映画のメトダ

【メトダ】とはポーランド語で【方法・方式】の事です。 世界有数の映画大学であるポーランド国立ウッチ映画大学に通う筆者が学校で学んだ事、自分で実践している事などなど、映画製作に関わる事を書いています。

2015年03月

さて、次の課題です。

課題:『return/戻る、帰る』をテーマに5カットで短編を制作しなさい。
①編集可
②ショットではなく、あくまで5カット。完成形が5カットである事。
③合計が5分を越えない事。







さて、前回の【ワンショット】の課題は学校のカメラで撮影したままで、手元の残っていませんでした。今回の課題は手元に残っているので、参考までにご紹介したいと思います。
また当時、私が講評で教授に言われた事と当時の自己分析コメントを簡単に書いていきます。
出来れば、皆さんが課題を終えた後に見て下さい。
そうすることで、自作品との比較が出来ると思います。



【1カット目】このファーストカットは評判が良くて、先生達全員が褒めてくれました。
「最初の主人公の美しいシルエットで観客の心をつかんだのは良い。シルエットは孤独や悲しみを連想する。彼女の置かれた状態を示唆する。」
また「カメラが主人公を置きざりにして動き続けるのも良い。観客は主人公を観たいが観れない。観客をより画面へと集中させる。」
「途中置かれた鏡は風景に変化を与えた。また、荷造りを見せた上で、もう一度、彼女の荷造りを手のアップで見せる事で情況を強調し彼女の意志をみせた。」と。ほぼ絶賛。
最後には「これがストーリーテーリングだ」とまで言ってもらえた。

【2カット目】前半は「通常のカット。」教授の1人から「何で彼女を座らせたの?1カット目だけで十分理解出来るよ?」との声。別の教授からは「いや、これはこれで良い。彼女の気持ちを改めてゆっくり思いめぐらす事が出来る」
でも、共通点は最初の写真の荷物を詰める所、立って考える所。その部分について「もう少しキレイにみせる事、出来なかったの?」という指摘。確かに、そこの一連の流れはあまりに平凡でつまらない流れになっている。

【3カット目】「なんで、洗面所側から撮った!?」が第一声でした。
「男側からの視点で撮る意味がない。」「今まで続いていた彼女への感情移入が途切れる」。
私としては似た様なカットを避けようと、撮ったのですが完全に裏目。撮った当初は思って無かったですが、改めて観てみると先生の言う様に、今までの流れを崩している。思い返してみると編集がしにくかったカット。正直、その編集の違和感が全てを物語っているのでしょう。

【4カット目】このカットについても特に何も言われず…。

全体を通しては高評価を頂きました。
1年生時の2回目の授業でしたので、先生の評価も甘口です。
さらに、当時の自分のコメントとか、とても恥ずかしいです…
あと『帰る』じゃ無くて『出て行く』だろ!と、テーマについて突っ込まれた記憶が…。
まだまだ、当時の私はテーマと云う物を理解出来ていなかった様です。
さて、皆さんも色々な方に見て頂いて、感想を貰いましょう。

さて、今までで皆さんは以下の事を学んできました。

①シナリオ分析の仕方
②シナリオの書き方
③脚色の仕方
④コンテの書き方

これらの蓄えた知識を使って、実際に撮影してみましょう。
撮影機材についてはこちら。
iPhoneでも全く問題ないです。
今回の課題は最初のフィクションの授業でカメラを渡されて、やる課題です。


課題:『孤独』をワンショットで表現しなさい

①何を撮影するかは自由、人物を演出しても、しなくても良い
②編集は不可
③ワンショットの長さは最長1分半とする、短くても良い

ポイント
簡単なシナリオとコンテを書いてから、撮影にのぞむ事


撮った映像は色んな方に見て頂いて『孤独』というテーマに沿っているか聞いてみましょう。
もし、観客に伝わらなければ、あなたの思っている孤独を表現する概念が間違っている事になります。
孤独を表現する為に、色々工夫してみましょう。
定期的に何回か繰り返すのもお勧めです。また、グループになって、一緒に撮影に出かけ、
1人ずつ撮影していった後に、皆でディスカッションするのもお勧めします。
ディスカッションの際は映画監督の基本【分析】と【創造】を忘れずに!
相手を攻撃するのではなく、分析に基づいた意見と、自分ならどうするかという代替案を添えましょう。
きっと、良い刺激になると思います。

さて、実際に絵コンテからどのような映像になるのかを見てみたいと思います
私のポーランド初の練習作(既に4年近く前の物!)を参考にご覧下さい。

まずは絵コンテから。
IMG_0742

写真(3)

そして実物。

   

最初期の練習作です。最低限の機材…家庭用カメラと三脚を使っただけの映像です。

どうでしょう?絵コンテ通りになっていたでしょうか?

次回からはシナリオ→絵コンテ→撮影までの流れの実践解説に移ります。

さて、前回で字コンテの決まったフォーマットが無いと言いましたが、実は絵コンテにも決まったフォーマットはありません。
大事なのは必要な情報が書かれている&分かりやすいです。

まずはこちらから。
IMG_0742

この絵コンテは見にくい方に入ると思います。というのも、こちらは1分作品の絵コンテ。しかも、ワンシーンのみ。と、言う事で、色々省力しちゃっています。

ここで見て頂きたいのは青で囲まれた部分。これは全てワンカットの説明となっております。
パン(P)による絵の動きが書かれていますが、左下には部屋の見取り図も書かれています。
ちなみに、番号が付いて横に文章が書かれていますが、これはカメラの動きと役者の動きが順番に書かれています。

IMG_0743

さて、お次ぎはこちらを…

IMG_0748

こちらは、きちんとした絵コンテです。ちなみに、私が書いた物です。
日本で使っていた物をそのままポーランドでも使っているので一番上の欄が日本語のままです。
5つの欄があり左から順にシーンナンバー、カットナンバー、絵、内容、セリフとなっております。
【内容】の欄にはカメラの動き、【セリフ】の欄にはシナリオ上での登場人物のセリフと動きが書かれています。
絵コンテで大事なのは省略記号。内容の部分を見て頂けば分かると思いますがFI(フレームイン)FO(フレームアウト)などの省略記号を使っています。ちなみに丸で囲んであるアルファベットは登場人物の頭文字です。

省略記号のチェックはこちらから↓

また気になるのは矢印表現だと思われます。
以下を見て下さい。
IMG_0744

大きい水色のフレームと、小さな紫色のフレームがあります。それを繋ぐように矢印(赤丸の部分)がありますね。
これはZU(ズーム・アップ)又はDI(ドリー・イン)の指示です。
矢印が小さいフレームの方に向いていればZU(ズーム・アップ)又はDI(ドリー・イン)、反対に大きいフレームに向いていればZO(ズーム・アウト)又はDO(ドリー・アウト)となります。

IMG_0745

さらに、登場人物が混同してしまいがちになるときは、きちんと名前や頭文字を書きます。

IMG_0749

こちらのカットナンバーの部分をご覧下さい。5の下に矢印が見えますが、この矢印が引かれている部分だけ、そのカットの説明となります。カット5の場合は手元から顔の前までのティルト・アップの指示を2枠使って書かれています。

シーン3、カット1の部分は登場人物BがFO(フレーム・アウト)した後に
DI(ドリー・イン)の指示が書かれています。

絵 コンテ字コンテは自分の書きやすさと言うのがあると思います。人によってはシーンとシーンの間を1枠あけて、そこに次のシーンの場所、時間設定を書き込む 人もいます。絵コンテのフォーマットはエクセルで簡単に作れるので、色々と試してみて自分なりに分かりやすい&使いやすい絵コンテを描いてみて下 さい。

まずはこちらをご覧下さい。

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これはポーランド語の字コンテです。
実はコンテには決まったフォーマットがありません。
しかし、前回書いたように書かなければいけない情報があります。

さて、どのようにして書かれているか一例としてご覧下さい。
以下は上記の翻訳です。
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①④シーン番号/場所/時間
シーン番号以外はシナリオのト書きの部分と同じように書いていきます。

②③⑤⑥カット指示
左から順にカット数、フレーミング、技術の指示、ショット内でのカメラの動きが、分かりやすく見だしにして書かれています。

撮影内容、範囲
紫色の枠で囲まれているのはシーン内容になります。誰が何をするかがきちんと書かれています。シナリオの内容に沿って書くことで、正確にどのタイミングでどのように画面に被写体が映るかが指示されています。水色の部分がカメラに関係する指示です。②はワンカットにドリーを中心に、人物のフレームイン・アウトなどが複雑に組み込まれています。

③⑤⑥のカットには具体的な説明は書かれていませんが、最初のカット指示にドリーと書かれています。そう言う場合は、ただ単にドリーするだけなので、詳しく書きません。ただ、シナリオ上の何処から何処までを撮影するかを示しておきます。
ちなみに⑥のカットは人物が書かれていません。と言う事は、人物無しの絵になります。

さて、意外と簡単だと思いませんか?
字コンテはきちんとしたシナリオ、カメラ指示の把握が出来ていれば脚本をベースに簡単に書く事が出来ます。

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