反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパーク 5

「うおーーーーーーーーーっ、

ブクロさいこぉーーーーーっ!」

こんなふうに、小説のマコト(真島誠、自営業&文筆業の20代前半)は、ドラマでの長瀬みたいに叫ばない。口に出して「ったく、めんどくせぇなあ!」とは言わないが、多分心のどっかで言っている。でも、ヤバい街に身を潜めつつも、助けを求める弱者には手を差し伸べ、本当にどーしよーもない悪には面と向かってと対決する強さと心意気を備えているキャラクターになっているのはドラマと小説の共通事項だ。だからIWGPシリーズは原作もドラマも両方面白いし、クドカンが書いていた文庫版『骨音』の解説によると、『スープの回』には『骨音』の表題作だけでなく、当時衣良さんが構想していた『電子の星』の「東口ラーメンライン」からラーメン戦争のネタを提供してもらったとあったので、これらは原作と映像化作品じゃなくて、双子の兄弟みたいな存在になっているんじゃないかなって思ったもんだ。

さすがに5冊目となって、マコトも年齢を重ねてきているせいか、初期の勢いはなくなってきてるようだけど、彼に持ちこまれる事件は相変わらず時代を反映している。今回は風俗スカウトと集団レイプ、往年のロックシンガーと土地転がし、トレンド玩具と中国人キャッチガール、集団自殺とそれを阻止する自殺遺児たちの係わる、4つの事件。どれも最近のニュースに出てきそうなネタであり、これらのとんでもなくヤバい事件に、マコトはいつものことながら巻き込まれたり首を突っ込んだり、タカシたちGボーイズ&ガールズやサルの手を借りつつ、ことを進めていく。多少オチがやや甘め?と感じる話もなくはないけど、実際にありそうでなさそうだから、それはいいか(こらこら)。

今回の短編で印象的だったのは、人気のソウルディーヴァ人形に隠された血なまぐさい真実を訴える中国人小桃が依頼人の『死に至る玩具』と表題作の『反自殺クラブ』。消費社会においては、売れているものがどうやって作られているのかということには気が向かない。でも消費はやめられないから困ったものだ。小桃が姉の死を普通の手段で訴えてもそれは会社に届かなかった。マコトやGボーイズのバックアップがあったからこそ、彼女は仇を取れたのだ。
『反自殺クラブ』は珍しくマコトが一人で事件に挑み、これまた珍しくブクロから離れた事件。やっぱブクロじゃなきゃという気もしたけど、集団自殺をあおるプロデューサーに対抗するのが、親に自殺された子供たちという、どこか『半島を出よ』の少年たちに通ずるところがあり、その事件の根底にあるものがわかった時も、社会のゆがみがどこかに見えてきたように感じられた。

龍作品と衣良作品って、社会性のあるネタを使うところは共通していても、やっぱり違う。それは作風もそうだけど、衣良作品にはなんのかの言いつつも希望があることを前提として書かれている。それは恋愛や少年犯罪や株や多くの女性とセックスする青年をテーマにしている他の作品でも変わらないし、何よりも読んでいて気分がいい。やっぱり希望がなければ生きていけないんだよな、と思わされるのが好きなのだ。

ただ、そろそろ連作としても安定期に入ってきているかなぁ…。そのあたりで何か驚きが欲しいと思うところはある。あと、やっぱりもうドラマの続編は無理だろーね。
もっとも文章を読んでいても、アタマの中ではすっかりマコトは長瀬が喋ってくれ、タカシはくぼづ兄で、サルはぶっきーで、マコトママは森下愛子さんが「マコトーっ、彼女とうまくやるんだよーっ」と叫んでくれるんだけど(笑)。こんなこともあるから、リニューアルして嵐かNEWSの誰かさんがマコトを演じる新IWGPなんて正直言って観たくないもの。