は0.5%未満で10倍から、ヘタすると100倍ちかい差があります。


そういう数値や自分の経験からも、うちの外来では胸痛を訴える患者が急性冠症候群(ACS)である確率はきっと数%くらい(そういえばそういうデータ取ったこと無いですね。電子カルテで検索できるんだろうか?)、でも本院の救急外来に運ばれてくる胸痛患者では「ああ、今日もACSかー」と特に驚かないくらい日常的にみかけますよね。

それくらい「専門医とプライマリ・ケア医では”前提となる疾患頻度”が違う」のです。

なので、ハイリスク集団ではベネフィットがリスクを上回る検査や治療でも、低リスク集団では僅かなはずのリスクがより小さくなってしまったベネフィットを上回ることはよくとしてあります。


なので、プライマリ・ケア医も「自分のセッティングの自分の担当患者では」という問いを持ちながら日常的に自分でエビデンスを読み解いていくことが求められると思うのです。

偉い先生が日本語訳してわかりやすく教えてくれるのを待っていてはタイムラグが大きいし、そういう先生は得てして専門医寄りの情報だってこともあるので、人任せだけではなかなかうまく行かないと思います。




というわけで、今日は末梢動脈疾患(PAD)の予防やスクリーニングについて、簡単に推奨をレビューしておこうと思います。

とは言え、昨日のブログにも書いたように精神的には全然余裕ないので、いつもお世話になっているDynamed先生の該当ページをざっと読んで、ざっくり日本語に直したものを置いて終わりにしようと思います。

興味あったら元データを英語のまま読むか、できれば引用されている文献を1個くらい自分で読んでみてください。


Dynamed
「Peripheral arterial disease(PAD) of lower extremities」
================================
Prevention(予防):
 
一般住民全員に広く推奨できる戦略
 ・適切な食事療法
 ・有酸素運動か、そうでなくとも何らかの身体活動
 ・禁煙
 
当たり前すぎてコメントしようがないですね。

でもこれは大事で、特別な疾患を防ぐために特殊な薬を飲んだり特殊な検査に取り組み始めるよりも、日常的に多くの患者や院外の住民に対して「当たり前の基本」を丁寧に忠実に地道に続けることがやっぱり大事だっていうことだと思うのです。特にプライマリケアでは。


特定の住民層に対して推奨される戦略
 ・肥満のある成人→体重制限
 ・糖尿病患者→その治療
 ・高血圧患者→その治療
 ・脂質異常症患者→その治療
 ・心血管疾患の一次予防としてのアスピリン(これは、後述しますが適応を選んで慎重に判断すべきと個人的には考えています)

あと、「治療」というのは薬物療法に限定されるわけではもちろん無く、上記の生活指導も含みます。
詳しくは各疾患の各論参照。


Screening(無症状患者へのルーチン検査としてのスクリーニング):

「USPSTFの推奨」(米国の予防医療に関する推奨を出す組織、比較的保守的な傾向にある)

PADに対するルーチンスクリーニングは「するべきではない」という、根拠に基づく推奨をしている (USPSTF Grade D)

→無症状のPADを持つ成人に対して、ABI検査はそれを見つけるの能力をある程度もつ(Fair evidence)

→一般住民を対象にして無症状の成人に対してPADスクリーニングすることのメリットは、全くないかあってもわずかだろうというある程度のエビデンスしかない(Fair evidence)

  ・見つける能力はあるのに一般住民に対して広く行うメリットが少ないのは、一般住民における有病率が十分には高くないからだろう。

  ・また、一般的な心血管リスクの評価と介入を上回る治療が、健康関連のアウトカムを改善させるというエビデンスは限られたものだからという側面もある(Limited evidence)

→偽陽性の結果が得られ、本来不必要だったワークアップ(追加の精密検査など)を行う事の害は、ベネフィット(利益)を上回ると考えられる(Considerd→エビデンスが明確というわけではなく、弱いエビデンスの組み合わせでの推測レベルの表現ではありそう)


つまり、というわけで、無症状のヒトにルーチンスクリーニングを行うのは、悪どい商売にはなっても健康には寄与しない可能性がありそうです。

米国ではコストなども重視されて控えめの表現になることもありますが、日本よりも心血管イベントの発生率が高い米国でもこのレベルの推奨という意味は大きいと思います。


「ACC/AHA(米国心臓学会・米国心臓協会)の推奨」(悪くなって紹介される患者をみる専門医側の集団)

下肢PADのリスクが有る患者については、血管に関連する病歴聴取と身体診察を行うべきである(Should)

→病歴:歩行障害、跛行、虚血性安静時痛、キズが治リにくいなど (ACC/AHA Class I, Level C)

→診察:包括的な脈診(手首だけでなく足背や膝窩などひと通り)、足の視診 (ACC/AHA Class I, Level C)


リスクファクターとは

→70歳以上

→50-69歳で、喫煙か糖尿病がある

→50歳未満だが、糖尿病+もう一つ以上の危険因子(喫煙、脂質異常症、高血圧症、高ホモシステイン血症)がある

→既存の冠動脈・頸動脈・腎動脈の動脈硬化性疾患


まあ、これだけリスクファクターがあれば、病歴聴取と診察くらいはしても良いと思いますが、ABIやCAGなどの検査を積極的にしようとは、有病率の高いアメリカの、検査を比較的推奨しがちな専門医の学会なのに書いてませんね。


心筋梗塞や脳卒中、死亡などのリスクを減らすことがわかっている介入を提案するために、無症候性の下肢PADを持つ患者は、身体診察とABIで同定されなければならない(Should) (ACC/AHA Class I, Level B)


ただ、このリスクを減らす介入とは決してCAGなどの侵襲的検査やPCIなどの侵襲的治療ではなく、食事・運動・体重制限・禁煙や血圧・脂質・血糖などの一部の薬物療法のことなので(最近は心臓リハビリも有効というエビデンスが出てきていますが)、結局リスクがあってそちらを同定し治療している患者ではやることが変わらないはず。

無関心な患者を行動変容に向けて説得する材料にはなるかもしれませんが、現時点で切迫したリスクがない患者を動機づけるには脅しは効果的でないことが多いですよね。


ABI結果やリスクファクター・跛行などの病歴聴取、動脈硬化の証拠が得られなかった患者に追加しうる、PADを見つけられるかもしれない追加検査としては以下の2つがある(こういう無症状の患者に追加検査をして臨床転帰を改善させるというデータはない(no data)だが・・・)

→Exercise ABI measurement(運動負荷をかけながら測定するABI)

→Toe-Brachial Index(TBI)やPulse volume recording(PVR) (ACC/AHAClass IIa, Level C)


足の母趾のパルスオキシメトリー測定は、2型糖尿病で40歳以上の患者から無症状のPAD患者を見つけるのに有用かもしれない(may)
 


Treatment overviewのところからも簡単に抜粋

・全ての下肢PAD患者には、無症状であっても、禁煙、抗血小板薬投与(心筋梗塞・脳卒中・心血管死亡を減らすためのLevel 2 evidence)、リスクファクターの治療(血圧、脂質、糖尿)を行い、ACE-Iの投与を考慮する。

・間欠跛行に対しては、専門家管理下の運動療法、シロスタゾールやその他の薬剤を。エビデンスは限られているがふくらはぎの間欠的圧迫は疼痛無しで歩ける距離を改善するかもしれない。

・歩行障害が強いなどあれば血行再建が考慮されるが、手術よりは血管内治療が望ましい。

・その他もろもろ記載あり。


ということは、無症状でもPADを見つけた場合のマネジメントの変化は「抗血小板薬を投与するかどうか」の一点のみ異なりますね
(他のリスクファクターのスクリーニングや介入が適切に行われているという前提であればですが)

ACE-Iを使うかどうかは、リスクファクターの有無など他の要因でも影響されそうなので。

これも、日本人の心筋梗塞発症率が米国より一桁低いことを考えると微妙なラインだな~と個人的には思います。
================================


というわけで、自分的結論としては、

・ハイリスクだからというだけで全例何も考えずにABIをオーダーしたり、ましてや全部すっ飛ばしていきなり冠動脈CTやCAG目的で専門医紹介はしない。

・ただし、リスクのある患者では「丁寧な病歴聴取と身体診察」は追加して、本当に無症候性なのか単に見落としているのかの区別は付けておく

(それでも専門医側からすると、本人が下肢痛や間欠性跛行として自覚しておらず病歴では否定出来ないという意見はあり最もですが、病歴聴取のプロであり普段の生活機能も把握しているはずの家庭医だとまたちょっと違うかもしれない。ただの推測ですが)

・無症候性と判断してもABIをする場合は、事前に「PADがあったらアスピリンを飲むか、追加で循環器内科医に受診するか」を患者とよく相談してからとする。

・また、アスピリンを飲むかどうかは、Nippon Data 80などのデータを元に心血管リスクの絶対値を求めてできるだけ客観的におすすめ度を把握した上で、患者の価値観とのすり合わせを行う。

といったところでしょうか。


「そうじゃないでしょ!」というツッコミがあればぜひお願いしますm(_ _)m


書いていて思ったんですが、うちの外来の全患者で、PADの症状把握のための問診キャンペーンみたいのやってみて、症状あれば検査に進めてみて、「実際のプライマリケア現場での、無症状患者へのPADスクリーニングのインパクトってじっさいどうなのよ!?」という研究も面白そうですね。

 

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健診システムもあれこれ気になる・・・

一昨日の土曜日は、大々的に健診をやるなんとか特診という日だったらしく、大勢の健診受検者がきていました。

が、一方で普段健診担当をしている医師が休みで医師体制がどうにも回らない見込みになっていたためだいぶ前から応援要請が来ていました。

研修医の研修になり、かつ研修医の対応に漏れがないようにダブルチェックが出来、かつ早めに終わって定例のレジデントデイができるようにということで、研修医二人に健診に出てもらいつつ自分が裏で画像などチェックしつつ相談にのり、その合間に病棟業務と管理業務を終えて、11時から振り返りができるように準備していました。


実際は聞いていた以上に患者数が多く、終了予定時間にさばこうと思ったら研修医でも一人10分以内の診察にしてもギリギリ終わらないくらいでした。

また、予想を大きく超えて研修医の診察が長引きとても終わりそうな雰囲気ではないため自分も診察をフルパワーですることになりました。


研修医は病棟業務もある程度デキるつもりで予定を組んでいたため事前の約束通り11時には上がってもらって、自分が12時くらいまで残りを片付けてやっと終わりました。

病棟も臨時入院が入っていたり、前日の延長で医師体制の不足もあったためすこし病棟業務も片付けてやっとお昼に。


そのあと研修医と臨時の病状説明したり、担当患者の病状についてディスカッションしたりして、結局落ち着いたのは14時半過ぎでした。お腹減りますよ。



そんなこんなで結局はかなり予定していた業務を圧迫されましたが、普段見られない健診ブースで仕事をしたことで多くの発見がありました。

受診している患者層が若くまだ障害が進んでいない人がおおいため、疾病予防や健康増進を進めるためにリスク評価や行動科学に基づいたコミュニケーションを集中的に学ぶ場としては非常に素晴らしいと改めて学びました。 

一方で、健診で得た情報を記録するシステムが不十分で、用意されているA4資料にまるばつで所見を記載できるのはスピーディーでいいんでしょうが、それに当てはまらない情報が得られた場合に記録にここせないんです。

余白が少ないし、余白に書き足したことを拾い上げるシステムも万全とはいえない。

実際は年配の先生含め健診をになっているので全部電子化したり書式変えると別の問題がでそうですが、これは何とかせねばな-と思いました。

とりあえず記入テンプレートを電子カルテ上で作ったので、今後の研修医による健診診察で使ってもらってブラッシュアップしていこうかなと思います。


また、旧来の日本の健診は生命予後改善効果やその他もろもろの効果がはっきりしない検査ばっかりで、重要な問診やカウンセリングがカバーされていないのもダメだなーと再認識しました。

きちんとやろうとすればするほど今のシステムとは齟齬を起こしてやりにくくなります。

やはりカルテの書式の工夫で効率よく短時間で、でもその人の年令・性別や基礎疾患などに応じた適切なサービスを提供できるようにして行きたいと思います。


幸い、来年度は家庭医療に関心のある後期研修医が複数くるので、そのうち誰かと協力して何かしらの対応は出来るんじゃないかと期待しています。

健診部門の事務の方々の感じがよく、話せば分かりそうな方たちばかりだったという雰囲気を感じられたのも若干追い風ですし。


しかし、根本的には健診制度をもうちょいまともなものにして欲しいなーという思いが・・・

きちんと研究したり文書出したりして行政に訴えなきゃだめなんでしょうね。頑張らねば-。

 

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禁煙外来、研修医向けにもオススメです!

今年から禁煙外来を担当しています。

昨年初めて当院でも立ち上げ、前任者の先生の異動に伴い私が担当するようになりました。


まだ手探りの部分が多く、対応できる看護師も少ないため、完全予約制で週1回だけでやっています。

本来は(条件をちゃんと満たせば)普通の外来の中で、普通に指導して処方していいんですが、まだ施設内の人間にとっての試運転期間みたいな感じです。


それでもだいぶ症例数が蓄積してきて、禁煙がうまく行く人・行かない人の傾向と対策が見えてきて、それを元に院内のルール作りや今後どうやって拡大していくかの話も少しずつしていけそうです。



また、外来レクチャーで研修医に健康増進・疾病予防についてかなり強調して教えているせいもあると思いますが、研修医が禁煙外来に関心を示し始めてくれています。 

そういえば自分から声かけてなかったなと思って、院内メールで研修医に一斉送信で「見学おいでね、いつでもどうぞ」と送ったところ早速30分後くらいに一人研修医が見学に来てくれました♪

フットワークの軽さ、決断の速さ、大事ですね。尊敬すらします。。。


見学してもらった症例は、精神科受診歴があり、禁煙外来の失敗歴もあるちょっと大変そうな症例ですが、あえて定型的に行動科学の理論や技術に則った対応を行い、自然と相手の中にある資源やモチベーションを引き出し、気が付けば「後ろで見学していた研修医の方が禁煙したくなる」外来を経験してもらえました(その研修医は喫煙していませんが)。

終わったあとや、さっき夕飯を食べながらの雑談で、あの場であの一言を言ったのはどういう意図があるのかとか、禁煙外来という場を使ってどのように健康増進に広げていくのかとか、他の一般外来や検診との役割の違いはどこにあるのかなどにも触れることができました。

また、一見するとすごすぎて真似しにくい外来だけど、定型的なツールを組み合わせるだけでできるので、研修医でも適切な学習とフィードバックさえあれば短期間で習得できるということも伝えられました(そこはさすがに半信半疑だったようですけど)。


来年度の医師体制が少し厚くなったら、後期研修医を中心に禁煙外来を運営し、枠の拡大などもできるかもしれません(私が勝手に構想しているだけですが)。

実現すれば、研修医の行動変容理論のより深い理解や、動機づけ面接法などの具体的なコミュニケーション技法の習得、すでに疾病を発生して外来を受診している患者たちより健康度の高い層に対する介入の仕方のきっかけを学んでもらえます。

住民・患者側にしても、より熱意を持ってしかも行動科学の技術も用いながら対応してもらえることで満足度や禁煙成功率が高まる可能性があるし、枠が増えることで決心してから予約日までの時間が短縮できてより成功率が高まる可能性もあります。 


 
これくらいの規模の病院では、「研修環境の充実→研修医増える→業務内容の充実→研修環境の更なる充実→・・・」という好循環がいろんな意味で大事なんだなと実感。

人は宝であり、学習環境を作り出せる人は人を集める力があるのかも、と思ったり・・・(∀`*ゞ)テヘッ



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週に1時間のEBM - 糖尿病と歯周病との関連について、基本的な知識の整理

先週行われた「札幌GPカンファレンス、歯科特集」で刺激を受け、糖尿病と歯周病との関連についてざっと調べてみました。

今後どれくらい本腰を入れて勉強すべきか、患者に勧めるべきかの目安をつかむために、いつもの通りDynamedで今出ているエビデンスの程度をレビューしてみました。



Dynamed 「Periodontitis」より
=============================
歯周病(Periodontal disease)は炎症性と非炎症性に分かれる。

炎症性
歯肉炎(gingivitis)、歯周炎(Periodontitis:骨・靭帯・セメント質の変性を伴う)

非炎症性
一次性咬合性外傷(Primary occlusal trauma)、支持組織への不適切な力の作用(歯ぎしり習慣や不適切な歯科修復)



思春期の頃に発症する早期発症例は、好中球系の先天性免疫異常を考慮する。

慢性の成人歯周炎は、10代後半から20代前半に発症しゆっくりと進展するため、後発年齢は30歳以上が一般的である。

急性経過の潰瘍形成性歯肉炎を呈する歯周炎は、稀だが、HIV感染症に伴うことがあり要注意。

米国での18歳以上の成人における有病率は4~7%



原因
・成人の慢性細菌性歯肉炎は、歯肉下のデンタルプラークによる。特定の1菌種によるものではなく複合感染。


危険因子
・加齢、口腔衛生状態不良(歯ブラシ・フロスをかけない)、喫煙、糖尿病、免疫不全、肥満は関連が強く疑われている。

・少数民族や経済社会的状態不良、精神的ストレスも関連が疑われている。

・栄養障害や栄養欠乏症は直接の関連はないとされている。


合併症
・歯周膿瘍

・冠動脈疾患(コホート研究のシステマティックレビューで、1.28-1.34倍の心血管疾患発症率や死亡率増加が見られたが、有意ではない(信頼区間が1をまたがっている)。

・妊娠中の歯周炎は、子癇発作や早産のリスクを高めるかもしれないが、現状では研究結果は一致していない(高めたという結果と高めないという結果が両方あり結論は出ていない)。

・65歳以上の高齢者のコホート研究により、6mm以上の歯周ポケットサイズが、体重減少による脂肪を予測した。


関連のある病態
・骨粗鬆症、妊娠糖尿病、高齢者の葉酸欠乏症、高齢者の認知機能低下などとの関連が疑われている(コホート研究レベルであり、因果関係の確定や、介入によりこれら関連病態が減少するかどうかは未確定)。


予防方法
・毎日のフロスがけによるプラークコントロールが有効。
→フロスはやってないなー(-_-;)
・一日1回のブラシがけは、齲歯と歯周病の予防に十分だが、プラークコントロールには1日2回が推奨されている。

・ルーチンの(歯科での)歯石除去と研磨による予防エビデンスは不十分。

・リコピンが歯周病現象と関連するかもという弱いエビデンスが存在する。
===============================
ざっと調べた感じでは、よく見かける中高年の2型糖尿病の話は見当たらない。

まだエビデンスとしては弱くて、プライマリケア医向けのDynamedでは扱いが悪いのか?




ということで、もう少し突っ込んだ情報が欲しくて下の方のReferenceを眺めていたら以下の良さげな論文が見つかりました。

Am Fam Physician. 2010 Dec 1;82(11):1381-8. Oral manifestations of systemic disease.
この中で「Diabetes」と書いてある段落だけを簡単に訳しました。
=============================== 
糖尿病と歯周病(歯肉炎・歯周炎)の間には強い双方向性の関連がある(歯周病が糖尿病を、糖尿病が歯周病を悪化させる)!!

歯周炎の治療が血糖コントロールを改善させるかもしれない(Mayという表現であり、確定とまではいえない)。

重度の歯周病は、糖尿病性合併症(腎症、脳卒中、TIA、狭心症、心筋梗塞、心不全)の強力な予測因子である!!

国際糖尿病連合(IDF)は、糖尿病のプライマリケアでは年1回の歯周病への介入を推奨している(歯磨き時の出血、歯肉の腫脹・発赤のチェックと、定期的な歯科での評価の推奨)。
→そこまで必要とはここまでの情報からは言い過ぎな感じも受けるが、上記の「強い関連」が確定的なら必須かもしれませんね。 

そのほかの糖尿病性頭頸部合併症としては、カンジダ症、唾液腺症(両側性の耳下腺腫脹)、舌乳頭萎縮、味覚障害、唾液分泌障害、Burning mouth syndrome(口腔灼熱症)、創傷治癒遷延などがある。
===============================




で、次にこの論文の参考文献一覧のうち、Diabetesの段落で参照されていた分だけリストアップしておきます。
=============================== 
Mealey BL. Periodontal disease and diabetes. A two-way street [pub-lished correction appears in J Am Dent Assoc. 2008;139(3):252]. J Am Dent Assoc. 2006;137(suppl):26S-31S.

Moore PA, Weyant RJ, Mongelluzzo MB, et al. Type 1 diabetes mellitus and oral health: assessment of periodontal disease. J Periodontol. 1999;70(4):409-417. 

Teeuw  WJ,  Gerdes  VE,  Loos  BG.  Effect  of  periodontal  treatment  on glycemic  control  of  diabetic  patients:  a  systematic  review  and  meta-analysis. Diabetes Care. 2010;33(2):421-427. 

Janket SJ, Wightman A, Baird AE, Van Dyke TE, Jones JA. Does periodon-tal  treatment  improve  glycemic  control  in  diabetic  patients?  A  meta-analysis of intervention studies. J Dent Res. 2005;84(12):1154-1159. 
 
Stewart JE, Wager KA, Friedlander AH, Zadeh HH. The effect of peri-odontal treatment on glycemic control in patients with type 2 diabetes mellitus. J Clin Periodontol. 2001;28(4):306-310. 

Grossi  SG.  Treatment  of  periodontal  disease  and  control  of  diabetes: an assessment of the evidence and need for future research. Ann Peri-
odontol. 2001;6(1):138-145. 

Rodrigues DC, Taba MJ, Novaes AB, Souza SL, Grisi MF. Effect of non-surgical periodontal therapy on glycemic control in patients with type 2 
diabetes mellitus [published correction appears in J Periodontol. 2004;75(5):780]. J Periodontol. 2003;74(9):1361-1367. 

Darré L, Vergnes JN, Gourdy P, Sixou M. Efficacy of periodontal treat-ment on glycaemic control in diabetic patients: A meta-analysis of inter-
ventional studies. Diabetes Metab. 2008;34(5):497-506. 

Thorstensson  H,  Kuylenstierna  J,  Hugoson  A.  Medical  status  and complications in relation to periodontal disease experience in insulin- 
dependent diabetics. J Clin Periodontol. 1996;23(3 pt 1):194-202. 

Shultis WA, Weil EJ, Looker HC, et al. Effect of periodontitis on overt nephropathy and end-stage renal disease in type 2 diabetes. Diabetes 
Care. 2007;30(2):306-311. 

IDF Clinical Guidelines Task Force. IDF guideline on oral health for peo-ple with diabetes. Brussels, Belgium: International Diabetes Federation; 
2009.
============================= 

たくさんありますね!


で、今回の自分の疑問に一番答えてくれそうな、この(↓)論文を読めばきっとスッキリするはずです!
Mealey BL. Periodontal disease and diabetes. A two-way street [pub-lished correction appears in J Am Dent Assoc. 2008;139(3):252]. J Am Dent Assoc. 2006;137(suppl):26S-31S.


が、残念ながらこの学会誌の論文は非会員では閲覧できず、自分が契約している大学図書館のリンクからも閲覧できませんでした・・・゚(゚´Д`゚)゚

まあ仕方ない。



最後に、現時点での自分の結論をまとめます。

・少なくとも今回見れなかった2006年の論文の印象からは、歯科の専門医の間ではドーンと関連を強調しているようだ。

・今後の、家庭医療系の学会での推奨がどうなっていくかには気を配っておく必要はある(まだAAFPなどちゃんと調べていません・・・)

・それまでの当面の対応としては・・・
糖尿病のある患者で血糖コントロールやメジャーな合併症管理が終わったら、「歯周病の合併が多いと言われてきているようなんですが、ここ数年、歯科にかかった記憶はありますか?もし全然かかっていなくて、歯肉出血などの症状があったりその他相談したいことがあれば歯科医に紹介しますよ」くらいに「選択肢の一つとして」提示はする。

ただし、「糖尿病あるんだから絶対歯科にかかれよ、受診しないなら内科でもみないぞ!」なんて言えるほどではないかもしれないので、本人が歯科受診を渋っても笑顔でスルーして次回のチャンスを待つ。
 
くらいでしょうか?



う~ん、やっぱり歯科の論文の内容が気になるなー。

歯科の先生に相談したらただで見せてくれないかな~(*´∀`*)
 

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「菊水カフェ」、今週末に開催します!

今週末の11月19日(土)に「菊水カフェ」というイベントをやります!
 無題
とき : 13時半から14時半
ところ: 菊水ビル4階中会議室(勤医協札幌病院裏のビル)




「菊水」というのは、病院がある地域の地名からそのまま取りました。

また、じつは「菊水」の由来は諸説あるんですが、どうやら共通するイメージとして「不老長寿」というものがあります。
菊自体に不老長寿の効果があると信じられていたり、その他いろんなエピソードがあるみたいです。
http://www.kikusui-sake.com/home/jp/company/06.html
http://www.kikusui.co.jp/coffeebreak/article/?no=saws06

健康づくりを考える場のネーミングとしてもなかなかいいかもしれませんね。



また、「カフェ」というのは「ワールドカフェ」という、自由で楽しい対話の方法を取り入れているからです。

簡単に説明すると、あるテーマに沿って小グループで話をして20分単位くらいでメンバー入れ替えして、前のターンの話題や他のグループの話に触発されながらどんどん話題が広がっていく形式のグループワークです。

うまく運営すると、参加者全員の意見がうまく抽出されて思いも寄らない素敵な意見が出たり、参加者全員の一体感が生まれたり、その後の具体的な行動につながるようなエネルギーが醸成されたりと、なかなか素敵なものなんです。




とりあえず第1回は研修医や学生、一部の職員、地域住民だけでこじんまりとやってみて手応えを判断し、次回以降につなげていこうと思っていますので参加者公募はしていません。
(でも興味あるっ!て方はご連絡下さい)


できれば2-3ヶ月に1回のペースでやっていって、地域住民目線でこの地域に必要な医療サービスを考えたり、自分たちのあり方を見つめ直したり、住民が主体的になって街づくりに取り組むきっかけにしていければいいなーと思います。

また、これをきっかけに地域志向性プライマリケア(Community oriented primary care)が始まり、最終的には地域参加型活動(Community based participatory research→参考のPDF)につなげていきたいなと企んでいます( ̄ー ̄)ニヤリ




前から「こういうのやりたいなー」と思っていたんですが、今年の夏に参加した「家庭医と話そう!ワールドカフェ」というイベントに刺激を受けて火がつきました。

そして、その直後に院内スタッフや友の会(勤医協を支援してくれている地域住民の集団)のメンバーとで、今後の地域医療戦略についての話し合いの場を作ってもらうことに成功し、健康志向、住民が研修医を育てるなどの戦略と並んで、この「菊水カフェ」のイベントも提案しものすごく賛同してもらって、無事開催できるところにまでこぎつけました。



今までも地域医療を実践するために地域住民と対話を行えるきっかけをずっと探していたんですが、このワールドカフェの形式だと「医療者 対 地域住民」という対立構造ではなく、対等にいろんな意見を交わしながら、新たな活動の原動力も生まれるんじゃないかという可能性を感じています。


うまくいったら次回の企画立てて、早めに公募しますので、ぜひご参加ください(^O^)/ 

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病院で取り組む健康増進「Health Promoting Hospitals」という概念が、自分のイメージにかなり近いと思います!!

今日は2回目の戦略会議がありました。

1回目の時のブログ記事はこちら



今回もいろんな視点の意見が聞けてとても新鮮だったし、自分の病院家庭医としての活動のビジョンにほぼそのまま合致していたのが心強かったです♪

これから院内各部署で調整が進んでいくようなので詳細はまだ書きにくいですが、今日聞いた話の中で一番印象的だったことだけ少し追加で調べたのでご紹介します。
(うちの病院がこれをやるということではなく、いろんな話題の中で自分が一番関心を持ったという意味です)



自分が気になったのは「健康増進活動拠点病院」という言葉で、もともとは「Health promoting hospital」、WHO(特に欧州WHO)で積極的に提唱している考え方のようです。


WHOの該当するWebページはこちら

Wikipediaの該当ページはこちらです。

日本で最初に(唯一?)加入している病院の、解説ページはこちら



家庭医療研修で「健康増進」や、それを積極的に推進していく「家庭医」の役割についてがっつり学ばせて頂きました。

そして、救急医療や集中治療とかよりも、外来や地域で行う健康増進活動に強く惹かれて行きました。
すごく面白そうだし、自分が医療を志したときのイメージにすごく近いんです。

勉強した内容をまとめて、Web上の学習会で発表した時の資料がこれ(↓)です。
101007-健康増進-PCLSアップ用


その時に学んだ「オタワ憲章」などの流れから、このHealth promoting hospitalにつながってきているようです。

あのときさんざん調べたわりにはこの「Health promoting hospital」という概念は全然引っかからなかったんですが、WHO/Europeの方で頑張っている比較的ローカルなネタのため、一般的な検索では見つかりにくかったのかもしれません。



家庭医療研修後は、この「健康増進」の考え方を地域で実践するためにどうすればいいかずっと試行錯誤し、釧路にいた一年間でそのとっかかりをつかみ、今後はこの札病でじっくりと実践していこうと思っていました。 

しかし、他の職員や他科の医師、ましてや地域の非医療者に協力してもらえるような、分かりやすく簡潔な説明はまだ自分の中で出来ていません。

ちゃんと説明しないと、一見するとよくわかりにくく、急性期病院とは関係のなさそうな考え方にも見えるのでどうしようかなーと悩んでいました。

コンセプトはいいんだけど、ドカンと拡げていくための戦略が見つからずモヤモヤとしていた感じです。



一方で、うちの法人では中央病院の移転と機能再編の真っ最中であり、日本や道内全体の医療情勢の変化もどんどん進み、当院も今後急ピッチで「地域のニーズに合わせて医療展開の変化」を余儀なくされていくと思います。

その中で、「なんとなく外部の流れに流されて急性期医療から取り残された」という感覚で流されるのではなく、「当院の理念やこれまでの活動にすごく近いコンセプトな上に、あのWHOが提唱しており、各国で実践も進んできている最先端の取り組み」というポジティブな捉え方になれば、同じ機能再編でもそのポテンシャルの上がり具合はずいぶん違うかもしれません。


まだちゃんと勉強できていないので、時間を見つけながらもうすこし理解を深め、出来れば各国ですでに取り組んでいる病院の報告や研究結果などを読み込んで、うちの地域でよりうまく取り組めるような方法論を見いだせればいいなーと思います。

そこまでもっていければ、(時間はかかるし多くの協力者が必要ではあるけれど)きっとこの面白そうな考えを掲げて、楽しくポジティブに、そして何より地域のためになるような医療活動ができるんじゃないかとワクワクしています♪



やっぱり、漠然と試行錯誤するよりも、何らかのフレームワークやキャッチフレーズがある方がいいですね♪
 

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