最初に、これだけは言っておきます。
このへんに関する文句は一切スルーしますので、あしからず。

  1.  感想はネタバレで書きます。
  2.  ゴジラシリーズは子供の頃から多少は観ていますが、一番最初のが好きです。あとビオランテも。
  3.  この映画の総監督を務めている庵野秀明氏の代表作である、エヴァンゲリオンorエヴァンゲリヲン(以下エのつくアレ)は一応さくっと観ておりますが、好きでもないし特にすごいとも思ってません。

 はい、そんなわけで、前置きなしで『シン・ゴジラ』の感想書きます。

 2016年の東京が迎えた自然災害は、巨大生物の襲撃だった。今まで出会ったことのない非常事態を迎え、政府はどう動いたか。それが今回の話。
 研究者は出てくるけど、中心にはならない。ジャーナリストもメインキャラにはならない。自衛隊が登場しても、颯爽と大活躍したり、ガッツガツとバトルを繰り広げたりもしない。一般人は逃げ惑うだけ。物語を動かすのは、ハセヒロ演じる40歳前の内閣官房副長官矢口と、竹野内豊演じる首相補佐官赤坂を中心とした役人たち。

 東京湾の海底トンネルの破壊は、当初海底火山の噴火と思われていたのに、湾から多摩川に謎の巨大生物が移動したことがわかると、想定外の事態に官邸はあたふたする。矢口が当初から巨大生物による災害説を唱えていたこともあり、彼を中心に特別対策チームが作られ、右往左往する内閣の陰で巨大生物にどう対処すべきかのシュミレーションが行われる。その巨大生物は、行方不明となった異端の生物学者牧博士(写真は岡本喜八監督!)の残した研究資料より、荒ぶる神呉爾羅にちなんで「ゴジラ」と名付けられる。事態を重く見た日本の同盟国である米国からは、20代で要職にのし上がった日系人特使パタースン(石原さとみ)が送り込まれる。ゴジラの破壊による被害はますます広がり、総理大臣(大杉漣)はついに戦後初の自衛隊による武力攻撃を承認する―。

 描き方はいろいろあったんだろうって思うけど、怪獣映画を災害劇としてだけでなく、政治劇として描いたのには「うへー」と舌を巻いた。しかも感傷等は一切なし。
 前代未聞の事態に初動が遅れ、事を進めていくのに会議を繰り返す展開はどこか風刺的だけど、政府機能が壊滅的状態になった後半からの官僚や大臣たちの動きが本当によくて、こういうふうに動いてもらえれば安心だよなあ、とつくづく思った。登場人物はむちゃくちゃ多いし、あまりに人数が多くて名前も覚えられないけど(参考になったのはこれ)、どんなに窮地に立たされても可能性を信じて最終決戦に臨む矢口たちの姿にはグッと掴まれた。
 もちろん、5年前のあの震災も思い出していた。なにせ、ゴジラの最初の上陸で木っ端微塵になった住宅跡地の様子が映った時、あの時を思い出して胸が苦しくなってしまったのだから。
 製作にあたっては、震災当時の官僚や民主・自民の大臣経験者にもリサーチしたそうだ。それゆえに非常にリアリティがあり、説得力もある。そんな現実にでっかい虚構を放り込むことで、現代社会への見事な批評となっているのが面白い。スクリーンいっぱいに空撮で映しだされる東京の都心めがけて、身長118メートルのゴジラが建物をなぎ倒しながら禍々しく進んでくる場面には、虚構が現実を凌駕するってこういうことか、と見とれたけど、こんなおぞましい巨大生物が襲ってくるくらいのレベルの災害が東京を襲ったら、実際のところはどうなのか?という問題提起もしてくれている。フィクション、特にSFやファンタジーは常に娯楽とか現実逃避と批判されがちだけど、虚構であるから現実を映し出せるという利点があるからね。(特撮ドラマだってそう。ウルトラシリーズは現代社会をベースにした辛口のドラマが多く、レトロ趣味やノスタルジアでCG加工された某映画の何倍もあの頃の現実を見せてくれたし、今やってるライダーシリーズだって、現実の状況をうまく設定や話に盛り込んでいるものが多い)

 いい意味で感情移入を許さない個性的な登場人物造形もいい。若くて実力があって動けるけど、その一方で普段は何考えてるかわからないだろうなと思われているような矢口に、非常事態でも野心的な赤坂。ハセヒロと竹野内にそれぞれあった設定だと思った。特にハセヒロは自分の印象では無駄にエロいかものすごい狂人(例:MOZUのチャオ)かのどちらかだったのだが、その中庸くらいの感じでよかった。こういう背広男子劇にありがちな、妙な色気もなかったのもいい(それは彼にツボがないからだな)。石原さとみのパタースンは登場時からやな女全開だったが(エのつくアレにこういうキャラいるよね、と言われて納得)、決して必要ないキャラではないのがいい。
 その他、若き補佐官の高良くん、文科省の高橋一生くん、環境省の市川実日子ちゃん、厚労省の津田寛治さん、研究者の塚本晋也監督など、脇の人たちもいい味出してる。農水大臣は平泉成さんで、この方はきっと岩手の県北部出身のような気がしてならない。ユイちゃんのパパだから(笑)。
 
 なにはともあれ、過去のゴジラ映画(ハリウッド版含む)、過去の特撮映画、ひいては過去の日本映画を研究してそれらに敬意を払ってうまく現代にアップデートさせ、一大エンターテインメントでありながら大いなる問題作にも仕上げたカントクくんこと庵野さんの力量を改めて思い知った。もちろんこれは、特技&共同監督の樋口真嗣さんや特撮担当の尾上克郎さんとの共同作業もあってのことだけど、音響デザインや題字など要の部分にまでこだわって「ボクが考えるゴジラ」を作り上げ、思いっきり趣味に走りながらも過去の財産は思い切り活かしたものを世に放ったわけだから、相当自信があったんだろうし、やっぱすごい人なんだわカントクくん、以前読んだ『監督不行届』ではただのオタクとか思っちゃってごめんなさい、とか思ったりしたのだった。