先日、県北バスのバスカードを使って、北三陸弾丸日帰りツアーを敢行した。

P9221230  抜けるような青い空、どこまでも深く青く荒く波立つ海。初秋の強い風に吹かれて、短い間の久慈滞在を楽しんだ。ここにアキやユイちゃんが泣き笑い驚き、春ちゃん社長がやさぐれながら育ち、夏ばっぱがハンサムに生きたことはフィクションであっても、まるで彼女たちがすぐ近くにいるようなリアリティを感じて、またここをゆっくり歩きたいと思わせてくれた。


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 今年度前半の連続テレビ小説『あまちゃん』が、この程めでたく大団円を迎えた。
宮城県北生まれの宮藤官九郎が東北を、しかも岩手の沿岸北部を舞台に朝ドラを書くと聞いた時、それを作るのが『ハゲタカ』『外事警察』の訓覇圭プロデューサーと『ちりとてちん』『その街のこども』の井上剛ディレクターだと初めて知った時、小袖地区の「じぇじぇじぇ」を知っていたら、おそらくじぇ×10回は軽く言っていたと思う。あと、中華圏の映画や邦画のサントラも多く手掛けてきた大友良英さんが音楽をされると知ったときも、じぇ×10回の驚きだったなあ。

 このドラマに関しては、twitter上で何度か言ってきたし、blogでも2回書いてきたけど、これまでのこととダブらないように、でも大切なことはきちんということにして、何とかまとめてみる。


 このドラマで見せられるミラクルは数多くあった。
 同じ県に住んでいてもなかなか目が向かない県北沿岸を舞台にしたこと、個性派俳優と個性派音楽の出会い、リアルとフィクションの心地よい融合、一人一人のキャラクターたちが持つ愛すべきバックグラウンド、そしてこの作品の最大の使命でもあった、東日本大震災の描き方とその事実への向き合い方…。
 それらのミラクルをすべて「クドカンが天才だから」の一言で済ませてはいけない(例としてこの記事を)。このミラクルは演出を始めとしたスタッフのおかげでもあるのだ。(逆に演出がどんなにすごくても、脚本に魅力や説得力がなければ、どんな傑作でも醒めて観てしまうこともある。その好例が龍馬で…ええ、意見には個人差がありますよ)

 おそらくクドカンだけで、演出が好みでなかったらこれほど夢中にならなかったと思うし、岩手が舞台であっても、以前あった「豚バラのせじゃじゃ麺」みたいな扱いをされたら途中で観るのをやめたと思う。この作家とこの素材をうまく引き合わせ、脚本をうまく視覚化して見事な作品に仕立て上げたスタッフが、これまでワタシの好きなドラマを作ってきた人たちだったのが、とても嬉しくてしょうがないのだ。大好きなクリエーターたちが、我が地元を舞台に、面白いドラマを作ってくれたんだよ!
 このスタッフを知っていて、本当によかった。幸せな半年間だった。
 


 アキが何かをするのは、ただ単純に「好きだから」という動機だけ。
大人たちはそれに振り回されていくし、アキ自身がフラフラして定まらないので、話はあれこれ転がっていくし、彼女に気づかされて財産を得たり、人生に踏ん切りをつけたりといろいろと広がっていく。アキの「成長しなさ」が大人たちに変化をもたらし、幸せが広がっていく。でも、彼女によって気づかされ、大きな財産を得ても、それをどう生かすのかは大人たち次第だ。
 これはフィクションを離れても同じで、今後の北三陸地域はもちろん、一世一代のハマり役で脚光を浴びたノーネンちゃんの未来にも言える。
 
 某アイドル評論家とやらがしきりに彼女を「ヒロスエの再来」的にもてはやしているが(例えばこんな記事を貼ってみる)、ノーネンちゃんを見ていると『君さえいれば』の頃のアニタ・ユンを思い出す。いやそれはワタシがヒロスエを得意としてないゆえのこじつけでもなんでもないんだけど、のびやかなところとか、どっか中性的なところとか、共通点が多いんだよね。アキのキャラ的にはクドカンの分身(笑)なので、気がつけば下ネタ吐きそうな危うさもあったけど、だがそれがいいってことで。
 初主演でいきなり大当たりしてしまったので、今後の動きは慎重になっているだろうけど、普通に女優一本で行っていいと思うよ。あ、アクションやりたいと言ってたので、谷垣さんがアクション指導をする作品に主演で出てもらうとかはどうだ。それなら応援するよ。


 前半の北三陸編、中盤の東京編、そして終盤の震災復興編と三部構成に分かれ、夏ばっぱ、アキ、そして社長になった春ちゃんと天野家三代が語る見事な構成の中で、人によってはどこがよかったかで意見が分かれるだろうが、ワタシはやはり前半と終盤を取る。時折「震災編はいらなかった。あれがテンポを悪くした」というような意見をネットで目にしていたが、それはあんまりだと思ったよ。
 岩手を舞台にしたからには、やはり震災は避けられない。以前もりおか映画祭で「震災を劇映画で描くには時期尚早」という意見があり、ワタシもそれに同意したのだが、今回ばかりはやっぱり描かなきゃいけないと思ってた。なぜなら、被災地以外の人々の間で、震災のことが急激に風化していってるのじゃないかと思ったからね。
 原発事故を描かないことに怒っていた人も多かったけど、実はこれがあったから、宮城以北の津波被害に注目されず、復旧どころか復興も遅れているという現実もある。これに先立ってNHKで放映された、宮城・女川の災害ラジオ局を舞台にしたドラマ『ラジオ』でも、復旧とそれに対する被災地外の温度差が描写されていて、頷かされたところが大きかったからなあ。
 震災で叫ばれた絆やら一つになるなんてフレーズは全くのきれいごと。そんなん外から言われなくてもオラたち頑張ってますからお構いねぐ、とさらりと受け流し、アキが大好きな海と北三陸の人々のために彼女らしさを発揮して突き進む姿は、暗闇を駆け抜けて光の射す未来へと駆け抜けているように見えたし、ユイちゃんを始めとした人々の物事への向き合い方にもいい暖かさがあった。


 あと、恋愛沙汰をほとんどスルーしてきたことがよかったね。
成長は見せたものの、アキにはほとんど相手にされなくて思わず不憫萌えしてしまうヒロスこと足立“ストーブ”ヒロシ、カッコええ登場をしながらどんどんヘタレになってしまう南部ダイバーフォーゼ(違)こと種市先輩、逆に基本ヘタレだが鑑定眼だけはピカイチのミズタクと3人の魅力的な男子どもの中で、とりあえず先輩とつきあったアキだけど、本編中の進展はキスしたくらいで、結局北三陸に二人で戻ってもそれほど仲が発展したようには見えない(笑)。ま、それでもいいんでねえの?そういえば3年前の『てっぱん』(メイン演出が井上剛さん)も本編ではヒロイン・あかりの恋愛に決着をつけなかったような気もしたし、かならず恋愛して結婚→出産というのが朝ドラの王道ではないのだから。


 そんなこんなで、今書けることは以上かな。あとはtwitterのハッシュタグのログを見てもらうことにしますか。
 でも最後にもう二つ。


 その1・独断と偏見に満ちた名場面15選


 【北三陸編】
 ○北三陸の大人たちの街の残念さに対する愚痴を聞いて切なくなり、ひとり北鉄で袖が浜に帰るアキ
 ○第1回K3NSP合同サミット@観光協会&延長戦@喫茶リアス
 ○一目惚れからの「君に胸キュン♪」な悪夢、そして「夢でえがったなあ」
 ○吉田くんがたどたどしく語り、ファイナル勉さんが補足する映画『潮騒のメモリー』
 ○「お腹いっぱいだよ!潮騒のメモリーズにたどり着くまでお腹いっぱいだよ!」


 【東京編】
 ○GMTの今後を熱く語るミズタク
 ○「なんで母親役ばかりまわってくるのかしらねー」by鈴鹿さん
 ○ミズタク渾身の連続留守電16連発(そのうちまともな録音は12通だったらしい)
 ○天野春子対鈴鹿ひろ美の怪獣大戦争@無頼鮨
 ○前髪クネ男登場の回全般


 【震災復興編】
 ○「まめぶ食べて安部ちゃんに文句言いたかったよー」by入間しおりん
 ○「オレはいま岩手県と戦っている…」ミズタク、不燃ごみ置き場での苦悩
 ○ユイの戦慄的な発言から「天野ーっ、ちょと待て天野、…あーっまぁーっぞぉーんっ!(ドボーン)」
 ○「潮騒のメモリー」鈴鹿ひろ美ファイナルヴァージョン
 ○ラストシーン、畑野駅から蛍光棒を持ってトンネルを駆け抜ける潮騒のメモリーズ


 その2・あまロスな皆様に捧げる、是非この機会にご覧いただきたいNHKドラマ(?)5選
      とりあえずこのへんを。

      あまちゃんスタッフ&キャストのだれが関わっているのかも併記しておきます(敬称略)。

ハゲタカ DVD-BOX
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訓覇圭(プロデュース)・井上剛(2・3話演出)・大庭弘之(編集)・松田龍平(出演)

 今さら説明はいらんわな(笑)。龍平くんと訓覇さん&井上さんの出会いの作品。
もし治くん役が予定通り…だったら、あのミズタクはありえなかったし(参考にこちらも)、こーゆーどシリアスでハードボイルド風味な作品を作ってた人たちがあれを作ってたと思うとまた感慨深いものがあるよ…。
(ちなみにこの作品を好き過ぎることが、某半沢を観る気が全く起こらなかった理由だと固く信じている)

吉田照幸(演出)・大庭弘之(編集)・野間口徹・平泉成(出演)・マギー(初期シーズンのみ)・小池徹平(シーズン6ゲスト&劇場版のみ)

初期の編集が大庭さん。
個人的にはシーズン2&3が好きだな。平泉さんの「大いなる新人」は傑作です。


菓子浩(当時は演出)・井上剛(演出)

現在、BSプレミアムにて絶賛再放送中。まさにあまロス対策か?
『カーネーション』と並ぶ革新的朝ドラ。そして初めてハマった朝ドラ。
井上さん演出週はとにかく傑作揃い!

井上剛(演出)・大友良英(音楽)

阪神大震災をテーマに描いた意欲的な問題作。劇場版では泣いてしまいました。
これがあったから、あの震災当日の回がより鮮烈で印象に残るものになったと思うのだ。

梶原登城(演出)・大友良英(音楽)・小泉今日子(出演)

すいません、実はこれが唯一の未見作品です。梶原さんは龍馬の演出で初めて知りましたよ。
内野さんと常盤姫とタケルの民放版よりこっちだよな。なんとか観られるようにしておこう。