「お姉ちゃん、あなたは本物なの?」

お姉ちゃん、あなたは本物なの?


豆の上で眠るという一見不可解なタイトルとキャッチコピーにつられて購入。
そして表紙のアメ懐かしいな!

湊かなえといえば、あの「告白」などを執筆した作家。確かに彼女らしい構成と文章だなぁと思いながら読み進めました。

そして読了。
キャッチコピーに対しての答えであるこの結末は良く作られていると思う。
反面、その結末に至るまでに登場人物達が起こした行動の数々には理解できかねるものもあるなとも。

そして物語はもう少し短くても良かったのかも?とも思ったり、そんな作品でした。

以下ネタバレあり感想
物語の根幹の謎を盛大にネタバレしているので未読の方は回れ右をお願いいたします。

※楽しめたので作品に対する酷評の意図はないのですが、登場人物たちの行動についてそこそこ批判的に書いています。




前述の通り、キャッチコピーにもなっている「お姉ちゃん、あなたは本物なの?」の問いに対するアンサーとして、このオチは秀逸なものだと思うんだけど、なにせそこに至るまでの関係者の行動や動機、事件後の壮大な嘘についてはなかなか腑に落ちない。
こうして結末にたどり着いてみると強引かなぁとも感じてしまう。

読後直後の感想は
結衣子かわいそうすぎでは?だった。
こういった話では珍しいくらいに芽衣子には一切の非が無いように思う。

そしてよくよく考えれば「帰ってきたお姉ちゃん」もかわいそう。
なぜその方法を選んだ。



事件後、関係者たちが選んだ「姉」を受け入れる方法

なぜその方法を選んだ(2回目)
事の複雑さもあるので最初に嘘をつく事自体はギリギリ理解できても、結衣子がしょっぱなから強めに違和感を抱き続けていてそれがその後の家族関係の障害にすらなっているのにそれでも嘘をゴリ押しし続けてるのが解せない。

結衣子は「血が繋がってこそ家族!」と主張があるわけではなくて、終始「この子は『二年前まで一緒に過ごしていた万祐子ちゃん』じゃない」っつってんだから、本物の定義とか血の繋がりだとかの話ではないし、それを確信している結衣子がじゃあ一体誰が成りすましてるのよ!?って姉の真実を探るのも距離をとって警戒するのも当然の事だと思う。
その姿勢を貫き続けていた後に真実を知った結果「私は間違っていたの…?」という空気になってしまうのはちょっと解せない。間違っていたのは受け入れ方だ!

そして、この計画で一番苦しんだであろう「お姉ちゃん」に現在に至るまで誰も止めても良いよと言わなかったのかという部分も解せない、その子にも八年間の名前・人生・性格があるんやで…



はじめからおわりまで、弘恵達のしでかした事
赤子入れ替えはもちろんだけど、本人合意・なし崩し的なものとはいえ2年間もの間連絡もせずの事実上の誘拐も大概ひどい。娘が無事かどうかも分からず不安と疑心暗鬼で日々憔悴している家族がいるのにその気持ちを察することもせずせめて無事で居ることを伝える事すらしないまま2年も。そんな人達に子供を正しく育てられているのかとすら思ってしまうレベル。

何気に気持ちの切り替えが早すぎる万祐子も残酷ではあるけれども、しっかりしてるとはいえ子供だし、心の中で元の家族に疑問・それこそ「背中に豆」を感じていたのであれば、もしかしたら仕方のないことなのかもしれない、寂しいけど。



自力捜索時代の生々しさ
読んでると、母親が異常とも思えてしまうけど、近所でしかも手の届く範囲でいなくなったと判明すれば、目で見えない近隣の家の中が全て怪しいと思えてしまうのも仕方ないのかもとも思ってしまうし、誘拐犯かもしれないと疑われる事に不快感を抱く人たちの気持ちもすごく理解できるので、読んでいてぞわぞわした。第三者達の「娘が心配なのはわかるけどあそこまでするのは引くわー」みたいな空気も、だんだんと事件から関心が薄れていく感じもリアルを感じて悲しい…。
猫のくだりは怖すぎて無理。これは毒親と言わざるを得ないし、母親のこういうところところも万祐子は苦手と感じていたのかもしれない。



地味な凶悪犯なっちゃん
やたらはりきってて怪しいなぁとは思ってたけど、それにしても許される嘘ではない。なまじ犯人の場所が特定出来そうな情報なだけに結衣子を始め家族がどれだけ疑い苦しんだか。
白ゆき姫殺人事件といい、悪意ある不確定情報に翻弄されてしまう人々を描くの上手いなと。自分も気をつけないとなと思わされる…( ˘ω˘ )


面白く読む事は出来たけど、その結末に至る登場人物の行動には少し違和感を感じ、そして主人公である結衣子が辿った人生を思うとなんともやりきれない悲しい読後感を感じさせる作品でございました。