軍人将棋友の会

囲碁や将棋、麻雀やオセロに比べるとメジャーとは言えない「軍人将棋」の普及を目指すブログです。

軍人将棋

どうやって相手の駒を記憶するか?

「中盤戦の戦い方-大将を獲った後」のシリーズが続いていますが、ここで、ちょっと話題を変えてに書いてみたいと思います。
自軍の貴重な大駒を犠牲に敵軍駒を識別したとします。軍人将棋はずっと駒は裏返しですから、その識別した駒をちゃんと記憶に留めておかなければいけません。どういう心構えや方策が考えられるでしょう?
なお、以下はインターネット上(このワーディングで正しいか自信がありませんが)で対戦する場合を前提にしています。

 私の場合、かつて妄想の類で思っていたのが、何かPCの画面上で相手の駒にマーキングして、動けば勝手にそれに付いていくようなことができないか。私はその辺の知識も技術もないので試みることもできませんが、便利そうですね。
そもそもこれが許されるのかについて、私には結論づけることができません。でも、そういうマーキングがプログラムの改変などを伴う場合は、ちょっとどうかなと思います。顔の見えない同士で対戦するわけですから、その媒介となるプログラムの「不可侵性」というものは守られたほうが良いかな、と。素人考えにも、そのようなマーキングをするプログラムがあれば、相手の駒を透視するプログラムも容易にできそうだな、という程度の印象論ですが。

 同様に、2人以上で軍人将棋をプレイする、たとえば、マーキング、記憶担当と作戦担当に分けて、作戦担当が相手の駒を分からなくなってしまえばアドバイスを求める、みたいな。
明らかにこれをダメとするルールはないと思います。たとえば、お父さんが軍人将棋を覚えたての息子に、あーだこーだとアドバイスをする、というような情景を思い浮かべてしまうのですが、これもダメとするのは、それはそれで夢が無いとは思います。
ただ、「勝つために」2人以上で、というのは、これまたちょっとどうかな、と。しかし、実際上は、私もそうですが、そんな同志を近くに見つけるのは困難でしょうが。

 以上のような「それって許されるの?」という議論を適当に回避して、次に思いつくのはメモを取る、ということでしょうか。「メモを取る」といった場合に、手書きで紙に丹念に書く場合と、PC上にスタンド・アローンで盤面を再現する場合と2つ考えられます。

私の場合、試したことがあるのは前者です。後者も、PCに熟練した人ならそっちでも良いかもしれません。本質的には変わらないような気がします。
具体的には、軍人将棋の大会など、120%本気で指すときを控えて、いきなり慣れないことをやってもナンですから、試験的にやってみました。
結論を先に言ってしまえば、馴染めないということで断念しました。

メモを取る場合に2つあると思います。一つは全てメモを取る。ログを記録するとでも言うのでしょうか。もう一つは、部分的にメモを取るということ。

 部分的に・・・というのは早々にあきらめました。
これは、相手の大将を見定めた、というときなど、ここぞという時に、メモ取りを発動するわけですが、そういうときはだいたい既にアツくなっています。私の場合は。メモを取らなきゃと気付くのは、もうその駒を見失いかけたとき、というのが関の山です。

 全てメモを取るほうは、難しかったですね。
一つに、情報量が多くてメモを取りきれないし、メモを取っても短時間でそれを処理しきれない。情報のオーバーフローを起こすわけです。
もう一つは、リズムが完全に乱れるということ。メモを取ったら盤面から目を離すわけですし、また、相手はこんな感じだから、自分がこういう流れで指そうと考えていたイメージが壊れるような気がしました。
このようにメリットは少ないし、デメリットはあるしで、メモ取りは断念するに至りました。


では、今はどうしているかと言えば、特に、自分の脳以外の助けは借りず、というところです。記憶力や注意力の減退は否めないですが、他に良い手立てもなく。

基本は、盤面を可能な限り注視するということになります。
その際に、見る対象は、相手側、相手の駒の動きです。はじめのうちは、どうしても自軍の方にも目が行きがちなのですが、当然相手のほうへの注意力を削がれるので、極力限定する。
以前に、番外編:Strategoをやってみた②で、「相手がどんな陣形をしていて、どういう意図で指しているのか、さっぱり見えません」と書きましたが、ここで書いていることと本質的には同じで、結局のところ慣れの問題です。

そして、同じ相手側を注視するにしても、局面の進展によって見方が少し変わってくるところもあるかなあと思っています。すなわち、序盤戦の頃は、敵軍の情報量も少ないから、相手の全体を見る。こんな感じに。
0197

動いていない駒と、既に動いた駒を区別して、全体を風景のように捉えるイメージ。
このときは、まだ動いていない駒や地雷でない駒を記憶するのもさることながら、動いている駒がどういう動きをしてきたかをぼんやりと記憶に留めることも重要です。
 特に、動いた駒がもともと、初期配置の頃にどこに居たかという情報を全体的に押さえておくことも大事です。これは、この先、自軍のタンクを潰したので将官かな、と思った後に、具体的に将官のいづれかという精度の高い読みをするときに参考になりますし、また、(自軍の中将を獲ったので)大将だと分かった後に、その駒がもともとあった位置の周辺の配置を推察するのにも使えます。

そして、中盤戦になって、相手の駒の情報量が増えてくると視点が変わってきます。
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相手の重要駒のあたりに焦点を絞っていきます。一つには、その駒の確実なトラッキング。たとえば、自軍の少将を倒した大駒をよもや見失ったら、死んだ自軍少将も浮かばれません。
もう一つには、その相手の重要駒をサポートする他の駒も含めて動向を注視することです。敵軍のやりたいことが見えやすくなってくるし、その上で、そのサポート駒に好きにさせないことが防御上必要です。


さて、私はだいたいこのような見方で対局を進めていくのですが、この方法にデメリットがないとは言えません。
その一つが、中盤以降に、相手の重要駒に焦点を絞ることによって、相手の全体像をロストするということ。典型的な失敗としては、既に動いた駒と動いていない駒を見失い、誤って自軍駒を地雷にぶつけてしまうというもの。
もう一つが、これも中盤以降に、相手の重要駒一駒に注意を絞るのではなく、周辺駒もぼんやり見てしまうことで、その重要駒の居るゾーンは分かっているけど、「右のこれだったっけ、左のこれだったっけ?」というような状況に時々陥ること。重要駒とその周辺駒が激しく交錯して動かされると、ゾーンを見る方法では集中が足りなくなってしまうということです。

 「木を見て森を見ず」とは言いますが、軍人将棋の場合は、「木を見る」ことはやらずもがなのミスを防ぐ意味で、「森を見る」ことは相手の現状とこれからを把握するという意味で両方重要です。バランス感覚ですね。
あと、自分の記憶力の限度を見極めるのも大切で、私は、自分はこの辺で、と見切っているので、上に紹介したような方法を取ってますが、「この一戦」と集中力を上げている場合はもう少し、部分も全体も両方把握するようにしているかもしれません。
 記憶力と情報処理能力さえ付いてきてくれれば、「木も見て森も見る」に越したことはないのです。

軍人将棋に関する研究論文

先日、「軍人将棋」で闇雲にGoogle検索をかけていたときに見つけたのがコレ(powered by 国立国会図書館サーチ

[抜粋引用]
タイトル: 軍人将棋
責任表示: 梅林 勲
出版者 : 大阪商業大学アミューズメント産業研究室 編
出版年 : 2003
掲載誌情報 : 雑誌名 : Gambling & gaming ; 巻号 : 2003, 5 ; 掲載ページ : 107〜167
[抜粋引用終わり]

・・・。
軍人将棋の論文?
アミューズメント産業研究室?

さらに検索をかけて、ありました。今は、アミューズメント産業研究所が正しいようです。世の中は広い。

興味をそそられて、大阪商業大学に問い合わせてみました。
該当論文の入手方法を訊いたところ、雑誌バックナンバーごと送ってくれるとの由。ご厚意に甘えることにしました。



・・・届きました。「Gambling & gaming 第5号 2003年」

目次を見ると、「昭和の遊戯マージャン『ブーマージャン』ルール研究」などの記事も。昔、阿佐田哲也の麻雀放浪記で読んだな・・・。

さて、本題の「軍人将棋」

・・・よくぞここまで体系的に、という感じ。私がブログで書いているような戦略論や戦術論とは違いますが、様々なバリエーションから、由来・歴史、各種遊び方、それから海外の類似のゲームまで紹介しています。

[抜粋引用]
「軍人将棋のもう一つ不思議な所は、この遊びが長い歴史を持つにも拘わらず、遊びそのものがあまり広く知られていないことである。子供遊びの代表的なものの一つなのに、伝承遊びを紹介した本に軍人将棋を解説したものはそれ程多くない。・・・戦前の状況は良く分からないが、戦後の本にも軍人将棋があまり紹介されることがないのは、やはりあまりメジャーな遊びではないことが大きな原因なのではないかと思う。」
[抜粋引用終わり]

・・・ああ、やっぱりそうですか。その中で良く御調べになりました。



海外の事情も良く研究されています。私の読後理解が正しければ、日本の最近の軍人将棋と「Stratego」は、フランス生まれの「L'Attaque」を親とする兄弟みたいなものであるようです。それから、中国の「陸戦棋」は初めて耳にしました。

[抜粋引用]
「何れの国の軍人将棋も審判を必要としないルールを採用しており、わが国のように一部のマニアを除いて消滅の危機にさらされているようなことはない・・・。アメリカにおいてSTRATEGOは、現在でも良く売れているゲームであり、パソコンソフトや、携帯用ゲーム、4人バージョン、更には、駒の種類を限りなく増やし、トレーディングカードゲームのように駒の収集を目的にするようなものまで現れている」
[抜粋引用終わり]

・・・日本には、「一部のマニア」も生き残っているのか怪しいところですが、へえ、アメリカではそうなんですか。私もちょっとStrategoに手を付けてみようかとも思いました。



厚意でご送付頂いた大阪商業大学アミューズメント産業研究所事務室にはこの場を借りて、あらためてお礼申し上げたいと思います。
・・・「軍人将棋」の立ち位置が良く分かりました。

過去に軍人将棋がメジャーにならなかった理由として、審判の必要性が良く指摘されますが、今やネット上でのツールがあり、それでも普及しないのは何か理由があるのだろうと思います。
「分かりにくさ」ということがあるでしょうか。私にとっては、分かりにくさが魅力であったりしますが、初心者や、対局を傍で見ているオーディエンスとしては、駒が裏返っていてリアルタイムで何が起きているか分かりにくいですね。
一方、観客だけ表にして駒が見えるようにしても、今度は、対局者の心理などが見えにくいのかもしれません。対局者のことをチキンだな、と思うか、なかなか先に進まなくてイライラするか。

しかし、同じように手をオープンにしない、たとえば、麻雀は言うまでもなく普及してきたし、「THEわれめDEポン」のような観戦を目的とするようなTV番組もありましたし。もっとも麻雀もずいぶん下火ですが、軍人将棋も「下火になった」と言われるぐらいに、一度は発火してくれてもよいような気がします。

「なんじゃ駒」を懐かしむ

ねむねむさんの「軍人将棋の魅力」というブログ記事を見つけました。

私も、ネット上での軍人将棋デビューは「なんじゃ駒」でした。2000年ごろは、今の10倍ぐらいプレイヤーがいたような気がします。

ルールを見直すと、工兵がタンクに勝つことになっていますね。
そういえば、地雷がヒコーキ、工兵に倒されない限りずっと盤面に残る(=「動かない」以外は、将官など強い駒と見分けがつかない)ということで、非常に工兵に重要な役割が担わされていたというおぼろげな記憶があります。(勘違いだったらすみません。)

敵大将の追い込み①

しばらく序盤戦の説明は脇に置き、終盤戦の勝ち切り方を書いていきたいと思います。

序盤戦、終盤戦と来ると、あれ、中盤戦は?となるでしょうか。
中盤戦は、終盤戦でどういう状況だと勝ち切れるかを説明してからと考えています。終盤戦のかたちが見えてくれば、必然的に、中盤戦はその状況を作るための戦いを考えれば良い、という話になるからです。

まず、シンプルなところから始めます。

0085


双方がっぷり四つに組んだ結末ということにしましょう。
赤軍は中将と少将を1枚ずつ残しました(中将と少将に限らず、占領可能駒(将官・佐官)ならすべて同じ)。そのほかは、スパイも含め失いました。青軍は大将単騎です。

赤軍は、もう大将を倒すすべがない以上勝ち目が無いのでしょうか?

普通に進めてみれば分かりますが、ここからでも赤軍が勝つ可能性があります。
あくまで「可能性」であって、「決まり」では無いのはあとで説明します。

(1) 【4f 少将】
(2) 【1f 大将】
(3) 【3c 中将】
(4) 【1d 大将】
(5) 【3f 少将】
(6) 【1c 大将】
(7) 【2f 少将】
(8) 【1d 大将】
(9) 【2c 中将】

↓ 対局図A
0086

こういう状況になれば、赤軍の勝ちが「決まり」です。
ここから、青軍大将が司令部から一歩踏み出しても、赤軍駒が司令部に寄って来れば、また元の司令部に戻るしかないのです。

(10) 【1c 大将】

青軍大将が、赤軍中将に肉薄しました。それでは、「赤軍中将はやむなく、青軍大将から一歩逃げる」必要があるでしょうか?

(11) 【1f 少将】

0087

これで、青軍大将は、赤軍中将に構っている暇はなく、司令部に舞い戻らなければなりません。

(12) 【1d 大将】
(13) 【1c 中将】

0088

(14) 【1c 大将】   ×中将
(15) 【1d 少将】   
(司令部占領)

なるほど、相手より弱い駒しかなくても駒数で上回っていたら勝てることもあるのか、と納得頂けると思います。

しかし、青軍大将には本当になす術もなかったのでしょうか。

実は、あったのです。

(1) 【4f 少将】
(2) 【2d 大将】
(3) 【3f 少将】
(4) 【2e 大将】
(5) 【3c 中将】
(6) 【1d 大将】
(7) 【2f 少将】
(8) 【1f 大将】
(9) 【2c 中将】
(10) 【1d 大将】

↓ 対局図B
0089

上の対局図Aと見比べてください。

同じように見えて、次の手番がいずれか、という点が違います。
すなわち、このかたちで、次が青軍の手番であれば赤軍の勝ち、赤軍の手番であれば、まだ、引き分け、無勝負です。

どこでその違いが出たのかというと、青軍の第4手目、2dから2eにスライドした場面です。

そのスライドがどういう意味があったのか、まで説明するのは、現時点避けておきます。感覚的には皆さんも既にお分かりだと思いますので。

次回は、もう少し実戦に近付け、残っている駒を少し増やして、終盤戦をさらに模擬していきたいと思います。


〔以下、加筆訂正(2011年6月30日)〕

上記述内容に誤りがありましたので、以下訂正いたします。

上記対局図Bの局面からです。
ここからは、引き分けしかない、赤軍が勝つ術がないとの結論にしていましたが、これは誤りであり、赤軍が勝つことは可能でした。

(11) 【3f 少将】
(12) 【2d 大将】
(13) 【3c 中将】
(14) 【1d 大将】
(15) 【3e 少将】
(16) 【2e 大将】
(17) 【2c 中将】
(18) 【1d 大将】
(19) 【3d 少将】
(20) 【2d 大将】
(21) 【1c 中将】
(22) 【1d 大将】
(23) 【2d 少将】
(24) 【1c 大将】   ×中将
(25) 【1d 少将】  (司令部占領)

ポイントは、第19手目の赤軍少将が3eから3dと横にスライドした場面です。
青軍が大将を「司令部前で一歩横にスライドする」ことによって引き分けに持ち込もうとしたのであれば、赤軍のほうも同じように、自軍駒を「司令部前で一歩横にスライドする」ことによって、勝ちきれる状態に戻すことができるわけです。

 そのため、本記事の冒頭に示す局面のような、赤軍中将+少将が青軍大将1枚を追い詰める場面では、必ず赤軍が勝つことが可能になります。

誤った記事を投稿していたことをお詫びの上、ここに加筆修正させていただきます。

速攻・突撃作戦の戦略的意義③

速攻・突撃作戦の戦略的意義①に続く第3弾。
軍人将棋を始めたばかりの時期に速攻・突撃作戦をある程度使っておきたい理由の3番目です。

結論から書いてしまえば、「対局の最初から意図しなくても、流れで『速攻・突撃的手法』を使わざるを得ない場面が多々あるから」です。そのときのためのプラクティスとして、数をこなしておいた方が良いのです。

もちろん、対局を重ねる中での流れで、使わざるを得なくなった時に使うということで数をこなすことはできます。しかし、時間がかかりますし、流れの中の所与条件の中で実施する分、失敗と成功の要因を自分できちんと把握するのが難しいのです。

0080

この場面は、赤軍戦局振るわず、中将、少将1枚、ヒコーキ1枚を既に奪われている状況です。青軍の将官やヒコーキを獲った感触はありません。但し、大損害のおかげで、青軍の大将、中将、少将の位置は把握しているし、こちらの大将はバレていません。

私の経験上、赤軍は、ここからのんびり指して勝ち目はありません。「速攻・突撃的手法」を使わざるを得ない場面です。幸い次の手番は赤軍という状況。

(赤軍心の声① もう今更、敵の中将か少将を1枚獲るぐらいでは勝ち目はないな。敵司令部に突撃をかけるしかない)
(心の声② 青軍の大将の位置から見て、赤軍大将の突撃路としては、bライン、cライン、dライン、eラインの4つが選択肢になるなぁ)

(1) 【4c 大将】
(2) 【2c 中将】

(心の声③ 【3b 中将】ではなく、【2b 中将】と避けたな、わざわざ退路を断ったということは?その横か後ろ、1cか2dにスパイが居る可能性が高い!?)
(心の声④ 自軍にヒコーキは1枚だけ、司令部のdラインeラインのところにしかないから、bラインcラインの使用は却下!)


(3) 【4d 大将】
(4) 【5g 大将】

0081

(心の声⑤ 2dにスパイが居るかもしれないし、青軍の大将もまだ間に合わなそうだから、eラインから行くことにしよう)

(5) 【4e 大将】
(6) 【4f 大将】

(心の声⑥ 3eは、青軍大将の初期配置の真後ろだから、地雷はないだろう)

(7) 【3e 大将】   ×??
(8) 【1d→6e】   ×軍旗(地雷)

0082

(心の声⑦ なぜ【4e 大将】と来なかったのだろう?追い詰めると、こちらが前に出ると思って手控えたか?ということは、2eは地雷ではない!?)
(心の声⑧ でも、当初の読みどおり、2dにスパイが居たらまずいが、どうしよう。なけなし1枚のヒコーキを飛ばすか?)

(心の声⑨ いや、しかし。2dにスパイが居たら、わざわざ司令部を空ける必要は無い気がする。2dはスパイでないと決め打とう!)

(9) 【2e 大将】   ×??
(10) 【1f→1d】

(心の声⑩ さて、この司令部に入った駒がスパイでなければ行けば良いのだが。スパイと読んでいた駒と違うところから来たな・・・。ヒコーキは1枚残っているが・・・。)
(心の声⑪ これは、陣形-速攻突入作戦②のときと同じシチュエーションだな。「スパイ?」退治に、こっちのヒコーキを飛ばした場合、今の青軍司令部駒がヒコーキなら負け、それ以外なら勝ち。。。)


(11) 【1d 大将】  ×大将

0083

今回の最後は、「心の声③」=「スパイは1cか1dという読み」に殉じさせてみました。もちろん、軍事将棋は、一貫性が要求されるゲームではないので、「じゃあ、スパイは1fに居たのか」と割り切っていれば勝っていたわけですが。

いずれの結末はともかく、圧倒的不利な場面から、2つに1つは勝つという状況に持っていったところで、それなりの攻め手だったと評価できるのではないでしょうか。

ここまで、①から⑪の「心の声」がありました。
また、その心の声の理屈を信じて打つ思い切りというのも重要です。(正直、私も「心の声」の⑦、⑨あたりは、信じ切れるか、今も自信がありません。)

これらの「心の声」と「信じる思い切り」を養うには、人のブログを読んだとしても、大して足しになりません(残念ながら)。
どれだけ、実際の対局で、成功体験(と失敗体験)を積み重ねるか、になります。

そして、仮に、20回ぐらいの対戦でそこそこ局面が見えてくるようになるとしましょう。普通に無難に対戦していて、このような「一か八か」的手法に打って出る羽目になるのは、5回に1回ぐらいでしょうか。100回対局する必要がありますね。

でも、「初心者のうちは、速攻・突撃作戦を旨とする」とやっていれば、同じ分量の経験を、20~40回程度で身につけることができるかもしれません。

速攻・突撃作戦をある程度使っておきたい理由の3番目、「速攻・突撃的手法」は、敗色濃厚の苦しい場面に、あなたが必ず頼る、ずっとこの先頼らなくてはならないツールなのです。

なお、以下が今回のケースの当初局面配置です。

0084


まとめておきます。

なぜ、速攻・突撃作戦をまず使っておくべきか。次の3つのメリットがあるからです。

① 速攻・突撃作戦には一定の勝算が見込め
② 速攻・突撃があり得ると思わせることで相手の陣形や心理をコントロールできる
③ 「速攻・突撃的手法」は、流れの中でも、敗色濃厚のときにしばしば使うため、戦術として使い慣れておくべき

陣形-中将カウンター

陣形-少将カウンター①に続きカウンター作戦の第2弾、中将カウンター作戦です。
原理は同じです。片一方のサイドから中将で攻める、喰われればそこに敵軍大将が居るわけなので、逆サイドから大将で攻め上がる、怖いのは敵軍スパイ(と地雷)だけ。

今まで紹介した陣形では、だいたい自軍の大将と中将をセットで使いましたが、今回は大将単騎。敵軍のスパイとのマッチアップで、当たるも八卦、当たらぬも八卦という男のギャンブル作戦です。

・・・というのは、実際と少し違うかもしれません。少将カウンター作戦では、囮の自軍少将を引っ掛けるのは、敵軍大将と中将の2枚。今回は引っ掛けるのは、敵軍大将の1枚だけ。単純にカウンター発動の確率は2分の1です。

ですので、実際のところは、二股をかける作戦と言った方が正しいかもしれません。
①片一方のサイドから中将で攻める→敵軍大将が司令部付近や逆サイドに居て自軍中将が死なない→そのまま自軍中将で暴れ回り、駒得で優位に立つ
②中将が喰われればやむなし→逆サイドから大将で一か八か攻め上がる(敵軍スパイはヒコーキで潰せればラッキー)

0069

今回も青軍駒は伏せて最後にお見せします。

さあ、右サイドに中将、そしてそのすぐ後ろに少将を置きました。これは、(今回はそういうシチュエーションになりませんが、)自軍中将が、敵軍中将と相殺して、中将カウンターが成立しなかったときは、この少将が遺志を引き継げ(すなわち、少将カウンターに切り替える)という含意です。

(1) 【4c タンク】   ×??
(2) 【4a→6c】    =相殺(タンク)
(3) 【3c タンク】   ×??
(4) 【3b→3c】    ×タンク
(5) 【4h 少佐】   ×??   
(6) 【4f→6h】    =相殺(タンク)
(7) 【6h 少尉】
(8) 【4b→4a】

0070

赤軍としては、まず、少将カウンター作戦のときと同様に、大将の進撃ルートをクリアにしておきます。

(9) 【6f 少佐】
(10) 【4a→6c】
(11) 【5g 少尉】
(12) 【6c→7c】   ×大尉
(13) 【7c 大佐】   ×??
(14) 【4d→4c】
(15) 【4h 少尉】
(16) 【4c→6a】
(17) 【3h 少尉】   ×少尉
(18) 【6a→6b】   ×??
(19) 【4h 少佐】
(20) 【4e→4f】

0071

まだ青軍中将は動きません。
前置きが長くなった感がありますが、これまで紹介した突撃・速攻系の作戦や少将カウンターと異なり、赤軍の司令部突入を準備する駒は大将1枚だけ。
以前の作戦では、赤軍は大将が倒れたら中将を繰り出す作戦で、そのため勝負は、青軍が赤軍からの二の矢を阻止できるか、赤軍はこれをすり抜けるために仕掛けの早さがポイントでした。
たとえば、陣形-少将カウンター②のときは、青軍が、4d、4eに居た駒を動かして、両サイドの風通しを良くすることに意味があったわけです。

が、今回は赤軍には二の矢がありません。よって、今回、赤軍は二の矢を考えての早めの仕掛けは必要ないのです。慎重に中将を繰り出す機を窺います。

(21) 【4g 少佐】   =相殺(少佐)
(22) 【4f→6h】
(23) 【6f 中将】
(24) 【6h→8h】   ×??
(25) 【4h 中将】
(26) 【3c→4c】
(27) 【3h 中将】   ×??
(28) 【3g→3h】   ×中将

0072

「囮の」中将が3hという理想的な場所で倒されました。3hに居る青軍大将は、もう赤軍大将には関係ありません。赤軍大将は前進、警戒すべきはスパイのみになりました。

(29) 【6a 大将】
(30) 【4c→4b】
(31) 【4c 大将】
(32) 【4b→4a】

記憶の良い方は、【4c→4b→4a】と逃げた青軍駒が、タンクを倒した駒と覚えていると思います。しかし、ここで赤軍大将がこの駒を深追いする意味はありません。もちろん立ち塞がるなら倒していくしかありませんが、倒さずに済むなら、相手に情報を与えずに済んでラッキーという場面です。

(33) 【3c 大将】
(34) 【4a→6c】

0073

さあ、ここから突入ですが、やり方は一つではありません。9cのヒコーキを飛ばすか、6dのヒコーキを使うか、2cへ大将を突っ込ませる手もあります。その時点での感覚や経験に基づいて選択します。

(35) 【1c ヒコーキ】 =相殺(ヒコーキ)
(36) 【1d→1c】

2cが地雷の可能性はゼロではないですが、ここは行くべき場面です。

(37) 【2c 大将】   ×??
(38) 【2d→2c】   ×??
(39) 【1c 大将】   ×??
(40) 【2e→1d】
(41) 【1d ヒコーキ】
 ×??

ここまでです。

0074

今回は赤軍のトライがうまくいきました。青軍の違った配置、赤軍の違った指し筋であれば、結果はどうなっていたか分かりませんが、少なくとも今回は五分五分の賭けに勝ったようです。

今回の初期配置は次のとおりです。

0075

軍人将棋の他の陣形と同様、百戦百勝とは行きません。
しかし、「あっちでこうやって上手くいかなければ、こっちでこうする」という「プランA+プランB」を考えた陣形・戦法は、使い勝手が良く、色々応用が効くので、持っておきたい発想法です。

対局戦略と各駒の役割

軍人将棋とは?②で、駒の強弱や動かし方の違いを説明しましたが、今回は、それぞれの駒の特徴に応じた役割について説明をしてみたいと思います。
と言っても、私の個人的な考えによるもので、軍人将棋の対戦にすぐに役に立つわけでもないことは差し引いて読んで頂ければと思います。

さて、それぞれの駒の役割。
陣形-少将カウンター②の説明で、「雑魚駒を倒すことが中将の役割というわけでない」という旨を書きました。では、中将の役割は何?という話です。

端的に、それぞれの駒のスタンダードな役割を示してみます。ここで「スタンダードな役割」というのは、これを果たせば一人前に仕事をしたな、ということです。

大将: 敵軍の中将を倒すこと
スパイ: 敵軍の大将を倒すこと、または、生き残って敵軍大将を脅かすこと
中将: 敵軍の少将を倒すこと
少将: 敵軍のヒコーキやタンクを倒すこと
ヒコーキ: 様々(敵のタンクや佐官を倒すこと、地雷を潰すこと、スパイを倒すこと)
タンク: 色々(敵の将官を特定すること、敵のタンクを早めに潰す(相殺する)こと)
佐官: 生き残って敵軍司令部を狙うこと
尉官、騎兵、工兵、軍旗、地雷: 決まった役割なし

では、それぞれの駒が一人前に仕事をすれば、スタンダードな役割を果たせば、対局に勝てるのでしょうか。
そうではなくて、①自軍、敵軍のそれぞれのトータルの働きの相対的な比較になる、また、②自軍の駒のうちいくつかは、一人前よりもっと、1.5人前、2人前の働きを期待しなければならない、③もちろん、敵軍の重要駒に一人前の働きをさせずに潰すのも有効、ということになります。

たとえば、大将、中将、少将といった将官を見ましょう。それぞれから見て一段弱い駒を倒すことがスタンダードな役割となっています。

さて、陣形-少将カウンター①陣形-少将カウンター②を思い出して(またはざっと見てみて)ください。両方とも青軍の中将は、赤軍の少将を獲った、すなわち、一人前の働きをしたのですが、前者では対局に敗れ、後者では互角というところで終りました。

なぜ、その違いが出てきたかというと、片や、中将は一人前の仕事しかできなかった、片や、中将は一人前の仕事をして、更にプラス・アルファの役割(敵軍の中将とも相殺する、または、敵軍司令部を占領する)を果たす可能性を残した、ということです。

というわけで、対局の勝ちに繋げるという意味では、将官(のいずれか)には、1.1人前でも、1.8人前でも、一人前プラス・アルファまで働かせると良いということです。

次に、ヒコーキやタンクは、といえば、色々有効な役割があって、なかなか、ここまでやればスタンダード、ということが言えません。相手の駒より少しでもできるだけ多く働かせるということが重要になり、また、かえって、彼我の「違い」を産みだしやすい駒と言えるかもしれません。

佐官級以下の駒は、将官やヒコーキ、タンクに比べて、産みだせる「違い」は少ないかもしれませんが、「塵も積もれば」ということになります。

異色なのはスパイ。スパイはなかなか一人前より大きい働きを期待できません(理論上は、敵軍の大将を倒し、しかも、スパイとも相殺する、ということはあり得ますが)。
そのかわり、確実に一人前の働き(対敵軍大将)をさせること、または、一人前の働きをする準備があることを示し続けることが重要です。仮に、何もできずにスパイがやられても、他の駒に「スパイのふり」をさせて、敵軍大将に脅威を与え続ける、というやり方でも、何でも達成しなければならない、特殊な駒です。

最後に、一人前プラス・アルファの働きという観点から、将官の心得を。

大将は、少将を倒しても無意味なのでしょうか。また、中将はヒコーキを倒しても対局の勝利という意味で無益なのでしょうか。少将は、雑魚駒をあえて倒さないほうが良いのでしょうか。

そうではなくて、大将は、敵軍の少将を倒して更に中将まで制すれば良い、また、中将も、敵軍ヒコーキを倒して更に少将も制すれば、十分に一人前プラス・アルファです。

ただ、普通は、これは難しい、なぜなら、少将を獲られた駒に中将を差し出す人はいませんから。

しかし、次のケースのように、先を見越してそういう状況を作れれば良いのです。

0066

(1) 【4f 大将】   ×少将
(2) 【3h 中将】
(3) 【4g 大将】
(4) 【2h 中将】
(5) 【3g 大将】
(6) 【1h 中将】
(7) 【2g 大将】

0067

あくまで仮定の、極端なケースですが、要するに、原理的には、敵軍少将を獲って、しかも、敵軍中将を追い詰めるという結果も成立するということです。


さあ、長くなりましたが、ポイントをまとめます。

 それぞれの駒の特徴(特に強さ)を理解して最大限に働かせましょう。最大限というのは、通常、その駒より一段だけ弱い駒を潰し、さらにプラス・アルファということです。

 もちろん、自軍の駒全体のトータルの働きで上回れば良いのです。どの駒は一人前で十分、どの駒で大きくゲインさせるか考えながら打ってみましょう。それが、対局戦略に通じます。

 将官の働きがもちろん重要ですが、ヒコーキとタンクは、「違いを産みだせる」駒です。使い方を良く研究し、独創してみると良いと思います。

陣形-少将カウンター②

前回に引き続き、少将カウンター作戦を取り上げます。
今回は失敗例、相手がカウンター作戦を十分に警戒しているとどうなるか、というケースです。

0060

初期配置は前回の作戦成功時と全く同じです。変わるのは青軍の指し手の意識、打ち回しになります。

(1) 【4c タンク】  ×大尉
(2) 【6c タンク】  ×中佐
(3) 【6c 中将】   ×タンク
(4) 【6h タンク】  =相殺
(5) 【3c タンク】  ×タンク
(6) 【6f 少佐】   ×少佐
(7) 【6h 少将】

ここまでは、前回と全く変わりませんが、次から青軍は、自軍の両サイドを行き来する通路を作っておこうと、4dや4eに居る駒を動かしにかかります。
これは、相手がカウンター作戦を取るか否かに関わらず、守りの機動性という意味で有効な方策です。

(8) 【4c 大尉】
(9) 【5g 少将】
(10) 【6a 大尉】
(11) 【4h 少将】
(12) 【4f 中佐】

0061

前回では、青軍は4hに来た赤軍少将をあっさり中将で取ってしまいましたが、よくよく考えると、ここは、青軍中将がわざわざ動く場面でもなかったのです。
3hへの地雷チェックを阻止したい、「h」のラインの守りが弱いから、と考えたとすれば、一定の正当性はあります。しかし、あんな端のラインに、地雷を無視して突っ込んでいく駒があるとすれば、それは雑魚駒であって、これを潰すのに、中将という牛刀をもって行う必要はありません。2列後方の青軍少将あたりに任せておけばよいのです。

青軍は、それより重要な、両サイドを行き来する通路を確保すべく、4fの中佐を動かすというわけです。

(13) 【5g タンク】
(14) 【4e 中佐】
(15) 【4f タンク】
(16) 【4d 中佐】
(17) 【4e タンク】
(18) 【4c 中佐】
(19) 【4d タンク】
(20) 【5b 中佐】
(21) 【4c タンク】
(22) 【7a 大尉】   ×大尉
(23) 【5b タンク】  ×中佐

0062

ずいぶん手数が進みましたが、赤軍にとっては、当初の予定の少将カウンター作戦という意味では、一歩も状況が進んでいません。それどころか、赤軍タンクが好き放題に闊歩したのはよいのですが、赤軍左サイドの大将進撃ルートを塞いでしまっています。
一方、青軍のほうも愉快な状況ではありませんが、後から見れば、必要な我慢だったということになります。

(24) 【4f 少佐】
(25) 【5g 少将】
(26) 【5g 少佐】   ×少佐
(27) 【4f 少将】
(28) 【4f 中将】   ×少将

0063

赤軍は、さあ、カウンター発動、といきたいところですが、タンクが邪魔だったり、どうもリズムに乗っていけない格好です。タンクをどかして、さあ、発動です。

(29) 【4a タンク】
(30) 【4h 中尉】
(31) 【6a 大将】
(32) 【6f 中尉】
(33) 【4c 大将】
(34) 【7f 中尉】   ×中尉
(35) 【1c ヒコーキ】 ×大佐
(36) 【1c ヒコーキ】 =相殺
(37) 【3c 大将】   =相殺

0064

ここで、前回と同じく大将同士が相殺し、中将勝負になりました。
青軍としてはどうしますか?
今回は、①前に出て赤軍司令部を目指す、に加え、②手薄になった(青軍から見た)右サイドをケアする、という選択肢もできました。
もちろん、青軍は、赤軍の中将の位置を特定できません。また、少将を既に獲ったことも判ってはいません。しかし、この両軍の態勢からみれば、後者を選択することが自然に見えます。

(38) 【4e 中将】

0065

ここで、赤軍の少将カウンター作戦は一頓挫しました。
どちらが圧倒的に優勢ということはなく、どちらが勝つかは今後の双方の打ち方次第でしょう。

それぞれ、「青軍は赤軍の少将を獲った(しかしその事実を知らない)」「赤軍は青軍の中将を特定している」というアドバンテージがあります。ただ、青軍の指し手の記憶力が良ければ、赤軍6cの駒が序盤に青軍タンクを倒している(=中将か、少将か、ヒコーキ)ことを覚えていて、その駒はマークしていくことになるかもしれません。


さて、初期配置は同じなのに、今回は青軍が赤軍の少将カウンター作戦を阻止した要因を以下にまとめます。

 何度も紹介したように、青軍が4d、4eの駒を早めに動かし、両サイド間の移動をスムーズにしておいたこと
 → これが1手分、2手分、あとで効いてきました。

 中将を序盤から軽々に動かさなかったこと
 → 大将や中将といった大駒が相手の雑魚駒を次々に葬ることが無意味だとは言いませんが、倒せる駒が多いということは長所であり短所でもあります。短所は、素では何を倒したのかを予測することが極めて難しいという点です。前回のように、無意識に相手の少将を獲ってしまうと、相手にその情報をフルに活用されてしまう恐れがあります。
大将や中将といった大駒は、自ずと、その行動に慎重さが求められるということ、それから、将官として真に果たすべき役割は何かをきちんと理解しておくことも重要なのでしょう。

陣形-少将カウンター①

今回からは、突撃・速攻系作戦から、少しテイストを変えた「カウンター作戦」です。

原理は単純で、片一方のサイドから囮駒で攻めておいて、相手の守りが強いことを確認したら、じゃあ反対サイドは相対的に相手の守りが薄いだろうと、本命駒で一気に司令部へ、という作戦です。

典型例が、今回紹介の少将カウンター作戦です。

たとえば、自軍の右サイドから少将がちょろちょろ仕掛ける、倒される、そこに敵軍の大将か中将が居るわけなので、逆の左サイドから司令部には、敵軍の大将か中将はせいぜい1つ。そこを、自軍の大将、中将で襲うというわけです。
さあ、実際に見てみましょう。(今回も最初は青軍の駒を伏せます。)

0054

(1) 【4c タンク】  ×??
(2) 【4a→6c】    ×中佐
(3) 【6c 中将】   ×??
(4) 【4f→6h】    相殺(タンク)
(5) 【3c タンク】  ×タンク

さあ、まず、赤軍は「本命」の進撃ルートである左サイドの状況を整えます。青軍の3cの駒が将官かヒコーキと知れたのは好材料です。
次の赤軍の目標は、右サイド、如何に自軍少将を効果的に死なせるか、になります。

(6) 【4h→6f】   ×??
(7) 【6h 少将】
(8) 【4b→4c】
(9) 【5g 少将】
(10) 【4c→6a】
(11) 【4h 少将】
(12) 【4g→4h】  ×少将

0055

赤軍の右サイド、囮の少将が倒されました。青軍の大将か中将がそこに居ます。さあ、左サイドからのカウンターの発動です。

この少将カウンター作戦のちょっと難しいところは、この少将を、如何に良い位置で、ひっそりと死なせるかという点。「良い位置で」は、双方の司令部から遠いところで、ということ。「ひっそりと」は、少将の損失がバレないことがベスト、ということ。
たとえば、少将がタンクを獲ってから倒されるようだと、青軍も少将(かヒコーキ)を獲ったという情報を持って、先の手を打っていけることになり、うまくありません。
今回は、3hの駒の地雷チェックに行くかのような顔をして、ふらふらっと出したところ、青軍が喰いついてきました。
理想的な死なせ方です。

(13) 【6a 大将】  ×工兵
(14) 【4h→6f】   ×タンク
(15) 【4c 大将】
(16) 【6f→6g】

ここで、赤軍の第17手は、【3c 大将】でも良いのですが、ちょっと軍旗-大将の並びである可能性をケアして、これをチェックしに行きます。

(17) 【1c ヒコーキ】 ×大佐

100%ではありませんが、3cが軍旗、2cが将官という並びなら、この1cのヒコーキを獲りに来るだろう、という仮定です。

(18) 【1d→1c】    相殺(ヒコーキ)
(19) 【3c 大将】   相殺(大将)

0056

大将が相殺した結果、序盤に赤軍少将を獲ったのは青軍中将であったと判明しました。
さて、これで両中将による敵軍司令部への競争です。地雷を全く無視すれば、青軍は次手番から5手で司令部まで、赤軍は6手で司令部まで到達なのですが・・・。

(20) 【6f 中将】
(21) 【5b 中将】
(22) 【2e→7e】   ×地雷
(23) 【4c 中将】
(24) 【7f 中将】   ×大佐
(25) 【3c 中将】
(26) 【7e→8e】   ×中佐
(27) 【3d ヒコーキ】 ×大佐

0057

このあたりは、赤軍は常に相手と自分の手数を計算しながらになりますが、この自分の手数計算は、青軍の2cの駒を地雷覚悟で踏みつぶす前提で数えます。なあに、初期配置の青軍大将の真後ろの位置で、地雷の可能性は低いものです。
青軍中将が赤軍司令部への肉薄に手数で勝るギリギリまでは、2cへのチャレンジを慌てず、残った1枚のヒコーキを使っておいたという格好。

(28) 【8e→8f】   ×地雷
(29) 【2c 中将】  ×??

0058

ここまでで勝負ありです。

【参考:両軍初期配置】

0059


このように少将カウンター作戦は、ハマれば特にギャンブル感もなく、リーズナブルに勝つことができます。なお、青軍が今回の初期配置を大将と中将(スパイ付き)の位置を入れ替えて臨むことになっても、赤軍はさほど苦労しないはずです。

しかし、少将カウンター作戦は、今やスタンダードすぎて、対策を講じられてしまっている場合が多いことには気をつけて頂く必要があります。

ということで、次回は少将カウンター作戦の失敗例を。裏返せば、どう気をつけていれば、敵軍による少将カウンター作戦をくらわずに済むかを書いてみたいと思います。

軍人将棋とは?③-勝ち方

これまで、敵司令部を陥とすという形で、最も直接的に軍人将棋の勝ちに向かう方策である突撃系・速攻系陣形・作戦をいくつか紹介しました。
しかし、敵司令部を陥とす以外にも勝利の方策はありますし、同じ「敵司令部を陥とす」にしても、細かく見ればいくつかのパターンがあります。今回はこれらを整理してみます。

さて、軍人将棋のルール上、勝ちの最終条件は、次の3つになります。
① 敵司令部を占領する(自軍の将官および佐官が占領可能駒)
② 敵の占領可能駒を全滅させる
③ 敵が降伏する(だいたいの場合、「降伏ボタン」がついています)

「② 敵の占領可能駒を全滅させる」については、将官4枚、佐官6枚の計10枚をすべて倒すということになり、①よりもよほど手間がかかるということがあって、通常、これを最初から目指すということはしません。将官が失われて、自軍がヒコーキやタンクを残している際に意識することがある程度でしょうか。

「③ 敵が降伏する」については、相手方が、このままいくら打っていても結局①か②に帰結する、と思う場合に降伏するわけですから、やはりこれを目指すということは、はじめからはしません。ただ、ときどき、初心者であきらめの早い人が、駒損の状況にさっさと見切りをつけて、しなくても良い降伏をする場合があります。

 というわけで、シンプルで、しかも、相手の心理とは無関係に勝つ方法として、やはり基本は、敵司令部の占領を目指すのが定石になります。

では、「① 敵司令部を占領する」をもう少し細かく見てみましょう。大きく分類すれば次の3パターンしかありません。

①の1 突撃・速攻作戦で、相手の防御の機会を封じて敵司令部を陥とす
 → これは、これまでにも、いくつか例を示しました。

①の2 相手に対して駒得の状況を作り、その優位を維持して、敵司令部まで押し切る
 → 序盤に、自軍の大将で、相手の中将や少将を獲る、そして、あとはスパイだけを警戒しながら、とイメージしやすい戦い方ですが、意外にこれが難しいし、長丁場になる。
というのは、スパイを獲ったと判るのはほとんど不可能であって、初見の駒(自軍の駒を一度も当てていない駒)をかなりの数減らすまで、慎重な駒運びを必要とするためです。

①の3 相手の強い駒を特定し(通常その代償として相手に対して駒損になる)、その相手の強い駒を避けつつ敵司令部を目指す
 → たとえば、自軍の少将などで、相手の大将(や中将)を両軍の司令部から遠い位置におびき出して獲らせ、その間隙を利用して、自軍の大将や中将で敵司令部を一気に陥落させる場合などです。
相手にとっても、自軍司令部に戻るのと、敵司令部を一気に衝くのと、2つ、選択肢がありますので、攻めのスピード感と手数の計算が重要になってきます。

加えて、お互いに相手の駒が見えない軍人将棋が故に次のような戦略も成立します。
④ 相手のミスや自滅を誘う
 → このやり方には、自軍の駒にひたすら同じところを行ったり来たりさせ、相手が手を進めるのを待つといった戦法(「金魚戦法」と呼ばれます)や、自軍の重要駒を特定されたときなどに、周囲の駒を含めて激しく動かすことで、相手方の見間違え、駒の取り違えを期待する撹乱戦法・・・等々の消極作戦も含まれます。
しかし、私がここで強調したいのは、より能動的に、相手を自滅に追い込むような戦略です。以下に一例を。

0051

序盤のうちに、両軍大将が相殺したシチュエーションを想定しました。(この次の赤軍の一手から第1手と表記します。)

(1) 【6h 少将】 
(2) 【4h 中将】
(3) 【5g 少将】
(4) 【5g 中将】   ×少将
(5) 【6a 少将】
(6) 【6f 中将】
(7) 【4c 少将】
(8) 【7f 中将】

0052

赤軍は少将を1枚獲られましたが、この状況では痛恨の極みです。
両軍とも大将がいない今では、相手のミス以外にこの駒損を回復する術はありません。しかも、赤軍の中将は自陣内に埋まった状態です。せめて、赤軍中将が相手陣内に攻め込める位置に居れば戦いようがあるのに、という心境でしょうか。
他方、青軍はそのような有利に立ったことまではこの時点で知り得ませんが、それでも客観的に有利なのには変わりません。

ここで、窮した赤軍がいちかばちかの勝負に打って出ます。

(9) 【4d 少将】   ×タンク

0053

傍目から見れば何でもない一手なのですが、赤軍のほうでは、4dの駒が何か分からないままに、地雷などのリスクを冒して、少将を突っ込ませました。今回の場合、幸運にもタンクを倒すことで、青軍に、もしかするとこれが中将かもしれない、とインプットすることができた、という格好です。

青軍からみれば、ここで一思案が必要です。
この4dに来た駒が少将だと思えば問題ないのですが、中将だと疑ってしまったら、どうするでしょう。赤軍の4dの駒は、中将ならわずか3手で司令部まで到達できるのです。
青軍が、地雷の危険を度外視して、今、自軍の中将を前に(または横に)進ませれば、一歩早く司令部に到達できるのですが・・・。

こういう場合に、中将を突っ込ませる決断をする確率は、どうでしょう、せいぜい3割というところでしょうか。青軍が、ことによると、7eと8fのどちらかは安全かもしれない、ぐらいに思ってくれることを期待するしかありません。

しかし、ほぼ100%敗色のところに、3割弱でも勝ちの可能性を作ったならば、赤軍の【4d 少将】の一手は、必要なリスクを冒し、相手の自滅を誘う、価値ある一手と言えると思います。


結論として、軍人将棋では、お互いが、次の4つの勝ち方をイメージして指し手が進められるということです。場合によっては、目的に二股をかけながら、ということもあるかもしれません。

 突撃・速攻作戦で、相手の防御の機会を封じて敵司令部を陥とす
 相手に対して駒得の状況を作り、その優位を維持して、敵司令部まで押し切る
 相手の強い駒を特定し、その相手の強い駒を避けつつ敵司令部を目指す
 相手のミスや自滅を誘う

漫然と陣形を作り、流れのまま、手を進めていくのではなく、自分が何を目指して次の一手を打つのかはっきりさせること。また、同時に、相手が何を考えているかを予測しつつ打っていくことが、目の前の対戦に勝つためと、打ち手の歴達のためと、二重の意味で重要です。
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