映画のメトダ

【メトダ】とはポーランド語で【方法・方式】の事です。 世界有数の映画大学であるポーランド国立ウッチ映画大学に通う筆者が学校で学んだ事、自分で実践している事などなど、映画製作に関わる事を書いています。

2015年11月

みなさん。こんばんは。

さっそくですが、みなさんに質問があります。
今日、1日あったことを振り返ってみてください。 

そして、それを朝から順に一つづつ書き起こしてみたください。


書き終えましたか?

書き終えた方から、先に進んでください。

例えば私の今日の1日はこんな感じです。

深夜に目が覚めたので、ベッドの中で読書。
明け方、2度寝。
10時頃、約束していたスカイプでの打ち合わせに寝過ごし10分遅れる。
12時頃、コーヒーで遅めの昼食。
その後、仕事。 
遅めの昼食を食べて、掃除。
その後仕事に戻る。
自宅にて仕事の打ち合わせ。
そして、ブログ記事の作成←今ココ。 

さて朝から順に今日、私のしたことを書いていきました。

これらは全て1行づつ【event/イベント/出来事】と呼ばれるものです。

【イベント】とは目的を持って一つのことをこなす事です。

1.深夜に目が覚めたので、ベッドの中で読書。→時間を潰すため。
2.明け方、2度寝。→睡眠欲を満たすため
3.10時頃、約束していたスカイプでの打ち合わせに寝過ごし10分遅れる。→打ち合わせを達成するため。
4.12時頃、コーヒーで遅めの昼食。→空腹を満たすため
5.その後、仕事。 →仕事を進めるため
6.遅めの昼食を食べて、掃除。→空腹を満たし、快適な生活を送るため。
7.その後仕事に戻る。終わらす。
8.自宅にて仕事の打ち合わせ。→新たな仕事の調整のため
9.そして、ブログ記事の作成→ブログ記事を完成させるため

ということで、私は8つのイベントをすでにこなし、9つめのイベントの最中ということになります。

ここで、2つ目の質問です。



では今日、私がこなしたイベントの中に【story/ストーリー/物語】はあるでしょうか?






答えはありません。

 なぜでしょう?

私は定義上きちんと【event/出来事】をこなしたにも関わらず【story/物語】がないのです。

ではそもそも【story/物語】とは何なのでしょう?

以前にも話した様に、映画は基本8つの【シークエンス/流れ】によって構成されています。
1つのシークエンスの中には複数のイベントがあり、要は映画は【イベント】の集合体によって構成されているのです。
では、複数のイベントとシークエンスがあれば物語になるのでしょうか?
答えはNOです。

先ほども言ったように、複数のイベントをこなしたにもかかわらず、今日の私の1日には何の物語もありません。

それは何故かというと、なんら感情の動きが見られ無いからです

出来事とはただの行為なので、必ずしも感情の動きはありません。
食事は空腹を満たす為の行為であり、自身の感情をゆさぶることはありません。

しかし、例えば以下のことが起こりました。



私は寝過ごして10分、約束の時間に遅れてしまいました。
すると、相手が烈火のように怒ってしまいました。
終いには「お前との仕事を打ち切る!」と言いだしてしまいました。
私は許してもらう為に、一生懸命謝りなんとか相手を説得します。
なぜなら、相手を怒らすことで、仕事に支障をきたした上に、仕事を失うかもしれ無いという心配を感じたからです。 

ここで、私には "心配する" という感情の変化が起きました。

しかも、この出来事には私だけではなく相手にも怒るという感情の変化が起きました。

こうすることによって《打ち合わせ》というイベントは《相手を怒らして、その謝罪の為に奮闘する》という【ストーリー/物語】に変化するのです。

このように映画における【イベント】とは単なる行為ではなく必ず登場人物の感情の変化を伴う【ストーリー】である必要があるのです。

逆に言うと行為だけで何の感情変化の無いものはストーリーとは言えません。
ストーリーがなければ映画ではなく単なる動画です。

ここで考えてみて下さい。

あなたは単なるイベント=動画を撮るのか、ストーリー=映画を撮るのかを。

今まで書いてきたシナリオのイベントは果たしてストーリーと言えるのでしょうか?

この問いはシナリオをブラッシュアップする上での最初の問いとなります。

今まで書いたシナリオを読み返してみて、本当にそのシナリオにストーリーがあるのかを、今一度、認識してください。

(ちなみに、実際の打ち合わせの遅刻は、遅刻とも思われずに穏便に終わりました)

ここからは、あなたの素晴らしいアイディアをきちんと面白い形で観客に伝えるためのブラッシュアップ(洗練)方法を解説していきたいと思います。

村の因習と家族との確執に悩む主人公。因習とは数百年に1度噴火する地元の山についてのもの。様々なことに耐えられなくなった主人公の鬱憤が爆発して、主人公は村の広場で踊り出します。きがついたら村人が全員一緒に踊り出し、最後に山が噴火して終わる。

みなさん、このアイディアをどう思いましたか?

実は昔、後輩に相談されたアイディアの一つです。
正直、このアイディアを聞いた直後の私の感想は『???????』とはてなマークが飛び交うものでした。

というのも、一部シナリオになった形で見せてもらったのですが、その書き方も拙く、整合性も取れてない内容に、直後はコメントに困りました。

しかし、こういうアイディアこそ化ける可能性を秘めています。
映画とは面白くてなんぼです。
もし、このアイディアが本当に面白い形で完成されれば、きっと "新しい!" と感じる人もいるのではないのでしょうか?私はこのアイディアは(どう実現させるかは別として)十分にその可能性を持ったものだと思います。
(残念ながら、このアイディアは完成どころかシナリオの完成系すら見ることなく終わってしまいましたが...)

アイディアが時に荒唐無稽に感じるのは、技術が伴わないからです。
面白いアイディアもつまらなく見えてしまう。
そこが問題なのです。

せっかくのアイディアを腐らしてしまわないように、しっかりと技術を身につけて応用していきましょう。次回から本格的な解説に移ります。

まずは以前の記事にてシナリオの基礎について思い出してください。

シナリオの書き方【初級編】講義 (23)
シナリオの練習法【初級】実技、課題 (7)
映画分析【シナリオ編】講義 (10)

 

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