上杉隆氏の『ジャーナリズム崩壊』は日本の報道がいかにゆがんでいるか、その原因を明確にした点で画期的な著作である。

 論点の一つは記者会の存在である。ことに1978年に規約を変えてそれまでの単なる親睦団体から、取材規制を仲間のジャーナリストに対して行い、官僚や政治家の情報を独占する体制に移行したことが問題だと指摘している。

 また新聞社が、経営権と編集権が完全に分離せず、記者がその後経営者になって行く構造になっているため、ジャーナリストがジャーナリストとして自立することが妨げられ、社員として会社内の権力闘争に勝ち上がっていくことを目指すようになるとしている。

 そして政治部などは自民党の歴代派閥領袖と特定の記者が結び付き、それが一方では世論誘導的政治報道を生みつつ、結果的に首相になった政治家の担当記者が社内で出世するという、誠に不明朗な関係が生まれたとしている。

 NYタイムズ記者としての経歴もある同氏の見解は、今鳩山たたきに精を出している連中が、独立のジャーナリストというより、今まで慣例的に自民党・官僚べったりできた政治部「報道屋」の、民主党政権つぶしの、半ば生理的反応にすぎないことを教えてくれるように思う。