【スーパーオブジェクティブのバリエーション】

スーパーオブジェクティブの設定はシンプルで分かりやすいのが条件ですが、必ずしも偉大な成果を手にいれる為のものばかりではありません。
    • 恋愛映画ならば思い人との恋を実らすこと
    • スポ根映画なら優勝すること
    • 復讐映画なら復讐を遂げること
これらは、明確かつ主人公の目的が映画の主題ともなり得るものです。
が、スーパーオブジェクティブは、それ以外にもキャラクターの性格や性質を表すこともできます。

以下の3つのスーパーオブジェクティブを見てみましょう
    1. たった1人の人に真に愛されたい 
    2. 常に誰よりも上に立つ人間でいる
    3. 憧れのポルシェを買って、休日に乗り回す生活を送る
 これらは、とあるキャラクターのスーパーオブジェクティブです。映画を通しての目標というよりは人生スタンスにカテゴライズされます。この人生スタンスからもドラマが生まれます。その為には 【FACT/真実】を少し足してみましょう。(【FACT/真実】の設定については次回詳しく解説します。)

まずは一つ目からみていきましょう。

⒈ たった一人の人に真に愛されたい

《付け加えるFACT》
・主人公は30歳、女性、キャリアウーマン
・大人の色気のある美人
・モテるが特定の相手は作らず、体だけの関係ばかり
・「男なんてどうでもイイ」というのが口癖

彼女のスーパーオブジェクティブは『たった一人の人に真に愛されたい』です。しかし、彼女の行動は全くの逆。さらにFACTを付け加えていきます。

・8年前に本気で恋に落ちた相手に捨てられた
・実は心のどこかで今でも彼の帰りを待っている

そう、ここから "彼女は過去のトラウマで異性と深い関係を築けなくなっている" と推察できますね。ここまで書くと、すでにこの映画のドラマと主題が見えてきます。

《主題》
主人公がトラウマを乗り越えて真実の愛を見つけ出す物語

スーパーオブジェクティブは常に表面に打ち出されているものではありません。主人公の深層心理として映画の冒頭では隠されていて、徐々に明らかになり、映画の終わりに観客が見出せるようになっているものも多いのです。

では、次の例をみてみましょう

⒉常に誰よりも上に立つ人間でいる

 《付け加えるFACT》
・主人公は高校2年生の男の子
・運動も勉強も中の上
・努力というようなことは一切しません

さて、努力しなくてもそこそこできる主人公。しかし、完璧ではありません。努力しませんから、もちろんトップには立てません。ですが、彼は常に誰よりも上でなければ気がすみません。そんな人間が人より上に立つことが出来るか?その方法は、心で見下し、言葉で相手を侮辱して上に立っている気になる以外にはありません。さらにFACTを付け加えていきます。

・彼の尊大な態度に周りから嫌われ孤立する
・嘘をつくので大人からの信頼も失う
・人の上に立つどころか、他人から蔑まされる存在に

そこから、こういうドラマと主題を見いだすことができます。

《主題》
主人公は『真に人の上にたつとはどういう意味か?』ということを、考え、努力し、信頼を取り戻していく。

スーパーオブジェクティブは常に同じです。この人物のスーパーオブジェクティブも『常に誰よりも上に立つ人間でいる』と変わることはありません。しかし、物語上で意味合いが変わります。目的の為に主人公のアプローチ方法が変わることで、その変化こそがドラマを生むことになります。

3つめの例をみてみましょう

3.憧れのポルシェを買って、それを休日に乗り回す生活を送る
 
彼のスーパーオブジェクティブは一見、映画の主人公とは思えないようなドラマ性の感じられないものです。それでは、FACTを付け加えてみましょう。

  《付け加えるFACT》
・主人公は52歳の修理工
・一般的な中流階級
・妻と成人し独立した2人の子持ち
・25年前にローンで買った中古の一軒家に住んでいる 
・独身の頃から、いつかポルシェを持つ為に貯金をしている
 その貯金方法は徹底的で周りからはケチと言われている 
・家族はそのケチにうんざりしている
・貯金はもうあと数年でお目当のポルシェを買えるまで溜まっている

さて、ここから分かることは自分の生活には不釣り合いな物を欲しいと思っているわけです。まさに、人生をかけた目標です。さらに主人公は周りの迷惑も垣間見ず、ただひたすら自分の目的の為に行動します。金がかかるので休日は家でテレビを見るだけ、妻にプレセントを上げるのなんてもっての外。
さらにFACTを付け加えましょう。

・妻はそんな生活に疲れて離婚を切り出し、家を出て行ってしまう
・不注意の事故で高額の賠償金を払うことに
・今までのケチが高じてボロばかり使っていた家の設備が次々と壊れだす

1人で窮地に陥った主人公は妻の存在を強く意識しだします。そして、自分の夢は妻が居てこそ成立することを実感します。改心した主人公は妻と共にポルシェに乗って週末デートすることを目指し出します。

ここでは、彼のスーパーオブジェクティブは相変わらず『憧れのポルシェを買って、それを休日に乗り回す生活を送ること』ですが、そこに『妻と一緒に』という隠されていた目標が見出されます。この、気づきと実現までが映画のドラマになります。

スーパーオブジェクティブの設定は簡単なようで大変難しいです。なぜなら、そこから "どのようにより面白く複雑なドラマを生み出すことができるか?" ということを知らなければならないからです。それを知る第一歩は既にある映画から的確にスーパーオブジェクティブを見つけることです。そうすることで、より物語の構造を知り、自身の作品に生かすことができます。

皆さんも、たくさんの映画を分析し、スーパーオブジェクティブをより知って、自身の映画のより魅力的なキャラクター作りに活かしましょう。