病院家庭医を目指して ~野望達成への道~

地域密着型病院で活躍する家庭医を目指し、札幌市内で働いてるDr_kentaです。 病院外来でのプライマリケア、内科急性期病棟の老年・緩和ケア、リハビリテーション栄養を中心に、医学教育や院内システム改善などにも関心を持ちながらいろいろやっている日常を記録していきます。ちなみに「病院家庭医」という正式な呼称はありません(造語です)。 また医師による記載ですが、医学的な内容を自分や身の回りの方に適用していいかどうかは直接診察のうえでの判断が必要です。記載内容を試して発生したいかなる不利益も責任は負い兼ねますのでご了承ください。

老年・緩和・看取り

【読書記録】「あめいろぐ ホスピタリスト」から「ホスピタリストの老年ケア」についての概念紹介

一部で話題の、あめいろぐホスピタリストを読みました!





私個人としてはアメリカに対する憧れとか全然なくて(英語しゃべれないし)、「あめいろぐ」のブログも、RSS登録してはあるけど、全文熟読ではなくたまに関心ある記事があると目を通すくらいでした。
http://ameilog.com

ただ今回のこの書籍は、アメリカで台頭してきているホスピタリストのことについて一般論の概説で終わらず、臨床視点で有用な情報がたくさん詰まっているということをSNS経由で聞いて、買ってみることにしました。


まだ全部を読み終えたわけではないですが、先日さらっと流し読みした印象では、「かなり面白い!」と思います。

個人的には、少し古くなりましたが、「病院総合医の臨床能力を鍛える本」以来の大ヒットど真ん中でした。



こういうのを読むたびに、自分の芯は、病院総合診療だなぁと思います。

このテーマで、「病院総合診療」の臨床を突き詰めつつ、教育やマネジメントもきちんと説明し教えきれるというのが重要だと思っているんだなと再認識できました。


そして、これらの本で共通なのは、病棟での「老年医学」をちゃんとやろうぜ!ということが必ず書いてあるんですよね。

日本の内科学では、老年医学という視点で学び教える環境がなく、「高齢者でもどこまで標準内科的介入ができるか!?」というある意味チキンレース的な要素があり、介入できない、もしくは介入してみたら失敗したとなると「あ、もううちの適応外なんで」と急に冷めてしまうみたいな感じがどうしてもあるように感じます。

その感覚で病院総合診療すると「他科がやりたくない仕事の寄せ集め、寝たきり認知症の感染症ばっかりでしょ。救急で適当に抗菌薬入ったあとで上がってくるから今更グラム染色とか抗菌薬適正使用とか言われてもね。治癒したところでどうせ退院できないしさ」みたいなネガティブ感満載になってしまってもったいないなぁと思ったり。


そんな感じで臓器別内科の延長でなんとなく高齢者も診るのではなく、「老年医学」という一分野をきちんと勉強しながら意識的に高齢者を診ると、ものすごく刺激的で学びの宝庫に一変するんですよね。

自分の感覚では、「家庭医療学」を学んで僻地にいったり地域にでたら、「驚きと学びの連続だった!」というあのときの感覚ととてもにているなと思っています。



そういう意味では、ホスピタリストが編集した老年医学の特集とかもアツいです!!

Hospitalist(ホスピタリスト) Vol.5 No.4 2017(特集:老年科)
メディカルサイエンスインターナショナル
2017-12-28






どんどん脱線しそうなので、ホスピタリストによる老年ケアの話は一旦おいといて、本の内容に戻ります。


「あめいろぐホスピタリスト」の第9章、老年ケアのページで紹介されていた、ちょっとかっこいい・面白い概念をいくつか紹介して終わります。


「入院そのものによる機能低下」に気をつけようとか、「社会的入院も立派な入院適応です!Adult failure to thriveという入院病名がある」とか、「必要最低限の日数に押さえながら時期尚早に退院させないという難しいバランスを維持しなければならない」とか「CGAちゃんとやろうぜ」とか、「ポリファーマシーに処方確認Medication reconciliationしてDe-prescribingしようぜ」とかはいいですね。

普段「自分は大事だとおもうけど、あの大病院はその辺りしないよなぁ。もう今の日本の急性期病院の常識はかわっちゃったのかな」と諦めていたことを、米国の在院日数超厳しい環境のホスピタリストが言っているのは勇気づけられますね。


なんとなく大事にしている考え方やスタンスに、横文字で名前が付くとなんか背筋がピンとして自信が付く気がします。

「自分の曖昧な考えに、きちんとした正式名称があったんだ!」と思えるのは大きいです。
また、日本語訳されていない英語名称があることから「日本の中で医療していると自分の考え方がアウトローすぎるのかと思うけど、世界に目を向ければ自分のほうが真っ当で日本のほうがずれてるのかも」と思えるのもなんだか自信がつきます。

英語全く読まない日本のホスピタリストが、どうやって自分のアイデンティティ保っているのか不思議でしょうがないです(というか、英語読まないホスピタリストでアイデンティティ保ちきれている人って少ないような気もします)



あと、後半戦が激アツでした。


病棟において老年ケアを組み入れる仕組みとその成果についてまとまっていて、「お、これはうちの病棟で取り組んでいることや、病院として展開しようと思っていることにドンピシャで当てはまるじゃん!」と沸き立ちました


一つは、高齢者専門ER「Geriatric ER」とか、老年救急「Geriatic emergency medicin;GEM」です。
うちは機能的に二次・三次救急をこなすことは難しくても、老年救急は地域内随一を目指したいなとおもって、仕組みづくりを少しずつ重ねてきています。
特に、本院の方がこのGEM的要素を排除したので、こちらの立ち位置が相対的に高まっていく地盤にもなっていくと思います。

次に、高齢者の評価と管理専門病棟「Geriatric evaluation and management unit;GEMU」です。
これは要するに、急性期が人堕落した痕に直接退院が難しそうな高齢者を集めてCGAをじっくり取り組む病棟を作ったというもので、退院6ヶ月後死亡率、認知機能、身体機能、再入院率を改善させるエビデンスもあるようです。
J Am Geriatr Soc. 2010 Jan;58(1):83-92. doi: 10.1111/j.1532-5415.2009.02621.x. Epub 2009 Dec 9.
The effectiveness of inpatient geriatric evaluation and management units: a systematic review and meta-analysis. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20002509
https://health-services.mercyhealth.com.au/service/geriatric-evaluation-management-albury/
https://archive.ahrq.gov/clinic/ptsafety/chap30.htm

これなんか、地域包括ケア病棟として当科が普段やっている事そのもので、この取組が再入院率や心身機能や死亡率を改善させている手応えは確実にありました(今まで老年医学気にしていなかったときよりも担当患者の年齢も心身機能も悪化しているのに再入院や急変が圧倒的に少なくなった)が、データで示されるとなかなか心強いです。

ほんとは、本院の中にこういう病棟を作って集中的にケアできると、経営的にも専門医的にも患者的にもいいんだろうなと思うんですが外野から提案してもはねのけられて終わってしまう悲しさです(Intensive GEMUとかやりたいんですけどね)


あとは、GEMUでもそこに着た時点で廃用が進んでしまって効果が不十分ということで、高齢者専門急性期病棟「Acute care for the elderly;ACE」も作られたとのことです。
Health Aff (Millwood). 2012 Jun; 31(6). Acute Care For Elders Units Produced Shorter Hospital Stays At Lower Cost While Maintaining Patients’ Functional Status https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3870859/

Geriatric ERの具体系の一つで、イメージ的にはERそのものや、その隣りにあるHCUに老年ケアを集中的に投入できるようにする感じですかね。


具体的なプログラムとしては、「Hospital Elder Life Program;HELP」があってこれは割と有名かもしれません。
J Am Geriatr Soc. 2000 Dec;48(12):1697-706.
The Hospital Elder Life Program: a model of care to prevent cognitive and functional decline in older hospitalized patients. Hospital Elder Life Program. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11129764https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11129764

効果はあったけど、人件費がかかることがネックらしいですね。
これも、もし自分が本院に異動したらやりたいことの一つです(本院に今いる総合医にやってほしいことでもあるんですが、会議で提案しても黙殺されるのでやはり人件費・人員確保が先ですな。あと英語論文読んでほしいなぁ・・・)


さらには、「Hospital at HOME;HaH」が今はアツいようです。
J Am Geriatr Soc. 2009 Feb;57(2):273-8. doi: 10.1111/j.1532-5415.2008.02103.x. Epub 2008 Dec 11.
Comparison of functional outcomes associated with hospital at home care and traditional acute hospital care. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19170781

要は、急性疾患(肺炎や心不全、COPDなど)に対して、在宅で酸素投与、点滴・抗菌薬、吸入器、リハ、投薬などを導入することで、急性期病棟入院とほぼ同一レベルのケアを提供するモデルで、治療効果は劣らずIADL低下を防げる効果が報告されています。

これなんかも、今うちで強化しようと思って2年越しで準備していることとかぶって、GEMで老年救急受けるだけでなく、在宅支援病院契約の高齢者に対する24時間臨時往診が実効性持って動ける仕組みづくりと、往診先での診断と治療の質を高めるべくポケットエコー購入や在宅皮下点滴の文化浸透や迅速HOT導入システム準備などをしているのはここを目指しています。

これが軌道にのってきたら、週後半で熱がでたり呼吸不全になった自宅・施設生活中の高齢者に対して、もともと訪問診療契約していなくてもその場で発動して、週明けまでの数日間は連日在宅治療して直しちゃうとか出来るように発展していくと思うんですよね。
そうなれば、GEMUやHELP視点のない高度急性期病院に運ばれて廃用が進むことも防げるし、看護労働負担が増え続ける当院地域包括ケア病棟への負荷を一気に増やすことなく病院としての地域貢献機能を高められると思っています。


まあ、なんせ地味な活動ばかりで、動ける仕組みを作るために文書書いたり会議通したり根回ししたりとか、文化づくりのために事例ベースで少しずつ出来ることを増やして自信つけていったりとかなので、成功したところで病棟の経営・治療成績が跳ね上がるわけでもないし、後方医療機関からみてわかるような変化もないし(変な紹介や搬送が減ったことを体感する人が数名出るかなくらい)です。

でも、名前が付き、その先には効果があるというエビデンス・文献もあるとおもうと、ちょっと元気がでるのです。


せっかく「まだ心は若手!」のうちから、自分の意志で今の小病院を選び、地域健康増進拠点病院に登録し、病院家庭医を名乗って活動してきているからには、「最先端の、超効果的なことをやって輝きたい」という下心はあるのです。

べつに「オレはもういいや、最前線からおりて、小病院で隠居生活楽しみます」というわけではないんですよね。

なので、たまにこうやって海外の最先端に触れて(といっても紹介されている論文はどれも2000年代なのですでに周回遅れ臭が半端ないですけど)、「オレだって(他の人達とは違う方向ですけど)最先端突っ走ってるつもりだぜー!!」と日本海に向かって叫んでみたい日もあるのです。



後半はほとんど書籍紹介ではなくオレがたりになってしまいましたが、病院総合診療、老年医学×家庭医療、楽しいです!!

よし、げんきになったぞ!


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【週に1時間のEBM】抗菌薬の皮下・筋注について

久しぶりすぎて知らない人も多いかもしれない【週に1時間のEBM】シリーズです。

後期研修終わったくらいから、勉強が暗中模索になり、手当たり次第調べては日本語訳してブログに乗っけてた時期がありました。
今でも年数回はやりますが、なかなか時間とれず(読みながら頭で整理するだけのほうが時間はかからんですからね)、でも今回は時間と気持ちと体力のタイミングが一致したので一気にやってみました。
他にも重要な、先にやるべきことは有るんですが、たまには自分のため(引いては担当患者や、自分の病院の他の医師が担当する患者のため)のお勉強くらいしてもいいと思うのです。



さて、ではここからが本文です。

毎度のことながら長いですよ。。。


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添付文書上で筋注可能な抗菌薬はあります(βラクタムやアミノグリコシドなど)が、一般的な点滴静注と比べて臨床成績が劣らないのかという臨床試験は目にしたことがありません

緩和ケア領域や在宅ケアで最近行われつつある、皮下点滴と点滴静注の比較はもっとありません。


しかし、今後も治療継続中に包括ケア病床・回リハ病床・療養病床(医療介護院?)や老健・特養、自宅などにうつるケースがふえてくると考えられ、こういった、比較的簡便な投与方法でも治療効果が劣らないかどうかはけっこう重要なClinical questionだと思います


だって、点滴静注だと「アナフィラキシーが起きるかもしれないから入念な経過観察が必要!」とか、「終了後抜去したりロックしたりしなきゃいけないのに誰がやるのさ?」とか、自己抜去すると血の海になったりとかあるので、在宅診療や、病棟でも看護師数が少ない急性期以外などではけっこうややこしいですよね。
皮下注なら、自己抜去しても大したことおきないし、点滴手技に不慣れな看護師でも失敗のしようがないし、終わったあとそのまましばらく置いといても問題ないです。
筋注だったら一瞬で終わるので、在宅では特に魅力的です。


そういう理屈上の利点はそれとして、自分が一医師でちんまりとやっているクリニックだったら患者や家族と個別に相談して行うのはいいと思うし、雇われの一臨床医であればそれもまあ可能でしょう(上がお固いところでなければ、医療安全委員会や感染管理委員会との闘いがどうなるか次第ですかね)。

なんですが、自分は立場上管理者であり指導者でもあるので、実質自分の言動で内科系医師が全員したがってしまったり、自分が取り決めとして決めたことは科や病院の責任になると考えると、あまりエビデンスないものを「大々的にやりましょう!」とも言えず



ということで、「経験的にはたくさん行われていて、害も少なく、有益性も高そう」な”抗菌薬の皮下注や筋注”についてのエビデンスを調べてみました。




詳細な文献検索にうつる前に、前提となるBackground的な基礎知識を確認しておきます。


常識・耳学問としては、「けっこう有用で、積極的にやっている医療機関や医師も多いが、質の高いエビデンスはなく保険適応外使用になるパターンも多いので個々の裁量の範囲」という認識です。

知人の働いている在宅専門クリニックでは、抗菌薬は筋注が当たり前と聞いています。


テキストやマニュアルとして出版され、どの医師も知っているレベルのものはないと思っています。

緩和ケアや終末期ケア系の本はあんまり読んでないので、もしかしたらいいのがあるのかもしれません。あったら教えてください。

終末期の苦痛がなくならない時、何が選択できるのか?」はいつか通読したいと思いながらの積読状態ですが、セデーション中心で抗菌薬の話ではありません。
死亡直前と看取りのエビデンス」も、看取りがテーマなので、モルヒネや抗コリン薬などでてきますが、治療を念頭に置いた抗菌薬は当然でてないですね。
緩和領域でも、エビデンスベースドなテキストでは、あまり触れられないようです

Hospitalist 2017年 Vol.5 No.4 老年科」特集に期待して開いてみましたが、老年医療一般をいい感じに網羅していますが、抗菌薬の投与についてのマニアックな議論はなさそうです。
J-IDEO」が感染症業界のメジャーな雑誌かもしれません。購読してないのでわかりませんが、全号の目次を眺めた限りはなさそうです。イケイケなトピックス・連載が多くておもしろそうですが。
高齢者のための感染症診療」はいいところまで行っていて、外来や在宅での抗菌薬治療(OPATなど)に踏み込んでいますが、感染症の適切な治療の範囲での紹介で、皮下注や筋注には触れられていませんでした。まあ、そうですよね。
というわけで、感染症領域でも、正当な治療方法ではないという認識か、あまり堂々とはあつかわれなさそうです。


web資料では、「終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版」が割とお気に入りです。日本緩和医療学会の編集ですね。
一般的に、ガイドラインを読むときは、その作成ルールをチェックしてどの程度エビデンスベースドなのかを確認し、その上で個々の推奨も推奨度だけでなく根拠論文のエビデンスレベルの高さをちょろっとみて、自分のプラクティスを変えるレベルの推奨の場合は元論文を読んだりします(そして、たいていは元論文がイケてないか、解釈に歪みがあるかなどで自分のプラクティスがかわることはないのですが)。

今回は、「発刊にあたって」のところで、「本来はエビデンスに基づいた推奨を導出するのが原則だ」と断った上で(AGREE評価なども経ているようです)、緩和医療では大規模RCTが実施しにくく、複雑な病態もあるため一般論・基礎知識や学会としての立場などにも触れていると記載がありますので、エキスパートオピニオン含めてさらっと現状を把握するにはよさげです。

これの「7.皮下輸液法」のところは、以前から愛用していて、適応、投与量や速度、穿刺部位や方法にくわえて、皮下投与が可能な薬剤を「添付文書上皮下投与が可能なもの」と「それ以外の、経験的に使用されているが、安全を保証する論文はない」を分けて記載してあり、自分が薬剤選択する際の参考によくしていました。

のでやや期待しましたが、そもそもが「輸液療法」のガイドラインであり、「感染症治療」のガイドラインではないため、感染症治療や抗菌薬投与に特化した章はありませんでした。
皮下投与可能な抗菌薬としてβラクタム系・モノバクタム系・クリンダマイシン・アミノグリコシド系は提示されています(安全性の根拠論文なしと断ったうえで)
また、筋注については言及ありませんでした。



二次資料であるUpToDateとDynamedでも、いろいろとキーワード入れ替えてやってみましたが、いい感じのページは見つかりませんでした。
最近はエキスパートオピニオンも増えてきて、エビデンス集でなく教科書的になってきたと言われていたので少し期待したんですけどね。


「教科書」ということで、以前に大枚はたいて購入した電子版ハリソンもみてみましたが、感染症の治療・予防アプローチの章をさらっと拾い読みしてみましたが、ダイレクトなところはなかったです。PK/PDのところで静脈内投与以外ではBioavailabilityがね……という記載があり期待しましたが、その後は経口投与での注意点のみで、皮下・筋注の言及はありませんでした。

しかしハリソン、目的意識持って読むと超読みやすいですね。
英語なのでパラグラフ・リーディングでさらさらっと章全体を拾いつつ目的部分にたどりつけるし(電子版は目次からワンクリックで該当ページにもいけるし、2-3ページ読んで間違ってたら戻ってこれるし)、英語の文章自体も洗練されていて久しぶりに英語読んでもさらさらっと読み進められました。また機会見つけてマメに読もうと思います。



というわけで、そろそろ諦めて、Pubmedでの論文検索に移ろうと思います。

キーワードは、"subcutaneous or intramascular" and antibiotics or Ceftriaxone or Cefepime or Meropenem あたりでやってみました。
皮下と筋注両方知りたかったのでor検索にしたのと、抗菌薬一般論のレビューがあれば読みたいのでantibioticsを選択し、他に在宅などでよく使われる広域な抗菌薬の具体的なStudyもあればみたかったので、上記の「終末期がん患者の輸液両方に関するガイドライン」でも皮下注が慣習的に使われていると言われているグループから、特に広域なものを探してみようと思って3つの抗菌薬の名前もor検索にしてみました。

緩和や老年で大規模なRCTがあるとは期待していないので(倫理的にもまだ難しいかもしれません)、RCTなどのスタディデザインでの縛りはかけずに広くみてみました。

結果としては、割といろいろでてきたけど、決め手には欠けるかなという印象でした。


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Med Mal Infect. 2014 Jun;44(6):275-80. doi: 10.1016/j.medmal.2014.03.007. Epub 2014 Jun 2.
Subcutaneous and intravenous ceftriaxone administration in patients more than 75 years of age.
PECO:高齢者のCTRXの皮下投与なので、割と関心のどんぴしゃです。
結果:単施設・病院で、後ろ向きに、148名のうち38名が皮下投与。皮下のほうがやや年齢高め、せん妄多く、寝たきりの人も多く、一方でADL数値は高く(動けるので点滴繋いでおけない?)で、検出された菌や感染巣や死亡率・治癒率に有意差なし。
考察:重症度よりも、虚弱度の高さで皮下投与が選択され、治療効果への悪影響なし。
感想:経験と同じだなと思えたのと、自分の経験とくらべてnがすごく多いわけではないけど統計解析してくれているので経験が理屈に整理できて有用な体験でした

Rev Med Suisse. 2014 Oct 15;10(446):1924, 1926-9.
Subcutaneous antibiotic administration in elderly patients
PECO:フランス語の論文で、アブストは英語で読めましたが構造化抄録でない。
内容:オフラベル使用での皮下投与は多くはないが、老年や緩和では行われており、特にCTRXは多く一部の地方議会では承認されたりしているが薬理学的・臨床的に非劣性を示したものはないので、RCTが望まれる。
感想:という意見だけだった。残念。でも、2014年の時点で、自分の疑問に答えるRCTが無いと書いてあったので、「自分の検索や知識がポンコツ」ではないのかなと思えて変に安心しました。

Med Clin (Barc). 2007 Jul 7;129(6):236-7.
[Administration of subcutaneous antibiotics in patients on palliative care].

Med Clin (Barc). 2008 Mar 29;130(11):439.
[Prospective study of subcutaneous ceftriaxone in patients on palliative care].
どちらも良さげですが(後者は前者へのコメントのようです)、アブストすらみれず


10年以上前には、CTRXのPK/PDについての研究もありますね。

Pathol Biol (Paris). 1988 Jun;36(5 Pt 2):702-5.
[Pharmacokinetics and tolerance of ceftriaxone after subcutaneous administration].
これもフランス語だ。
内容:健康ボランティアでは吸収がよく、8人の患者で3日間静注→3日間皮下注したら血漿濃度は維持されたとのこと
感想:まあそうだろうという内容で、治療前半と後半では薬剤分布も違うんじゃないかとか思いますが、これを1988年にやっていたというのがすごいですね。いきなりRCTでプラセボ群や皮下投与のみ群を作るわけにも行かないだろうし、こういうのの積み重ね大事ですね。


この辺から、筋注にも触れられています。
J Vet Pharmacol Ther. 2002 Feb;25(1):73-6.
Pharmacokinetics of ceftriaxone administered by the intravenous, intramuscular or subcutaneous routes to dogs.
PECO:犬に対する動物実験ですが、静脈内、筋注、皮下の薬力学を比較してます。
結果:皮下1日1-2回や筋注1日1回は、静注と同等かもしれない
感想:まあ犬ですが、自分の知りたいことにかなり近い比較対象を置いていますね。これを人間でやってほしいんですが、15年経過しているんだけどな。
とおもって、筆頭著者のRebuelto Mさんの名前とCeftriaxoneで調べてみたらいくつも論文書いていて、新しいのは2014年もありますが全部「dog」、犬対象でした。基礎医学者とか臨床医がパイロット的に動物実験しましたではなく、獣医ってことか。納得。。。

Pediatr Infect Dis J. 1994 Aug;13(8):724-8.
Ceftriaxone therapy of bacterial meningitis: cerebrospinal fluid concentrations and bactericidal activity after intramuscular injection in children treated with dexamethasone.
概要:小児の髄膜炎!に対して、セフトリアキソン筋注の効果をみてます(重症患者で研究するということは、途上国など医療リソース少ないところでの研究かなとおもったけど、著者はオレゴン州・米国の医師なのでそうではなさそう。
PECO:細菌性髄膜炎の小児37名に対して、デキサメサゾン4日間と、CTRXを3・6・9日目に筋注(たぶんそれ以外の日は通常の静脈内投与)して、髄液中濃度を評価した。
結果:髄液中濃度は十分だった。
感想:重症患者に対して全部筋注のStudy組むのは倫理的に厳しいので、経過の良い患者で途中に筋注挟んで髄液中濃度が落ちないかを見たという意味では、苦し紛れというよりはよく考えたなという感じですね。もちろんだいたいアウトカムである髄液中濃度しかアブストには書いてないのでなんとも言えませんが、筋注についてもアグレッシブに検討している人はいるんだなと思いました。

Chemotherapy. 1991;37(4):292-6.
Treatment of acute pyelonephritis in women with intramuscular ceftriaxone: an out-patient study.
概要:今度は腎盂腎炎ですね。元気なこともあり外来治療のオプションとして筋注は確かによさそう。肺炎では外来CTRX毎日通ってもらうor訪問看護でやってもらうとかはありますが、筋注ならより短時間で出来て良さげです
PECO:30名の腎盂腎炎女性に筋注CTRXで治療して、治療6週後の時点で85%の治癒率。
感想:んー、治癒率低すぎですねぇ。治療期間や投与量、患者背景などわからず、1991年の論文なのでおそらく今の標準治療とは異なる可能性が高く、採用できないっすね。

Chemotherapy. 1989;35(5):389-92.
Treatment of various infections in an outpatient practice by intramuscular ceftriaxone: home parenteral therapy.
概要:同じ研究者が、様々な感染症の23名の感染症患者にやったら、治癒率91%でした。
感想:こっちのほうが先ですね。いろいろやってみて程々の結果だったので、疾患絞って、かつ治りやすそうな疾患選んで上の研究したらあの結果だったってことですね。んー、微妙。同じリサーチクエスチョンを上手に調理して、現代の投与量で在宅や緩和患者でやったら結構いい線行けそうです
 
他にも1988年に他の著者で、CTRXの筋注論文がありました(アブストがより雑な感じで紹介は省略します)
調べてみたら、セフトリアキソンの開発は1980年前半に行われたようで、日本での販売承認・薬価基準収載は1986年なので、「1日1回の夢の抗菌薬が出来たぜ!すげー。しかもこれ筋注で使えたらもっと便利じゃね?」という感じでたくさんの研究がされたのでしょう。同一テーマの論文にまとめて目を通すと、時代背景や国・地域別事情など見えてくるのが楽しいですね。


あと、目先を変えて、「筋注時に抗菌薬を溶かす溶液としてリドカイン使うといいよ」というのを耳学問で聞いていましたが、それについて検討した論文を探してみました。ありますね!

Arch Pediatr Adolesc Med. 1994 Jan;148(1):72-5.
Lidocaine as a diluent for ceftriaxone in the treatment of gonorrhea. Does it reduce the pain of the injection?
概要:1994年と古いですが、淋菌に対してセフトリアキソン一発筋注は標準的な治療であり、痛いと評判になると患者が来なくて結果的に淋菌が蔓延するかもしれないという切実な視点から組まれた試験かもしれませんね。
PECO:成人の前向き研究で、淋菌陽性の人39名を対象にランダムにリドカイン溶解と滅菌水(注射水)溶解に割り付けてます。
結果:事前の疼痛不安に差はないが、注射時・10分後・20分後・6時間後で有意な疼痛の差があった(具体的な数値はアブストでみれず)



はい、で、ここまで個別のスタディを見てきましたが、なんからちがあかない感じですね。
答えが出きってないことはわかっていて、CTRXの皮下投与については小規模なものがパラパラあり、2014年の最初に載せたものが一番まともっぽいてところまでかな。
頑張って調べてみた結果、あんまりスッキリせず、自分のプラクティスもあんまり変わらなそうで、こういう「とりあえず論文調べてみた経験」を繰り返すと、やがて「論文調べてもいみないや」→「教科書読んでも以下同文」→「じゃあ製薬会社の説明会やパンフで」まで行ってしまうのかもしれませんね。あぶない・・・

本来なら、Background把握して、二次資料みて、それでもダメなら統合された情報源(をまとめている信頼性のあるサイトのまとめ)をみて、それでもダメで論文を個別にあたるならまずは総説やsystematic reviewから探すのが基本ですね。
というわけで、そういう視点で当然探してみましたが、まともなRCTがないのだから、質の高いMeta analysisのSystematic reviewはないだろうなと思いながら、新しく幅の広そうなものをさがしてみたら、1個ありました。

Clin Microbiol Infect. 2015 Apr;21(4):370.e1-3. doi: 10.1016/j.cmi.2014.11.017. Epub 2014 Nov 23.
Subcutaneously administered antibiotics: a national survey of current practice from the French Infectious Diseases (SPILF) and Geriatric Medicine (SFGG) society networks.
概要:介入研究してどうだったかをみる論文ではなく、とりあえずフランスの感染症と老年業界での、皮下抗菌薬投与の現状を調べた国単位の研究のようです。フランス、抗菌薬皮下投与の先進国なのか?ってくらいちょいちょいでてきますね。
PECO:フランスの感染症科と老年科の医師が、皮下抗菌薬投与をどう行っているのかを調べるNational surveyで、方法はアブストでわからないけどアンケート法かな(回収率わからん)。
結果:367名・96.1%の医師は皮下投与の経験がありエルタペネム33.2%・テイコプラニン39.2%・アミノグリコシド35.1%・アモキシシリン15.3%で経験があり、CTRXは全員が経験していた。皮下を選択する理由は、経口や経静脈、筋注が選択しにくい場合で、特に緩和ケア領域で多かった。有害事象は疼痛70.8%、皮膚壊死12.8%、効果不良19.9%が主だった。さらなる研究で、適切な適応、モダリティー、認容性などの評価が必要である。
感想:これがたぶん現状では一番大規模なデータではないでしょうか?患者でなく、専門医300名以上なのでかなりのnを間接的に調べたことになるっぽいですね。
もちろん海外の現状調査なので、当院でいきなり「みんなやってるからうちもやる」には持っていけませんが、現状の最先端がみえ、おそらくフランスからより詳細な追試が行われそうな気がしてきたので、無理に背伸びしてまで自分でこのテーマの研究しなくてもいいかもしれません
やるなら全日本民医連の総合診療若手医師部会とかでできないかなぁ…(皮下注や筋注を迫られる場面でないと研究されないので、大学病院とか救急病院ではやらないだろうし、海外のエビデンスあっても日本のデータはあったほうがいいしね)。

あと、筋注も選択できないから皮下注を選んだという記述からは、疼痛を与えたくない緩和の状況や、凝固異常で筋注禁忌の場合などが良い適応っぽいなぁとおもったり、「皮下注に行く前に筋注を検討する」という順番が前提となっているのかなと思いました。


ちなみに、日本の研究は、1個、2014年の聖隷三方原病院ホスピス科のがありますね。
Palliative Care Research 2014; 9(4): 121-4
緩和ケア病棟における, セフトリアキソンの皮下点滴使用と奏功率
10例のみの後ろ向き検討ですが、奏効率70%、局所有害事象なし、というだいたい似たような結果です。
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はい!

とりあえず以上です。
検索時間が1時間越えたので、ここでストップとします(日本語になおしてブログに書くのに倍くらいの時間がかかっとりますけど・・・)



それで、「調べて終わり!大満足!!」ではダメで、調べ終わったら「日本の現状で、今いる病院で、自分がどうするかを検討する」のが大事です。

が、皮下投与の適応が通っている抗菌薬は、たぶん、ないはず
筋注は結構あるんですよね。

セフメタゾールは筋注用製剤があります
1回2gを2回に分けて、リドカインで2mlに溶いて投与だそうです。
量と回数が微妙ですが、それなりに使い所はありそうで(ESBL産生菌でそうな軽症UTI、憩室炎などの消化管関連など)、特に腎不全があるとよりきちんと効きそうです(投与した量がそれなりの量血中に移行する前提ですが)。
https://www.medicallibrary-dsc.info/di/cefmetazon_for_intramuscular_injection_0.5g.php

チエナムも筋注用製剤がありますね。
1回1gを2回に分割なので、用量はかなり少ない設定ですが、他に手がない場合にはありかな(ESBL産生菌をカバーしたいだけだったら、セフメタゾンのほうがいいような気もする)
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6139501E2038_2_05
※もちろん、カルバペネム系の乱用はダメですよ!

ほか、アンピシリン、ピペラシリンやセフォタックス、アミカシン、クリンダマイシンにも筋注適応があります

一方で、セフトリアキソンやセフェピムは、ワンショット静注はOKですが、皮下注だけでなく筋注も、添付文書の用量用法では記載が無いんですね。

メロペンはワンショットもだめで、30分かけて点滴静注のみです。



んー・・・、となると、保険適応の範囲で、在宅や亜急性期~慢性期病棟で、よくある感染症に対して皮下点滴や筋注で治療を組み立てるとしたら、以下のパターンが妥当ですかね。
(感染症診療の原則からみて妥当かどうかではなく、あくまで診断はちゃんとしてて、本人・家族とリスク含めて相談の上で、他の一般的な投与経路や薬剤選択が難しい事例での奥の手的な話ですよ)

①皮下点滴が出来る環境(患者家族が抜去や固定など可能なら、訪問看護で繋いで終わったら家族が止めるのできる)なら、
A. 耐性菌を気にしない肺炎・尿路感染症・皮膚軟部組織感染症→CTRX一択

B. 耐性菌のうちSPACEを気にする場合→CFPM(今回の検討では見つからなかったけど、実際には使われている報告を見聞きする)の一択かな? ほか、アズトレオナムやアミノグリコシド(これなら1日1回投与でもよい!)をセフトリアキソンと併用するのはありですが、2本皮下点滴は大変そうです。

C. 耐性菌のうちESBLsを気にする場合→セフェム系は皮下投与可能というエキスパートオピニオンなので、セフメタゾールかな(1日1~2回でいいかは腎機能次第かなぁ)。


②筋注が可能な状況(すぐに終わるので看護・介護環境には依存しない、痛み対策と凝固異常だけ注意か)なら、
A. 耐性菌を気にしないなら→CTRX筋注していいならベター、だめならセフォタックス(筋注かつ腎不全なら1日1回で行ける例もあるか?)か?んー、難しい

B. 耐性菌のうちSPACEを気にする場合→セフェム系筋注+アミノグリコシド筋注併用か、ピペラシリン筋注(1日1~2回、少量投与での治療成績を知りたいがRCTは組まれないだろうなぁ)、あとはチエナム筋注単独ですかね

C. 耐性菌のうちESBLsを気にする場合→チエナムかセフメタゾン筋注ですね(これも投与回数の問題はある)



んー、今ひとつ踏み切れませんでしたが、皮下点滴については考えがだいぶ整理できた気がします

セフトリアキソン・セフェピムやアミノグリコシドの皮下投与については、これまでの理解の延長で良さそうです。

筋注はまだ迷うなぁ。
看護師いる施設で1日2回くらいやってもらえそうなら、腎不全症例であれば耐性菌カバーまで含めてチエナム・セフメタゾン、腎不全なくてESBL検出率の低い施設ならセフトリアキソン+アミノグリコシド1日1回ずつ(両腕や両大腿に1本ずつとか)で行けそうですね。

もうちょい情報あつめてみます。。。




























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訪問診療の魅力というか魔力というか。注意も必要かもですね

訪問診療についてあれこれ考えてみました。



今の病院に来てからの自分の訪問診療との関わりは、いろいろでした。

人が足りないときは普通に診療に加わり、

人があるていどいる時は、他の業務に割いて撤退する時期もはさみ、

今は「定期的な在宅カンファ、新患導入の判断への関与」という管理的側面と、「超困難事例でも対応するための切り札」的な立ち位置で関わっています。



管理面では、毎週水曜午後の定期在宅カンファで、1時間程度かけて新規導入患者の情報収集とカンファレンスを2~5件程度と、その他諸々の細かい相談。

他、月1回は運営会議を開催して、経営面の確認や、診療の質向上のための相談、地域や介護系、患者や家族からの信頼を高めていくための検討など諸々しています。

やはり管理・経営やAccountability・Managementの視点をもって運営に関わると、あからさまなくらい結果がついてくるし、次にクリアすべき課題も見えてきて次々乗り越えていける感じなので面白いですね(一臨床医として訪問診療にでていたときの悩みや壁が遠く後ろの方にある感じから、自身の成長を感じたりします)


臨床面では、月2回(隔週)のみで訪問診療に自分自身が行っていて、比較的濃ゆい事例を選抜・濃縮して当ててもらうようにしています。
在宅専従医は、たいてい内科出身や、認知症か神経変性疾患か運動器疾患かなどどれかに特化してしまうことがおおいような印象をもっており、病気が多彩なシステムにまたがっていたり、心理社会面が複雑すぎて医療どころでないみたいな人は積極的に「あ、じゃあ自分がみますよ」にしています。

最近は、総合診療医が往診やってる病院という認識がすこしはひろがってきたようで、地域内の高次医療機関から「なんかわかんないけど、もうこりゃなんかダメだ!ごめんね!!」と言う感じの紹介も増えてきました(丸投げ批判ではなく、望むところだな喜びです)。
手紙や検査データ見ても、「なんかわからなくてお手上げ」と思っている医師からの情報なのでけっきょくよくわからず、「とりあえず行くか」になることが多いですね(可能な範囲で周辺から情報は拾いますが)。
ご自宅や施設に行って、患者・家族からの病歴聴取や、マニアックなものも含めての身体診察駆使、そして各種血液・尿検査と、たまにポータブルエコーももっていったりしてで、診断についてはほぼ外来診療と同等レベルで、治療についてもたくさんの引き出し・裏ワザ・第2第3第4選択・プランABCなどあるので、状況に応じて柔軟にやれていると思います。


ちなみに、うちの訪問診療は看護師も一緒に行きますが、個々の看護師さんたちの経験値も知識・技術も、度胸や柔軟性もけっこう高いので、自分の提案にも拒否感なくついてきてくれるのでやりやすく、ありがたやです。

集団・組織となると改善すべき点はまだいろいろありますが、個々のプレーヤーのレベルが高いことはやはり重要ですね。

逆に、いくら個々のメンバーのパラメーターが高かったとしても、組織レベルでの安定感や外部から見ての信頼感がないと、なかなか地域の中での信頼は高まらずというのも今の課題ですね(詳しくはかけないものもありますが、Accountability大事だと思います。病院からの紹介は増えたけど、地域包括・ケアマネ・地域住民・患者口コミなどが増えてないのがその証左かと)。


ほか、教育面では、たまに学生や研修医の見学も連れて行供養にしています。

見学に入った人達は「往診って、こんなに濃いのが普通なんですか?」と聞いてきたり、一緒にいく看護師すら「先生って、外来もこんななんですか?」と言われたりしますが、外来よりは全然薄いと思えるくらいには自分の在宅診療キャパは広く深いんだろうと思いました。

また、できれば普通の訪問診療も見せねばという気もするので、関心ある人は関連診療所も見学勧めなきゃなぁとも思いました。



そんな感じで、訪問診療のPlayerとしてもManagerとしても、ときにEducatorとしてもそれなりに楽しく、自分の経験やスキルを最大限活かしてがんばれているかなと思うのですが、一方で懸念もあるのです

それは、この「楽しさややりがい」そのものが、麻薬的な依存性・快楽感につながっているように感じてしまい、今日ふとそれが恐ろしくなってしまいました。



病棟だとチーム医療っぽい感じで、担当医師もチーム制だったりしますよね。

外来だと個室で医師対患者になりますが、実際の検査は検査技師、処置は看護師がやったりで、意外と医師の出番が少なかったりしますし、臨時受診のときは別の医師が対応することもおおいです(特に複数医師がいる病院だと)

でも、在宅だと、基本的には医師±看護師が固定で登場し、実際にお話をして診察をして、そして処置や各種介護・医療器具の取扱説明や、それを家族や患者が的確に使えているかの評価もしたりと、相手のフィールドにさらされて行います。
ので、全てを医師が行っている感じ、そしてその一部始終を患者・家族がみている感じがあり(結果的に不信感が高まる可能性もありますが)、どちらかというと「このお医者さんすごい!」と熱狂的な陶酔や信者化する可能性も高いように思いました。


いつもそうはならないように、診療場面を俯瞰して、相手方の反応を見ながら巻き込まれ感や見せ方などをリアルタイムチューニングするように(他のどの診療場面よりも)意識しているんですが、最近はやや近すぎる距離感となってしまいがちな事例もいて少し危なさを感じました。


そして、他の病院でお手上げになってから紹介になった事例を、立派な病院でなく自宅の簡素な環境で、医者が体一つでみるみる病状を見立てて、数回の関わりでみるみる元気になってしまうと、もうそれは手品か奇跡か神様かみたいな感じになってしまうこともあるでしょう。

こればっかりは、「すごく見えないようにほどほど手を抜いて」をやると、経過みているうちに病態が悪化してQOLが下がったり、下手すると亡くなることもあるので(それくらいギリギリの人が担当に多いので)調節しにくいなぁと思いました。


そして、最近立て続けに、「おし!やってやったぜ!!」とか、「オレ、やっぱすげーな。こればっかりは若手や、他の人には出来ないレベルだぜ」と思ってしまう瞬間があり、「あ、やばーい」と思いました。

そういう自分の感情や、患者・家族との関係性などに自覚的で調整する能力を持っていればいいんですけどね。

まだ若手で自分の成長に感動しやすい時期とか、熱い思いをもって地域医療とか家庭医療とか訪問診療に乗り込んだ総合医とかは、この麻薬感に陶酔してしまって怪しくなる可能性があるんだろうなぁと思ってしまうのです。

だって、とってもやりがいがあって、とにかく気持ちいいですから。


頑張って元気になれば嬉しいしね、

もともと良くなる確率の低い人であれば、それでも取り組む姿勢・過程自体が感動を生むしさ、

最終的に(万が一救命可能な疾患を見落としたかもしれない過程をへて)亡くなったとしても、的確なお看取りプロセスを踏むスキルをもっていると、それすら感動的なフィナーレに見せることすら出来てしまいます。



このへん、急性期病棟の感覚とは逆だなぁという気がしていました。

治療反応性がよいひとは、「十分元気になってピンピンした状態を見せて、自ら感激や感謝の念を伝えられるようになる」前に退院して二度と会えない。

治療反応性がない人は、最初から最後までせん妄や昏睡で交流できず、家族に合うたびに厳しい話をして、最終的に後悔の念で死亡確認する。

ギリギリのレベルの人は、何度治療してよくしても、また次に出会うときは再燃・再発のときなので、前回の治療や再発予防作の甘さを痛感させられることばかり……

ね、いいことないな、病棟ってさ
(実際はそんなこと無いから好き好んで病棟医してるんですが、急性期疾患の治療だけに気持ちが向いているとこう見えてしまう可能性は高いと思います)




最近、「若くして診療所での家庭医療の世界に行く人は、急性期医療(特に救急医療)をやっとかないと急速にヤブ化していくからやばいよ」というのを見聞きする機会が多い気がします。
いろんな媒体で、いろんな立場の人から、いろんな根拠で、いろんな提案がありますね

特に、超急性期病院でのベルトコンベヤー式の医療に嫌気がさしたり、救急やICUや外科系で上手く馴染めず、診療所や外来・在宅にきて「ああ、ここが心地よい。オレにあってるな!」と思った人だと、その後当面は急性期病院にもどらず診療所長期間固定になりやすいだろうし、そうなるとこの魔力にとりつかれる確率も高くなるのかもしれません。


少し前にこの「診療所行くなら急性期診療機会キープせよ理論」を聞いた時は、自分自身は小規模病院で急性期医療も救急医療も安定期外来や訪問診療もやっているので、いまいちピンと来ていませんでした。

しかし、「診療所で外来と訪問診療だけやっていて、ERや急性期病棟の経験がないまま数年経つのはやはり危ない!」かもしれないなと、今回の振り返りを経て、実感を持って感じることが出来ました。


診療所だと、当然医師は1名(大規模でもせいぜい3名)で、そこの所長として数年君臨すれば、自分の医療を素晴らしいと思う患者だけが徐々に選抜されてしまうでしょう(日本では、僻地・医療過疎地域以外では患者がかかりつけをいくらでも選べるため。複数名いる病院の外来ではそういうことは比較的起きにくく、色んな患者が混ざっている印象です)。
その状況では、密室の外来や在宅で、患者の転帰にかかわらず気持ちよい診療をつくれてしまうリスクがたかく、かなり恐ろしいなと思いました。


なので、今後若くして診療所にたどり着く人には、「大規模病院の救急や当直」を月数回進めるのは大事なことかなとおもいました。
また、より本質である「密室で、あらゆる転帰でも気持ちいい」にはならない環境が提供できれば良いと考えて、うちでのような小規模病院の外来・救急や病棟なども提示していいかなぁと思いました。


※最後に補足と言うか言い訳ですが、自分自身は年単位で固定されて診療所長として外来・在宅をずーっとやってきた経験はないので、病院ばっかりの偏った経験から書いていますので、あくまで偏った意見として読んでもらえればと思います。在宅だってそんなに甘美なことばっかじゃねーよという反論があるだろうことは理解しています。





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二木会ワークショップ「老年レクチャー:高齢者が退院できない理由の同定と、詳しいADL評価による退院時必要支援量推測」の資料共有

北海道勤医協 総合診療・家庭医療・医学教育センター(GPMEC)General Practice and Medical Education Center, Hokkaido Kin-ikyoの、総合診療後期研修医向け学習会「二木会」で行ったレクチャーの資料です。

CGAからのFIM評価-二木会WS-共有用 by けんた




私は、準備のアドバイザーと、当日の全体運営やワーク支援などファシリテーターとして自分が関わりましたが、主には後期研修2年目の先生に資料を準備してもらいました。


普段総合医が使い慣れているCGA(高齢者総合機能評価)と、その中のADL評価で暗記法として比較的親しまれているDEATHを活用してFIMの持っている有用性を引き出せれば、実践的かつ総合医のリハに対する心理的抵抗感を減らせるのではないかと考えて企画しました。

老年レクチャーの枠と言いながらも、実際に使ったのはADL・FIMというリハのフレームワークですが、老年医学・高齢者診療を実践する上でリハは必要不可欠というか凄く有用というメッセージも伝えたくて、あえてリハを全面に出してみました。
 

結果的には大成功で、参加者はワークがなかなか終わらず、レクチャー中も後も質問や感想がたくさん溢れました。

課題としては、ワークの段取りがまだ十分詰め切れていなかったので配付資料やインストラクション、時間配分を研究しておくことと、このDEATHによるFIM推測に妥当性があるかの検討は不十分なところなので、今後データを取って検討し、学会発表や論文化できればとは思っています。


2015年6月27日の、日本プライマリケア連合学会北海道ブロック支部の地方会(リンクはこちら→http://goo.gl/r4cgyz)でも、同様の内容を更に発展させつつ、多職種ICF(国際生活機能分類)カンファまでやる予定ですので、興味ある方はぜひご参加下さい。



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週に30分のEBM-ホスピス入所前の機能予後

毎日論文読んでみているなかで、きちんと読んでみたい論文があれば簡単に日本語訳的メモ取りながら蓄積しています。

とりあえずブログにも公開してみることにしました。


今回読んだのはこの論文

Functional Trajectories in the Year Before Hospice

Ann Fam Med 2015 13:2-3




ホスピスに入る前数年の「機能的軌道:Functional trajectories」についての研究です。

疾病の種別の軌道(Illness trajectory:心血管イベント、慢性臓器障害、癌、老衰・虚弱の4パターン)については知っていました。緩和ケア領域でよく出てきます。

この論文の「機能的な軌道」というのは別なのかなと思って読んでみた。



対象は、進行中のコホート研究の754名の地域在住の70歳以上の高齢者で、そのうち、その後ホスピスに入った213名が登録された。

基本的ADL、手段的ADL(IADL)、mobility activityが電話インタビューでインタビューされた。

ホスピスに入る1年前の経過について、5種類の機能的軌道を同定できた。

無題
 
最後に落ちるパターン10.8%
加速するパターン10.8%
中間21.1%
進行性に重度なパターン24.9%
持続して重度なパターン32.4%


癌と診断された患者群は、最も好ましい機能的軌道をたどった。
 
神経変性疾患は最も悪かった。


ホスピスでの平均生存期間は14日で、その期間中の機能的軌道には有意な差はなかった。


持続的に重度な軌道の患者群と比較して、中間的軌道の人は生存期間や機能自立期間が良かった。



結論:
ホスピス入院1年前の機能経過は大きく異なっており、神経変性疾患で最も悪かった。

ホスピス入所時期が遅い(ホスピス入所後生存期間が短い)人たちで、かつ入院前の重度機能障害が強い者達は、人生の終末期を迎える多くの高齢者たちのまだ満たされぬ緩和ケアニーズを持つものとして注目されるべきである。



感想
ホスピスに入ってからの生命予後や機能予後ではなく、ホスピスに入る前1年間の身体機能の経過を分類し、疾患との関連など分析されていて、普段の臨床にかなり活かせると感じた。
 
どういう人は早く・遅くホスピスに入ったほうが良いとか、プライマリ・ケア医がどういった患者にどのようにリソースを集中的に割くべきかの戦略立案に活かせると思った。

原文をきちんと読んでみたい。とりあえずPDFで全文ダウンロードして図表は目を通してみた。




以上。

これくらいなら短時間でできますね。

 


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アドバンス・ケア・プランニングについて、簡単にですが勉強しておきました

お久しぶりにお勉強ネタです。
 


先週土曜日に二木会がありました。

もともとは第二木曜日に開催していた学習会(今は第4土曜日)で、総合診療後期研修プログラム所属の研修医・指導医があつまって研修報告や振り返り、レクチャー・ワークショップなどをやって共に学ぶ会です。

今回は病院で日直しながらの参加だったため断片的にしか参加できませんでしたが、レクチャーテーマである「
困難事例:Trauble encounter」を中心としたワークショップとSEA(Significant event analysis:大変だった出来事を構造的に振り返ることでプロフェッショナルとしての成長を促す方法)があり、とても勉強になりました。


また、ログブック報告(過去数ヶ月の研修内容を簡単にまとめて報告するもの)の中で往診患者でACP(Advance care planning)に取り組んでみるといった発表がありました。



自分自身「なんとなくは知っているけど説明できるほどではない」というレベルで、
研修医が取り組むのに自分の知識が曖昧なままではまずいという切迫感もあり、
午後の日直で呼ばれている合間(喘息の吸入・点滴が終わるまでの間とか)に簡単に勉強しました。




個人的には「Advanced」じゃなくて「Advance」だということを知ったのが一番の衝撃でした。

Advanced(動詞の形容詞形)だと「前進させる」という意味ですが、
Advance(形容詞)だと「前もっての」という意味なんですね。
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/ej3/1064/m0u/

「なんでAdvancedなんだろう?なんかアグレッシブ的なニュアンスだなー」と違和感持っていましたが
形容詞の意味であれば「前もってケアについて相談しておく」って意味になってしっくり来ました。




せっかくなので、ACPについてわかりやすく解説している資料をいくつか共有します。
(とはいっても、GoogleでACPといれて出てきた日本語情報を上から10個位目を通しただけですが)


http://www.ncgg.go.jp/zaitaku1/eol/ad/3acp.html
最近よくお世話になっている、国立長寿医療研究センターのホームページです。
(勤医協在宅法人との合同学習会で、高齢者の生活面のネタを探しているとここのページにたどり着くことが多いです)

ここにある事前指示書関連リンクで、
事前指示書を用いた医療決定プロセスとか
事前指示書に関する統計とかが面白かったです。


http://www.asahikawa-med.ac.jp/hospital/pal_care/seminars/pdf/kouza_45_2.pdf
旭川医大の緩和ケア部のパワポ資料です。

癌の告知周辺のこと全体を解説した初学者向けの資料で、
簡単な準備方である「SPIKESモデル」も説明されています。
SPIKESは、過去にITE(家庭医療専門医試験をイメージした模擬試験)の模範解答にも出ていましたね。


http://square.umin.ac.jp/masashi/gia.html
これは、総合診療ブックス(私が学生時代に唯一大学生協書籍コーナーで入手できた総合診療系の本で、自分の人生を変えた本と言っても過言ではない)の「ギア・チェンジ 緩和医療を学ぶ二十一会」という本の「Advance Care Planningー意識低下後も患者の意思を尊重するケア 」という章の内容を著者がweb上に公開した内容のようです。

上の2つの資料よりは詳しく書いてあるので、「本を買って読むほどは関心ないけど、ちょっと関心あるのでさわりだけ学びたい」という人にはちょうどいいくらいの量だと思います。



残り2つは、研修医が実際にACP関係でプロジェクト学習やポートフォリオ作成する場合に参考になりそうなデータ。


http://www.city-nakatsu.jp/hospital/parties/organ/digest/digest201106/8.pdf
ACPに関する研究はけっこうされていますが、これはBMJの2010年のRCTを日本語で簡単に解説してくれていた資料です。

高齢者非がんターミナルについての研究らしく、これを調べた先生はガンじゃなくてがっかりしたようですが、総合医にとってはむしろ面白いネタかもしれません。(原文の批判的吟味はしていませんので、解釈は自己責任でお願いします)


http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/data/file/data1_20140221051528.pdf
こっちは、飯塚病院緩和ケア科の医師が行った「在宅医療に関わる住民・職員に対する、アドバンスケアプランニングの啓発活動とその効果の研究」という資料で、プロジェクト学習にしたい人にとってはドンピシャなものっぽく、参考になるかもしれません。

啓発のところはアンケート結果の集計だけなのがちょっと残念な印象。
個人的には選択肢形式の解答のところは前後比較の量的統計処理を行い、自由記載については質的研究(データ量が少ないのでおそらくSCAT法が最適)でまとめて新たな理論を構築するところまで行ったら面白かったのにという気はしますが(もしかしたらこの後きちんと処理して学会発表や論文投稿されているのかもしれませんが)、内容自体はとても面白いものでした。

あとは、アンケートにしないでワークショップ形式やワールド・カフェ形式にしてみても面白いのにと思いました。
他人がすでにやった取り組みや研究の報告は、自分がなにか新しいことに取り組むときの、貴重かつ刺激的な資料になりますね-


上記の内容は、内部のメーリングリストにも投稿しており、「もしこんな方向でまとめる人がいたら、研究として量的・質的処理するところは私がけっこうアドバイスできるはずですのでご相談下さい」というコメントも付け加えてみました。

誰もやらないようなら来年度の自分のテーマとしてやってしまうかもしれません。 



こうやって後期研修医向けの学習イベントに参加すると、結局指導医が一番勉強になってお得だな-と毎回思います。

でわ!



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週に30分のEBM-「無症候かどうかわからない認知症寝たきり高齢者の、繰り返すカテーテル関連尿路感染症の予防」について

久しぶりのEBMシリーズです。



毎月、後期研修医対象のEBM学習会はしているんですが、書記が用意出来ておらず自分で準備、司会進行などしているので記録残せておらず、ブログで報告できていません。

最近は、胃がん既往のない人へのピロリ除菌の効果についてのSystematic reviewや、COPD患者に抗コリン薬吸入を追加すべきかどうかについてSystematic reviewやRCTを読んで診療所の戦略を考えたりしてました。



今回は、院内の後期研修医対象に月1回やっているM&Mカンファレンスから出たネタで、「泌尿器科で膀胱留置カテーテル入れっぱなしの方針になっている寝たきり高齢者の、繰り返す尿路感染症を予測したり予防できないか」という疑問です。

発表した担当研修医の宿題になっていましたが、先日きちんと調べてきてくれて、それに刺激されてもうすこし知りたくなったので自分でもざっと調べてみました。

もともと、リハ栄養学習会で摂食嚥下についての他職種理解が向上して院内誤嚥性肺炎はかなり減った印象があったので「次は高齢者の院内尿路感染症予防だな」と思っていたところにこのタイミングということもあります。




で、調べた結果です。


研修医が調べてきたのは、無症候性細菌尿についてのIDSAのガイドライン。
Infectious Diseases Society of America Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Asymptomatic Bacteriuria in Adults.

わりと有名なやつですね。常識的なことが書かれていますが、勉強したことない方は一度読んでおいて損はないと思います。


ただ、これは「無症候性」の最近尿が対象です。

初期研修医の頃は「症状ないのに 診断や治療で迷うわけ無いじゃん」と無邪気に捉えてスルーしていましたが、最近問題になるのは「カテーテルは入れっぱなし、ちょっとずつ尿が濁ってきてしばらくするとドンと発熱するけど、本人は認知症や失語・高次脳機能障害、意識障害やせん妄などで”症状があるのかないのかきちんと訴えられない”人たち」のことです。

いつも、この人を「訴えてなから無症候性」として経過見ているといつの間にか発熱してしまっているし、かといってカテーテル内の尿が濁った段階で治療するのはちょっとちがうと思うしで悩みます。


最近は「急変兆候」というのを勉強し、研修医にも布教しているので、「ちょっと食欲が落ちたりリハビリ拒否気味だったりしたら、あと数日以内に感染症が成立するかもよ」という目で見るようになり、少なくとも発熱した初日のうちに的確な診断・治療が入るようにはできています。

※「急変兆候」というのは、この資料にある Acute sickness behaiviorやEvent sign、Deliriumのことで、よくわからないという方はきっと損をしている(防げる急変や早期対応できる急変を見逃して、患者が悪くなってからさっそうと現れて治療して活躍するという出来レースを繰り返しているかもしれない)ので、この本を読んだほうがいいですよ(理論と直感で危険なサインを見抜く)


 

というわけで、今回の宿題の答えでは自分の中での疑問は解決せず、自分で調べてみることにしました。いつものDynamedで調べただけですけど。





今回は時間もあまりないので、調べて後期研修医用Facebookで共有した感想をそのままコピペして済ませます。
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Infectious Diseases Society of America Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Asymptomatic Bacteriuria in Adults.を読んだ感想。
「無症候」の細菌尿では、いろいろ条件つけても治療のメリットはなさそうですね(妊婦や泌尿器科処置前以外は)。

条件の近いものとして施設入所高齢者やカテーテル入っている人、糖尿病女性なども見てみましたが治療のメリットは有意差なし。

ただし、施設入所高齢者のRCT結果の一覧表をみてみると、有意差はつかなくても症候性細菌尿になる確率はけっこう減っている印象があり、抗菌薬副作用や長期生存を考えず最後の数ヶ月の発熱を1回でも減らしたいという条件ならありかもと思ったりしました。

あとは、そういう患者でカテーテルを交換する時で、特に前立腺肥大などでカテーテル挿入に苦労する人では、「泌尿器科処置で粘膜出血を想定する場合」に近いと考えて交換前抗菌薬投与は敗血症予防効果があるかもと思ったり。

すべて推測ですが、研究テーマにはなりそうだなと思いました。




ところで、今回の疑問はそもそも何だったっけ?

細菌尿が続いていて「有症候性尿路感染症をすぐに起こす・繰り返す人」の早期発見や予防だったら、
DynamedにもRecurrent UTI in womenという頁があっていろいろあります。

主に若い女性の再発性膀胱炎の記載が多いですが、予防の項の概説のところだけまとめると・・・
・避妊方法の変更(コンドーム以外だったら)
・抗菌薬使用(少しエビデンスはあるけど、できればほかの方法を考えて欲しくて、やるなら性交後か、自己診断か、継続的使用)
・閉経後ならエストロゲン膣剤
・あとはいろいろあり、クランベリージュースも抗菌薬使用と同じくらいのエビデンス
ってことのようです。


ただし、元になっているガイドライン「European Association of Urology recommendations for antimicrobial prophylaxis for prevention of recurrent UTI in nonpregnant women」の説明をみると、対象として尿閉や神経因性膀胱の人は除外できたら考慮となっているので、尿閉・長期バルーン留置だとまた別のガイドラインを見る必要がありそうです。

経口抗菌薬投与はNNT2-3くらいでまずまずです(副作用も当然増えますが)。


エストロゲン膣投与についてはこんなかんじで、けっこう効果ありそうですが、週2回投与は継続率が低いみたいです(当たり前な気もしますが。そして経口投与では予防効果がないようです)
・UTI reported in 16% with estriol cream 0.5 mg twice weekly vs. 63% with placebo in trial with 93 postmenopausal women, but only 64.5% completed the trial (N Engl J Med 1993 Sep 9;329(11):753 full-text)

・UTI reported in 51% with vaginal ring releasing estriol 2 mg (Estring) vs. 80% with no treatment in trial with 108 postmenopausal women (Am J Obstet Gynecol 1999 May;180(5):1072)
25分前 · 編集済み · いいね!



あとは、UTIの予測「Clinical prediction of urinary tract infection」というページもDynamedにありました。

ですが、内容を見ると「今後発熱するか」の予測ではなくて、検査なしなどでどうやって「今尿路感染症が成立しているか」を見る方法のはなしのようです。

それでも、「Diagnosis of UTI in Nursing Home Residents」施設入居者の尿路感染症診断のところで、カテーテルがある人は以下の4つのうち2個で疑うというのがあってそこそこいいかもと思いました。
for patients with chronic indwelling urinary catheter - 2 of 4 criteria:
・fever 100.4 degrees F (38 degrees C) or greater
・new flank or suprapubic pain or tenderness
・change in character of urine
・worsening of mental or functional status
 
つまり、カテーテル内の尿が濁ってくる人は多いですが、それで1項目にカウントできる。

そういう人が精神・身体機能低下や下腹部痛、発熱のどれかがあればいいので、「カテ内尿の混濁+急変兆候(食思不振、意欲低下・拒否、傾眠など)」があれば尿路感染症をこの段階で強く疑うという、最近自分なりに考えてやっていた急変徴候の活用の仕方のウラがとれた気がしました。

ここが、今回いろいろ調べてみて一番参考になりました。
元論文は91年の論文みたいですね。
きちんと元論文読み込んで見たいと思います。



最後は、同じくDynamedの「Catheter-associated urinary tract infection (CAUTI)」、Preventionのところ。

短期間だけ、不適切な挿入はしない、清潔に入れるなどの常識の他に、
・コンドームカテーテルはあまり効果なし、
・間欠的なバルーン留置は発症率は変えないけど膀胱機能改善が速いので早期に抜去できるかもしれない、
・膀胱瘻は尿道カテーテルよりマシかもしれない。
など。

たしかに、間欠的導尿にしてバルーン離脱出来た人はその後経過良いこともおおく、できる限りチャレンジします(実際にチャレンジするのは看護師さんや家族、そして患者さんで自分は「やろうぜ!」って言うだけなので、実際の実行可能性は環境にかなり依存しますが、うまく行けばいい感じ)


あと、カテーテルが長期入れっぱなしの人の抗菌薬予防投与は、現時点では答えはない!という結論のようです。
inconsistent and limited evidence for prophylactic antibiotics for patients with long-term urinary catheters

逆に考えれば、「長期入れっぱなしの人の抗菌薬は確実に無効で有害と言い切れる根拠もない」ということかもしれません。

===================================
 
こんなかんじでした。




今回の学びは

・「無症候」ならやっぱり普通は抗菌薬は使わない

・「カテーテル」が入っていれば、常識的な「カテーテルの適正使用」が重要で、できるだけ早期抜去を目指す

・在宅で、カテーテル入れっぱなしのレベルの高齢者に大量のクランベリージュースを飲ませ続けるのはなかなか難しいけど、家族や介護職が学んでエストロゲン膣錠を週2回投与できたら(もしくはそういう試みをしてみてかつデータ取って発表したら)いい感じかもしれない。

・意外とわかっていない部分もあり研究のネタになるかもしれないし、海外で言われているエビデンスを日本のごちゃごちゃした現場でどれくらい再現できるかを見てみても面白いかもしれない。

・急変兆候は、肺炎察知だけでなく、カテーテル関連尿路感染症(CAUTI、カウチって呼ぶ人もいるらしいです)の早期診断に有用。これをネタにして研究できないか(RCTは倫理的に難しいしちょっと厳しいか)


あたりでした。



 

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「老年リハ:Geriatric Rehabilitation」という概念があるんですね。これ、「総合医のリハ」と相性良いというかドンピシャな気がします!!

昨年度うちで家庭医療後期研修を1年して、現在東京の家庭医療診療所で外部研修している後期研修医が1名いて、月に1回Googleハングアウトで目標到達度の振り返りやプロジェクト学習の相談などをしています。

その中で、「Geriatric Rehabilitationというのがあるらしく、それにそって患者のリハをまとめてみたら?」と指導医から言われたらしく、「そんなドンピシャな名前の物があるのか!」と一人高まっていました。 

研修医を抱え込まずに「育てたら出す」形式で、でも出した後も関わりを継続することのメリットの一つですね、こういうの(もちろんダイレクトな見返りナシでもいいくらいいろんな副次的効果があるんですが、こういう見返りはやる気が上がりますね)。




で、とりあえず簡単にネットで検索してみました。老年リハ。


Googleで「老年リハ」で検索しちゃうと、個々の病院や個人が提唱する概念など玉石混交で出てきてしまってイマイチな感じ。

他のジャンルでも「英語だと定義がしっかりしていて検索でもそれに合致するものばかりでるのに、日本語訳にするととたんにめちゃくちゃ」な現象はよく経験しますけど、なんで日本人って言葉の定義適当なままで名前つけちゃうんですかね。


で次は「Geriatric Rehabilitation」でグーグル検索してみたら、やっぱりいい感じです。

Geriatric Rehabilitationに関する大学での研究、独立した書籍、研究結果などが出てきました。


とりあえず、すごく簡単にまとまっていたWikipediaのページをみると、こういうことらしいです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Geriatric_rehabilitation

Geriatric rehabilitation covers three areas – normal aging due to disuse and deconditioning, cardiovascular problems like vascular disease and stroke, and skeletal problems including osteoporosis and osteoarthritis conditions such as knee and hip replacements. 

老年リハは3つの領域をカバーしている。
1.廃用やデコンディショニングなどによる正常の加齢変化 
2.血管疾患や脳卒中のような心血管疾患
3.骨粗鬆症や膝・股関節置換も含めた変形性関節症のような骨格系疾患


うん、わかりやすいですね。

精神・神経系の問題(認知症、抑うつ、意欲障害など)や、急性疾患による廃用症候群なども重要な問題だと思いますけど、そこはあえて突っ込まずに。

その後の説明を読んでみると、栄養障害とか抑うつ・認知症やADLのことにも触れています。


要は、CGA(高齢者総合機能評価)でよく引っかかるような老年期諸問題に特化したリハビリ領域ってことみたいですね。

External links(外部リンク)のところでは米国老年医学会(American Geriatrics Society)があるので、リハビリ関連ではなく老年医学関連で検索するといい感じのが引っかかりそうです。




その他、UpToDateにも「Overview of geriatric rehabilitation: Program components and settings for rehabilitation」という解説のページもありますね。


ちょっと読みきれないくらい面白そうなwebページ、PDFファイル、PPTスライドデータなどが出てきたので、今日はここでいったん止めますが、次に関心持った時には一気に勉強してみようかなと思います。



ふふふ、いいこと知ったわ・・・( ̄ー ̄)ニヤリ





 

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「認知症ステージアプローチ入門」読みました。家庭医志望者には必須テキストだと思います!!

少し前にSNSでお薦めらしいことを知ってとりあえずアマゾンでぽちっとしておいた本ですが、ようやく読めました。






「入門」とはあるけども、かなり実践的で後期研修医レベルのニーズにも十分応えられると思います。
 


認知症全般に渡る診断や治療について、早期から終末期までのステージに分けて具体的に記載してあります。

教科書的に「こういう時はこうすればよい」という記載にとどまらず、在宅やプライマリケアの現場では実際はこれこれこうしてとか、一般的にはこれがファーストチョイスだけどそれでダメならこれとかこれとか・・・という記載が多く、筆者の幅広い圧倒的な実戦経験とエビデンスを踏まえた奥深い知識を伺わせる分厚い記載でした。


こういう状況で起こりうる合併症や急変はどんなものがどれくらいあるのかを文献ベースで整然と記載してあったり、予後予測や重症度の把握などに必要なツールも複数提示した上で使い分け方の実際まで触れてあってとても良かったです。


薬物療法一辺倒ではない介入、単に診断基準を満たすだけでなく今後のケアに活かすための診断など、認知症患者や家族、それに関わる医療者・介護者のためになる視点の記載が多くて、態度面の学習素材としても優秀でした。

診療所家庭医志望者はわりとほっといても認知症の勉強するんですが、大病院の総合内科志望者は(診断・治療の阻害因子として関わることはあっても)初期診断や終末期までの粘り強い対応で悩むことが少ないせいか、「認知症患者です」で終わってしまって詳細な原因や進行度や合併症の分類とそれに合わせた治療の最適化への学習意欲が若干弱い印象があったんですが、これくらいきちんと説得力のある教育ができればまただいぶ違うのかなと思いました。

自分の「認知症診療の重要さ」の教え方の甘さを自覚できたということも大きな発見でした。



文量としてはそれなりにありますが、読みこなせない量ではないことも嬉しかったです。

自分の場合、関心がちょうど高かった時期に時間がとれたこともあり、流し読み中心に面白い章は精読もしながらで全体で2時間位かかりました。

通読することで全体に流れる哲学を感じ取れたり、繰り返し強調されることから重要なポイントを感じることができるので、どこかで機会を持てれば通読をおすすめしたいなと思えたテキストです。

ですが、今困っているところだけ読んでその場をしのぎ、また後日別のことで困ったら該当するページを読み足してという形での利用もできる形式になっているので、そういう読み方であればそんなに負担もないでしょう。

 

というわけで、すんごくオススメですので家庭医療後期研修医なら一人一冊、そうでなくても研修プログラムに一冊はあってもいいんじゃないの?と思いました。

おすすめです。 

 

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週に30分の「一人ジャーナルクラブ」-認知症高齢者の無症候性(?)細菌尿の扱い

かなり忙しい毎日が続いていて、予想通り11月に入ってから「一人ジャーナルクラブ」ができなくなっていました。

 

が、「忙しくても、週に30分でもいいから、細く長く続けたい!」という基本コンセプトのため、無理やり時間をひねり出してやってみました。


 


お題は


P:認知症があって頻尿などの尿路刺激症状を訴えることのできない、主に施設入所か入院中の高齢者における”発熱を伴わない細菌尿”に対して


E:どのような介入をすると


C:経過観察をした場合に比べて


O:どのような有害事象が防げるのか?


でした。



 

「無症候性細菌尿は、尿路処置前や妊婦以外ではスルーが基本」ということは重々承知しています。

しかし、それを踏まえた後期研修医から「入院中の認知症患者がなんとなく調子が悪くなってきていて、それと並行して出てきた無症候性の最近尿があり、これは本当に悪さをしていないんでしょうか?」という質問がありました。

 
 

この質問はなかなかよくって、ポイントは二つあるかなーとおもいました。
 

1.症状を訴えられない認知症高齢者における「無症候性」細菌尿というのはどこまでのことを指すのか?


ガイドライン等では「無症候性か否か」で対応を大きく分けています。

しかし、この「無症候性である」という判断が、自覚症状を正確に表現できず痛みや痒みすらあやふやな(自分では大丈夫といってるけど無意識に体かきむしってたりすることはよくある)高齢者ではどうすればいいのかがよくわからない。

 
 

2.無症候性細菌尿が入院後などに新規に出てきて、かつ徐々に食欲が落ちてきたなど微妙な症状があるようなないような場合、近いうちに有熱性の尿路感染症(腎盂腎炎など)を合併しやすいと予測しうるのか?


最近、私自身が勉強して研修医や看護師にも伝えている「急変兆候」として、食思不振を重視しています。
啓蒙活動もしてきたので、急変兆候対する研修医や看護スタッフの感度もかなり高まっていますが、これを無症候性細菌尿からの腎盂腎炎の予測に使えるのか。もっというと、疑わしければ罰するという形で抗菌薬を使ってもいいものか?

 



ここからは私見なんですが・・・

高齢者の呼吸器のトラブル
の代表として「不顕性誤嚥があり、たまに熱を出すが画像上肺炎所見のないDABDiffuse aspiration bronchiolitis、びまん性誤嚥性細気管支炎)という病態もあります。

このDABの段階では抗菌薬は不要だが、嚥下障害への対応を行わないとそのうち立派な肺炎を起こすという流れがあります。


これの
尿路版として、「無症候性細菌尿」+αとして不活発さや食思不振があった場合、DAB的な病態(不顕性排尿障害性膀胱炎=Subclinical dysuria cystitis:SDCみたいな?)病態があるのではないか?

そして、これを放置すると腎盂腎炎を起こして生命予後悪化やリハビリの経過不良につながるみたいなデータが有れば対応が変わってくるんでないかと前から思っていました。


もしこの仮説が正しければ、もともと無症候性細菌尿には
抗菌薬は投与すべきではないというエビデンス(主に若年者から得られた根拠のようですが)と、DABの考え方である「抗菌薬云々よりその原因となる機序嚥下障害への直接介入が必要である」というスタンスを流用して、SDCがあったら、抗菌薬をとりあえず使うのはナシというのは大事だけど、さらに一歩踏み込んで徹底的な排尿機能評価と訓練や治療を行うべし!そうすると高齢者が元気に長く自宅で自立した生活が続けられるぞ!」みたいになったらいいなーと思っていました。

 
 

そんなところに研修医からの質問があり、「一人ジャーナルクラブ」が滞っているという事情もあったため、「おし、じゃやってみますか!」と思い立ってみました。

 


================================== 

まずは、Background question(既知の問題)として、どのへんまで答えが出ているかを調べました。

 
 

参照先は以下の3つ

1.成人の無症候性細菌尿の診断と治療に関するIDSAガイドライン

Infectious Disease Society of America Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Asymptomatic Bacteruria in Adults. CID 2005: 40, Mar 1)


2.
DynamedAsymptomatic bacteriuria


3.
UpToDateApproach to the adult with asymptomatic bacteriuria

 


いずれも過去に読んだことはあり、おそらくジェネラリストの皆さんも知っていると思いますが、あえて今回の疑問に関連しそうなポイントだけざっと抜き出してみます。

 

短期的な有害事象

・無症候性細菌尿がある場合、検査後の一週間で症候性のUTIを起こす頻度が高い。(8% V.S. 1%)

・細菌尿出現後1月の間はUTI発症のリスクが高い。

 

リスクファクター

脊髄損傷、尿路カテーテル挿入、尿管ステント留置、血液透析患者、慢性神経疾患患者

 

合併症

症候性の尿路感染症のリスクは増えるが自然に改善することが多い。

膿尿も合併しやすいが感染症成立で治療適応という判断には使えない。

 

予後

妊婦や尿路の処置を受ける患者では治療したほうが良い。

糖尿病患者も、Urosepsisによる入院のリスクになる。

それ以外では、長期的には予後に影響なし(高血圧、慢性腎臓病、泌尿生殖器癌、死亡

率など)。

 

スクリーニング

妊婦とTURPなど泌尿器科処置を受ける患者では勧められる

臓器移植患者や閉経前・非妊娠女性や糖尿病女性(ヨーロッパのガイドラインでは閉経後女性や健康な男性も明記)、施設入所高齢者や市中在住高齢者、脊損患者やカテーテル挿入患者(腎瘻チューブや尿管ステント患者も)では勧められないカンジダ尿や好中球減少症でも不要。

細菌尿のリスクはある人でもスクリーニング対象にならないということは、治療のメリットが無いためですかね。

 

以上から、

無症候性細菌尿が有症候性細菌尿になる可能性は若干高いことは分かった。

あとはこれが、虚弱または認知症高齢者における不穏や低活動の原因となりうるかどうかというか、こういう微妙な症状をもって「有症候」とすべきかどうかは不明。


 

UpToDate一番近そうな記述を探すとこんな感じ。


施設入所中の高齢者に対するスクリーニングに関する項目から
 

女性の半分、男性の14-40%で無症候性細菌尿が見られるが、抗菌薬治療はベネフィットが示されていない。

尿失禁と細菌尿の見られる施設入所者191名で

すぐに治療する群
と経過を見て判断する群にわけたRCTにおいて、

早期の治療は短期的にも尿失禁の重症度を
改善せず、

細菌尿は再発する傾向にあり、しかも耐性菌が生えやすかった。

尿失禁の改善という意味でも勧められない(泌尿器科紹介するととりあえずで抗菌薬出ることは多いが)。


尿失禁はないが、何らかの不快感で不穏等になるかどうかやそれが改善するかの研究
はなさそうだ。


→また、抗菌薬の早期投与の有用性についてだけの記述であり、一番知りたい排尿障害そのものに対する治療に関する評価ではないので惜しい感じです。

 

 
 

ここまでで、Backgroundとしての答えは出ていないと判断しました。

 

Foreground questionとして、次にPubmedで原著論文を探してみました。


 

今回はClinical queriesは使わず、普通にトップページから検索してみました。


"asymptomatic bacteriuria"
で検索して3桁


Elderly
を足して2桁


delirium
まで足したところで2個だけヒットしました


 

タイトルがよりそれっぽく新しいこの論文のアブストラクトを読むことにしました。

Urinary tract infections in the elderly population.

Matthews SJ, Lancaster JW. Am J Geriatr Pharmacother. 2011 Oct;9(5):286-309. doi: 

10.1016/j.amjopharm.2011.07.002. Epub 2011 Aug 12. Review.


  ↓

アブストラクトからわかった内容の大雑把なまとめ


2011年に出版されたレビューで、英語に限定して複数のデータベースから論文を抽出したようだが、RCT限定可など採用条件は読み取れず。
 

市中か施設・入院かで無症候性細菌尿の頻度が異なることや、自立した人では古典的な尿路症状を呈するが、自立していない(障害のある・虚弱な)高齢者では非典型的な症状として、活気低下(Lethargy)、せん妄、鈍い発熱反応(Blunted fever response、高齢者でよくあるちょろっと熱がでるけど大したことなさそうなアレのことか)、食思不振などの臨床像を取る」ことがある(まさにこれ!!)


いくつかの、高齢者のUTIマネジメントに関するガイドラインはあるが、治療の推奨は若
年者層に対するものを流用している(そうそう、そうなんですよ、困ったことに)


治療する場合は疾患の重症度や生活状況、併存疾患やデバイスの産む、地域の耐性状況、患者の治療を遂行する能力などの特別の注意が必要となる
(このあたりは訪問診療や高齢者の総合診療をしている人にとっては常識ですが、そこについて触れている論文というのは貴重かも!)

 

ということで、読むに値する論文と判断しましたが、契約している大学図書館経由でも、全文は手に入らず

 

================================== 

 

ここまでとしました



所要時間は、細切れのスキマ時間使いながらですが、トータルでは40分程度で以上の作業+このブログ記事の作成を終えました。


なかなかスピーディーになってきましたよ
( ̄ー ̄)ニヤリ

 




 

今後は、もう少し検索ワード変えて別の論文探してみたり、ほかの手をつくして上記の論文を手に入れて本文の批判的吟味してみたいですが、まだ答えが出ていないようであればClinical questionではなく良質な「Reseach question」になりそうなので、今後の研究ネタとしてちょっと考えてみようかなと思います。


うちの病院のセッティングでもできるし、法人の関連診療所で多施設合同でもできそうですし・・・( ̄ー ̄)ニヤリ

 

 

 

 



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久しぶりに訪問診療に行ったらいろいろと新鮮でした。電子カルテ化の影響や、自身の視点の変化とか

先日、ひさーしぶりに訪問診療に行ってきました。


後期研修中も、この病院に赴任してきた当初もやっていましたが、昨年春に後期研修医に譲って以来一年半ぶりになります。

院内の臨床業務や教育業務の手が回らず週に半日病院から離れるだけでも致命的に業務が圧迫されることや、家庭医療後期研修プログラムの後期研修医が徐々に増えてきて担当できる頭数が増えてきたことなどあって離れていました。


しかし、今は外来・訪問に関われる医師の数が急に減り(病欠や異動、助勤など)、一方で自分の業務にはかなり余裕が出来てきたため訪問診療に出ることになりました。


なんで余裕があるのかというと、管理を頑張ったからだと思っています。

今年度になって後期研修医が増えたため、自分自身は外来や病棟の負荷を減らして、その分研修指導と管理業務に時間を割くことで医師の関わる業務の効率化を行いました。 

今までだったら新しい仕事に手を付けた結果徐々に仕事が増えてだんだんクビが回らなくなっていくのが定例でしたが、「臨床・教育」と違って「管理」業務は自分の工夫次第でものすごく効率化できるんですね。

今年の4月・5月はものすごく集中して頑張ってやっても毎日残業で時間足りなかったですが、今は半分くらいの時間で春よりも大きな効果を生み出せるようになっています。 

 
話がそれましたが、そんな背景があり、やっと往診に出られるようになりました。

この2年間ほど、リハビリや栄養を勉強し、病棟患者のデータ収集や研修指導で老年医学の理解も深まったので、本当だったらこういった知識や経験を活かせる在宅に行きたいな-とは思っていました。

が、上記のような事情があって出られなかったので、研修医を指導することで間接的な貢献をすることにしていましたが、やっと解禁されました。

少しずつ業務に慣れていき感覚取り戻してきたら、いろいろ手を付けてみたいとおもいます。



しかし、たった1年半の間にいろいろかわりましたね。


当時見ていた患者の一部はいなくなり(理由は様々でしょうが)、一方でお会いしたことのない新人さんがちらほら出てきています。

今までは長くて1年しか同じ職場での訪問診療には関わっていなかったので、こうやって年単位で時間が経つとこういう風に変わってくるんだな-ということを初めて体験できています。
 
外来では年単位の変化を経験し、それを踏まえて今見ている患者さんの先を見通しながら関われるようになってきていましたが、これと同じような感覚を在宅でも使えるようになりそうです。


あとは、自分自身の視点が結構変わっていて新鮮な驚きでした。

以前も老年医学などは勉強して意識していましたが、リハビリの勉強をした後だとここまで見えてくるものが違うのかという驚きがデカイです。

患者の声や呼吸、薬やお茶を飲む仕草、立ったり座ったり歩くときの様子、廊下や壁の様子や、杖・歩行器などの補助具の種類や使っている様子などから無数の情報が飛び込んできます。

今までだと時間効率も意識してテンポよく進めて大事な相談に時間を割けるようにしていましたが、お話し聞いたり仕草を観察するだけでいくらでも楽しめてしまうので時間かかりまくってしまいました。

これをどうやって年間計画で、しかも複数の医師が関わる中で(当院は臨時往診に備えて、主治医を固定せずに複数の医師が担当する形式になっているので)、継続性をもって進めていくかは新たな課題ですね。

カンファや会議への参加は必須だとおもうので、そのための体制調整が必要そうです。


また、以前はまだ紙カルテだったので複写式の紙に丸つけたり短く文章書いて、複写した紙を患者・家族に渡してくる形でした。

しかし、今は外来と同じく電子カルテに変わっていました。

ノートパソコン+無線でのデータ通信のため、かなりもっさりした動きです。また座ってノートパソコンを置いたままでないと記入できないので、立ち話しながらメモしたり、狭くて足の踏み場もない家での診察には支障が出そうです。

また、目線と姿勢がどうしてもパソコンを向いてしまうため、カルテ記載をしながらも気持ちと目線は患者にやって観察を続ける事もできません。

タブレットで入力を手軽にしたり、オフラインにして往診に行く患者のデータだけ事前に取り込む+SSDのパソコンで動作を早くしたりといったハード面の工夫をしたいところですが、他の医師の使い勝手や予算のこともからむのですぐは難しいでしょう。

とりあえずは、今日担当した患者の今日の所見や過去のカルテ記載をみながら、老年医学やリハビリ・栄養の視点も考慮してた毎回のルーチン観察項目を決めてテンプレートを登録することにしました。 

これなら他の人に迷惑かからず、お金もかからず、毎回少しずつ試行錯誤することでブラッシュアップできるし、一定のレベルになったら研修医の教育の型にも使えそうです。


 
自分の成長や好奇心を満たすために、次々新しい経験をするのが好きなんですが、昔やっていたことに久しぶりに取り組むことも発見が多く刺激的なんだなーと言う発見をした、貴重な時間でした。

来年度には研修医と組んで何かしらの質改善プロジェクトやってみたいな-。

 

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認知症になったときの延命治療などの落とし所。医者だけでは決められないもので

Facebookで、映画「半落ち」の話がでていました。



そのレスで「 自分がアルツハイマーになったら死なせて欲しいと思う。自分の親がアルツハイマーになったら生きてて欲しいと思う。  勝手なもんだわね。」というコメントがあり、「う~む」と唸ってしまいました。

難しいですよね。

普段の業務で認知症で帰る家もなくて・・・という方を日常的に見ている私達の感覚は、非医療者とはまた違うかもしれません。

どっちにしても「こうしたら正解ですよ。だって教科書に書いてありますから」という問題ではなく、かといって「話しあえば必ず解決する」というたぐいの問題でもなく、モヤモヤの発生源になりがちです。



とりあえず自分が書き込んだコメントは

「うちは、自分の親がぼけたらすんなり死なせてあげる約束してます。

介護されて生きることすら嫌だそうですが、殺すわけにもいかんのでせめて延命の選択しはかわりに拒否してあげることで合意してます。

だからって患者家族に自分ちの価値観を押し付けないようには気を使いますけど」

という内容です。

倫理的にとか、医者として、とかいろいろ物議を醸し出しそうかもしれませんが、そういうのは置いといて、うちの親と自分とではこういうことになっているのです(自分が医者になる前から)。

「そんなもんかな。確かに自分も長生き自体にはこだわりないな」と思ってましたし、「まあ、この親だったらババアになっても意見は変わらんだろうし、少しでも意識や判断能力が残っている状態で自分が延命治療に同意したらすげー睨まれそうだ」とも思ったもんです。



したら「ボケた時の延命拒否って、なんだか幅が広そうですね。」というレスが。

そうなんですよね。幅広いのです。

人工呼吸器の電源を勝手に切るなんて激しいものもあれば(やっちゃだめですよ)、効果の見込めない点滴や合併症の不利益が明らかに上回る処置はしないというDo No Harmなものもあります。 

どうやって、この幅広いグレーゾーンのうち、どのへんを落とし所にするかがモヤモヤ源ですね。



で、私のコメントがこれ。
前半を書いているうちにいろいろ頭の中に発生して、気がついたら随分真面目な話になってました。 

「長年どうでもいい愚痴とか、テレビ見ながらのつぶやきとかを通して価値観を知っている家族だからこそ見きれる気がしますし、程々の医学的な知識とたくさん看取ってきた経験があるからこそ具体的な落とし所が言える気がします。
 
その人に詳しい家族と、病気や死に詳しい医者。

どちらかだけだとこの幅広い選択は難しいので、患者・家族と医療者での相談が必要なんですね~。

たまに見かける「医者の方針を一方的に説明してゴリ押しで納得させる」形式のICや、逆に「家族の心情に巻き込まれて一緒にフィーバーしてしまっている医療者の混乱したカンファ」ではうまくいかないのも納得・・・。

独り身や配偶者が頼りにならない場合は子供が、完全に身内がいなければ親友がいないと、おちおちぼけてられないなーと思います。

でも、自分が死ぬ頃に信頼出来る人が回りにいるかわからないので「こいつになら最後を任せて大丈夫だろう」と思える後輩医師を育てるのが私の医学教育の目的だったりします(以前お世話になった指導医の受け売りですが)。」

みたいな。



そんな考え方を持っているので、むしろ「家族の意向と医者の考えの調整に集中し過ぎてこの患者自身の生き様を忘れてないか?」とか、「どんな手を使ってたとえ見苦しかろうが全財産をつぎ込もうが一秒でも長生きしたい」という考え方の人に対して心の底で反感を抱いていないかなどについては常に自覚的にありたいと思います。

医療のプロとして客観的な情報や選択肢の提示だけでなく、主治医としてのオススメもきちっと提示して患者・家族の決断のサポートをすることは大事ですが、どうしても情報量・経験量の点ではこちらが優位にたってしまうので、自分の価値観を無意識に押し付けないようにはかなり気をつけています。

初期研修医のころはそもそも死生観とか全然もてなかったので、押し付けるような価値観もなく、今思えば気楽にお話できていたなーと思います。

価値観を持つことは自分を強くするが、同時に危うくもしますね。




長くなりましたが、まとめます。

「人は一人では生きられない」とはよく聞きますが、「人は一人だと死ぬ間際ですらおちおち眠っていられない」のかもしれない。

あなたの隣にいる人を大事にしましょう。そして自分の考えは言葉にして伝え、出来れば文字にして残しておくといいかもしれません。
 
 

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プロフィール

けんた

家庭医療をベースに病院で働く「病院家庭医」なるものを目指して爆進中です。
病名や年齢にかかわらずどんな人の悩みにも対応できる診療能力を身につけることを目指して、北海道各地の病院で初期・後期研修を受けました。

総合内科を中心に研修を開始し、途中から家庭医療学や医学教育学、臨床研究などに興味を持ちながら学習し、2011年に家庭医療専門医を取得しました。
現在は札幌市内の小規模病院で、家庭医療学をベースにした病院総合診療を行ったり研修医・学生・多職種の教育に関わったりしながら、プライマリケア医のためのリハビリテーションフェローシップに参加し学び続けています。

将来は病院をベースにしながらも病院内だけにとどまらず、各医療機関の連携、さらには教育、政治・行政、娯楽などを含めた広い意味での地域共同体を作っていく橋渡しをして、健康に楽しく暮らせる街づくりに貢献できたら面白いなと思っています。

日々の研修での気付きをつづりながら、何か大きな発見が得られないか、blogを通して模索中。

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