ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、そしてポン・ジュノが東京を舞台にして撮った3本のオムニバス映画『TOKYO!』。うちの方じゃ2年前の秋に上映されていたんだが、ちょうどその時は運悪く赤壁前編と重なってしまったため、見逃していたのであった。
 ところが先日『母なる証明』を観た時に唐突に思い出し、そーいえばポン・ジュノ編の主演は照之だった、そしてヒロインは蒼井優ちゃんだったぞ、それならばとっても観たいぞーという気が湧き出てきて、レンタルDVDで借りたのであった。
 なお、今回は全部ネタバレで書きますので、未見の人はご注意を。

TOKYO! [DVD]
TOKYO! [DVD]

「インテリア・デザイン」byミシェル・ゴンドリー
 ヒロコ(藤谷文子)と映画監督の恋人アキラ(加瀬くん)は、自作の映画をワゴンに積んで東京にやって来た。ヒロコの学生時代の親友アケミ(伊藤歩)の狭いアパートに泊まり、二人は東京での成功を夢見る。
 しかし二人には金がなく、違法駐車で切られた違反切符の罰金を払う金もないくらいビンボーだった。アキラの成功のために、ヒロコはアパートを探すがどこも高くて契約できず、梱包のアルバイトで稼いでアキラのためになろうと努力するが、あまりにも不器用すぎて逆に几帳面なアキラの方がバイトに採用される始末。
 どうにかこうにか上映にこぎつけた二人。観客たちはアキラを誉め、彼とアケミは親密に話し合う。それを見たヒロコは、自分はほんとうに彼の役に立っているのかとたまらなく不安になり、自分の居場所がないと感じるようになる。
 ある朝起きてみると、ヒロコは自分の身体に異変が起こったことに気づく。恐ろしくなってアパートから逃げ出し、街を彷徨う彼女は、いつの間にか身ぐるみはがされてしまい、木製の椅子へと変身してしまった。椅子になった彼女は街中に放り出されてじっとするしかなかったが、そんな彼女を拾ったのは、独り暮らしをしている音楽雑誌のライター(南朋くん)だった…。
 
 ゴンドリーといえば『エターナル・サンシャイン』『恋愛睡眠のすすめ』が気にいっている。
どちらも恋愛映画ではあるけれど、その恋愛感情を素直に受け入れられない主人公が、ホントは愛し合っているってわかっているのに相手との気持ちがすれ違っちゃったあげくにとんでもないことを考えて行動してしまうというヒネリを聞かせている。そのヒネリがどことなく王家衛的に感じるところがあって、実は気にいっているんじゃないかなーなんて思うんだけど、実際どーだか。 
 この物語のヒロインであるヒロコも、自分のアキラに対する思いを「彼の役に立っているかどうか」で判断してしまったために、自分をおいて先に行ってしまうアキラに対して大きな不安を抱いている。それゆえ、居場所のなさを感じてしまう。
アキラの言うことや撮る映画、もーとにかく青くさくて(爆笑)、こんなこと言ってるけどいずれ挫折したら結構もろいぞ、そのためにもヒロコ、しっかり支えてやれよーなんて思ったものなんだが、やっぱりゴンドリー作品なので、例によって恋愛感情のすれ違いが起こり、それが予想不可能な展開を見せるってことで。
 そんなヒロコが椅子に変身してしまうという衝撃的なクライマックスがあったのだが、ライターに拾われて、彼と「同居」する結末に至ることになったら妙に幸せになっちゃったので、幸せならまあいっか♪なんて思ったっけ。ライターには椅子にしか見えない彼女だけど、彼が不在の時には人間に戻る。彼に座ってもらう=役に立つことで、ヒロコは本当に自分の存在意義(つまり自分の居場所?)を得たってことなんだし。しかし彼女がライターの不在時に好き勝手やってる姿、なんだか『恋する惑星』のフェイを彷彿とさせるんですけど。すると南朋くんはトニーかよ。ってあそこまで鈍くはないが。
 セガール娘、もとい藤谷文子嬢、多分『式日』以来で見たような気がする。こんな…的な演技する子だったっけ?なんて思ったけど、ああそうか、彼女が起用されたのって全裸になれるからか、と納得。
 加瀬くんは青くさいアート系青年が似合うよね、でも撮っている映画はつまらないって思うけど(笑)。伊藤歩ちゃんは独特の雰囲気があるよね。
 あとはチョイ役の人々に大ウケ。うー、でんでんさんでんでんさん、あー、石丸さん石丸さん、わー、ぶっきーぶっきー、おお、南朋くん南朋くん、ってこんな感じだったもん(爆)。しかしぶっきーはチョイ役で出ても違和感なかったなー。というかこういう仕事好きそうだもんね、彼は。

「メルド」byレオス・カラックス
 ゴジラのメロディにのって、銀座の下水道から突如現れた赤毛の男(ドニ・ラヴァン)。潰れた右目に変な形の顎鬚、長い爪をして緑色のスーツを着た裸足の怪人は奇声をあげて銀座の町を疾走し、暴虐非道の限りを尽くして人々をパニックに陥れる。下水道を通って銀座から渋谷に出た怪人は、地下で手に入れた手榴弾を歩道橋から放って街を血の海に変える。
 警察に逮捕された怪人の元に、彼の話す言葉がわかるというフランス人の弁護士(ジャン=フランソワ・パルメール)がやってきて、彼の弁護をしながら通訳する。裁判で検事(石橋蓮司)の詰問に対し、怪人は「メルド」と名乗り、日本人が大嫌いだから暴れたといって悪態をつきまくる。メルドが日本に与えた衝撃は非常に強く、賛否両論が世間を騒がせる中、判決が発表される―。

 あれー、本国以外でカラックスを一番高く評価して人気が出たのって確か日本のはずじゃなかったっけ?だって『ポンヌフの恋人』ものすごくヒットしたじゃない(ワタシは好きじゃなかったけどね)。だからカラックスは日本をリスペクトしてたんじゃなかったっけか?それでなんでこんな仕打ちを(爆)!
 …でも、裏を返せばこれもまたカラックスの東京へのラブレターなのかもしれない。この人の作風って、恋愛を描くにしても一筋縄じゃいかないんだもの。あと、カラックスは多分60年代のインディーズ映画(大島さんとか清順さんとかATG作品とか)が好きなんじゃないのかなと観ていて思った。蓮司さんや久作さんみたいなクセモノ俳優もうまく起用してたし。
 「メルド」という名前は「糞」という意味で、英語で言う四文字言葉と同じ使われ方をされるらしい。人工的な街と化した東京だけでなく、世界各都市の美しい街並みの下には、その地上から捨て去られた汚物にまみれた怪人がじっとなりをひそめて暮らしており、それがあるとき爆発して襲い掛かると考えれば、東京が決して特異な都市ではないということも考えられるってことかな。

「シェイキング東京」byポン・ジュノ
 世間が肌に合わず、10年以上引きこもっていた中年男(照之)。彼は配達される本を読み、同じく配達される食事などを消費しては、それを整理することを生きがいと思っていた。
 ある土曜日、彼の元にピザを配達してきた女性(蒼井優)が脚にしているガーターベルトに目を留めた男は、ひょんなことから彼女と目があってしまう。そのとき、地震が起きて女性は昏倒してしまう。彼女を助けたいが、外界と接触を断ってきた男はどうしていいかわからない。すると、倒れた女性の腕にタトゥーをみつけ、発作的にそれに触れてしまう。目覚めた女性は「ここは完璧。」と言って、彼の目の前から去る。
 男は女性に恋をしてしまった。再びピザ屋にデリバリーを頼むと、現れたのはピザ屋の店長(竹中直人)だった。店長は男に彼女がバイトを辞めて引きこもってしまったことを告げる。
 男は10年ぶりに外出をする。街にはだれもいない。みんな引きこもってしまったのだ。男が女性のアパートにたどり着き、彼女に出てくるように言ったその時、また地震が起きて、引きこもった人々が外に飛び出した…。

 一番楽しみにしていたのがこの作品。ただ、ポン・ジュノの特色である予測不可能なストーリー展開が意外とインパクト弱めに感じたのは、この物語をラブストーリーとしてとらえてしまったからだろうか。あとは役者さん達の使い方が効果的だったので、物語のインパクトの強さまで感じきれなかったのかも。いや、それは悪いことじゃないんだろうけど。
 照之のこの役には弥太郎のようなものすごさはないけど、前半の無常感と後半の恋する男のひたむきさを、ほぼ平熱状態で微妙に演じわけていたのがおもしろかった。(ってそれは誉め言葉か?)しかし中盤で怪優の先輩、竹中ミルヒー寿太郎(笑)と二人並んで画面に収まってたのはあまりにも濃すぎて濃すぎておなかいっぱい。Mサイズのピザを完食したくらいの濃さだった。
 蒼井優ちゃんはずいぶんいい感じに撮られていたよな。ハイソックスを留めたガーターベルトにも彼女の淋しさを表した腕のタトゥーにも特段セクシーさやエロティックさを感じはしなかったんだけど、思わずワタシも恋に落ちたくなりそうな雰囲気だった。

 この映画は異人監督が描いた東京像ゆえ、『ロスト・イン・トランスレーション』のように、拒否感を抱く人も少なくないんだろうと思う。でも、こういう外からの視線で街を描かれることによって気づくことだって少なくないわけなんだし、各監督の個性も十分発揮されていたわけだから、観てて面白かった。
 街が主役になる映画って、やっぱり好きだな。