映画のメトダ

【メトダ】とはポーランド語で【方法・方式】の事です。 世界有数の映画大学であるポーランド国立ウッチ映画大学に通う筆者が学校で学んだ事、自分で実践している事などなど、映画製作に関わる事を書いています。

2016年02月

さて、あなたの手元にはいくつのアイディアが溜まりましたか?
今回は、溜まったアイディアをどのように処理していくかを解説します。

1日10個書いていけば、1週間で70個。1ヶ月で300個近くのアイディアが埋まる計算です。その膨大なアイディアを出したままで満足していたのでは本末転倒です。せっかく書いたアイディアの管理をきちんとしましょう。

①1日15分以上机に向かう癖をつける

1日かけて書き上げたアイディアはその日のうちに、きちんと整理します。
大鉄則として机に向かって作業してください

前回、携帯のメモ機能を使ってのアイディア出しも可と書きましたが、注意点もあります。
実は机に向かって自主的に作業をするというのは、学校の勉強や仕事以外では中々習慣化できないことです。もし日常的に机に向かって作業をする習慣のある人は気にしなくても結構です。読み飛ばしてください。もし、1日のうちに仕事や学校の勉強以外で机に向かっての作業を15分以下しかしない人は必ず席について文章を書く心持ちで作業にあたって下さい。と、いうのもシナリオを書く作業は携帯では不可能です。ということは、必ず紙かパソコンに向かって作業することになります。となると、必然的に机に向かうことになります。この机に向かうこと自体を習慣化することからシナリオ書きは始まります。携帯は何処でも、どんなポーズでも作業が可能な媒体です。だから、寝転がったまま携帯をいじって終わり…なんてことも、十分考えられます。タブレットも同じことが言えます。もちろん、これらのツールは大変便利なものですから、どんどん活用していただいて結構です。ただし、アイディアのメモは必ずパソコン等に転送してきちんとその日のうちに机に向かって整理してください。もし、なたに机に向かう習慣がないのであれば、試しにアナログの方法を試すことをお勧めします。


②その日書いたアイディアはその日のうちに取捨、分類

まずは自分なりのカテゴリーを設定しましょう。
ここでは、わたしが使っているカテゴリーをご紹介します。

⑴特定の作品に対するアイディア
すでにある程度、完成像の固まっている作品に対する具体的なアイディア

⑵単発的なアイディア
単にかっこいいセリフや名前、どんなストーリーかはまだ不明だがシーンやカット割り等の個別のアイディア。未だ他のアイディアとの繋がりを持たないアイディア。

⑶今後、具体的なアイディアへと発展しそうな覚書
本や新聞等でみかけた印象的な部分の抜粋。 

⑷タイトルになりそうな言葉
タイトルにするのにかっこよさそうな言葉だけを集めます。

⑸その他
上記の3つに該当しないメモ。私の場合は演出や美術、講演に関するアイディアや、ブログのネタ、調べることのリスト、作業効率のアイディア等をこちらに分類しています。

ただし、あまり分類カテゴリーを多くし過ぎると意味をなしませんので注意です。

③分類先の媒体を決める

さて、分類するカテゴリーをきちんと設定したら。 次は部類する媒体を設定します。
媒体には主に2種類あります。
⑴デジタル
PC、タブレット等のデジタル媒体での作業。パソコンのメモ機能やWord等の文書作成ソフトなど様々な方法があります。
ただし、重要なのは簡単に再編集ができ、手軽に読み返すことができることです。
私はデジタル情報はにGメール上で管理しています。ネットさえ繋がっていれば、どこででも呼び出すことが出来る上に、カテゴリー別に新規メール作成し、保存しておけば良いので大変便利です。

⑵アナログ
ノートや手帳、スケッチブック等などの紙媒体での作業です。
映画のアイディアに関してはアナログ派な私は大判のスケッチブックを利用しております。私は自宅でしかこのアイディア帳を見ないので、大きなスケッチブックで後に全体象を見渡せるように、見開きいっぱいに使用しております。書き込み等をするため、いろいろ試した結果最終的に落ち着いた私なりの方法です。
持ち歩きたい人は手帳サイズでも問題ないと思います。また、リング式にのバインダーに保存するなども有効かもしれません。

④取捨、分類する

さて、カテゴリー、分類先が決まればいよいよアイディア整理に取り掛かります。
⑴そのアイディアは本当に面白いか?
まずは、その日思いついたアイディアが本当に面白いかを吟味しましょう。アイディアは思いついたばかりの時はよく見えます。しかし、少し経てば冷静になり意外に大したことがなかったりします。もし、この時点で面白くないと感じれば、思い切って捨ててください。この先、面白くなる可能性は全くありません。
また修正案が思いつけばその場で修正し、追加でアイディアが出てきた場合は付け加えます。

⑵分類する

先ほど設定したカテゴリー順にアイディアを分けていきます。
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こちらは私の使っているスケッチブックです。
このページは【⑴特定の作品に対するアイディア】になります。このように、ポストイットを貼っていきます。最初はランダムに貼っていたアイディアは、ある程度溜まるとストーリーの流れ順に貼り直します。ポストイットの良いところは順番を思い通りに並べ替えられることです。後に映画の流れを考える時に大変役立ちます。
⑤それぞれのカテゴリー別の整理法
分類ついでに、アイディアを活かす方法も考えてみましょう。
⑴特定の作品に対するアイディアの場合
1つアイディアを加えるごとに必ず以前までに出ていたアイディアを見返して、流れのどの部分に新しいアイディアが合うか、また必要無くなったシーンがないかを吟味します。いらなくなったアイディアは思い切って捨てます。また、シーンとシーンをつなぐ様な新たなアイディアやアイディアを繋げることによって生じる補足、訂正もこの時行います。

 ⑵単発的なアイディアの場合
新しいアイディアを足す場合、以前出したアイディアと組み合わせられないかを検討します。 組み合わせることができそうなものは、並べて貼り付け、ある程度の数がまとまれば【⑴特定の作品に対するアイディア】へと移動させます。

 ⑶今後、具体的なアイディアへと発展しそうな覚書
アイディアを足す時に、一通り以前のメモを読んでみます。その中で何か新たに発想が浮かべば、アイディアとしてポストイットに書き込んでください。そして翌日に改めて分類帳に付け加えて下さいすぐに貼るのはNGです。

 ⑷タイトルになりそうな言葉
ただひたすら並べていきます。 読み返した時に、何か映画になりそうな具体的なアイディアが浮かんだ場合は、そちらも新たにポストイットに書いておいて、翌日アイディア帳に付け加えましょう。
 
⑸その他
こちらも、ただひたすら並べていきます。必要と思う都度、見返してスケジュール管理やTo doリストとして利用します。
 これらの作業をなるべく毎日、机に向かって15〜30分行ってみましょう。
これを1週間続けるだけでも、あなたの映画監督としての意識と生活が劇的に変わります。 まずは1週間続けるところから、そしてなるべく長く続けられる様に少しずつ期間を長くしていきましょう。
また、ある程度慣れてくれば、自分のやりやすい様にその都度変更して、自分に合った方法を探していきましょう。 

さて、それでは具体的に各工程を説明していきましょう。
まずは1つめの工程であるアイディアを出し、固めていく作業です。

ここでの目的は以下の2つです。

①アウトプットを日常化する
②端的に自分のアイディアを文章にする能力を身につける

さて、アイディアの出し方は人によって様々です。

セリフから考える人、
キャラクターから考える人、
映像から考える人、
設定から考える人等々。

人によっては作品によってその出発点が違う人もいます。

多くの人は何かアイディアを思いついても、頭の中に放置しておくだけです。どんどん膨らませても頭にあるだけならば、どんなに面白いアイディアも意味がありません。他人に伝えてこそ真のアイディアとなるのです。そんな"箪笥の肥やし"ならぬ"脳の肥やし"にしない為にも、まずは1つずつ自分の脳から手を使って脳の外へと出してください。口ではダメです。必ず残る形で外に出してください。

それでは、アイディア出しの鉄則として以下の注意点に気をつけて下さい。
①きっちり書こうとしないこと。
気合を入れてネタ帳を用意したりとか、神経質になって一言一句しっかり書こうとしないことです。そうすることで、書く事自体に迷いが生じ、結局何も書き出せない…という事が最初のうちは多くあります。どうせ、その後の工程で修正等が入るのでまずは書き出す事を第一に考えて気軽に書いてください
②どんなくだらないアイディアでも思いついたらすぐに書く。
面白いかどうかは後で取捨すれば良いです。まずはなるべく多く、1つでも多くのアイディア出しをしてください。
さて、この2つの点に注意して、いよいよアイディア出しに入ります。
まず、アイディア出しといってもどうすればいいのでしょうか?

まずは私の道具を紹介します。
それは、こちら。
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ポストイットです。ポストイット利用には幾つかのメリットがあります。

①手軽に持ち運べる。 
アイディア出しとメモは紙一重。思い出した時にメモしないと、なんだかんだで後に忘れてしまいます。基本ポケットにペンと一緒に入れて持ち歩いています。そして、思いついた時にすぐにメモします。

②書くスペースが限られているため長々とかけない
ここでは後で読み返した時に理解できるように、端的で解り易く書く事を目標とします。また、そうする事でシナリオにだらだらと無駄な事を書かない癖付けをしていきます。
スペースの限られるポストイットには1、2文程度しかかく事が出来ません。その為、必然的に短く書く方法を考える練習になります。また、書ききれないような長いものは、数枚に分けて書く事で解消できます。

③ 後でカテゴリー分けしやすい。 
1枚のポストイットには1つのアイディアしか書きません。そうする事で、後の分類分けが簡単にできます。私は1日の終わりにノートに作品別、またはカテゴリー別にその日書いたメモを貼り付けます。またその時に、本当に面白いアイディアかどうかを取捨します。

④目のつくところに置いておける
整理したノートは机の1番目立つところに置いておき、事あるごとに読み返します。読み返す事で新たなアイディアや、シーンとシーンをつなぐアイディア等が出てきて、最終的に1つの作品にまとめる事ができます。
もちろん、携帯電話等のメモ機能を利用しても構いません。後に詳しく書きますが、その際には注意点があります。
色々なアイディアの思いつきがありますが、それをどのようにメモにしていけばいいのか?
それでは、具体的に書く内容について解説していきます。

①『セリフを思いついた場合』
そのまま、思いつくまま書きます。また、会話にする必要はありません。たとえ一言だけでも思いつけば書いておきます。もし、そのセリフを言うシュチュエーションも同時に思いついたなら、それも付け加えておきましょう。
また、繋がりのある会話以外は、セリフ1つにつき1枚のポストイットを使うようにします。

②『キャラクターを思いついた場合』
なんとなく気に入った名前をメモするだけでもいいです。
もし具体的な人物設定を思いついた場合には同時に同じ紙に書きます。
年齢、職業、生活等。性格は書いてはいけません。以前に書きましたが『優しく優柔不断』なんて説明は、映画制作には何の役にも立ちません。ですので、もし性格を書き加えたいのであればその性格を表すような、登場人物のやりそうな言動、口癖や言いそうなセリフを書くのがいいでしょう。

また、感情や登場人物の性格を表すような具体的な行動例を書き出すのもキャラ設定のカテゴリーに入れます。
例えば『強迫観念にかられた人物』を表現するために『人に話しかけられる前に、仕事や仕事に関係ないことまで過剰にやってしまう』のように、具体的なキャラクターではなく性格を表すことのできるエピソードを書き出します。可能であれば具体例も2、3個別の紙に書きます。例えば『会社で頼まれる前に測して仕事を前倒しでする。その為に残業付けで、睡眠がとれない』『給湯室のゴミの片付け等も、自分が汚したと思われてくない一心で、隅々まで掃除し始め綺麗にしてしまう』等々…。もちろん、1つの具体例に1つの紙を使用します。

③『絵から考える』
 
これは大体カメラワークや美術のことと思われます。もし具体的なカットを思いついたなら絵コンテとして書き出すのもいいでしょう。美術ならば簡単に絵を書いてメモにしても良いでしょう。もし、登場人物の行動だとすれば、行動とともになぜこの人物がその行為をするのかもメモしておくといいでしょう。

④『設定から考える』 
例えば『大豪邸の書斎で、盲目の老人と正体不明の若い男が2人きりで会話している。』
『近未来、人類は過去への移動手段を手に入れた。それを利用して日本警察は過去の未解決事件の捜査に取り掛かる。』などといったっように、具体的かつ端的に書きましょう。


以上のことを念頭に置き、最初は1日1、2枚から初めて、徐々に枚数を増やしていきましょう。最終的には1日に10枚以上アイディアをコンスタントに出せるようになるのを目標としてください。また、私は読書等で気になる記述を見つけた場合も、ポストイットに書いてアイディアとします。ただし、盗用になってしまわないように、そのメモには必ず出典を書き、あくまでそのままを使うのではなく、着想のヒントにしましょう。

さて、今日から是非実践してください。
そして、1週間後には1日10個、アイディアを出せるようになるよになりましょう!

さて、これまで映画シナリオにおける言葉の定義を説明してきました。

"アイディアからシナリオを具現化する”
「なぜ今更?」と、お思いの人もいると思います。ともすれば初級編の一番最初に持ってくるべきなような気がしますが、それは間違いです。

初級編では
 
から始まり、具体的なシナリオのフォーマットについて学んできましたね。
この中級編ではシナリオの書き方をきちんと知ったあなたに"より面白いシナリオを書く”ためのアドバイスを行います。

その為に必要だったのが言葉の定義に始まり俳優演出 (29) の解説だったのです。

シナリオ書きがいかに難しく、どれほどの影響を今後の工程に与えるのかをきちんと知らなければ良いシナリオを書くことは不可能なのです。

さて、御託が長くなってしまいましたが、いよいよアイディアをシナリオという形に具体化する作業について解説していきます。

まずは、アイディアを思いついてから、実際に書き上げるまでの工程について知っていきましょう。
大きく分けて6つの工程があります。

①アイディアを出し、固めていく作業
キャラクターを設定する作業 
ログライン--この映画が何についての映画であるかを表す短い文章。
④全体を構成する作業
⑤シーンを構成する作業
⑥以上を元にシナリオを書く作業
実際の順番や方法等は監督によって様々です。

例えば『三丁目の夕日』『リーガルハイ』等で有名な脚本家である古沢良太氏は、いきなり思いついたシーンから書き始め、その間を埋めていくようにシーンの追加、修正を繰り返し書き上げるそうです。

また、現代ヨーロッパの巨匠と呼ばれるミヒャエル・ハネケなどは、頭の中で1本の映画が完成できるまでは一切アウトプットせずに、ただひたすらリサーチとして読書をするそうです。そうして、一語一句全て書くべきことを知った上でシナリオを書き上げます。

一見、共通点の無いように見える2人のシナリオの書き方ですが、実は明確な共通点があります。それは2人ともアウトプットすることに慣れているということです。

慣れるということは、その行為を良く知り、効率良くその作業が出来るということです。
一見、まったく違う彼らの書き方は《シナリオを書く》という行為を良く知った上で①〜⑥の全ての作業を内包して自分なりにその作業を効率化したものと言えます。

おそらく、まだまだアウトプットという行為自体に慣れていないと思われる皆様には今後解説する方法を試し、繰り返し試みた上で独自の方法を見つけることをお勧めします。


 

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