児童文学の枠を超え、日本を代表するファンタジーシリーズとなった上橋菜穂子さんの守り人シリーズ。
15年前、文化人類学者でもある上橋さんの講演を研修会で聞いたことがきっかけでこのシリーズを読み始め、精霊と人間の世界が交錯する異世界で修羅の道を歩む用心棒のバルサと、運命に翻弄される皇太子チャグムの物語にすっかりハマってしまった。
 このblogではチャグムが主人公の『蒼路の旅人』と、彼とバルサがめぐり逢う完結編『天と地の守り人』の感想を書いているので、詳細はそちらで。

ワタシがシリーズで一番好きなのがこの長編。

 9年前に神山健治監督によるTVアニメシリーズとして、一度映像化されているのだけど、評判が良い割に実はワタシは苦手だった。昔アニメファンだから受け入れられるはずなんだけど、最初だけ観て後は挫折した。どうもキャラクターデザインがねえ…。30代のおばちゃんであるはずのバルサが妙に若くて色っぽいのと、衣装が薄着なのがねえ…。記憶では胸が強調されてたイメージがあったんだが、いざ調べるとそうでもな、って巨乳じゃん!巨乳じゃ立ちまわる時邪魔じゃないのか!


 ちなみに神山さんは『009 Re:CYBORG』も監督されているが、スタッフはこれとほぼメンバーだった様子。いやさあ、アレもちょっとねぇ…お好きな方にはほんとに申し訳ありませんが。ここでちょっと触れてます。

 そんなワタシの理想のバルサはミシェル・ヨーですが、何か?

 もし実写映像化するのなら、ミシェル姐やド兄さんなどのアジアのアクションスターを集結させ、韓国で脚本を書いてもらって大陸でロケしてカネは日本で出す東アジア映画として作ってほしいなあと思っていたので、まさかNHKが3年間でドラマするとは思いもよらなかった。しかも綾瀬がバルサだよ。それってどうよ。

 はい、そんなわけで本題です。放送90年 大河ファンタジー『精霊の守り人』です。

 30歳になったばかりとはいえ、綾瀬がバルサだと若く感じ、どこか頼りない。主役を務めた大河ドラマ『八重の桜』では、戊辰戦争で銃を担いで戦場を駆け回る幕末のジャンヌ・ダルクを体現していたけど、それを受けての抜擢なんだろうな。30代女子のタフさと包容力なら、アクションを抜きにしたらむしろオノマチ(尾野真千子)でしょ、アクションを喜んでやってくれるのなら真木嬢でしょ、などと否定的に見たのは言うまでもない。だけど、ドラマ製作を受けた上橋さんが「若すぎるとは思われるだろうけど、バルサには伸びしろがあるのだからね」というようなメッセージを寄せていて(公式でも同じような要旨で述べられているのでリンク)、まあ上橋さんがそういうのなら見守っていくかねえ、と腹を括った。

 とりあえずバルサは置いといても、注目したのはスタッフ。
 脚本がドラマ版『クライマーズ・ハイ』『64』の大森寿美男さん。両作品とも好きだし、監督された『風が強く吹いている』も観ているので、話はしっかりまとめてくれるのかなと思ったり、音楽が佐藤直紀さん、人物デザインが柘植伊佐夫さん他、美術や撮影で龍馬のスタッフも揃っているので、きっと美術や衣装は見応えがあるのだろうと楽しみになったのは言うまでもない。
 後で発表されたキャストもなかなか。一番うれしかったのは吉川晃司のジグロ。バルサとチャグムを追う狩人コンビのモンとジンはオーズのドクター真木こと神尾佑さんと龍騎の蓮ちゃんこと松田悟志くんというライダーシリーズ経験者で、アクション出来る人を集めたってことねーと感心した。そしてタンダが東出くんと聞いてニンマリ。そうか、ボンクラキャラでいくのか、と。
 
 で、第1話当日を迎えていざ鑑賞。
…あれ?原作の展開とちょっと細部変えているのね?まあ、映像は原作の解釈だし、そのままやってもできないことっていっぱいあるので、そのへんは許容範囲ですよ。そりゃまあ確かに、バルサがチャグム(小林颯。先日観た『未来のカケラ』にも出演したなあ)を助けだした後、新ヨゴの王宮の奥にある拷問部屋に閉じ込められたのは「あれ?」と思ったり、チャグムの母二ノ妃(木村文乃)が聖導師(平幹二朗)にちょっかいを出すのって原作にあったっけかでもどっかで観たような…と思って多少クラクラしてた。
 SNSのタグを見ると、そのへんに文句言ってた人がいたけど、先にも言った通りで、原作通りじゃなくてもいいんじゃないかな。むしろ映像だからこその楽しみはいっぱいあるのだ。
 その映像独自の楽しみとしてアクションがあるのだが、これはホントに合格点。好きな武侠映画的な雰囲気もあったり、先行したるろけんのいい影響も感じられる。アクション指導は三池崇史作品に多く参加している辻井啓伺さん。リンクしたインタビューを読んで思い返すと、まさに力の入り具合がハンパないと改めて思ったわ。

 まあ、肝心の綾瀬バルサなんだけど、長い旅が始まったばかりで、試行錯誤な感じがちょっと見えちゃったかな。腹から声を出していたり、用心棒として育てられたゆえのガサツさを出そうと努力しているのだけど、男っぽく振る舞えばいいってわけじゃないんだよね。そのあたりはチャグムとの逃避行でこなれてきそうだし、シーズン2にも繋がるのだろうから、不安がらずに見守ることが大切かな。
 第1回は顔見せとアクションを見せることでいっぱいいっぱいになった感があるけど、来週はトロガイ師(高島礼子。メイクがすごいぞ)やタンダも本格的に登場し、物語も動き出すので、楽しみにして観ていきたい。…とはいえ、旅に出ちゃうから、録画して後追いするんだけどね。


 ところで、こんなガイドブックが出ていたので、先日立ち読みしたのだけど、これから撮影が始まるシーズン2(来年放映)はどうやら『神の守り人』がベースになるらしい。今回のシーズン1は精霊本編に、バルサとジグロのエピソードがたびたび挿入されているし、カンバル王国のロクサム(中村獅童)も登場するので、2作目の『闇の守り人』と外伝のエピソードをミックスした構成になっている様子。
 3年間の全22話で全シリーズを描くのはやはり大変だとは思うけど、今後も見守っていきたいもんである。
 成功とか失敗とかは考えず、こういうファンタジーを日本のドラマで作られることは本当に貴重だと感じるので。

 そうそう、最後にこれを書いておこう。
 チャグムの父である新ヨゴの帝を演じるのは、人間のクズを演じさせれば格段にうまいと評判の藤原竜也ですが、ええ、予想通りに見事なクズっぷりでしたよ( ̄ー ̄)ニヤリ。誉めてますよもちろん。