映画のメトダ

【メトダ】とはポーランド語で【方法・方式】の事です。 世界有数の映画大学であるポーランド国立ウッチ映画大学に通う筆者が学校で学んだ事、自分で実践している事などなど、映画製作に関わる事を書いています。

2014年12月

さて、ここまで4本の映画を紹介してきました。

皆さん既にご覧頂きましたか??

この紹介順にはきちんと意味があるので
『イントレランス』『メトロポリス』『カリガリ博士』
先に観賞して下さい。
まだ見てない人はこれらを見た後にもう一度このページに戻ってきて下さい。



さて、既に観賞済みの方は次の映画に行きましょう。

次の作品はエイゼンシュタイン『戦艦ポチョムキン』です。



この映画を見ると、先にご紹介した4本の映画と明らかな違いを感じるはずです。

では、違いの理由を今から観賞して見つけて下さい。

自力で考える事に意味があります。なので、難しいかもしれませんが頑張って探し当てて下さい。
詳しい説明は次回。

今回の映画はフリッツ・ラング『メトロポリス』



この映画はSFの原点にして頂点と呼ばれている、まさにSF映画の金字塔。
現代のあらゆるSFから、この作品の何らかの影響が見えると言っても良いでしょう。

SFを作るにあたって、最も難しく重要な点は“前提条件を観客にどのように理解させるか”。

物語分析でもやったように、映画の冒頭では主人公の日常を描きます。
この日常は観客にとって共通点があればある程、自然と受け入れ、少しの情報で物語の世界観を理解する事が出来ます。
メインの観客が日本人ならば時代劇より現代劇。フランスの日常より日本の日常。
それだけ“観客の現実”に近ければ近い程、わざわざ世界観を説明しなくても、観客は自分の経験と合わせて勝手に情報を付け足してくれるのです。

しかし、SFの世界観は全くの創作。同じ近未来の東京を描いたとしても、各映画、ビジュアルや社会構造などの世界観が全く異なります。その異なった、現実には無い世界を現実のように主人公達が生活をし、その上で物語を進行させていきます。

このような、複雑な前提をどのように冒頭で印象づけて観客に理解させるか。
これはSF映画だけではなく、通常のフィクション映画にも大変需要になっていきます。

それを読み取ってみましょう。

今日の2本目はこちら。ローベルト・ヴィーネの『カリガリ博士』


ドイツ表現主義映画の最高傑作。
この映画は多くのホラー映画やフィルムのワール映画に影響を与えた作品として有名です。

この映画で学んで欲しい事は“視覚によって如何に心理的効果を与える事が出来るか?”です。

本作の特色は

◯歪んだ美術セット
◯デフォルメされた家具
◯極端にコントラストが強いライティング
◯不自然なメイクと衣装
◯アイリスショットの多用(古い映画でよく見る丸く画面が黒く消えていったり、現れたるする方法)
◯誇張された演技

この映画はメトロポリスとは反対に現実世界を如何に奇妙に演出するかで、観客の不安を視覚的に煽っています。あまりにも有名な映画なのでこれらをそのままアイディアに入れこむのは無理ですが、今でもその独創性から多くの作家に影響を与えている作品。

映画監督の重要な要素”視覚効果“を学び取って下さい。

さて、前回で無声映画の重要性を説きました。

今回から数回に分けておススメの無声映画と観賞点をご紹介します。

今日の1本はこちら。

D・W・グリフィス『イントレランス』




グリフィスは映画の父と呼ばれ、映画史には必ず出て来る人物です。
その最も重要な役割は映画の文法を作った事にあります。
この世にある全ての映画は彼の作った映画の文法を使ってストーリーを語っていると言っても過言ではありません。

彼の作品で最も有名なのが『國民の創生』。
現在でも当然の用に使われているクロス・カッティング(2つの場面を交互に見せる事)やクローズアップ(画面に大きく物を映す事)等を最初にやった映画です。(カットの詳しい種類、説明は次章にて解説します。)

時間のある方は、こちらも合わせてご覧下さい。



さて、なぜ『イントレランス』の方をおすすめするのかというと、実はパラレル編集という技術が使われているからです。このパラレル編集、最近の映画では『クラウド・アトラス』でも使われてい技術です。




『イントレランス』は4つの別々の時代、ストーリーを同時進行させて物語っております。
これは大変高度な技術です。現代でも出来る監督は少ないのではないでしょうか…
その位、高度な技術を生み出し、無声映画という音情報、文字情報の制限のある媒体で複雑なストーリーをいかに語っているか…

ということで、この映画で知って欲しい事は
最小限のシンプルな表現(情報)をつなげる事で複雑で大きなストーリを描く事が出来る。ということ。

むしろ、それ無しでは複雑な物語は成立する事が出来ません。

前回で書いたように、無声映画は無駄があれば途端に観客が理解できなくなります。
無声映画のセリフと映像(登場人物
の行動を)分析し、観客に分かるように壮大で複雑なストーリーを語る方法を知りましょう。

「映画とは、退屈な部分がカットされた人生である」

「良い映画なら、音を消しても、観衆は何が起こっているか、はっきりと思い描くことが出来るだろう」

突然ですが、これ誰の言葉かわかりますか?

答えはサスペンス映画の神様アルフレッド・ヒッチコックの名言です。
おそらく世界中、全ての映画監督が知り、実感している言葉でしょう。


さて、前回までは脚本の基礎をやってきました。
実は脚本についても、まだまだ続きがあるのですが、映画監督には平行して養わなければならない感覚があります。

それは、映像組み立て
一般的にはカット割りとも言います。

脚本を仕上げた後、実際のカット割りをしていく為には映画のカット割りを知らなければなりません。

その為には映像によるストーリーテーリングとは何かを知らねばなりません。
映画監督によってはシナリオを書く時に既に頭の中にカット割りが固まっている人がいる程、物語を描く為には切っても切りはなせない重要な感覚です。

それを養う為に皆さんに映画を見て欲しいのです。
もちろん、普通の映画ではありません。

無声映画です。

さて、皆さんは今までに何本無声映画を見た事がありますか?
ひょっとしたら、映画史の一部として何本か観賞された方もいるのではないでしょうか?

しかし、ここでは映画史なんて関係ありません!
あくまで大切なのは映画を作る為の基礎を知る事!!現代人には大変見辛いとは思いますが、無声映画を観ずに映画を作る事なかれ!!と言う程、大切なテクニックがたくさん詰まっています。

では、まず無声映画の特徴とは何でしょうか?

え?音情報が無い事?

違います。

無声映画の最大の特徴は
”無駄があると観客にストーリーが伝わらない事”
です。


無声映画は映像の間に字幕でセリフなどの文字情報が入ることで構成されています。

映像で表現出来ることは映像で説明し、どうしても映像で表現できない事をセリフ(字幕)で補ってあります
もちろん、字幕を大量に使用すると観客はひたすらそれを読む事になります。それでは”映画”ではなく”本”と同じ...ですから、原則として字幕(セリフ)は最小限である必要があります。

実はこれ、現代映画にも通じる大原則です。
もちろん、現代映画では大量のセリフを使って映画を構成する面白さもあります。
が、大切なのは「映画とは、退屈な部分がカットされた人生である」にあるように、
退屈な部分=無駄な部分が無い事。逆にいうと面白ければ90分ずっとセリフがあっても良いのですが、現実にはそれは大変難しい事。なにより、セリフの重要性を考えれば考える程、無駄なセリフを排除する事でセリフが生きていきます。

さて、話しは無声映画に戻ります。

“無駄があるとストーリーが伝わらない”
と、書きましたが、ここで例を出してみましょう。無声映画風に映像を想像してみて下さい。

暖炉の前に若い娘と老いた男性が座っています。娘は編み物をしており、老人は本を読んでいます。すると、青年が現れます。娘は青年に気がつくと喜んだようすで青年に抱きつきます。


この時点でこの老人と娘、そして青年の関係はまだ分かりません。さて、ここで1枚分の字幕が現れます。
“ああ!会えるなんて思わなかったわ!なぜ連絡をくれなかったの!?”

そして、青年は老人にも挨拶をし娘は青年を暖炉の前に座らせ、老人と共に仲睦まじげに話しだします。

さて、この娘と青年、老人の関係を当てて下さい。

観客に推測できるのは、おそらく老人と娘は家族(父か祖父)であり、娘と青年が仲が良いと言う事だけです。青年が娘の兄弟か、恋人か、夫か、親友か観客は分からないのです。分からないまま、次々と話しは進んでいきます。もし、彼らの関係が分からない事が映画が面白くなる核となるなら、それでも良いでしょう。しかし、どう考えてもそうとは思えない映像です。もし、セリフのある映画なら、もっとたくさんしゃべらせて観客に理解してもらえるかもしれません。

しかし、ここで、今一度、考えて下さい。果たして、そんなにたくさんセリフが必要ですか?

では、もう一度、同じ映像と1枚の字幕だけで彼らの関係を語っていきましょう。

暖炉の前に若い娘と老いた男性が座っています。娘は編み物をしており、老人は本を読んでいます。すると、青年が現れます。娘は青年に気がつくと喜んだようすで青年に抱きつきます。

ここで字幕が入ります。

"兄さん!"

そう、この一言だけで、もう3人の関係性がはっきりしてきます。しかし、なぜ娘がこんなに喜んでいるのかは分かりません。短いセリフでもっと状況を物語る為のセリフを考えてみましょう。

“兄さん!やっと、戻ってこれたのね!!”


さて、このセリフで分かる事は何でしょう?“やっと、戻って来れた”と言う事は、長い間家に帰って来れなかった事を意味します。妹は久しぶりの再開を喜んでいます。ここで、さらにこのカットに情報を与えたいと思います。

例えばこの青年が軍服を着ていた場合、皆さんはどう思いますか?

そう、この青年は戦争から帰ってきた事を表現できるのです。そうすると娘の

“兄さん!やっと、戻ってこれたのね!!”

と言うセリフに、無事に戻ってきた喜びが追加します。

このように、無声映画ではちょっとした無駄がストーリを不明にし、観客の惑いを産みます。その逆に端的で素晴らしいセリフには多くの意味や情報が入っている事に気づかされるのです。そして、それは現代映画でも全く同じ。

登場人物の行動で何を伝えるか?
最小限のセリフが何を意味するか?

さて、物語分析の要領で無声映画を見て、観客に情報を与えるテクニックとストーリー・テーリングを学んで下さい。

次回は、おススメの無声映画と観賞の注意点等をご紹介。

ウクライナのテレビ番組でウッチ映画大学についての特集が組まれた模様。

内容は今年ハリウッドレポーター誌に最も優れた留学先2位に選ばれたことを中心に、
学校のカリキュラムなどが説明されています。

もちろん、全部ウクライナ語(ロシア語??)ですが、
映像で学校の雰囲気を感じてもらえると思います。

スタジオで実習しているのはアニメ科だと思われます。
おそらく、3年時にやる、映画美術or照明、又はエフェクト効果の実習の模様と思われます。

クレーンを使った撮影は誰のでしょうか??
時期的に見て、おそらく5年生の卒業制作の模様と思われます。

http://fakty.ictv.ua/ua/index/view-media/id/74798

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