2010年02月

ルポ 貧困大国アメリカⅡ  堤未果 2010年 岩波新書

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(;`・ω・´)「今日は『ルポ 貧困大国アメリカⅡ』です」

(´・ω・`)「著者は堤未果、前作『貧困大国アメリカ』がベストセラーとなり、その続編にあたるのがこの作品。彼女は参議院議員、川田龍平の妻でもある」

(;`・ω・´)「いや~、もうライトノベルと全く関係ないですね」

(´・ω・`)「細かいことを言うな。この作品の特徴としては、出版されたのが2010年1月でオバマ大統領の就任式が冒頭にくる、『オバマ政権になってから』のアメリカについて書いているところにあるね」

(;`・ω・´)「『チェンジ』した後ですね」

(´・ω・`)「そう、同じアメリカの社会問題を取り上げた映画「キャピタリズム~マネーは踊る~」がオバマ大統領の誕生を着地点としているのに対し、この作品はそこからが出発点になっている。2つの作品を見るとアメリカの現在というものが多少は理解できると思う」

(;`・ω・´)「あとがきにある一文が印象的でしたね、(アメリカの友人との会話で)『アメリカは、あの悪者ブッシュを追い出してオバマ大統領になったのに、なぜ状況は前より悪くなってるの?』」

(´・ω・`)「ブッシュとオバマの部分を自民党と民主党に置き換えれば、そのまま日本にも当て嵌まる不思議」

(;`・ω・´)「さて、この本内容は第1章で学資ローン、第2章で企業年金と公的年金、第3章で医療保険改革、第4章で刑務所ビジネスを取り上げています」

(´・ω・`)「どれもこれも、事実だけが並べられて淡々と書かれているが、日本人の一般的な感覚からすると恐怖に近い感情を抱くと思う。大学に行く為には借金(学資ローン)をしなければならず、大学を出ても職がない。大学へ行かない場合はマックの店員くらいしか職がない。しかも金利は予告なしに上がってしまう(固定金利で借りていたはずなのに、だ)、しかも学資ローンには自己破産による免責がおりない」

(;`・ω・´)「闇金も真っ青ですね」

(´・ω・`)「『持たざる者』に対してはとことん冷たい国という感じがするね」

(;`・ω・´)「政権交代後、取り上げたテーマについてはむしろ悪化している、というのが著者の感想みたいですね」

(´・ω・`)「あと、マイケル・ムーアが『キャピタリズム』の中で労働者の団結に希望を見出しているのに対し、労働者達の過大な要求と将来を見据えない企業の経営者に責任があったのではないか、と指摘している部分も興味深いね」

(;`・ω・´)「マイケル・ムーアの父親はGMの自動車工で、自動車工組合の創立者の一人。というところも考えなきゃいけませんね、彼の原風景は古き良きアメリカであることも映画の中ででてきていました」

(´・ω・`)「そのマイケル・ムーアと日本人である著者、視点や取り上げ方が違うのが当たり前だけど面白いよね、政治的なメッセージも含めて色々考えさせる一冊だね」

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)
著者:堤 未果
販売元:岩波書店
発売日:2010-01-21
おすすめ度:4.0
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ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
著者:堤 未果
販売元:岩波書店
発売日:2008-01
おすすめ度:4.5
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ハーモニー  伊藤計劃

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(`・ω・´)「今日の本は『ハーモニー』、早川書房2008年の作品です」

(´・ω・`)「著者の伊藤計劃氏は2009320日に死去、この作品が最後の長編になってしまった、残念な限りだね」

(`・ω・´)「第40回星雲賞日本長編部門受賞作品、第30回日本SF大賞受賞作品。特に日本SF大賞を故人が受賞したのは初めてのことだそうです」

(´・ω・`)「読んでみて少し驚いたんだけど、前作『虐殺器官』と同じ世界みたいなんだよね。作品内で明確に示されているわけじゃないけど、『虐殺器官』を読んでいる人であれば気付くと思う」

(`・ω・´)「『虐殺器官』は続きがあるような内容の作品ではなかったから驚きですよね!」

(´・ω・`)「さて、舞台は西暦2073年、主人公は霧慧トァン、28歳で世界保健機構の上級螺旋監察官。人々の身体にはWatcheという医療ソフトがインストールされており病気や苦痛というものから人間が解放されている世界」

(;`・ω・´)「SFな世界っすねー」

(´・ω・`)「うっさいハゲ、話を戻すが、主人公の一人称で物語は進んでいく」

(;`・ω・´)「ハゲてないです。淡々と語られるのが作者の持ち味だと思いますが、それと共に世界に適応できていない苦悩を抱えている」

(´・ω・`)「まあ、それは多く作品に共通していることだよね、逸れ者が異世界を説明するには適しているから」

(;`・ω・´)「体内にインストールされた医療ソフトに管理される社会はディストピアともユートピアとも思えますが、主人公は適応できていない、『社会のリソースとしての人間』『公共物としての身体』、作品内では生命主義として世界を席巻しています」

(´・ω・`)「宗教に変わる価値観、なんだろうね。酒も煙草も大麻も認められない世界、自分の体を傷つける自由のない世界、そしてそれを許してしまった人類の行き着いた先、読んだ後に考えてしまう作品だね」

(;`・ω・´)「ですね。あと作品の前半の方に『ただの人間に興味はありません』ってハルヒ…」

(´・ω・`)「オマエはそういうところばっかり見てるな、ハゲ」

(;`・ω・´)「だからハゲてないって!」

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
著者:伊藤 計劃
販売元:早川書房
発売日:2008-12
おすすめ度:4.5
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インビクタス 負けざる者たち  ジョン・カーリン

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2009年 NHK出版

原題は「PLAYING THE ENEMYNelson Mandela and the Game that Made a Nation

現在(2010年2月)、クリント・イーストウッド監督、モーガン・フリーマン主演での同名の映画が公開中で、私は映画を見てから原作であるこの書籍を読みました。

19章からなる作品で、12章から19章までが映画化された部分。

この本はネルソン・マンデラの伝記ではないし、1995年のラグビーワールドカップだけを取り上げたものではない、強いて言うなら「1995年を一つのゴールと見立てたネルソン・マンデラとその周囲の人々の物語」といったところだと思う。

南アフリカ共和国とアパルトヘイト、漠然と常識としての知識は持っていたが、それが非常に複雑で難解な問題を有する、ということに本書を読んだ時に初めて思い到った。

特に黒人(アフリカ民族会議)が国の主権を握った後の国家としての舵取りの難しさは映画以上に感じられた。

『だれもが恐れたのは、自分たちの旗、自分たちの国家、言語、学校、オランダ改革派教会、ラグビーを失うこと。表面下にあってすべてをゆがんで見せていたのは、犯した罪と同等の報復を受けるのではにないか、という恐怖だった』(本書より)

想像してみると、この時代のアフリカーナー(南アフリカの白人)の未来に対する恐怖は非常に大きいものだったのだと思う。

それと粘り強く交渉していかなければならないマンデラの苦労。

彼は投獄され、44歳から71歳までの27年間を刑務所で過ごしている。
この間に妻であるウィニーは若い男と不倫し、マンデラとは修復不能な溝が出来てしまう。

それでもマンデラは白人を尊重し、南アフリカ共和国の為に尽力をつくす。

映画ではわからない側面、長い長い苦しみと闘いの歴史、それがわかる一冊でした。

映画でも本書でもでてこなかった、ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの詩「インビクタス」の全文は以下の通りです。

 

Out of the night that covers me,(私を覆う漆黒の夜

Black as the Pit from pole to pole,(鉄格子にひそむ奈落の闇

I thank whatever gods may be(私はあらゆる神に感謝する

For my unconquerable soul.(我が魂が征服されぬことを 

 

In the fell clutch of circumstance(無惨な状況においてさえ

I have not winced nor cried aloud.(私は ひるみも叫びもしなかった

Under the bludgeonings of chance(運命に打ちのめされ

My head is bloody, but unbowed.(頭から流血しようとも屈服しない 

 

Beyond this place of wrath and tears(激しい怒りと涙を乗り越え

Looms but the Horror of the shade,(恐ろしい死の陰が浮かびあがる

And yet the menace of the years(だが 長きにわたる脅しを受けてなお

Finds, and shall find, me unafraid.(私は何ひとつ恐れない

 

It matters not how strait the gate,(門がいかに狭かろうと

How charged with punishments the scroll. (いかなる罰に苦しめられようと

I am the master of my fate(私が我が運命の支配者

I am the captain of my soul.(我が魂の指揮者

 

あと、思ったのだが副題の「負けざる者たち」はイーストウッドの映画「許されざる者」から取ったのだろうか?

インビクタス〜負けざる者たちインビクタス〜負けざる者たち
著者:ジョン カーリン
販売元:日本放送出版協会
発売日:2009-12-21
おすすめ度:5.0
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「虐殺器官」 伊藤計劃

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2007年の作品。早川書房

作者は「いとうけいかく」、この作品でデビューしており2009年3月に死去。長編は、この「虐殺器官」と「ハーモニー」(第30回日本SF大賞受賞)、それにメタル・ギア・ソリッドのノベライズ作品の3作品が刊行されています。

いくつか中編も書いているみたいですが、刊行の予定がないようなので残念です。

作者はメタル・ギアの熱狂的なファンだったようで二次創作が長じて本編の公式ノベライズまで担当するという快挙を成し遂げており、その作品も是非読んでみたいです。

さて、「虐殺器官」の方に話を戻します。

主人公はアメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊、クラヴィス・シェパード大尉。

時代は恐らく今から何十年か後の未来。

物語はシェパードの一人称で語られ、彼は特殊部隊の一員として暗殺を行う軍人であり、その姿は(本の表紙にあるイラストも含めて)ソリッド・スネークを彷彿させる。

しかし、主人公は冷静沈着で皮肉屋の伝説の傭兵、ソリッド・スネークではなくアメリカ軍所属の軍人で自宅ではドミノ・ピザとバドワイザー、それにペイテレビの無料視聴時間を好んでみるような小市民であることも小説内で語られる。

有能な軍人であると共に一介の公務員でもあることが、この主人公の肝であると思う。

常に突き放したような冷たい視線で物語を追う主人公は最後の最後で、ある地点に着地する。

五部構成で成立している物語のストーリーテリングは抜群で、ちょっとした描写もおやっと思わせるような単語が散りばめられている点が(理解できるならば)面白く読むことができた。

次回作も読んでみたいと思わせる作品だったが、もうあと2作品しかないということが私を落胆させてしまう、しょうがないことだが。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
著者:伊藤 計劃
販売元:早川書房
発売日:2007-06
おすすめ度:4.0
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虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

著者:伊藤計劃
販売元:早川書房
発売日:2010-02-10
おすすめ度:5.0
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ダブルダウン勘繰郎 トリプルプレイ助悪郎

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講談社文庫2010年1月刊行

清涼院流水が「コズミック 世紀末探偵神話」を発表したのが16年前。

未だに双子連続消失事件にあたる作品が出版されていない、とか、そもそもここ数年の清涼院の活動が活発でないことも今更のように思い出してしまった。

この「ダブルダウン勘繰郎 トリプルプレイ助悪郎」は20032007年に発表された作品が文庫化されたもの。

この2作品は「JDC TRIBUTE」という企画で清涼院流水の作品世界JDC(日本探偵クラブ)シリーズの設定を借りて書かれた作品。

JDCシリーズという作品群、私はカーニバル・デイまでしか読んでいないが、このシリーズは読む人を選ぶ作品と言わざるを得ない。読み終わった後に壁に投げつけたくなる本という評を某掲示板で見かけた時はなるほどと思ったものだ。

今となっては作者の知名度は西尾維新の方が上であり(当時としても怪しいものではあるが)JDCを全く知らない人が読んでみたら単なる探偵小説にしか受け取られないと思う、実際に「ダブル~」・「トリプル~」両作品ともJDCを全く知らなくても楽しめる作品として成立している。

 

西尾維新と清涼院流水という作家は似通った点がある。

登場人物に突飛な名前をつける点と、兎にも角にも大風呂敷を広げたがる点だ。

大きく違ったのは清涼院流水は風呂敷を広げに広げて、そのまま何処かに行ってしまうが、西尾維新は驚異的な仕事量と現実的なレベルでの着地点を見つけて纏める事が出来たということだった。

たとえば「カーニバル」という前・中・後編に分かれた小説の風呂敷的な要素を挙げてみると。

・犯罪オリンピック

・ビリオンキラー(10億人を殺す者)

・JDC本部ビル爆破

・人類最期の事件

・謎の組織RISE

等、読者の目を引く文字が並ぶが、たいていは謎は謎のまま終わってしまう。

エンターテイメントをだと思って読んでいると失望してしまう読者が大半のようでアマゾンの書評を見てみると、大概は酷い評価が付いているのが発見できるはずだ。

さっぱりわからないことだが、JDCシリーズは人気があったんだろうか?

私としては嫌いではなかったのだが。

 

さて、逸れてしまった話を戻すが、「ダブルダウン勘繰郎」。

このダブルダウンはブラックジャックのルールで、ストーリーの中でブラックジャックが重要になってくるところから。

探偵を心から憎む元探偵「逆島あやめ」とそれにつき従う「静」椎塚鳥籠。

彼らはJDCの本部ビル爆破を企てるのだが…。

ちなみに本物のJDCビルが爆破されたのが1996年の8月10日。

この事件は1997年の6月に報告書が書かれているという設定であるから、これは本家とはパラレルな関係にありますよ、ということなのかもしれない。

 

探偵が主題であっても殺人事件が起きるわけでもなく、長くない小説は探偵という要素に拘って書かれており、探偵というものに対するアンチテーゼのようにも受け取ることが出来た。

ダブルダウン勘繰郎、JDCシリーズと共にお勧めです。

ダブルダウン勘繰郎 トリプルプレイ助悪郎 (講談社文庫)ダブルダウン勘繰郎 トリプルプレイ助悪郎 (講談社文庫)
著者:西尾 維新
販売元:講談社
発売日:2010-01-15
おすすめ度:3.5
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