映画のメトダ

【メトダ】とはポーランド語で【方法・方式】の事です。 世界有数の映画大学であるポーランド国立ウッチ映画大学に通う筆者が学校で学んだ事、自分で実践している事などなど、映画製作に関わる事を書いています。

2016年03月

さて、登場人物それぞれの役割を把握したならば、次は各キャラクターの具体的な設定となります。もちろん一番最初に設定するのは主人公からです。

キャラクター設定に必要なのは以下の3点。

【スーパーオブジェクティブ】
FACT / 事実】
【キャラクターがどのように世界を見ているか】

さて覚えている方もいると思います。以前、俳優演出 のトピックでも取り上げましたが、もう一度これらをきちんと整理、確認していきましょう。

スーパーオブジェクティブ
オブジェクティブとは目標という意味でしたよね。
スーパーオブジェクティブとは言ってみれば大目標。
登場人物たちが映画を通して達成しようとする目標のことを言います。

  • 恋愛映画ならば思い人との恋を実らすこと
  • スポ根映画なら優勝すること
  • 復讐映画なら復讐を遂げること

となります。この目標は映画全編を通して決して変わることはありません
特に主人公のスーパーオブジェクティブは、映画そのものの主題ともなります。
主人公がその目的を達成するために、迷い、苦しみ、それを乗り越えていく過程を観客は見ることになります。その為、主人公はどんなに迷い、苦しんでもその目標の為に必ず行動する事になります。その目標に沿わない行動は一切とれません。なぜなら、もう学んだ通り、人間は一度に1つの目標にしか進めないからです。それと同じように、映画も1つの目的にしか進むことができません。

例1)
今まで勉強ばかりで、コミュ症一歩手前の主人公が、偶然であった女検事に一目惚れ。奇跡的に司法試験に合格。コミュ症を克服し、弁護士として立派に成長、恋を成就する。
ここで語られている物語りは複数の要素がありますが、全ては文末の『恋を成就する』に集約されています。
  • 司法試験に合格→女検事に会いたい
  • コミュ症を克服→女検事と話したい
  • 弁護士として成長→女検事に認められたい
女検事との恋を成就するために自分を変える努力をし、弁護士として奮起します。
映画の中で、彼の行動は迷い、間違うことはあっても、その目標から逸脱することはありません。必ず、要所要所でスーパーオブジェクティブ=恋を成就するへと戻ることになります。

例2)
司法試験合格を目標としていた主人公が合格と同時に目標を失う。そんな時、偶然行方不明の父親を探す女と出会う。事件性が高いにもかかわらず捜査が行われていない事実を知り、彼女に協力し始める。その過程で様々な法的、社会的矛盾と戦い弁護士として成長しながら人生の目標を取り戻す。
さて、こちらはまた少し違ったパターンです。
例1)と似た設定ですが、こちらは『人生の目標を取り戻す』事に重きが置かれています。
ここで重要なのが、映画の中で相手の女性と恋愛関係が芽生えても、あくまで主人公の目標の付随品であること。
  • 協力し始める→目標を失っている主人公の探求の始まり
  • 法的、社会的矛盾と戦い→目標を決定づける作業
  • 弁護士として成長→目標を見つけ出し、達成する
例1の女検事の役目が対峙する相手だとすれば、ここに出てくる女は主人公を助け、成長を促す役に止まります。この場合、主人公の成長を促すために、別の対峙相手を設定しなければなりません。事件捜査に取り組まない警察組織の中の誰かでもいいですし、彼の捜査を邪魔をする上司でも構いません。

もちろん"女"を対峙相手とすることも可能です。しかし、そうなった場合『人生の目標を取り戻す』というスーパーオブジェクティブに最大限作用する役割を"女"に与えなければなりません。

このように、スーパーオブジェクティブは映画のテーマをはっきりし、物語の内容に左右します。また、シナリオに迷った際も常に『このエピソード(登場人物の行動)はスーパーオブジェクティブに合致するか?』と、常に問うことで物語の迷走を阻止します。

スーパーオブジェクティブを設定する際に以下の事に注意しましょう
❶スーパーオブジェクティブは1つであること
❷スーパーオブジェクティブは決して途中では変化しない
❸主人公の行動を決定づけるものであること
❹短く端的であること
ただし、大事な点が2点あります
❶登場人物がスーパーオブジェクティブを冒頭から持っているとは限らない
ただし、冒頭に目標がない場合は、物語が進む過程でその目標を見出し、それに向かって行動してゆく。大抵は8シークンス中の2〜3シークエンスでこの目標が確定されている必要があります。
❷スーパーオブジェクティブが必ずしも達成されるわけではない
俗にバッドエンドといわれるものです。その目標に向かって全身全霊でキャラクターは動き成長しますが、映画によっては主人公のスーパーオブジェクティブが必ず達成されるわけではないことを覚えておきましょう。
これら2点は物語の幅を広げる大事な要素です。以前にも言いましたが、あなたの映画をより面白くするための選択要素となります。スーパーオブジェクティブは登場人物の行動指針である事を忘れないでください。 

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2014年より、日本語学校主催のFundacja Aiとの共同事業として、日本語学習者に対しての演劇指導を行っております。日本とは違い一般人の"創造"の場の少ないポーランドの若者達へ、演劇を通し、協調性や自主性を育むことを目的に活動しております。
今年度も中高生を中心に10名の若者への指導を行っております。
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毎年その活動の輪は少しづつ広がっており、今年の2月からは文化会館のスタジオを無料提供していただき、隔週で指導を行っております。
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また、ショパン音楽院の声楽科の院生であるMicał Janieckiの協力も得て本格的な発声訓練等も行っています。
4月からはシナリオを使っての本格的な練習に入ります。
6月の発表まで、少しずつレポートしていこうと思います。

さて、アイディアが溜まった時点で、本格的なシナリオ制作へと移ります。

ネタ帳の【特定の作品に対するアイディア】は以下のようになっていると思います。

①シナリオのなんとなくの流れ(複数のエピソード)
②ある程度の登場人物の輪郭
③その他 (タイトル等)

この中から、まず取り掛かるのは【②ある程度の登場人物の輪郭】をはっきりさせる事です。 

そもそも、キャラクターを設定する前に、まずはそれぞれのキャラクターの役割を認識する必要があります。映画の中に出てくる登場人物は主に以下のように分類されます。

①主人公
②主人公と対峙する相手
③その他

③のその他に関しては 、その中でさらにいくつかのタイプに分ける事ができます。

この中で、最も重要なのは当然ながら ①主人公です。
私たちは常日頃、当たり前のように主人公という言葉を使用していますが、そもそも主人公とはなんなのでしょう?物語においてどんな役割を持つのでしょうか?

step1. 主人公

まず皆さんに認識していただきたい事があります。
それが主人公とはストーリーそのものであるということです。 
そもそも、ストーリーとは感情変化の伴う出来事をさしました。

では、誰の感情変化の事を指すのでしょうか?

そうです。もちろん、主人公の感情変化の事です。
詳しくはこちら:
主人公の心情がどのように揺れ動き、変化をするのか?
それが【ドラマ】であり【映画】です。

当然ですが…

主人公がつまらなければ、つまらない映画に
主人公に魅力がなければ、魅力のない映画に。
そう、主人公への評価はそのまま映画の評価になるのです。

その為、キャラクターを設定する場合は必ず主人公から始めてください。他のキャラから始めるのは無意味です。

step.2  対峙する相手とは?
主人公と対峙する相手とは簡単にいうならば…

恋愛映画ならば恋の相手
スポ根映画ならライバル
復讐映画なら復讐相手

この人物は正に第2の主人公とも言えます。

役割として大事なのが最も主人公の感情に影響を与える人物であるということです。そして、もちろんこの人物も、主人公によって影響を与えられ感情の変化(ドラマ)が生まれます

2人の人物が出会い、交流することで感情を揺さぶり合う。
それが、物語の軸となります
 
極端に言えば、主人公とこの対峙役さえあれば物語は成立します。

もし、他の人物を一切排除した状態で、物語に面白みが感じられない場合は、そのシナリオには問題があることになります。

まずは大前提として、最小人数でのドラマを作り上げてください。最小限とは、この2人の事です。ここで、きちんとしたドラマが作れなければ、その映画の中でドラマを作る事は不可能です。 

step.3 その他
その他の登場人物には大きく分けて2つの役割がありますが、大前提として
メインの2人の間に起こるドラマをより面白く引き立てる存在であるということです。 

❶主人公をより窮地に追い込み、主人公の目的達成を阻害する役
❷主人公を助け、成長を促す役

ⅰ.    恋愛映画ならば恋の相手の思い人(恋のライバル)→❶

ⅱ.  スポ根映画ならライバルに立ち向かう主人公を支える師匠 →❷

ⅲ. 復讐映画なら復讐相手への復讐を邪魔する第三者→❶

この様に登場人物には必ず役割が必要となります。

登場人物が多くなればなるほど、それは過剰な装飾となります。多くなればなるほど、個々の役割が分散され重要性が減るからです。重要性が減ればそのキャラの魅力自体も減ります。
例えば、意味ありげにかっこいいセリフを言って出てきた人物が、実は何の役割(なんの感情変化)を与えずに映画が終わってしまう…というのは、よくあることです。


無駄な登場人物を描いた分、本当に描かなければならない核の部分の描写が減ることをきちんと頭に入れてください。そして、常に各人物がその映画の中でどんな役割を果たすかを意識してください。

さて、"短編映画用のアイディアを閃く19の方法" という記事を見つけたのでご紹介します。せっかくアイディア出しと整理の仕方を学んだので参考にしてみてください。
今後、アイディア出しに詰まった時に役にたつかもしれません。

(個人的には全ての意見に賛成というわけではありませんが、とりあえず全てご紹介させていただきます。)
(原文は英語です。私は英語は苦手ですので、私流解釈、超翻訳です。多少の間違いはご了承ください。)

19 GREAT WAYS TO BRAINSTORM SHORT FILM IDEAS

1. ともかく机に向かえ

椅子に座る事で書く事の勘と経験を養ってください


2. ひたすら書け 
時間を見つけたら、とにかくかけ。書かなければ面白いことなど生まれない。
 

3. 自分についての物語をシナリオに書いてみろ

そうすることで、日常の面白いことをどれくらい自分が拾い取れているかわかる。


4. 年寄りのくだらないジョークはアイディアの宝庫だ

普段、飽き飽きしている様な話こそ、アイディアの宝庫と思え。

5. 両極端な者同士はお互い惹かれ合う

なぜ、美しいお姫様の相手はハンナサムな王子様では無く、カエルや野獣なのか?
それは面白くないから。一緒にいて当たり前だと思えるカップルにドラマは生まれない。面白くしたいなら主人公と正反対のキャラを作れ。
 

6. 予算を逆算してシナリオをかけ

ロバート・ロドリゲスが処女作『エル・マリアッチ』を作る時、金がなかった。無かったから考えた。考えた末に知り合いの俳優に頼み、その俳優が犬を飼っていることを知り、ギターを弾ける事を知った。その金のかからない事実から話を面白おかしくするアイディアをでっち上げ映画に成功した。"金が無い"という制限は思わぬ効果を産む。
 

7. 密室のストーリー

キャラを2人だけ登場させて、1つの場所だけで物語を描き切れ。


8. まずは見て、知れ。それから作れ

リサーチはアイディアを見つけるための素晴らしい方法だ。まずは、多くの物からお気に入りを見つけて、そのリストを作りなさい。そして、そのアイディアを徹底危機に分析しなさい。


9. "~したらどうなるだろう?"を考える。

常に"もし~ならば"を考える。


10ともかく、他の作品をみろ
多くの短編映画を見る事で、映画の作り方がわかる。 



11. 私の日

どうすれば、あなたの平凡な日常と人生を変えられるか考えろ。


12. 新聞を読め

新聞には映画のアイディアになる様な事件が山ほど書いてある。それを使わない手はないぞ。


13. 祝日やイベントなどのわかりやすいシュチュエーションを使え。

短編映画の場合、シーンを設定し観客に説明する時間はありません。その為に見ただけで何をしているのかわかる状況。クリスマス、洗礼、結婚式、葬式等のシーン設定を利用しろ。そうすることで、あんたはストーリーテーリングのみに集中することができる。


14. 
K.I.S.S.

"Keep It Simple Stupid." "常に愚かに見えるようなシンプルさを大事にしろ" 特に最初に作る数本はシンプルさを大事にしろ。複雑さに囚われて失敗して無駄に自信喪失すな。いくつかの世界最高の映画のアイディアは本当に単純であることを忘れるな。


15. ともかくパロディ

政治家や有名人、ビジネスリーダー等のエンターテメントのシンボルたちをパロディしろ。スキャンダルやゴシップはそれだけで人々の注目を集め楽しまさせる!それを利用しない手はない!しかも、それらの情報はタダで手に入る!!もちろんミッキー以外はな。(ディズニーは著作権が厳しい事で有名なので、それ以外はたいてい平気!というジョークです。)


16. 地元の伝説、伝統を使え!

ローカルの話題は全国的に知られてないことが多い。そうすることで、多くの人の注意を引くことができる。


17. Wikipediaランダム押しで記事を読む!

何かアイディアの足しになる記事に出会えるかもしれない。


18. ニュースジャッキングを利用しろ!

期間限定的な注目度の高いニュースを利用することにより多くの人の注目を浴びる方法の事をニュースジャッキングって言います。

ニュースジャッキングの解説はこちらをどうぞ。

https://strategy.roundup-consulting.jp/mt/archives/2012/06/howto-news-jacking.html

http://jp.blogherald.com/2013/08/28/five-pros-and-cons-of-newsjacking/


19. 典型的なオフィスドッキリは格好のネタになる。
http://mashable.com/2013/01/16/office-pranks/#b2eS2cb.7Gqy
 

欧米では定番のドッキリの様ですが、日本ではあまりだと思われます。興味のある方はリンク先(英語)のオフィスドッキリの紹介をごらんください。

おまけ。

20. とやかく言わずに、とにかくヤレ! 
この記事を書いた記者からの言葉です。

さて、参考になりそうなことも、ならなさそうなことも書いてありましたが、いろいろな方法を試すという意味ではとても良いと思います。皆さんも、どんどん新たなアイディアを出していきましょう。 

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