【完結】異世界の片隅でやれやれと呟く

第一話はこちらです。


「べ、べつにチートのためにスキル使ったんじゃないのでござるからな!」

「あたしだって、チートのために回復魔法使ったわけじゃないんだから!
 単に利害の一致だから!
 チートが無いあたしにはチートの存在が大きいとかそんな変なふうに考えないでよ!」
 二人の女子から、「~のために~たんじゃないんだから!(恥じらいを含みつつ)」発言を引き出した。

 これはもう、ハーレム主人公として本望である。



◆◇◆◇◆◇



 時は今日の朝に巻き戻る。

 何の脈絡も無く、

「さて、じゃあそろそろ出発しましょうか?
 王様に挨拶して。お小遣い貰って。現金は多少持ってるけど、この世界じゃあ両替手数料が高くてもったいないのよね。
 薬天カードも使えない店が多いし」

 ってなもんの武藤さん。
 武藤さんの持つ多少の現金の出所は知らない。知りたくもない。

「拙者も是非連れていくのでござる。
 我がチート《魔剣吉宗》は、必ずや、勇者の力となるでござろう」

 今さらながらに将軍が、武藤さんのパーティに加わった。
 今まではうやむやにしていたのだ。

 お姫様がさらわれるという事案が発生してからはや数日。
 絶対お前ら、リアルで知り合いだろう? としか思えない仲睦まじい武藤さんと将軍は、城の中を探検したり、買い物――と言っても、この世界の貨幣も紙幣も持っていないので、手ごろな店を見つけては、勇者だと名乗って物品をせしめる行為――をしたり。

 こじゃれた店で食事をしたり。(これも、本来であれば無銭飲食であるが、先の買い物に比べればまだ許される行為。店の前で突っ立つのだ。美味しそうだね。とか食べたいねとか、でもお金ないよねとか呟きながら。それで見かねた店の人か通りすがりの人間にただで飯を食わせて貰う)

 とにかく、城を満喫していた。
 この城は、周りには草ッ原しかないことも踏まえ、内部にいろいろな施設がある。
 大浴場だったり、お店だったり、レストランだったり、スポーツジムだったり。
 カジノは封鎖され、物置と化しているのが残念なところではあったが。

 大きくてゴージャスな海外のホテルのような雰囲気なのである。

 以上、全ては伝聞である。
 俺は、城の人間に出会うとチートだチートだと後ろ指をさされるので、王様の部屋で引きこもっていた。

 そんな生活に飽きたのか、それとも自分に課せられた使命を思い出したのか。
 武藤さんは突如言い放ったのだ。

「さて、じゃあそろそろ出発しましょうか?」

 と。それすなわち、冒険の始まりである。



★★■■■ 第七話 魂の価値 ■■■★★



「じゃあ、王様、行ってくるわ!
 だけど、忘れないでね。
 次に来る時までにもうちょっと……、ううん、装備はいいわ。
 この制服気に入ってるから。制服が好きだからこの学校に決めたようなもんだし。
 武器も将軍の魔剣があるし。
 でも、こんなはした金じゃ世界は救えない。
 誠意が足りないわよね?
 ドューユーアンダスタン?」

「あ、I see.」

 王様がくれた某ヒノキの棒三本を突き返し、旅の支度として渡された100Gでは足らないと値上げ交渉し。
 国庫(国の貯金箱)まで案内させて、前年度の国の会計報告書を取り寄せてしかも、国の存続には必要ない余剰金の額を一瞬で見抜き、その半額をせしめて巨額の富を得た武藤さんだったが、それでも誠意が足りないと言いだした。

 まあこの辺は端折ろう。



 とにかく、俺達はついに冒険を始めることになった。
 マップも手に入れているが、これは行ったところのある所しか表示されないという形式のマップである。
 どういう仕組みかわからない。見た目にはごく普通のざら半紙(地域によってはわらばんし?)ではある。
 そもそも、他の人間はちゃんとした地図を持ってるんだからそれを寄越せよとも思わないではないが、まあ雰囲気づくりの一環か。

「これは勇者様と将軍様。おでかけですか?」

 城の門番に声を掛けれた。この城に初めて来たときに出会ったのとは違う人である。

「ええ、旅立ちの時なのよ。で、さっそくだけどどっちに行けばいいのかわからないから教えてくれる?」

「なるほど……」

 と門番は咳払いをする。かしこまった表情で、

「この城を出て、真っ直ぐ北に行ったところに小さな村があります」

 と言った。目的地は決まった。

 さっそく北へ向かう。どっちが北なのか見当もつかないが武藤さんが進む方向が北なのだろう。
 そういえば、東の洞窟に向った方向と直角に交わる方角である。だいたい合ってる。



「あっ、あれ!」

 武藤さんの指さす方向。

「風物詩でござるな」

 将軍が風物詩と呼んだのはとりたてて特徴のない一匹のスライムだった。
 確かに異世界の風物詩と言えるかも知れない。統計を取ったわけではないが、VRMMOでもファンタジー系の異世界ものでも高確率で登場するモンスターだろう。
 いや、今の場合主人公ツエ―が蔓延しているから、こういった雑魚キャラは逆に登場しないのか? よくわからない。

「まあ、あたしも将軍もこんな雑魚を倒して得られる経験値なんて、たかが知れてるし。
 チート、相手をしてあげなさい」

 武藤さんは討伐権限を俺に譲ってくれるが、俺のステータスは最弱だ。聞くところによると赤子よりも弱いと言う。

 だが、これは俺のチートを確かめるチャンスだ。
 俺には力がある。スキルもないし、脆弱なステータスだが、神から与えられたチートがある。

 勝てるはずだ。

「いまこそ! 俺の真の力を!! 発揮する時!!
 いくぜ! 唸れ! ビート!! 突きぬけろ!! テンション!!
 我が最大の奥義!!
 えっと……?」

 武藤さんが掲げられたカンペ(バラエティでADとかが出演者に向けて出すあれである)はそこで途切れていた。

 武藤さんはスケッチブックの次のページを捲り、マジックで書き始める。

『あとはアドリブでよろしく』

 とのことだ。

 何も浮かばない。
 やりたくなかったが仕方ない。KAKUGOを決める。

「俺が考えた最強のパンチ《ゴッドブロー》!!」

 俺はスライムに殴りかかった。スライムはひらりと身をかわした。

「俺が考えた最強のパンチの向こう側の攻撃!!
 その名も、アルティメットゴッドブロー!!」

 初撃の俺が考えた最強のパンチ《ゴッドブロー》は威力を考えてアッパー気味に繰り出したから、躱されたのだ。

 アルティメットゴッドブローは、命中力優先。ジャブに近い軌道を描く。
 さすがのスライムも、これには対応できない。

 スライムの顎に的確にヒットする。
 だが、スライムにダメージを与えれた様子はない。

 その後も、デラックスゴッドブローや、ウルティマイトゴッドブローなど、思いつく限りのゴッドブローを放つも、スライムは倒せない。
 さすがに反撃される。敏捷性ステータスも防御力も低い俺はそれだけで死にかけた。

「チートがピンチだわ。勇者として、チートの命を救うために。
 魔力がもったいないけど、完全回復呪文(メチャナオール)!!」

 武藤さんの唱えたメチャナオールによって、オーバーキルならぬ、オーバーリカバーする俺。

 体力ゲージが全快するが、状況は好転しない。
 このまま続けても同じことの繰り返しだろう。

「あきらめるの! 同じこの繰り返しだってなんでわかるの!
 やってみなければわからないでしょうが!!」

 武藤さんの熱い応援を受けて、俺は再度拳を握り固めた。

 結果として同じことの繰り返しだった。

「もうむり! 武藤さんか、将軍で片づけてくれよ!!」

 人間諦めも肝心だ。

 やれやれと言った風情で将軍がスライムに歩み寄る。

「我が、チートを受けてみるでござる」

 魔剣ヨシムネを正眼に構える将軍。

「へあ!!」

 蒟蒻以外はなんでも切り裂くという魔剣は……スライムを斬ることは敵わなかった。

「ま、まさか……、拙者の魔剣が通じないとは……」

「そういえば聞いたことがあるわ。いえ、文献で読んだことが。
 たしか……、民明書房から出てた……。
 異世界のスライムは蒟蒻で出来ている。
 つまり、このスライムこそが、将軍の唯一の難敵!!!!
 相性が最悪だわ!!」

「勇者殿、心配はご無用。
 そんな時のためのスキルでござる!!

 いざ!!
 制御シーケンス解放、異空間アクセス承認。
 第一から第六まで、亜空間ロック解除!!」

 キャラに合わないことを叫びだす将軍。

 スライムから距離を取り、剣を構えなおす。峰打ちに。
 将軍が駆ける。スライムとの距離を一気に詰める。
 そして袈裟懸けに切り捨てる。
 だが、スライムにダメージを与えた気配はない。
 ここからが本領だ。

「成敗!!」

 将軍のスキルが発動する。
 いきなり現れた二人の忍者。一人は、おっさん。一人は若いお姉さん。
 おっさんは忍者装束だが、半袖半パンだ。遠くからみたら浮浪者にしか見えないが近くで見たら忍者だ。南の島に住んでそうだ。
 お姉さんニンジャは遠くから見たらレオタードか水着にしか見えないが近くでみたらちゃんと忍者だ。

 二人の忍者は、忍者刀を振りかざし、スライムを両断する。
 左右から斜めに切り落とされたスライムは、その体を四つに刻まれて絶命した。

 そして、忍者たちはどこへともなく消えて行った。

「べ、べつにチートのためにスキル使ったんじゃないのでござるからな!」

「あたしだって、チートのために回復魔法使ったわけじゃないんだから!
 単に利害の一致だから!
 チートが無いあたしにはチートの存在が大きいとかそんな変なふうに考えないでよ!」
 さて、これで丸く収まったかというとそうではなかった。
 将軍のスキルである『成敗』には、副作用が存在する。

 ランダムで味方にバッドステータスをもたらすのだ。そういう仕様らしい。
 今回は俺が毒に侵された。
 一歩歩くごとに、俺はダメージを食らう。毒は毒でも猛毒だったようで、一歩ごとに瀕死。
 そのたびに武藤さんに回復魔法をかけて貰う。

「これはまずいことになったわね。
 チートの体力なんて初級回復魔法で十分回復するのに、あたしが使えるのは、完全回復呪文だけだわ。そして、街へ引き返しても、北の村に向っても、たどり着くころには魔力が尽きているわ。
 油断したわね。このあたりには毒を持ったモンスターはいないからって、APP《アンチポイズンポーション》を買ってくるのを忘れちゃったわ」

 異世界のシステム上、俺をこの場に残して、毒消しを買いに行くとかはできないらしい。
 それはシステム上の問題だから仕方がない。

 ツンデレならぬ……詰んでる……。下手な洒落を言っている場合ではない。俺の余命はあとわずかなようだ。


「やっぱり、夜はあっさり。
 質素な食事に限るわよね~」

「まったくでござる」



食事



 何食わぬ顔で、王様の部屋で食事が運ばれてくるのを待つ武藤さんと将軍だ。
 将軍の名前は、ミエラ・グリューワルトという名前で、武藤さんからはミーちゃんと呼ばれ、将軍は武藤さんのことを名前の芙亜(ふあ)からファーちゃんと呼び合う中であるが、俺は、武藤さん、将軍と呼ばされて、両者からはチートと呼ばれている。

 俺の夕食はネギだった。
 武藤さんと、将軍の夕食はTKG――卵かけごはん――だった。

「たまごを混ぜて~くるくるくる」

「くるくるくるり~まぜまぜまぜ」

 楽しそうに、生卵をかき回す武藤さんと将軍。

「あっ、チート。ネギはいらないからね。
 青ネギだったらともかく、それって下仁田ネギだし」

 そうか、俺にはただの白ネギにしか見えないが。
 そこそこ、高待遇を受けているのだな。

「殿様ネギと言われているネギだから、将軍である拙者が食すのが本来ならば。
 だが、あいにくと拙者、ネギだけは苦手でな」

 いや、俺の知る下仁田ネギはこのような細い姿形はしていない。
 まあ、いいさ。卵かけごはんとネギ。どっちが、より明日への活力としてふさわしいのか、目にもの見せてやろう。
 考えるまでもなく、TKG(たまごかけごはん)に軍配が上がる。

 しかし、こっちのFAN(ふつうの ありふれた ねぎ)だって負けてはいない。
 ねぎのカロリーは、20kcal《キロカロリー》そこそこだ。
 成人の夕食の最適カロリーは、800kcal前後か?
 何本食べねばならぬ話か。いや、俺に与えられたのは一本限りだが。

 やっぱり、軍配はTKGを推す。いつだって行事は判官贔屓だ。

「さあ、卵もいい感じに混ざったとこだし。
 ねえ、チート! お醤油とって!!」

 ふと食卓を眺めやるも、食卓といっても王様の部屋にあった机を、勝手に拝借して、しかも足をぶった斬ってちゃぶ台仕様にしたものなのだが。

 ちなみに、ぶった斬るのは将軍のチートで一瞬だった。さすが蒟蒻以外はなんでも切れる魔剣である。刃渡りは短いが……。

 とにかく、ふと食卓を眺めやるも、あいにくと醤油などはどこにも存在しない。

 その旨を勇者へと伝える。

「ならば、調理場に行ってとってこい!」

 それが俺に帰ってきた返事だった。武藤さんからの。



「あの~すみません」

 こういうイベントは大好物である。
 お使いクエストだ。無事に果たせばレベルもあがろうというもの。
 高ステータスに胡坐(あぐら)をかいている武藤さんと、魔剣の切れ味に胡坐をかいている将軍を出し抜くチャンスだ。

 俺は、少なからず俺のことを無視する城の住人へ。
 俺を空気のように、見えないかのように、

「えっ? 今なんか声したー?」

「ううん。気のせいじゃない?」

「そうよね~。チートでも話しかけてきたかと思っちゃった」

「怖っ! それがほんとだったら鳥肌物のつらたんね」

「あ~つらたんつらたん」

 という会話をする若い女性をやりすごし。

「ハエか? 蚊か? どっちにしても羽虫だな。
 うっとおしいったらありゃしない」

 と俺を叩いて遠ざける加齢臭の漂う親父と距離を置き。

 その後も、何百人という人間に酷い扱いをされながら、結局自分の力で――運よく見つけた城内の案内図を頼りに――厨房へと赴いた。

「!!」

 待ち受けていたのは殺虫剤の噴射だった。

「死ぬ。目が、目がつぶれる……。違うんだ。
 話を聞いてくれ。
 武藤さん、勇者からの頼まれごとなんだ!」

 勇者の名前を出すと途端に態度が変わる。

 俺に殺虫剤を振りかけたのは下っ端もいいところ。長くない帽子(シェフ帽)を被った若者だった。

「わかった。話を聞いてやろう。だが、そこから一歩でも踏み出せば!
 中に入ることは罷り通らん!!」

「しょ、しょうゆをください。勇者が卵かけごはんを食べるのに、醤油が無くって困ってるんです……。
 どうか、醤油をお貸しください」

 そのやりとりを見てシェフ達が集まって来た。
 中にはメキシコ人っぽい人もいる。これがあのタコスを作った現地人なのだろう。

 だが皆口々に、異口同音に、

「そーゆ?」

「え? しょおゆって言わなかったか?」

「俺には、しよゆと聞こえたが?」

 これはあのフラグだ。異世界には醤油は存在しなかったという奴だ。

 相手にするのも馬鹿馬鹿しい。部屋には喰いかけのねぎも残っている。
 さっさと帰って武藤さんに報告すればいいだけの話。

 この世界に醤油が存在しないのであれば。これはいくら頓智を効かせたところで、物理的に不可能なクエストである。

 レベルアップも諦めた。醤油も諦めた。もはやすべてを諦めた。
 俺はただ、残ったネギを食するべく。
 すごすごと、料理場を後にした。



「こら、遅いじゃない! こんな簡単なクエストにいつまでかかってんのよ!」

「もはや、食事は平らげてしまったぞ!」

 浴びせられる怒号。武藤さんと将軍からだ。
 
 そして……。
 食卓――元は王様の机だが――の上に置かれた二本のボトル。

「あう、あう……」

 失語症の寸前まで陥った俺はただただそれを指さしてあうあう言うことしかできなかった。

「ああ、これ? チートがあんまりにも遅いから。
 ルームサービスで取り寄せたのよ」

「「やっぱり卵かけごはんには」」

「キッコーマソ」
「ヒガツマル」

「「よね~」」

 ブランド名以外は綺麗にハモるお二方。
 これが、『卵かけご飯専用醤油』とか『だし醤油』であったなら、ツッコミを入れるところであったが。
 ごく普通の醤油だったから、突っ込むまでもない。

 俺は残ったネギに醤油――二種類のブレンド――をかけて、バリバリと齧った。貪った。


「江戸時代に蒟蒻があったかどうかは知らんが……!
 ダウト!! ダウトダウトダウト!!
 お前は将軍じゃねえ!!」

 朝から低血圧の影響で、ツッコミが冴えなかった俺だが、伸び伸びになったラーメンを食すことで、不安は解消された。

 将軍とか言いながら、女子であることや、ラーメンをナイフとフォークで食べていたこと。
「神から与えられし我がチート剣に斬れぬものは無いという。蒟蒻(こんにゃく)以外は」とか言って、将軍が構える『チート剣』って奴は、その食事に使っていたナイフじゃねえか!
 麺を斬るのにも孤軍奮闘してたじゃねえか!
 江戸じゃねえ! 江戸じゃねえ! 江戸じゃねえ!!

 他にもいろいろ突っ込んだ。

「しょ、将軍ってのが本当なのなら、何代目なのか、はっきりさせて貰おうじゃねえか!」

 俺の剣幕に押されて将軍は、「ぐっ」と口ごもる。

 そこで武藤さんの出番だ。

「控えおろう! ここにおわすお方の顔を見忘れたか!
 こちらにおわすお方こそ、江戸の八代将軍様であるぞ!
 図が高い!! 控えおろう!
 もはやこれまで! と開き直るのは禁止だからね!
 将軍様の名を語る不届き物! とかって逆ギレするのも禁止だからね!」

 いろいろ混じっている。

「そう。そうだ。余が八代将軍である?
 旗本である徳田家の三男坊だ! 水戸家のご隠居のようにぶらぶら旅をしていることもなく!
 そして、タトューまみれの町奉行のように普段は遊び人としてぶらぶらしているわけでもない」

 その知識は……、全部後世の創作だから……。

「ダウト!!」

「なるほど、あんたのチートは見切ったわ。
 この世に蔓延る悪、つまり虚言や流言、不条理を見抜きツッコミを入れる力。
 つまりは、ツッコミ侍ということか」

 将軍は、俺に言う。
 見抜かれた!! 俺すら知らない俺のチートを!!
 魔王討伐とかに全然役に立たなさそうな、だけどガンガンで連載していた奴では、ツッコミ勇者として世界を救った実績もある能力だ。

「そうなの? チートのチートってそういうもんだったの?
 なんか神様からあたしが聞いたのと違うわね。
 あたしもダウト!」

 と武藤さんも言う。

 将軍は、二人からダウトされてたじろいだ。
 だが、気合を入れて構えなおす。

「我がチートに斬れぬものはない。
 チートのチートを我がチートにて、一刀両断にしてくれようぞ!」

 訳:わたし(将軍)のチート(魔剣:食事用のナイフ)に斬れないものは(蒟蒻以外には)存在しない。
 チート(一応主役か準主役である語り部の俺)のチート(世界を股に掛けた突っ込み能力)を我がチート(魔剣)の力で、一刀両断にしてくれようぞ!

 武藤さんが話題を変える。

「ねえ、チート。ちょっとチートの冒険者カードみせてくれる?」

 はっ? 冒険者カード? なにそれ?

「お尻のポケットの財布に入っているはずだから。
 ポイントカードとかと一緒のところに」

 俺は財布を取り出して、ポイントカードとかを入れていたところを見た。
 確かに、見慣れぬカードが入っている。

「読んでみて?」

「えっ?
 登録名:チート
 所属:勇者パーティ。クラス:下級冒険者。装備:学生服。
 所持金:0円。
 近接攻撃力:F
 遠隔攻撃力:F
 防御力:F
 素早さ:F
 運:F
 知能:F
 魔力:F
 信仰心:F
 スキル:無……
 チート:伝説の勇者の力になる力……

 なんだこれは?」

「それがチートの今の全能力よ。
 ちなみにあたしのはこんなのよ。
 登録名:勇者様
 所属:勇者パーティ。クラス:勇者。装備:セーラー服。
 所持金:2356円。
 近接攻撃力:SSS
 遠隔攻撃力:SSS
 防御力:SSS
 素早さ:SSS
 運:SSS
 知能:SSS
 魔力:SSS
 信仰心:SSS
 スキル:別欄記載
 チート:無」

「拙者のはこんな感じである。
 登録名:将軍
 所属:勇者パーティ。クラス:侍。装備:セーラー服。
 所持金:1000万石。
 近接攻撃力:S
 遠隔攻撃力:A
 防御力:A
 素早さ:SS
 運:SSS
 知能:A
 魔力:C
 信仰心:D
 スキル:将軍の怒り、成敗
 チート:魔剣」

 なるほど。俺の所持金は0円だ。確かこの異世界に来る前には千円札が二枚と、多少の小銭(5百円玉は無かったが百円玉が3枚ほどと、50円玉が1枚、あと5円と1円が何枚かずつ)を持っていたが、それは現在の武藤さんの所持金と一致しているが。

 燦然と輝く武藤さんの冒険者カードの『チート:無』の記載。
 確かに、武藤さんにはチートが与えられていない。
 例え他のステータスが最高レベルのトリプルSだったとしても。
 武藤さんにはチートは与えられていないのだ。
 獲得スキルが多過ぎて別欄へ記載されているけど、武藤さんにはチートが与えられていないのだ。

「わるかったなチート。
 あんたを疑ったりして。
 これからは、二人で仲良く、協力して、チートを持たない勇者を、ファーちゃんを助けるぞ!」

 将軍は俺に握手を求めた。

「この世界を救うため。
 チートが無いあたしと、近接攻撃に特化した将軍。
 魔法要員が足りないわ。
 新たな仲間を見つけて、一番オーソドックスでありがちな四人パーティを目指しましょう!」

 目的が設定された。
 お金を溜めて、家を買う。そこを拠点にしてだらだらと過ごすのだ。
 そして、新たな仲間を見つけ出す。
 最終的には魔王を倒す。
 その途中で、城にみんなに呪いをかけた悪魔と、姫をさらった触手好きの悪い魔法使い――ひょっとしたら改心して仲間になるかもしれないフラグの気配がぷんぷん――を倒す。

 俺と勇者(武藤さん)と将軍の戦いはこれからだ!

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