ぺきん日記-中国/北京より- (live door版)

中国とのしがらみから逃れならないでいる管理人による"Other World CHINA"のご紹介....

中国

謎の人気アイドルangel girl は反日デモ抑え込みの密使かも知れない

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「中国の釣魚島(尖閣諸島)を守る」と掲げたバナーの前のミリタリールックの写真が日本でも話題になった"日本の人気アイドルグループ"angel girl。日本のGoogleトレンドでは一時トップに輝くキーワードとなりました。
ほとんどの日本人が知らなかったこのアイドルグループの話題が、どのようなストーリーで中国のインターネットに広がって行ったかを整理てみます。

百度のニュース検索でangel girlの記事を調べると、現時点では3つの話題に分類できます。中国のニュースサイトは転載フリーですので、このことは、元記事(情報源)がほぼ3つであることを意味します。


angel girl-jk2最初の記事はangel girlという"日本で人気の"華僑アイドルグループの紹介記事で、2010年10月12日に発信されています。元記事は、中国共産党の機関紙「人民日報」のオンライン版である「人民網」のエンタメ版に掲載されています。
人民網エンタメ版発 日本メディアの報道によると、アイドルグループangel girlは東京近郊で近日出版される写真集の撮影を行った。彼女たちの制服姿は無数の日本のネットオタクを悩殺するだろう。この華僑アイドルグループは日本の著名なファッショングループと実力のあるレコード会社により3年間育成され、年末に発行されるだろうアルバムや3D写真集は、既に80万もの予約が入っている。

この記事は、angel girlのこれまでの活動には一切触れておらず、年末に出版される写真集の準備中(既に予約が80万冊!)としたうえで、日本のアイドル市場における女性グループの成功をSpeedやPerfume、AKB48を例に出して紹介しています。
謎のグループangel girlに関しては、"日本在住華僑の女性グループ"と簡単な説明をしているだけです。百度の検索によると、この人民網の記事は50以上の中国のニュースサイトに転載されています。

angel girlが次に中国のニュースサイトに登場するは、人民網の"紹介記事"が掲載されて1週間後の10月19日。ただし、angel girlが主役ではありません。「日本オタクの十大女神発表」というタイトルで、中国でも人気の林志玲がトップテン入りして、周冬雨が選に漏れた、ということを主眼として、この二人の写真が掲載されています。
日本の某雑誌社とコミュニティサイトが共同主催し、多数の日本の男性ネットユーザーが1ヶ月に渡る選考期間に積極的に投票した、とされるこの"十大女神"に選出されたのは、angel girl、AKB48、沢尻エリカ、Beckii Cruel、佐々木希、堀北真希、林志玲、蒼井そら、蔡依林、上戸彩。

angel girlの話題は、この"十大女神"のリストで登場するのみではありますが、アルファベット順でも五十音順でもなさそうなのに、トップを飾っている、というのは、何だか意図的ではあります。

「日本オタクの十大女神発表」の元記事は、複数の転載記事がニュースソースとして記している新快網であるようです(残念ながら現時点では元記事を見つけることができません)。梁燕芬さんという方の署名記事ですが、こちらも「日本メディアの報道によると」としています。この話題は120以上のニュースサイトに転載されています。
新快網は、広東省の夕刊紙「羊城晩報」を発行する羊城晩報集団傘下の中国では最も早く開設されたニュースサイトです。


angel girl-milそして3つ目の話題というか露出が例のミリタリールックの写真で、10月22日の午前中に、国際在線(CRI Online)が掲載したようですが、現時点で元記事は削除されてしまった模様です。元記事の体裁に近いと思われる中国新聞網の転載記事を要約すると:
昨日、日本のアイドルグループangel girlが自分たちのマイクロブログに「愛国ファッション写真」を発表した。日本在住の留学生たちの助力もあって、4時間も経たないうちに60万件ものアクセスがあり、そのマイクロブログは閲覧できない状態となっている。

そして、この記事で初めてangel girlのメンバーが紹介されています。

angel girlはリーダーである北京出身のamy、長沙出身のangela、そして台湾出身のannnaの三人グループ。こうした事情から日本のエンタメ業界では取り扱いに苦慮しており、日本のメジャーなメディアからは排斥されつつあるが、オンライン・マガジンなど独自のチャネルを開拓して、日本のネットオタクのハートを掴んでいる。


angel girl-senkakuところが、22日午後以降の記事では、「中国の釣魚島を守る」というバナーの前で撮影された写真が掲載されるようになりました(Neteaseの転載記事)。転載のニュースソースは国際在線。記事の内容は元記事のままですが。
国際在線(CRI Online)は中国国際放送(China Radio International・通称北京放送)のニュースサイトです。中国国際放送は、主に海外向けに外国語放送を行っているラジオ局で、もちろん中国共産党中央宣伝部傘下の組織です。

たかが偽造アイドルの話題かもしれませんが、露出のタイミング、ストーリー、発信源、メッセージを考慮すると、これはもう中国当局が巧妙に仕組んだ中国の若者に向けた"反日デモ"対策の一貫であるような気がしてなりません。

10月23日に内陸部を中心とした複数の都市で呼びかけられていた"反日デモ"は四川省独陽市を除き、ほぼ不発に終わったようです。その前日、少なからぬ中国の若者は、反中国の嵐の中、日本で頑張っている同胞の記事を目にすることになったわけです。そして、中国の若者の気持ちを代弁する写真を日本のネットオタクにも発信してくれている。だから、キミたちは学校や職場に留まっていてくれ、と。
その週末に発生したデモの兆候は、10月12日の時点で中国当局が掴んでいたのは確実でしょう。このタイミングで、架空のアイドルangel girlを仕込んでおく。16日・17日に各地で発生したデモが暴力化した状況に接し、翌週の抑えこみ対策の一貫として、angel girlのミッションが重要性を帯びてきたのでしょう。
angel girlの日本での人気ぶりをできるだけ客観的に記事化する必要があったので、19日の段階でさりげなくangel girlが「日本オタクの十大女神」に入ったことを発信。それもその時点では注目度が低かっただろうangel girlを見出しに使うのではなく、林志玲と周冬雨という中国でも注目度が高いアイドルをタイトルに加えて、記事自体の注目度が高まる効果も狙ったと想像できます。
そして、23日・24日のデモの拡大を抑えるため、キミたちの愛国精神はangel girlが代弁してくれているから、ということで、例の写真の発信。

あくまでも私の想像に過ぎませんが、もしこうしたストーリーで対策を練っていたとすれば感心してしまいます。捏造だでっち上げだと非難するだけではなく、日本もこうした情報操作を研究し対応していく必要があると思います。もちろん、これが"反日デモ"対策の一貫だったとして、どれほどの効果をもたらしたかは分かりませんが。

エイプリルフールの「速報!! GoogleがBaidu(百度)を買収」顛末

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今週は中国からのお客さまをたくさんお迎えしました。もちろんビジネス・トリップではあるのですが、この時期に集中したのは、日本で「お花見」をしたいという要望が大きかったからです。
中国のネット関連企業のCEOやVPの皆さんと、温泉に浸かりながら盛り上がったのは、やはりGoogleの話題でした。中国当局の"優遇"によって順調にビジネスを伸ばしている立場の皆さんですが、Googleには強い思い入れがあるようです。そんな中、GoogleがBaidu(百度)を買収したらどうなるだろうね、という話になりました。

折しも4月1日。これは絶好のエイプリルフールのネタになる、と思い、ネタ元のニュース・サイトを用意して、ツィッターでつぶやこうと思いました。

速報!! GoogleがBaidu(百度)を買収

ネタ元ニュースサイトは、こうしたスクープを発スルには最も相応しいであろうと考える"TechCrunch(日本語版)"のソースを拝借し、テキストだけ書き換えました(ちょうどYouTubeを買収した時の、おあつらえ向きの記事があったのです)。でも、このままアップするのはさすがに問題があるだろうと思い、ブラウザ表示画面をキャプチャーして1枚の画像にしたものをネット上に公開することにしました。しかも、そのページ(つまり1枚の画像)のどこをクリックしても、「ネタでした、ごめんなさい!!」と表示されるように、細心の"注意"を払ったつもりでした。

私をフォローしてくださっている方は100数十人ほどいらっしゃいますが決して多いほうじゃありません。私のつぶやきの流れの中で、すぐにこれはネタだと思って、クスッと笑ってくれるだろう、くらいに考えていました。ところが、予想外の反響となってしまいました。
翌朝、TLをみると200を越すリツィート。RTのコメントを読む限り、本物のニュースだと受け止めた方もいらっしゃいましたが、「ネタだ」「4月1日だよ」「わろた」と言った感じで、エイプリルフールのジョークとして好意的に受け止めてくださったかたも多かったので、安心していました。

ところが、翌4月2日午後に増えていくRTコメントを読んでみると、本気で怒っている=迷惑を被った方がいらっしゃることが分かってきました。ネタ元ニュースサイトのデザインとして利用させていただいたTechCrunch Japanにも問い合わせがあったようで、その公式ツィッターで「これは編集部で用意したものではなく、どなたかが勝手にサイトをコピーして作られたものです。」とコメントを出すような事態になっている....。「TechCrunchの許可をとったのか」と言う@私宛てにフォロワーで無い方からメッセージが飛んでくる...、と言うこと、これはもしかしたら笑い事じゃない、と。

ネタ元ニュース・サイトへのアクセスを調べてみたら、既に4万件を超えていました。
ツィッターというものは、フォロワーやそのフォロワーからだけではなく、まとめサイトやRSSリーダーなどを経由して、どんどん広がっていくものだ、と言う、バイラル・パワーそのものを過小に評価してたんですね...。自分のTL以外にもどんどんネタ元ニュースサイトのリンクが引用されていくので、私の4月1日のつぶやきをご覧にならずに、いきなりネタ元ニュース・サイトをご覧になった方が多かったのです...。バイラル・パワーなどと仕事の時には吹いているクセに、と反省しきりです。

ネタ元ニュース・サイトの削除も考えましたが、逆効果になることもあると思い、ネタ元ニュース・サイトの一部を修正しました。TechCrunchにこれ以上ご迷惑がかからぬよう、そのロゴの一部を改変したり、クリックしなくともネタだと分かるように。

ところで、「GoogleがBaiduを買収」がブラック・ジョークか、と言うと私はそうは思っていません。
BAIDUの時価総額は208億ドル(1.9兆円)。Marsico Funds(9.5%)、 Morgan Stanley(6.4%)などの機関投資家が46%強保有し、創業者や従業員のシェアは5%未満。過半数の流動性は十分確保されています。
いっぽう、Googleの時価総額は1,800億ドル(16兆円)ですから、BAIDUの8.7倍です。仮にGoogleが、10%のプレミアを乗せて、TBO(公開買付)を行えば、マジョリティ(51%)取得するためには、117億ドル(1兆500億円)が必要となりますが、Googleは09年末時点で、102億ドル(9,180億円)のキャッシュを持っていますので、数字の上では決して不可能なストーリーではありません。

上述の通り、Baiduの大株主はアメリカなどの機関投資家で、株式の過半数は中国からみて外資(アメリカが多い)が保有しているのです。中国では、特にインターネットなど情報関連事業で、様々な制約を受けるはずの"外資企業"であるBaiduが、中国で"のびのびと"企業活動を展開しているのには、いろいろなカラクリがあるのです。
ですから、BaiduがGoogle傘下になろうとも、Baiduの経営姿勢が変化がなければ、Baiduは中国で"のびのびと"企業活動ができることになります。Googleが中国でのビジネス上の劣勢を巻き返す手段としても十分あり、と言うことです。
この意味で、Googleがアメリカ企業だから中国当局が追い出した、と言う論理は成り立たないことが分かります。

いっぽう、Google傘下となったBaiduの経営姿勢が、Googleのそれになるのなら、その買収はまったく無意味なものになるでしょう。つまり、中国当局のセンサーシップ要求を呑まない、と決めた時点で、中国におけるメジャーな検索サービスが消えて無くなってしまうのです....。
つまり、Googleが言論や情報アクセスの自由よりも、中国の巨大マーケットが惜しくなった場合、つまりビジネス至上主義をむき出しにするなら、Baiduを買収して中国当局と仲良くすれば良いし、あくまでも"正義"にこだわるのであるのなら、なおのことBaiduを買収してGoogleの姿勢を貫き新生Baiduを閉鎖に持ち込めばよいのです。後者のROIは期待薄かも知れませんが....。

4月1日のつぶやきは一部の方を不愉快にさせるネタになってしまいましたが、楽しんでくださった方も結構いらっしゃったようで、livedoorのPJニュースからは「私的エイプリルフール特別賞」をいただくに至りました。
自分のことを棚に上げて申すなら、評論家やコンサルタントと言われる方のツィッター・リテラシーの低さに、残念な気持ちになりました。裏取りもせずに転載した後で、迷惑がかかるからとネタ元ニュース・サイトの削除を求めるダイレクト・メッセージを寄せてこられた名の知れた評論家のような方がいらっしゃったのも事実です。
ツィッターは気軽で無責任なツールで構わないと思っていますから、私はそのスタンスで楽しませていただいていますが、プロフィールに"それなり"のことを掲げてたくさんのフォロワーを持たれている方には、それなりの責任が求められるのではないでしょうか?もちろんオバマさんや鳩山さんの認証ツィッターほど重いものでは無いと思いますが。
私も皆さんを根っから騙すつもりでネタ元ニュース・サイトを公開したわけではなく、ちょっと調べればすぐにネタだと分かるようにしたつもりです。私もプロフィールに"Sino-Japanese business developper"と掲げてる以上、この領域の発言にはある程度の責任を持とうと思っています(4月1日以外は...)。

末筆になりますが、今回のつぶやきでご迷惑をお掛けした皆さん・不愉快になった皆さんに、心よりお詫び申しあげます。

中国のインターネット規制について(まとめ)

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Google検索サイトの香港お引越しで、中国のネット規制や言論統制への世界的な関心が高まりました。
けれども、私にしてみれば(いや中国の大多数のネットユーザーにしてみれば)、Googleの検索ページが香港にリダイレィクトされようが、中国大陸からアクセスできなくなろうが、中国からインターネットにアクセスできる不自由度はさほど変わりません。
中国当局にとって都合の悪いサイトは、中国大陸からアクセスできないままなのですから。仮にGoogleや百度(BAIDU)などの検索結果が"自主規制"無く、該当するあらゆるウエブサイトのリンクと要点が表示されたとしても、リンク先のウェブサイトにはアクセスできません。中国当局がちょいと細工をしてさえしまえば、天安門事件やチベットやウイグルに関するウェブだけではなく、どんなウェブサイトにもアクセスできなくなるのですから。
Google撤退の話題で中国のネット規制が注目されたことは評価に値しますが、Googleやドメイン代行会社であるGodaddyが自社の宣伝のために正義を振り回している様は感心できませんし、米中間の政治問題に発展させる目論見が中国政府の壺にハマってしまうことになり兼ねない、と危惧しています。そして何よりも、"万里の長城"は外側からだけでは崩れないのです。外圧により城内の結束をより強くする、ネット規制はそうした効果をも狙っているのです。

Googleに関するニュースが象徴的ながら解決策に関して抽象的でいるうちに、いまも中国ではさまざまな方法でネット規制を強化しています。その中でも、いま危惧されるのが「実名登録制度」です。個人サイトの開設や運営はもちろんのこと、ブログ、SNS、チャット、更にはC2Cサイトへの出店や、BBSに書き込む時にも、実名で登録させようという魂胆です。張さんや王さんが何千万人も存在する中国でいうところの「実名」とは、人民一人一人配布されている身分証明書の記載事項や本人の顔写真、派出所などに登録されている現住所の情報などを一致させることです。インターネットにおける匿名性をすべて奪ってしまおうというお話しです。
確かに有害サイトや詐欺行為などを追放するために「実名登録制度」は有効かもしれません。日本でも5年ほど前に総務省がネットの実名利用の促進を呼びかけたことがありました。けれでも中国当局の意図が、有害サイトや詐欺行為の追放だけにあるのではないことは明らかでしょう。「実名登録制度」が発言や表現の自由を奪うことが明確であるにも関わらず、中国当局は有害サイト撲滅のためとか詐欺行為防止のためとか言って、ネット規制を強めているのです。

私は1997年から北京に在住し中国でインターネットを利用してきました。2006年に帰国してからは、中国のインターネットそのものが食い糧となってしまいました。2004年から始めたブログを読み返してみると、その当時のインターネット規制に関する話題をかなり書いていましたので、これまでの経緯を振り返る意味で以下にまとめてみます。

98年のインターネット。2006-05-11
1997年の中国のネットユーザーは62万人でした(09年末には3.8億人に達したと発表されています)。しかも国外アクセスできない接続プロバイダーが主流でした。

『中国で趙氏死去報道規制…NHKニュースぷっつん!?』 by 夕刊フジ だって!!2005-01-17
頻発するNHKプレミアムのブラックアウト。操る人をイメージしつつ...2005-03-16
中国当局に都合が悪い情報を遮断してしまう、と言う行為は、テレビや新聞・雑誌から始まっているに相違ないでしょう。

エキサイト・ブログがアク禁に!?2005-05-08
このブログ、中国から見れなくなっています....2005-05-09
ちょっと"愛人"のところに、お世話になることにします....2005-05-31
中国当局が不適切と判断したウェブサイトがアクセスできなくなることは、中国在住者にとって周知の事実でした。天安門事件、法倫功、チベット事件に関するサイトは見ることができません。これは内部関係者の中では「ゴールデンシールド・プロジェクト(金盾工程)」、国外では「グレート・ファイヤーウォール」と呼ばれる、リンク先の検閲とアクセス・ユーザーのネット内行動分析、そしてアクセスの制限を一挙に行なう画期的なシステムが機能しているためで、このシステムの開発にはアメリカの著名企業が関与していると言われています。
2005年4月〜5月、中国では反日デモがあり一部暴徒が日本関連施設を襲うという事件がありました。北京での状況を目の当たりにした私は、エキサイト・ブログに写真入りでエントリーし、多くの方に読んでいただきました。このことと関係してかどうか不明ですが、その直後から、エキサイト・ブログが中国からアクセスできなくなってしまいました。エキサイト・ブログをはじめ、geocities.co.jpやSeesaaはいまでも中国からアクセスできないままです。中国当局を刺激するような報道は、それが英語や日本語の内容であっても、中国からアクセスできない現象も頻繁に発生しています。

中国のテレビ生中継(直播)はほとんど"生"じゃないでしょ...2005-06-28
何が起きるかわからないテレビの生中継は、中国では5〜15秒遅れて放送されます。大切な指導者に生卵が投げ込まれるようなシーンは慌ててカットしなければなりません。ワールドカップのようなスポーツ中継ですら心配しています。

ネット規制の政策には、対策もあります。2006-02-21
隠されてしまったものは何としてでも見てみたい、というのがヒトの心情。中国のネットユーザーも簡単に諦めたりしません。情報リテラシーの高い人たちを中心に多くのネットユーザーが、実は中国当局の規制を掻い潜っています。

中国MSNログイン障害の原因は....?2006-05-13
中国ではインスタントメッセンジャーによるチャットがEメールよりも頻繁に利用されています。QQのシェアがダントツですが、MSNをビジネスで利用する人たちも多くいます。そうした中で、MSNが利用できなくなりました。これも中国当局の仕業かと勘繰りましたが、十中八九MSN側のテクニカルな問題だったようです。

Googleも繋がりにくい状態なのに、「中国政府はネット統制してません」と吹いた劉建超さん。2006-06-06
中国当局のネット統制について問いただした外国人記者に「一部の方は中国政府がネットを統制していると指摘していますが、事実とは合致していないのです。」と答える外交部報道官。
ちなみに、Googleは中国の法律と規則を守り、"自主規制"も行なうとの文書を当局に提出し、この年(2006年)1月25日に中国で正式にサービス・インしました。

国境は無視する性格のインターネットなのに。日本メディアと中国当局の意識差!?2006-06-16
インターネットに国境は無いと思っていましたが、日本のメディアも中国の政策を先読みする解釈で国境を設定してしまっていると思えたお話。この頃は中国からもYouTubeがアクセスできて、エア系のネタなど面白いビデオクリップが中国からも随分アップされていました。

[中国ネット管理強化]「新浪網」「捜狐」、仲良く検索システムを"アップグレード"中!?2006-06-20
中国の検索エンジンとしては百度(BAIDU)が有名ですが、ポータルサイト「捜狐」もSoGuoという独自の検索エンジンを公開しています。当時は「新浪網」もiASKを公開していたのですが、二つとも"アップデート"のため機能しなかったのです。もちろん中国当局のリクエストにお応えして"自主検閲"を強化するためのアップデートだったのです。

【告知】ネット検閲に反対する24時間オンライン・デモンストレーション実施中!2006-11-08
国境なき記者団」(RSF)がインターネットへの自由なアクセスを支援する24時間キャンペーンを行ないました。「インターネットの敵」として挙げられた国家は、中国や北朝鮮など13カ国。

権力によるYouTube遮断にもいくつかのスタイルが....。2007-04-06
この頃はまだ、YouTubeが完全遮断ではありませんでした。中国当局に不都合なビデオだけアクセスできない状態にしたのです。例えば、越境亡命を試みるチベット人の銃撃ニュース映像などは中国から視ることができませんでした。まだ、さりげなかったのです。

ネット統制のいたちごっこ。中国当局、こんどはRSSフィードをブロック!?2007-10-06
それまでは中国当局にブロックされた国外のニュースを特殊なRSSリーダーで閲読していた中国人が多くいました。これじゃまずい、ということで、"不適切"な情報のRSSフィード自体を特定しブロックするという試みも行なわれたのです。

ダライ・ラマ14世がブッシュに会うと、中国ではBaidu(百度)以外の検索サイトが使えなくなる!?2007-10-20
Yahoo!やGoogleで検索しようと思っても、自動的に百度(BAIDU)の検索サイトに誘導(リダイレクト)されてしまうという恐ろしい事件もありました。TechCrunchの記者さんの論評(政治的問題よりは経済的な問題だ)は新鮮ですね。私は未だにGoogleを疑っています。

中国ネット規制:『豚がみんな笑った』にコメントが書き込めませんでした...2007-10-21
中国ではBBSへの書き込みなどもモニターされ、"不適切な"コメントは削除されてしまいます。NGワードを含むコメントは自動的に書き込み拒否されたりするのですが、それでは"不都合"が生じるので最近は人的モニター手作業削除が主流となっているようです。

中国が動画サイトの規制強化を発表、中国版Youtubeは消えてしまうか!?2007-12-31
YouTubeへのアクセスが不安定になるいっぽうで、勃興する中国版YouTubeに中国当局はいろいろと難癖をつけ始めます。
この頃はインターネット規制をめぐる関係部門の"権力闘争"が激しくなります。元来インターネットは情報産業部(現在は工業と情報化部に改組)の管轄でした。ところが、既存映像系メディアを取り仕切る広播電影電視総局(ラジオ映画テレビ総局)や、新聞雑誌など出版物を取り仕切る新聞出版総局、更にエンタテイメント・コンテンツを取り仕切る文化部などがちょっかいをかけてきました。規制すなわち利権になるので、利権争いだと思っています。

中国で上映禁止になった映画『苹果』と動画サイト規制とCGMとの関係。2008-01-14
映画を監視する広播電影電視総局(ラジオ映画テレビ総局)が動画サイトをも支配下に置こうと考えたのでしょう。いまでは動画コンテンツをネット上で公開するには、動画コンテンツ制作ライセンスが必要とされています。一般人が撮ったムービー作品も厳密には規制の対象となりかねません。中国ではCGMも崩壊の危機です。

入り餃子への対応も動画サイト規制も経済論理優先で!?2008-02-01
中国メディアとしては政権に批判的な論調が多かった南方周末という新聞は、動画サイト規制を言論規制としてではなく「物権法」(財産や市場競争を保証する法律)に反したものとして批判しました。本音かどうかは別として、この頃はまだ中国当局によるネット規制を批判する論調がニュースサイトなどに掲載されていましたし、私としても中国当局の利権争いか内輪揉めの様相を感じていて、幾分楽観的な展望を持っていたと思います。

中国版YouTube「土豆網」丸一日"自主閉鎖"。2008-03-24
楽観的な展望があったさなか、当時最大の利用者数を誇っていた「土豆網」が3月14日に丸一日"自主閉鎖"に追い込まれます。
中国当局はワイセツ動画を理由にしますが、このころチベット情勢が緊迫していました。外国メディアによる関連ニュース映像が「土豆網」などの中国版YouTubeにどんどんアップロードされました。サイト運営側は中国当局の逆鱗に触れまいと、"自主検閲"でせっせと危ない動画を削除してたのですが、追いつかなかったのでしょうね、きっと。
YouTubeへのアクセスが全面的にできなくなったのも、この頃です。

中国インターネットの"表向き"の公序良俗2009-01-09
厳しさを増すネット規制。中国当局の意図が言論統制であることが明らかになっているのに、表向きは公序良俗や消費者保護のためと宣伝します。
09年夏のウイグル人と漢民族との諍いの拡大がTwitterにあると考えた中国当局は、Twitterやfacebookなどコントロールの効かない外国発のソーシャル系サイトをシャットダウンしてしまいます。
それどころか、新疆ウイグル自治区の大部分でインターネットの利用そのものができなくなり、ケータイのショートメールまで制限されたのです。誰もエロサイト追放のためだとは信じないでしょう。

Googleのビジネス・センスと中国国内向けインターネット規制強化2010-01-27
「実名登録制度」は.cnドメインの取得から始まりました。そして、Google騒動。前述のとおり、Googleの"勇気"は一時的に中国のネット規制に注目を注がせることには成功したかも知れませんし、Googleの名声は上がったかもしれませんが、中国本土のインターネット利用者にとってはさして意味も無いことだったと思います。むしろ、外国からの批判に曝されることで中国当局を硬化させ、中国の少なからぬ人たちの愛国心をも刺激する結果を招いているのではないでしょうか。

共産党政権に限らず、中国、中国の人たちに、自分たちの主張を押し付けようとするのは、必ずしも賢い対応では無いのではないか、と私は思っています。もちろん、中国のネット規制即ち言論統制をこのまま放っておくのは、中国の人たちにとっても、国際社会にとっても、極めて危険です。一時的な話題性に流されてしまわないように、多くの皆さんがウォッチして、中国の人たちの共感を得ながら、内側からも外側からも激しくは無い地道な世論の形成を続けていくことが大切なような気がしています。















Googleのビジネス・センスと中国国内向けインターネット規制強化

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Googleの無検閲表示もリンク先にアクセスできなければ無意味

Googleが中国から撤退の検討をしているというニュースは、日本でも大きな話題となりました。Googleが1月12日にブログで発表したコメントは、「今回の攻撃(当社の社内インフラストラクチャーに対する、中国を発生源とするきわめて高度かつ標的を定めた攻撃)と、中国政府が打ち出した監視 ― 加えて、過去数年にわたるウェブ上の言論の自由制限の強化 ― を踏まえ、当社は中国における事業の実現性を再考する必要があるという結論に至った。」と、ハッキングが中国からであることを断定するとともに、その文脈からは幾分唐突気味に、中国政府によるインターネット規制を、事業再考の理由の一つに掲げました。

中国政府によるインターネット規制として、Googleが直接問題としているのは、検索結果表示に対するセンサーシップです。Googleは、天安門事件やチベット、ウイグル問題など、中国政府にとって都合が悪いウェブサイトを検索結果から削除させられており、「現地の規則により、一部の検索結果は表示されていない可能性があります」と表示されています。
ただこのことが、中国国内からのインターネット・ユーザーにとっ不便な規制なのかと考えてみると、実はそうではありません。Googleが中国で検索結果を表示できないウェブサイトのほとんどは、一般的な方法では中国からアクセスできないものなのですから。つまりGoogleが、ガンデンポタン(チベット亡命政府)や世界ウイグル会議のリンクを表示したとしても、中国の一般ユーザーがリンク先のページに辿り着くことはできないのです。

つまり、Googleが中国政府のNGワードの検索結果を表示できたとしても、中国が誇るGreat Fire Wall (不適切な外国サイトを遮断するシステム)が機能する限り、実質的な成果は極めて小さいのです。中国政府のインターネット規制、とりわけ検索結果に対するセンサーシップ(検閲)を事業再考の理由の一つに上げているGoogleを、"Don't be evil (ビジネスで悪さをしない)"精神の発揚だ、などと単純に賞賛する気持ちにはなれません。Googleのビジネスそのものにとって重要な何か(それは何かのソースコードかも知れない....)が損害を受けつつあったから、という推理に共感を覚えてしまうのもそのためです。

インターネット規制の重点が、中国国内に

Googleのような派手なプレイヤーが登場しない地味なところで、中国国外のメディアが十分な監視を怠っているうちに、中国のインターネット規制は着実に完成しつつあります。2009年初から、中国政府は国内のインターネットの「大掃除」に着手しているのです。
まずそれは、「低俗ウェブサイト」の一掃から始まりました。工業と情報化省、公安省、文化省、放送映画総局、新聞出版総局など関連するお役所が、それら政府機関を唯一指導する立場の中国共産党への点数稼ぎで競い合いました。
9月には、放送映画総局のライセンスを取得していない中小の動画共有サイトが一斉に強制閉鎖させられました。12月4日には、映画やドラマやソフトウェアを交換でき、中国では人気を博していたBT(BitTorrent)と呼ばれるP2Pファイル共有サイトもすべて閉鎖されました。12月8日中国共産党とインターネット関連政府機関によるコンファレンス・コールでは、取り締まりの対象をケータイ・サイトにまで広げ、低俗でエッチなコンテンツを2010年5月末までに撲滅することを宣言したのです。

そして12月9日に中国共産党中央宣伝部の御用達番組CCTVの『焦点訪談』が、ドメインの偽名登録による低俗サイトの弊害を取り上げてからは、インターネットの「根っ子」とも言えるネットワークやサーバー(データセンター)、さらには.cnドメインそのものに、取り締まりの矛先が向けられるようになりました。
データセンターは、定められたエビデンス(書類)を準備できないウェブサイト運営者にサーバーを提供した場合、即営業停止処分にさせられます。悪足掻きをすれば、China Mobile、China Telecom、China Unicomの3大通信キャリアが、データセンターとの通信回線を即時遮断します。
さらに.cnドメイン名取得の審査が厳格になり、昨年末までには、登記された企業や団体でなければ.cnドメイン名の取得が実質的には不可能になりました(個人が.cnドメイン名を新規取得することが実質困難になりました)。1月14日には、.cnドメイン名の全取得者に対し、企業や団体であれば営業許可証、個人であれば身分証明書を、1月末日までに提出するよう通告が出されました。

中国の知人の会社が、ドメイン名取得代行のお仕事をしています。1月15日にその会社を訪ねると、てんやわんやの大騒ぎでした。その会社が代行した.cn取得者は30万件で、2週間以内に取得法人や個人の証明書類を取り寄せて、.cnドメイン名を管理するCNNIC(中国インターネット情報センター)に提出しなければならない、とその前日に告げられたのです。
提出が求められているドキュメントは5種類、150万の書類を取り寄せ、内容を確認して、CNNICに再提出しなければ、そのドメインが取り消されてしまいます。しかも、ドメイン名取得者からのPDFやファックスによる提出は不可で、ペーパー・コピーを取り寄せなければなりません。
30万セット150万部の提出書類のチェック要員として、各部門から300人のスタッフを再配置し、隣のオフィスビルを1フロアまるごと臨時で借り上げて、準備に大わらわでした。
提出を求めた政府機関が、こうした費用を負担してくれるわけがありません。ドメイン取得者に負担してもらうわけにもいかず、その会社は費用のすべて負担することに決めたそうです。着払いの送料だけでも300万RMB(約4,000万円)かかるけれども、「こうした時期だからこそ、.cnドメイン取得者の権利を守りたいから。」という知人の脳裏には.cnドメイン名の稀少化をチャンスと捉えるビジネス・マインドがたっぷりあるのでしょうが。

「巨大なパワーが、遂に動き始めたという恐怖を感じる」

中国当局が行ってきた様々な政策と比較するなら、インターネットに対して中国政府は、これまで比較的寛容な態度を取ってきたと思います。
当初はインターネットの過小評価からだったかもしれませんが、今世紀に入ると情報の流通が経済成長にもたらす効果を積極的に捉えるとともに、政体に不安定となる情報が管理可能と考えたのでしょう。外国資本のインターネット関連企業への投資も魅力的ですし、インターネット業界からNASDAQやNYEに上場する企業がたくさん出ることも中国のイメージ向上につながります。この数年、規制は徐々に強化されてきましたが、勝ち馬に乗れとばかりに複数の政府機関が"通行手形"の発行とそれによる利権確保に走ったから、というのが私の見方でした。
例えば2008年、動画投稿サイトにライセンス制が導入された時も、ウェブサイト運営会社はさほど動揺しませんでした。コネを操り、放送映画総局の然るべき人物に辿りつければ、要件が満たされていないサイトであっても、ライセンスを取得する道が残っていたからです。同様に、ICPライセンスを取り仕切る工業と情報化省、オンラインゲームなどのコンテンツを取り仕切る文化省なども、末端での運用に対しては柔軟性がありました。騒乱事件をきっかけにインターネットやSNSから遮断されていた新疆ウイグル族自治区であっても、少なからぬ人たちがインターネットやSNSを享受できていたのです。

ところが昨年9月以降、特に12月に入ってからの規制の厳格化は、これまでのものとは様子が違います。インターネット利権の末端で、きっと甘い汁を吸ってきたと思われるお役人さんも、「今度ばかりはどうにもならない」とウェブサイト運営会社を冷たく引き離す始末です。
中国共産党中央宣伝部が"指導力"を発揮して、所轄の政府機関の意見を無視して、強引に推し進めているようなのです。
工業と情報化省の管轄でありながら、中国科学アカデミーの影響下にもあり、インターネットの縄張り争いでは中立的な立場を通してきた、.cnドメインを管理するCNNIC(中国インターネット情報センター)の告知ページをみると、現場の慌てぶりが良くわかります。
  2009/12/10「ドメイン名登録情報の正確化のための特別措置について」
   ※ドメイン名取得代行業者向けの徹底でした
  2009/12/10「ドメイン名登録手続き違反業者の処分について」
   ※前日のCCTVの番組で告発されたドメイン名取得代行業者の処分を発表
  2009/12/10「ドメイン名登録手続き管理の強化について」
  2009/12/11「ドメイン名登録手続き審査の更なる強化について」
  2009/12/22「不正ドメイン名登録者の通報奨励」
  2009/12/24「ドメイン名登録者にウェブサイト登録のリマインド」
   ※12月15日に工業と情報化省が発表した「ケータイによる児童ポルノ撲滅運動指針」を受けて
  2009/12/28「通報活動の実績報告」
   ※半月で13,175件の不正ドメイン名登録者を検挙
この後も「告知」は続くのですが、中共中央宣伝部からの「まだまだ生温い!!」と言うCNNICへの"指導"の雄叫びが聞こえてきそうです。

中国当局のインターネット規制には当然批判的でありながら、「政策には必ず対策があるから」と楽観的な見方をしていた中国の知人は、「今回は、何だか巨大なパワーが動き始めたという感じで、恐怖を感じる」と話していました。その巨大なパワーとは軍部なのか、改革開放路線への反動なのか、知人にとっては容認できる範囲を越えるような何かかも知れない、と。

中小サイトが駆逐され、巨大メディアの楽園に

中国国内インターネットの取り締まり強化で、10万以上の中小ウェブサイトが閉鎖に追い込まれたと言われます。
中国当局は「著作権を侵害するサイトと児童ポルノなどを含む猥褻サイトの撲滅のため」だと言います。確かに、閉鎖に追い込まれたウェブサイトのほとんどが、そうしたサイトです。現に著作権保護の強化や低俗系コンテンツへの取り締まりは、インターネットだけではなく、ほかのメディアや出版物も対象となっています。中国政府に、知的所有権の保護強化を求め続けてきた他の国々としては、歓迎すべきことかも知れません。
もちろん、こうした規制の強化が、政権側の政治的意図と結びついている、と考える人たちが圧倒的に多いのも事実です。

中小ウェブサイトへの取締りが進む2009年12月28日、中国ネットテレビ(CNTV.cn)が正式にオープンしました。CNTV.cnは中国"国家機構"が用意したインターネット動画コンテンツのプラットフォームです。CCTVをはじめ地方テレビ局の衛星チャネルはもちろん、中国内外の人気ドラマや映画、NBAやF1を含むスポーツなど豊富なコンテンツを、パソコンからはもちろんのこと、ケータイやテレビでも視聴することができます。表には出ていませんが、CNTC.cnは中共中央宣伝部の関与が極めて強いと考えられます。
また、成長中のインターネット企業に中国当局が出資するケースも増えています。
各種ライセンスの取得困難、手続きの煩雑さ、コンテンツ管理の厳格化など、中国でインターネットのウェブサイトを運営してためには、政府機関との"良好な関係"はもちろんのこと、資金面などの企業としての体力が一層重要にになってきました。中小のウェブサイトが生き残れなくなるばかりか、一人二人で始めたベンチャーが大成功をおさめるというチャイナ・ドリームをうむ環境すら無くなりつつあります。

Yahoo! Japanがほぼ独り勝ちと言える日本とは異なり、中国のインターネット・メディアは実に多様でした。総合ポータルサイトですら、常に上位3〜4社が競り合ってきました。動画共有やオンラインゲームなどエンタテインメント系になると更にたくさんのウェブサイトがしのぎを削ってきたのです。
国内向けインターネットの規制は、インターネット・メディアの寡占化を推し進める結果につながるでしょう。ショッピングモールにおける淘宝網(TAOBAO)のように、各サービス・テリトリーで巨大プレイヤーの一人勝ちする未来が待ち受けているかも知れません。
Googleの中国事業における主たる収入源は、AdwardとAdsenseでした。中小のウェブサイトが広告主にもなり、広告メディアにもなる、いわゆるロングテール・モデルです。ウェブサイトの開設や運営が規制され、巨大メディアの寡占が進めば、そのビジネス・ターゲットは激減してしまいます。

Googleがそうした未来を見立てて、中国から手を引こうとしているのだとすれば、そのビジネス・センスをどう評価したら良いのでしょうか。

国営通信社・新華社が選んだ2009年中国を象徴する26のキーワード

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1.『60周年』
中華人民共和国の建国60周年。


2.『大阅兵』
10月1日の建国記念日に北京のメインストリートで行われた軍事パレードと閲兵式。

3.『保八』
経済成長率8%の堅持。


4.『索马里护航』
商船等護衛のため、人民解放軍のソマリア沖派兵。


5.『气候变化』
気候変化。

CO2排出量に関して、中国はある時点との排出総量比較と言う考え方を持っていません。GDP単位あたりの排出率を現状より40〜50%削減していく、と表明しています。

6.『低碳』
低炭素社会。

このあたりまでは、やはり国営通信社が選んだだけあって、マユツバものと言うか、おもしろみが無いですね。

7.『血铅超标』
一部地区の乳幼児の血液中から、基準値を超える鉛が検出された問題。

陝西省、河南省、湖南省、雲南省などで次々に発覚。工場周辺で発生しているので、たぶんその排気や排液が原因なのでしょう。

8.『校长推荐制』
校長推薦制度。

名門・北京大学では2010年の入学選抜に、高校の校長による推薦制度を導入することにしました。これは加熱する入試改革の一環と言われますが、人知主義中国だけにさまざまな心配も取り沙汰されています。

9.『躲猫猫』
猫隠し(かくれんぼ)。

「猫隠し」はかくれんぼと鬼ごっこをミックスしたような中国の子ども遊びです。雲南省昆明市で微罪により逮捕された青年が、拘留中に拘置所で亡くなったのですが、警察は原因を「かくれんぼ」によると発表しました。警察発表に不信を抱いたネットユーザーにより、真相究明運動が展開されました。結果、看守や警察官による暴力沙汰があったことが暴かれ、関係者が処分されました。

10.『钓鱼执法』
囮捜査。

慢性的なタクシー不足の上海では、白タクが市民の足になっています。警察はその取り締まりに囮捜査を導入。客として乗せたつもりが、目的地に着くや否や大勢の警察に取り囲まれ、タイホ!ただし、白タクの中にはお金儲けというより、帰りの足が無くなって困っている市民を見かねて善意で乗せてあげているようなケースもあって、こうした囮捜査には非難が集中。自分の指を切断して抗議する青年まで出現し、インターネットで話題になりました。

11.『欺实码』
速度偽装 / 70ヤード
。(中国語では同音)
杭州市で実力者の息子が死亡事故の加害者となった際、地元警察は加害車両の走行速度を70ヤード/秒でスピード違反や酒気帯び運転では無かったと発表しました。しかし目撃証言などから警察発表の信憑性がまたしてもインターネットで追求され、警察は誤りを認め謝罪することになりました。ま、誤りと言うよりは、加害者に過失が無かったように実力者が警察に圧力をかけたか賄賂を渡した、と言うことは明白ですが。

12.『严打酒驾』
飲酒運転取り締まり強化。

悪質な場合は死刑を適用。

13.『同命同价』
人の命は同じ値段。

都市部と農村部との間にある、死亡賠償金の格差を是正していこうとする動き。

14.『户籍制度破冰』
戸籍制度雪解け。

中国の戸籍は農民と都市生活者を厳格に区別する制度でした。農民を土地に引き止めておくため、都市部に永住できないルールだったのです。ところが、最近では上海市が一定の条件を満たした農村からの移住者に上海市の戸籍を与えるようになったり、北京市でも農村部からの出稼ぎ労働者などに与えられる臨時居住証が戸籍に近い機能を果たすようになっています。これは現状の追認でもありますが、都市部に農民を受け入れるだけの余裕ができているからでしょう。

15.『文化产业』
文化産業。

中国当局が重点産業に定めました。アニメとかゲームなども含まれます。言論や表現を取り締まるお役所だった文化部(文科省)がビジネスに本気で目覚めてしまった、と言う感じの困った現象が最近良く発生しています。

16.『蜗居』
カタツムリの家(狭苦しい我が家)。

中国の人気女流作家・六六による同名の長編小説がテレビドラマ化され11月に放映され話題となっています。住宅価格が高騰する上海で、10平米ほどのアパートで新婚生活を始めた夫婦の物語。大胆で卑猥な科白が多く、北京では部分的に停波したらしいと言う情報もあります。

17.『地王』
最高値の土地。

土地成金のことではなく、その地域で平米あたりの取引額が最も高い土地のことを言うようです。

18.『六连号』
六連番。

住宅バブルの中国では、地方政府が供給する格安マンション「経済適用住宅」が大人気で、当然のことながら抽選販売になります。当選確率は1,000倍を超えることもあるとか。武漢市が供給する経済適用住宅の抽選会で奇妙な事象が起こったことを、またしてもネットユーザーが指摘。何故か6つの抽選番号が連番で当選していたのです。この住宅の申込者は5,136件で当選は124戸分、6つ連番で当選する確率の計算をするサイトまで開設されたりして(どうも何億分の1と言う説と何百分の1と言う説があるようです)盛り上がりました。要はお役人が不正していたわけで、ネットがそれを暴いたと言うお話です。

19.『楼XX』
XX物件。

不動産バブルの中国で、いわく付きの怪しげ物件を言うようです。「楼停停」は建築認可などの問題で工事がストップしてしまった物件、「楼断断」は内部構造がひび割れだらけの物件、「楼歪歪」は歪みがあったり傾いたりしている物件、「楼脆脆」が工事中に倒壊してしまった物件、「楼高高」は高さ制限のため、例えば認可は12階建てなのに兵平気で20階の部屋まで販売しているような物件。中国語だとかわいい感じの女の子の名前のような発音だったりします。

20.『大学生就业』
大学生の就職。

09年の大学卒業生は611万人もいたそうですが、7月時点の就職率は68%で、世界金融危機を影響を受けてないと発表されました。もうも数字にごまかしがあったようで、あとで出てくる「被就业」の学生がたくさんいたようです。

21.『油价』
ガソリン価格。

原油価格や世界経済の不安定と、マイカー激増に伴なう需要増のため、ガソリン価格は先高感の強い乱高下。

22.『甲流』
新型インフルエンザ。

甲はAの意味なので、元来はA型インフルエンザを意味し、新型(いわゆる豚系)は当初H1N1と呼ばれていました。ちなみに、私が勤務先の全世界の事業所で最も最初に新型インフルエンザが集団発生したのは上海の現地法人でした。6月下旬のことです....。

23.『被XX』
XXさせられる。

中国語では「被」を動詞の前につけると受動態になりますが、本来の文法破りで名詞の前「被」をつけて、「自分の意思に関わらずいつの間にかそうなった」、と言うような意味にする使い方がネットから流行しました。例えば、就職率を高めるため書類上で就職させられたことになったことを「被就业(被就職)」、自発的ではいのに寄付金を出させられてしまったことを「被自愿(被ボランティア)」などと使う。感覚的には日本で流行った「友愛される」に近く、権力側に無理やりXXされる、と言うニュアンスを含んでいるように思えます。

24.『偷菜』
野菜を盗む。

mixiが提供するアプリ(ソーシャル・ゲーム)『サンシャイン牧場』のルーツは中国にあります(たぶん)。開発を中国で行っているから、と言うのではなく、中国で大ブレイクの兆しにあった『开心农场(楽しい農場)』の焼き直し(悪く言えばバクリ)と考えられるからです。このソーシャル・ミニゲームは2008年にサービスインし、中国のSNS"開心網"などを通じて爆発的に広がりました。「野菜を盗む」のはこのゲームのアクションの一つで、ネット上では「野菜盗んだ?」があいさつ代わりになりました。

25.『网瘾训练营』
ネット依存症治療施設。

中国では1,600万人の青少年がインターネット依存症に罹っていて、内400万人は重症と言われています。こうした人達を治療するための訓練施設(塾)もビジネスになっていて盛況ですが、スパルタ式教育や隔離など行き過ぎた療法により死者が出るなど、社会問題化しています。

26.『刘翔复出』
劉翔復活。

中国人民の期待を一身に背負っておきながら、08年の北京オリンピックを途中棄権したハードル選手・劉翔が上海で開かれた国際大会で優勝し、自らの復活を宣言しました。

2009年のトレンドとしては、クルマ社会化、不動産バブル・住宅の高騰、ネットによる腐敗小役人の告発と言う感じでしょうか。

CCTVのCM枠オークション結果から、2010年の中国経済を占ってみる。

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中国中央テレビ(CCTV)の2010年のゴールデンタイムCM枠のオークションが11月18日の行われました。来年の中国経済を占うものとして、その結果を概観してみます。
CCTVは原則として中国全土をカバーしています。富裕層の多い都市部を中心にテレビ広告を行うのであれば、北京や上海などの地方テレビ局で行ったほうが効率的になります。CCTVで、特にゴールデンタイムで広告を行うことは、内陸や農村部まで含めてカバーすることになりますから、富裕層だけではなくテレビを視ることもできない、いわゆる貧困層を除く中国の大多数の消費者に向けた企業戦略の傾向を、CCTVのCM枠オークションの結果が示してると言っても過言ではないと思います。

まず、落札総額は110億RMB(1,500億円)で前年(2009年)と比べて18.5%増加しました。金融危機の真っ只中に行われた前回のオークションとの比較とはなりますが、それでも前回もその前と比べて落札総額は伸びていたのです。来年も引き続き内陸部を中心に経済成長が続く、と落札した広告主企業はみているのでしょう。

業種別の落札金額ランキングでは、酒類がトップです。これは例年見られる傾向で、その多くは「白酒」と呼ばれる中国酒の広告主です。
2位は、例年上位の常連となっている家電、乳製品、医薬品を押さえて金融が入りました。その多くは銀行ですが、証券など金融商品を扱う"基金・投資"会社や生命保険会社も大量のCM枠を落札しました。生活にゆとりができて、マネーゲームに参加する中間層が増えてくる、ということでしょうか。
いっぽう日本では常に広告主上位になっている自動車は、トップ10に入っていません(12位でわずか3%程度のシェアです)。経済の底上げが進む中国といえども、年間1,000万台も売れている自動車はまだ中間層以上向けの"ぜいたく品"ということなのでしょう。

1位:酒類
2位:金融
3位:家電
4位:乳製品
5位:食品
6位:トイレタリー
7位:飲料
8位:通信
9位:IT
10位:アパレル

ちなみに、最も多額のCM枠を落札したのは「蒙牛」と言う乳製品の会社です。ことしは有害成分の検出でイメージダウンしましたので、来年は大量のCMで挽回を狙っていくのでしょうか。2位は「飛鶴」と言うやはり乳製品の会社です。こちらは牛乳やヨーグルトと言うより赤ちゃん向けの粉ミルクが主力製品です。ベイビー・マーケットは来年も続伸していくのでしょう。
トップ10の中で、いわゆる外国ブランドはP&Gとユニリーバの2社のみ。両者とも石鹸やシャンプーなどの日用品を内陸部の農村地帯にまで拡販していますから、もはや舶来の高級ブランドではなく中国に浸透しています。

1位:蒙牛(牛乳・ヨーグルト)
2位:飛鶴(粉ミルク)
3位:格力(GREE/白物家電)
4位:匯源(飲料/コカコーラによるM&Aが独禁法により頓挫)
5位:美的集団(MIDEA/白物家電)
6位:P&G
7位:波司登(ウール製品)
8位:双匯(ハム・食品)
9位:脳白金(健康食品)
10位:ユニリーバ

トップ100広告主の中で、外国ブランド企業を探してみると、以下の通りです。やはり自動車関連が強気です。日本企業ではトヨタのみという結果です。都市部の中間層や富裕層を主たるターゲットとしている日本ブランドは、CCTVへのCMはあまり使わないのです。

15位:フォルクスワーゲン(一汽大衆)
71位:NIKE
76位:ペプシ
77位:シェル(売牌統一)
79位:トヨタ(カローラ・クラウン・一汽豊田)
87位:コカコーラ
93位:トヨタ(カムリ・広汽豊田)

ウイグル人と漢民族の仲を取り持つ<コカ・コーラ>のような何か

中国からはYoutubeはもちろん、facebookもTwitterもアクセスしにくい状況が続いています。
この状態は、7月の新疆ウイグル族自治区で発生した主として漢民族とウイグル人との暴力沙汰以来、断続的に続いています。

ことの発端は、広東省に出稼ぎにやってきたウイグル人のせいで失業したと思い込んだ(実際にそうだったかもしれませんが)漢民族の工員が、「西北から来た男6人が、工場で漢民族の女性2人をレイプした」というデマをインターネットの掲示板に書き込んだこと。
6月26日、この掲示板をみた漢民族が"事件"の仕返しのため、出稼ぎウイグル人が多く働いている広東省の玩具工場の寮に押し寄せて、ウイグル人を叩きのめすと言う暴動に発展してしまいました。事件は中国国内でもある程度報道され、中国側メディアによると、8人が亡くなり160人が重傷を負ったとされています。

いっぽう、広東の工場寮で大勢の漢民族の攻撃に遭ったウイグル人の映像は、翌日にはYoutubeにアップロードされるとともに、中国の一部動画投稿サイトなどにも転載されます。
こうした動画は、facebookやTwitterを通じて、広東から遠く離れた新疆ウイグル族自治区に居住するウイグル人や、世界中に散らばるウイグル人のコミュニティにシェアされていきました。
そして、同じ民族の仲間が漢民族にボコボコされた映像を目の当たりにしたウイグル人は、やはりfacebookやTwitterを使って"復讐"を呼び掛けていったのでしょう。7月5日深夜、新疆ウイグル族自治区の中心都市ウルムチで、例の暴動が勃発するのです。

新疆ウイグル族自治区の中国帰属は、古く漢や唐の時代にまで遡る問題で、共産党政権以降の事象だけを取り沙汰すべきでは無いと思っています。資源、宗教、人権侵害など様々な問題が指摘されていますが、やはり民族間の対立が諸問題の根源ではないかと思います。

私の同年代の中国人実業家・Aさんが北京で過ごした大学時代のお話です。
1980年代半ばのこと、Aさんの通う映画系の大学には音楽やダンスの学科もあり、他の大学よりも多くのウイグル族学生がいましたが、普段はほとんど交流も無く、ウイグル族の学生はウイグル族だけでつるんでいました。いっぽう満州族、朝鮮族、ミャオ族など、漢民族以外の"少数民族"の学生は、Aさんたち漢民族としばしば行動を伴にしていました。
Aさんの友人が、当時としては非常に高価なステレオ・ラジカセ(ステレオ・カセットテープ・プレイヤー)を入手したとのことで、漢民族の仲間8人が、学生寮の友人の部屋に集まりました。
そして、マイケル・ジャクソンの『スリラー』の海賊版カセットテープを大音量で再生し、踊り始めました。ディスコなどなかなか通うことのできなかった当時の中国の地方出身の学生たちが、学生寮の一室をディスコ代わりにして大騒ぎを始めたわけです。
そのうち、階下のウイグル族の学生がクレームにやってきました。「うるさくて勉強できないので、止めてくれないか。」と言う、ごく常識的な要求でした。けれども、Aさんとその漢民族の友人たちは、音楽とダンスを続けました。
すると、階下のウイグル族の学生が仲間3人を連れてクレームにやってきました。漢民族の学生は「分かった、対応する。」と言いつつも、「ウイグル族の言うことなど聞いてたまるか」という雰囲気で、引き続きダンスで盛り上がっていました。
しばらくすると、今度は階下のウイグル族の学生が10人程のウイグル族の仲間を連れて、またクレームにやってきました。「何度言ったら静かにしてくれるんだ!!」。マイケル・ジャクソンに浮かれていた漢民族学生が「仲間を連れてくるなんて卑怯じゃないか!!」と筋の通らない言いがかりをつけたので、ウイグル族学生の一人が"実力行使"に出てしまいました。漢民族学生の当時たいへん貴重だったステレオ・ラジカセを取り上げ、部屋の外に放り投げてしまったのです。
これを合図に、ウイグル族10人対漢民族8人の乱闘が始まりました。双方とも"ヒカリモノ"までは用いませんでしたが、流血の事態となり、駆けつけた大学職員が止めに入りました。

乱闘の参加者全員が空き教室に集められ、主任教官から事情説明を求められました。
ウイグル族の学生は、寮でディスコの如く大音量の音楽とダンスを楽しんでいた漢民族の学生たちを責めました。いっぽう、漢民族の学生は、高価なステレオ・ラジカセを放り投げて壊してしまったウイグル族の暴力性を責めました。
お互いの言い分は平行線のままでしたが、主任教官は"喧嘩両成敗"ということで両者に和解を求め、その証として、双方の代表者(Aさんの友人が漢民族代表、その階下の学生がウイグル族代表)を前に出し、握手を促しました。ところが、双方とも右手を伸ばそうとはしません。
そこで、主任教官は左右に分かれた二民族代表者の間に立ち、一本の瓶入りコカ・コーラを取り出しました。
「それなら、コーラでも飲んで、冷静になりなさい。」と同時に左右から右手が伸びてきてコカ・コーラの瓶を掴み取ろうとしました。その瞬間、主任教官は各民族代表者の右手を掴み取り、強引に重ね合わせて握手に持ち込みました。
かくして、漢民族とウイグル族の争いは、解決を見ることとなったのです。

「当時は、ステレオ・ラジカセと同じくらい、コカ・コーラが希少だったのかなぁ...」とAさんは感慨深そうに思い出話を語り終えました。
ひと財産を築き、いい歳をしたオヤジになった、共産党一党支配には反対で、時には"民主化運動"の片棒を担ぐこともあるAさんではありますが、「ウイグル族はセコイから嫌い」と言っています。漢民族がウイグル地区を支配することこそ"セコイ"(ずるい)と、多くのウイグル人は思っているでしょう。
政治的な問題に深入りするよりもまず、この二民族の間を取り持つ機能こそ必要なんだと思えます。
Aさんのエピソードに登場する主任教官ように、双方の言い分を一応は聞いてあげつつも、最終的には有無を言わさず仲直りさせてしまうような解決方法を模索することこそ現実的なのではないでしょうか。
その主任教官が漢民族だったかどうかは差ほど重要ではなく、むしろ彼が差し出したコカ・コーラのような何か...。いや、誤解を怖れずに申しあげるのなら、双方がシェアできるような(公平なシェアを実現できるか別にしても、共通のインタレストとなり得る)経済の営み、こそ民族間の対立を和解に導くキーエッセンスになるのではないか、と私は思ってしまいました。

中国共産党のプロパガンダ映画にならなくて済んだ、陸川監督の『南京!南京!』

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2005年から準備を始めて、日本軍による南京攻略70周年にあたる2007年に公開されるだろうと言われていた陸川監督の映画『南京!南京!(City of Life and Death)』(中国共産党機関紙「人民日報」のニュースサイト人民網日本語版の特集ページ)は、中華人民共和国建国60周年にあたる2009年の4月にようやく中国で劇場上映が開始されました。
陸川監督が脚本に4年もの時間を費やしてしまったり、その脚本の中国当局(国家ラジオテレビ映画総局)による審査にも多くの時間を費やしてしまったり、撮影が始まってから陸川監督が盲腸炎にかかって3回も入院したりしたため、製作が大幅に遅延したためです。

南京南京


「ただ死者数の論争にはあまり意味を感じない。だから映画では死者数には触れない」とインタビュー(産経ニュースの福島記者のブログより)で語っていた陸川監督だったのに、いきなり冒頭の献辞で「30万人の犠牲者」の字幕が現われたときには、嫌な予感がしました。ただ映画を観終わったときに、これは中国当局のセンサーシップ(検閲)を通すための譲歩の一つだったのだろうな、と納得することができました。

前半部分は、1937年12月の日本軍南京入城、監督敢えて自分の姓を与えた<陸>という架空の兵士とその仲間たちの抵抗戦、そして大勢の中国人捕虜の焼殺・射殺など、静と動を巧みに織り交ぜることによってリアリティと迫力が浮き立つ戦争映画という印象。後半に入るにつれて、日本軍下士官<角川正雄>、南京安全区国際委員会委員長でドイツ人の<ジョン・ラーベ>、その中国人秘書である<唐氏>とその家族、安全区の中国人女性リーダー・姜先生、陸兵士とともに抗戦し日本軍の捕虜となったものの銃殺の中で生き残った少年<小豆>の精神的葛藤に焦点をあてたヒューマン・ストーリーへと変化していきます。
その中の中心人物は、日本人俳優・中泉英雄が演ずる日本軍下士官<角川正雄>と言って良いでしょう。繰り返される殺戮や非人間的な生存の継続に違和感を深めるようになった<角川>は、日本軍に連行されていく中国人女性<姜先生>の願いを聞き入れて射殺してあげます。これは恐らく自身の強い意志に基づいた最初で最後の殺人だったのでしょう。そして、やはり捕虜となった少年<小豆>をこっそりと逃がしてやり、自らは拳銃で命を絶ってしまいます。
日中戦争を描いた中国映画において、<角川>は「日本鬼子」とはかけ離れた異質な日本人登場人物です。多くの映画では人間としての心情を描くことを避けてきた日本軍兵士ですが、<角川>は田舎の母を想ったり、慰安所の日本人女性に恋をしたり、殺戮や生と死の意味に悩み苦しんだりするのです。血と埃とで満ちた映画の中で、<角川>が拳銃自殺するラスト・シーンでは白いたんぽぽの冠毛がモノクロ映像を引き立て美しい最期を飾っています。まるで、角川の死を美化しているかのように。

「鳥獣にも劣る日本兵の中にも、角川のような良い人間がいたものだ」
中国の映画レビューサイト・時光網にも、このような書き込みが多く寄せられていました。
<角川>の上官である伊田は中国における典型的な「日本鬼子」だったのかもしれませんが、<唐氏>を処刑するときの表情は、陸川監督が<伊田>をすら典型的な「日本鬼子」に仕立て上げることを躊躇っていた、と考えてしまいます。

「日本鬼子」を人間的に表現してしまったこの映画には、当然の如く中国の人たちから厳しい意見が寄せられました。ただし、批判は日本人兵士の描き方より、<ジョン・ラーベ>の描き方や映画のテーマそのものに関するもののほうが多かったようです。

陸川監督はかつてのインタビューで「『シンドラーのリスト』のような映画にはしたくない」と語ったらしいのですが、中国人(特に一部の南京周辺居住者)にとってジョン・ラーベはシンドラーのような存在と言えます。彼(彼女)らが信じる史実では、糖尿病悪化にもかかわらず私財まで投げ出しギリギリまで南京安全区の難民保護活動を行い、ドイツ帰国後は日本軍の"悪事"をナチスや国際社会に訴えた中国人民の救世主(それは彼自身の日記やそれに基づく中国・フランス・ドイツ合作映画『John Rabe』(フロリアン・ガレンバーガー監督)(レコードチャイナ・関連記事)に描かれたジョン・ラーベからもたらされたものであり、当時の彼のビジネス的利権などの背景を無視した評価であるのでしょうが)。
日本人兵士の横暴にただおろおろし、難民を取り残して南京を立ち去ってしまう『南京!南京!』での<ラーベ>の描かれ方が、納得できなかったのでしょう。
陸川監督は「第三国のラーベはシンドラーにはなれない」と言う趣旨の発言をしています。『南京!南京!』のシンドラーはラーベではなく、むしろ日本人兵士<角川>なのかも知れません

映画のテーマに関する陸川監督の言動は、時と場合によってころころ変わっているようです。
当局からの許可も出ず、クランクインもできていなかった、2007年初頭の産経新聞福島記者によるインタビューでは、「人知、人間性の真相」がテーマと語っています。いっぽう、2009年春の映画公開時には「この作品は屈辱ではなく中国人の栄光を語るものだ」と述べています(人民網・日本語版)。
確かに映画の前半は、<陸兵士>たちの勇敢な抗戦や「中国は永遠に不滅」と叫ぶ捕虜たちなど、"中国人の栄光"っぽいシーンが無いわけではありません。ところが、抵抗を試みた中国人は皆死んでしまう矛盾。「栄光がどこに描かれているのだ、描かれているのは中国人の屈辱だけではないか」などと言う罵りが、中国語のBBSに書き込まれています。

前半と後半でトーンもテーマも異なっているように思える『南京!南京!』。中国の作家・王朔 (ワン・シュオ)は陸川監督に「前半を半分カットすれば世界的な名作だ」と言ったそうです。ただ私自身は月並みながら、英語のタイトルにも示されているように「生と死」がこの映画の全編を通したテーマになっているのだろうと思います。
捕虜となり辱めを受けて"屈辱的な生"を持続させていくより、<角川>に"栄光の死"を求めた<姜先生>、生き続けることが苦悩の連続かも知れないと悟った<角川>が敢えて生き伸べさせようとした<小豆>。そして<角川>自身は死を選んぶことになる。死ぬことと生き続けること、殺されることと生き延びること、大勢の死、ほんの小さな命、一人の少年の解放、希望、命の軽さ、或いは重さ。いまもいき続けている小豆や唐夫人のお腹の中の新しい生命....。
前半の戦闘や殺戮のシーンに妙なリアリティを感じさせるからこそ、後半が虚構性の高い"物語"に思えてしまうのでしょうが、ラストシーンの小豆の笑顔と「今も生きている」と言う字幕は、どの国籍の観衆であっても胸を熱くするようなヒューマニティに訴えかけています。
登場人物個々の内面まで精緻に表現仕切れていない印象を持った人でも、全編モノクロで記録映画のように観通した人でも、タンポポの綿毛が美しいラストシーンによって、人類に不変のヒューマニティを描いたフィクション映画であることを認識するのではないでしょうか。

少なくとも、『南京!南京!』は冒頭の献辞を除いて中国共産党のプロパガンダ映画にならずに済んでますし、少なくとも"反日映画"では無く"反戦映画"に属する作品です。前作の『ココリシ』(拙ブログ参照)の直線的な力強さと比較すると、陸川監督が欲張りすぎたのか、いろんなものを詰め込みすぎた印象はぬぐいきれませんが、決して失敗作に属するものではありません。
日本では配給元が見つからず公開の予定が無いと聞きますが、偏狭な政治的配慮など気にせず、ぜひメジャー公開して欲しいものです。こうした映画が中国で創られ、公開されている、ということによって、現代の中国社会への誤解がほんの少しだけ解けるかも知れません。

【書評】田原(Tian Yuan) 『水の彼方 〜Double Mono〜』

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田原(Tian Yuan)の『水の彼方 〜Double Mono〜 』は、私にとってある意味で難解な作品でした。

1985年生まれとは言え、16歳でHopscotch(跳房子)と言うバンドでデビューし、2年後には香港映画でメインキャストを演じ、著名な映画賞をも受賞した田原(Tian Yuan)を、「八〇后(中国の80年代生まれの若者)」の典型として語ることは無理があると思いますし、典型的な「八〇后」が田原(Tian Yuan)を支持しているか、というのも疑問です。

<女の子たちのおしゃべりの話題>といえば<テレビドラマ、新しいダイエット法、オープンしたばかりのレストラン、S.H.E.、心理テスト><男の子はもう少し単純で、バスケかサッカーかゲームのことだけ>。
『水の彼方 〜Double Mono〜 』の冒頭で語られる高校二年生の放課後の喧騒こそ、典型的なその時代の「八〇后」でしょう。
映画『タイタニック』のディカプリオとウィンスレットの真似をして、船先に立ち手を広げセリーヌ・ディオンの『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』を歌うのも、私がイメージする典型的な「八〇后」です。「ニルヴァーナ」や岩井俊二の映画『スワロウテイル』ですら、私の理解している「八〇后」のイメージからみると少し尖っています。

私に言わせれば、田原(Tian Yuan)は八〇后のサブカルチャーそのものです。

冒頭の引用されている清代の怪奇小説『聊斎志異』の中の短編『水莽草』は田原(Tian Yuan)自身が「日本語版あとがき」で述べているとおり、同世代人にとってポピュラーなものではありません。
ビートジェネレーションのユダヤ系アメリカ人作家・アレン・ギンズバーグの作品『リアリティ・サンドウィッチズ』にしても「八〇后」のバイブルとは言えないでしょう。出典を理解してからでは無いと読み進められないかも知れません。

作品を更に難解にしている要因は、青春(心境)小説と幻想小説とのボーダレスな交錯と、突然の白昼夢、それに伴う時制や人称の転換にあると思います。もちろんこうした手法により、主人公・陳言の内面をよりデリケートでリッチに表現することができたのだと思います。
泉京鹿さんが翻訳に取り組み始めて、2年近い歳月を経て、ようやく日本語版として完成させた苦労が分かる気持ちがします。

原題『双生水莽』の一部となっている<水莽草>。
主人公・陳言が日記に挟んでいる一本の根から二本の葉が伸びている水草が<双生水莽(双子の水莽草)>です。武漢市内を貫く長江(揚子江)の河岸の湿地で摘んだものなのです。
田原自身は日本語あとがきで、前述の怪奇小説『聊斎志異』の短編『水莽草』の物語を田原自身の青春時代と結び付けています。小説の中でも、主人公・陳言が<周波数>の合う仲間にお気に入りの物語として『水莽草』を語って聞かせたています。水莽草を食べて水莽鬼(亡霊)になり、好いてくれたオトコを身代わりにしてでも現実世界に帰るべきか葛藤しているのが陳言なのか、『水の彼方』を書いている田原自身なのか、こうした二重性が『水の彼方』の中で、作者・田原と主人公・陳言との関係をより複雑なものにしています。
幸いにも田原本人にこの件について尋ねる機会がありましたが、「この作品は私自身のイメージから飛び出した言葉の物語」だとお答えいただきました。短編『水莽草』の美少女水莽鬼(亡霊)三娘のように、小悪魔的で小悪女的だったのは、 『水の彼方 〜Double Mono〜 』を書いた時の田原自身だったのでしょう。

<水莽草>をはじめ、<(赤い)恐竜の泡><象魚(ピラルクー)><月の中の小人>などのファンタジックな比喩的象徴が、『水の彼方』の文学性を強くするとともに、難解にもさせています。
こうしたメタファーは、作品に詩的な生臭さ(泉さんは訳者あとがきで<生物学的匂い>と述べています)を醸し出させ、作者のセクシャリティ(女性性)をいっそう強く引き出しています。
いっぽうで、主人公・陳言の従兄弟との初恋のエピソードは、まるで綿矢りさの『蹴りたい背中』のように甘酸っぱい思春期小説風でもあり、舞台が北京に移ってから結末までの展開はスピーディかつ残酷で、ゴダールの『気狂いピエロ』を彷彿させてくれたりと、作者・田原或いは主人公・陳言の複数のパーソナリティが一つの小説に封じ込められている感じがします。

『水の彼方』は、田原自身の<周波数>にシンクロした<重力ポテンシャルエネルギー>によって自動記述された、幻想的青春小説と言えるでしょう。
1950年代アメリカの若者がサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』(『水の彼方』では主人公・陳言自身中学2年生のときに読んでいる)を愛読し、大人の世界を自分自身の価値観で拒み通そうとする主人公の少年に共感したように、また村上龍の『限りなく透明に近いブルー』が1970年代の日本のサブカルチャーから若者の普遍的な虚脱感(村上は中国語版の解説で<近代化の達成という大目標を成し遂げた後に残る「喪失感」と述べている>を書き記したように、『水の彼方 〜Double Mono〜』は生活も風景も価値観も目まぐるしく変わる現代の中国を舞台に大人になる一歩手前の少女のモラトリアム体験を幻想的に描いたものだ、と私は勝手に解釈しています。

第二次大戦後栄華を尽くした1950年代のアメリカ、GMのシボレー、ライ麦畑。高度経済成長期の日本、学生運動、オイルショック、限りなく透明に近いブルー。
そして、21世紀初頭の中国。WTO加盟、富裕層の拡大、GMもTOYOTAも中国頼り。そうした中、次代を先んじて捉えているように行動しているように見えても、実は置いてけぼりにされている、若者のこころの内側。
『水の彼方 〜Double Mono〜』は、若者のこころの中に突如現われる空隙を満たす液体の如く、世界中の若者に読み継がれていくことでしょう。新世紀エヴァンゲリオンのLC.Lみたいに、血生臭くけれと心地良く。

田原が音楽活動を本格的に再開するとのことで、たいへん楽しみにしています。
『水の彼方 〜Double Mono〜』の主人公・陳言と同様、ニルヴァーナが大好きだったという田原ですが、最近はまさに八〇后世代に人気のミュージシャン羽泉や李宇春を手掛ける音楽プロデューサー張亜東と組んで音作りをしているようです。張亜東作曲による『50 Seconds From Now』は、ヴェルベット・アンダーグラウンドのニコを彷彿させるアンニュイなヴォーカルで、冒頭に述べた八〇后サブカルチャー路線を証明してくれた感じです。
田原は、私が大好きなテレビヴィジョンも大好きだそうで、『50 Seconds From Now』の歌詞やヴォーカルは詩人ギタリスト・トム・ヴァーレインの影響も伺われます。
この秋にはアルバムが完成するとのことで、こちらのほうも大きな話題になって欲しいと願っています。



■関連リンク■
田原ブログ(新浪博客)
八〇后(中国新人類・八〇后(バーリンホゥ)が日本経済の救世主になる! (洋泉社Biz)=次代高消費層として捉えている点では普遍的な八〇后を確認できると思います
水莽草(青空文庫・田中貢太郎訳)
アレン・ギンズバーグ(ウィキペディア)
スワロウテイル [DVD](goo映画)
気狂いピエロ [DVD](ウィキペディア)
限りなく透明に近いブルー(ウィキペディア)
新世紀エヴァンゲリオンのLC.L(ウィキペディア)
張亜東(C-POP)
『50 Seconds From Now』音楽ファイル直接リンク)
ニコ(ウィキペディア)
テレビヴィジョン(ウィキペディア)
トム・ヴァーレイン(ウィキペディア)

ウイグル族+漢民族騒乱:中国当局が怯える"悪魔"

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7日のNHK NewsWatch9では、天安門事件の学生リーダーの一人でウイグル族のウーアルカイシさんの映像がカットされました。
8日午後のBSニュースでは、世界ウイグル会議議長ラビア・カーディルさんのインタビュー映像がカットされました。
8日深夜のBSニュースでは、ご丁寧に「中国でNHK Worldのウイグル関連の放映が突然カットされた」(上述のラビア・カーディルさんのインタビュー映像のカット)と言うニュースを、わざわざNHK World放映中のテレビ画面を撮影して伝えようとしていましたが、その途中でブラックアウトになってしまいました。

ちなみに北京からGoogle日本語でラビア・カーディルを検索すると、検索結果は表示されますが、検索結果のリンク先はすべてアクセス禁止状態です。
日本のニュースサイトでのウイグル族に関する事件の報道は、アクセスできます。

中国当局のセンサーシップの"基準"を私なりに考えて見ますと、"騒乱の指導者"の生のコメントは海外のテレビ局やウェブサイトであっても、中国にいる人たちには見せたくない、と言うことなのでしょう。
中国当局は、ラビア・カーディルさんやウーアルカイシさん、挙句の果てにダライ・ラマ14世までを、暴動の首謀者として"悪魔"扱いしようとしています。
海外のメディアが、こうした"悪魔"の生の囁きを、穢れ無き中国人民に伝達すると都合が悪いということでしょう。こうした指導者のコメントや意見が伝わるのがイヤなだけではなく、偶像崇拝すら怖れているんですね、きっと。

漢民族の愛国的ウェブサイトでは、ノーベル平和賞の受賞者と有力候補者であるお二人の写真が"悪魔のツーショット"として紹介されていました.....。
2009070721235628f
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