■検証なくしては「公約倒れ」(毎日040918)
●マニフェスト選挙は昨年の総選挙、さらには先の参院選ですっかり国民の間に定着した。だが、マニフェストの真価が問われるのは選挙後だ。実行過程、進ちょく状況などを検証し、その結果を選挙民に公開しなくては、「公約倒れ」に終わってしまう。
●昨年の統一地方選で、マニフェスト知事選を提唱した北川正恭・早大マニフェスト研究所長(前三重県知事)の呼びかけでこのほど、公開検証大会が開かれた。(略)
●5人のうち、唯一現職で知事選に臨んだ増田氏のスローガンは「岩手をこう変えます」。具体的目標値としては「2年で1万5000人の新規雇用」「公共事業3割削減」などを打ち出した。「『当選のための選挙ツール』よりも『当選後のマネジメントサイクルのルーツ』としての評価が強い」「地方分権時代のローカル・マニフェストの先駆モデル」と高い評価も受けた。
●一方、上田知事はマニフェストを「政治宣言」と位置付け、目標値達成に向け「掛け声と気合」で取り組んでいる。これが「体系化されていない」と受け止められ、評価を下げた。
●5知事とも「従来の総合計画とマニフェストの整合性を保つことは難しい」と口にする。また、「三位一体改革」で、マニフェストを実現するための財源見通しが立ちにくい実態も、異口同音に指摘された。県議会との関係に腐心する声も聞かれた。マニフェスト選挙が進展すると、「総与党化」でチェック機能を失った県議会では、その存在意義が問われよう。
●地方分権の促進と衆院小選挙区制の導入により、地方における知事の政治力は相対的に増している。三位一体の改革では、小泉純一郎首相から事実上、丸投げされた形の3兆2000億円の補助金削減案を全国知事会など地方6団体としてまとめ上げた。国政と地方政治の関係は、旧来のタテではなく対等に転換しつつあると考えるべきだろう。
●選ばれる側と選ぶ側の国民との関係も、マニフェスト選挙の浸透で、大きく変わろうとしている。来春の市町村合併に伴う首長選挙では「マニフェスト選挙」を大々的に展開するとともに、マニフェストを選挙戦でも自由に配布できるよう公選法を改めることを北川所長らは提唱している。まったく同感だ。
●国政も元気な地方政治に大いに学ぶべきだ。野党は十分に政策担当能力が担保されたマニフェスト作りに一層励んでほしい。政権与党は選挙時に掲げた「マニフェスト」を検証する機関を設け、随時その結果を公開すべきだ。
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