中盤戦の戦い方ー中将喪失後①の続きです。「自軍の中将を犠牲に敵軍大将をスパイで獲ったあと」の中盤戦が題材で、「 じっくり進めて、優勢な終盤につなげる」手法。
しかし素では、これが結構難しい。
たとえば、自軍(赤軍)が、少将、少将と出してみると最悪のパターンに陥ります。
お互いこういう風に対応する場合、将官の枚数で赤軍1枚、青軍2枚が残ります。
そうすると・・・。
青軍は、もう1枚の少将をできるだけ早く前に出し、2対1の状況を最大限に活用しようとするでしょう。青軍の理想形を右側に示します。
この状態になれば、赤軍にはもう勝ちはありません。なぜなら、赤軍大将が青軍の中将でも少将でも獲れば、赤軍大将の青軍司令部突入や赤軍司令部への戻りよりも早く、青軍が赤軍司令部を陥れるからです。(但し、両軍のヒコーキやその他の駒の残り具合で、引き分けにしかならない場合もあります。)
それでは、赤軍は、少将、大将(or 大将、少将)と出してみましょうか。
右か左かのいずれかの噛み合わせになります。
左の場合が、赤軍の理想形ですね。赤軍大将+少将vs.青軍少将となり、この先、赤軍としてはヒコーキを先に消耗しても、残り1枚の青軍少将をあぶりだせれば、悪くても引き分け以上の結果は望めそうです。
右の場合は、赤軍大将+少将vs.青軍中将+少将となり、五分五分の状況。お互い、勝負を決する駒(赤軍大将と青軍中将)を完全に把握して、膠着状態になる可能性があります。
しかし、左のように、赤軍に優勢な形に展開するのは、赤軍が青軍残り3枚の将官から中将を特定するのに成功する場合のみ。3分の1(以下)の確率でしかないことに留意する必要があります。
というわけで、とにかく、赤軍としては、中将を喪失した後、少将、少将と出すのは宜しくない。少将、大将(or 大将、少将)と出して、3分の1の確率に賭けるというのがとりあえずの答えになります。
・・・で、終わるわけにもいかないので、もう一工夫してみます。
運良く赤軍にタンクが1枚残っていないでしょうか。そのタンクで、青軍の将官1枚は特定できたという設定にしましょう。
この状況で、大将、少将と出していきます。しかし、今回のミソは、とにかく、将官と判明している青軍の駒を徹底的に避けることにあります。こっちは、大将ですから、パクリと獲ってしまいたくなる誘惑に駆られるかもしれません。もちろん、100%中将だと分かれば獲って良いのですが、少しでも不安があれば獲らないということです。
これが上手くいけば、赤軍にとって、最良の場合は、赤軍大将+少将vs.青軍将官1枚、悪い場合は、赤軍大将+少将vs.青軍中将+少将の状況になります。
なお、「中将特定確率3分の1」の法則はこの場合も生きています。しかし、今回の場合は、後者の悪い方に当たっても良いのです。
こういう構図になるわけですが、右の悪いパターンに当たっても、これまでとの違いは、青軍の将官駒をすべて明らかにしていること。この状態になれば、ヒコーキを先手を打って飛ばすことが容易になり、五分五分よりやや有利な状態で終盤戦を迎えることができます。
さて、ここまで読んで一度は納得した方も、実戦でやってみて、気づくことになると思います。「机上の空論ではないか?」と。
端的にいえば、「そのとおりです」という答えになります。
少なくとも3つ問題があります。
①赤軍大将が相手の少将を獲ったら即座に青軍中将のカウンターを受ける
②赤軍にとって、大将で相手の駒をとっても、それが将官だったか分からない
③青軍が残り1枚の将官を隠し続けて、赤軍の将官にぶつけてくれない
①についてだけ、若干の対策はあると思います。
赤軍のほうで、青軍中将が仕掛けてくれば早めに分かるよう、少将も同時に(大将と逆サイドの)前面に出しておく、そして、青軍中将が来たことが分かれば、間に合うように赤軍大将を敵軍司令部に突っ込ませる(手数に余裕がある範囲で、ヒコーキにサポートさせる)という方法。
「カウンター返し」とでも言うのか、しかし、戦法といえるほど洗練されたやり方でもありません。
②と③の問題に至っては、それぞれ「上手く読んで欲しい」「粘り強く指してほしい」としか付け加えられません。
ですので、「 じっくり進めて、優勢な終盤につなげる」場合においては、少し心理戦の要素を付け加えておきたいと思います。それは、先手を取りながら相手を十分に揺さぶる、ということです。
軍人将棋では時と場合によって、自軍が待ちの姿勢を取って、相手に先手を譲り、その中で活路を見出していくべき場面が確かにあります。
しかし、今回のように、敵軍に大将が無く、自軍に中将が無い場合は、自軍に(部分的に)決定的な強みがある場面として、大将の幻影を使いながら、相手を消極的に仕向けて、牙を抜いていくのが有効だと考えています。
すべての雑魚駒に大将という顔をさせながら前進させる、自軍大将を躊躇なく出しておいて敵軍の将官と思しき駒からひょいっと逃げてみる。一方のサイドの駒を獲られたところで、逆サイドの駒(これまた雑魚駒でも良い)を間髪いれず前進させ、カウンターを装い、相手の次の一手の方向を見る。このように、相手を揺さぶって、徐々に、自らの陣の防御のことや安全な手筋しか考えられないように仕向けてみましょう。
自軍としては、敵軍中将に遮二無二と突っ込まれてくるのが怖い、でも敵軍としては、中将が獲られると怖い、また、ヒコーキでスパイを無効化されるのが怖い。そう考えると、自軍には怖いものひとつ、敵軍にはふたつあるわけなので、そこを上手く突いていくことが肝心です。
大将を有する側としては、既に述べた「机上の空論」を押さえつつも、それだけでなく、心理的に優勢に立つことを狙う中盤戦、というのが、私の出している一つの結論です。なあに、上手く行かなければ、残りヒコーキを総動員しつつ、大将に突入させるまで。
大将を獲ったけど自軍は優勢でも何でもない、しかし、この勝負は(勝つも負けるも、という意味です)自分の手の中にあるんだ、という(妙な?)余裕を強みにしながら指してみてください。