さて、データによってキャラクターの性格や置かれた状況を推測させる方法を学んだ訳ですが、推測から具体的な事実へと変える必要があります。


すでにお馴染みのこちらの例をもう一度確認しておきましょう。

例1)キャラ① 20歳、男性、専門学校生、バイトを2つ掛け持ち 東京で父親と2Kのアパート暮らし。7歳の時に母親と離別。

 →苦労人で、責任感が強く、自立心の強い性格


例2)キャラ② 20歳、男性、大学生、6人兄弟の末っ子、アウトドアサークルを始め複数のサークルに所属。両親は祖父母と共に田舎で農業を営んでいる。現在は東京で2DKのマンションで8歳上の2番目の姉と同居中。

 →甘えたで、自立とは無縁、明るい性格の反面、優柔不断な性格

大事なのはそれぞれの性格を表現する具体的なエピソードです。


例えば①の場合『苦労人で、責任感が強く、自立心の強い性格』を表現する訳です。

①外食はせず、昼食は必ず父と2人分の弁当を作り持参

②代り手の無い急なバイトのシフトの穴に率先して入る

③常に課題などは締め切りの3日前にはやり終え提出する

④公共料金の支払いをいつも自分の手でしている

これらのエピソードは、性格どころか生活さえも想像させる非常に具体的なものです。

ちなみに、これらのエピソードの何が上記の性格の表れか分からない人のために一応解説をしておきます。

①④食事の管理と公共料金の支払いというのは家庭のことをきちんと把握していることを意味します。そのため、親と同居はしているが、親に頼らずきちんと自立していることを証明しています。

②自身の都合より組織の損失の方を優先するため、責任感の表れとなります。

③具体的な計画の元で自己管理ができている証です。そのため、責任感と自立心の表れとなります。

これらの具体的なエピソードがなぜ大事かというと、シナリオ上で矛盾した行動を登場人物に起こさせるリスクを減らせます。


例えば『苦労人で、責任感が強く、自立心の強い性格』なのに、理由もなく遅刻してくるシーンを出したり、毎日居酒屋で友人と飲み歩く、などという矛盾したシーンを書いてしまう、なんてことはなくなるでしょう。矛盾したシーンを出してしまうと、その時点で作者の意図は観客には伝わりません。

逆に、意識的にワンシーン(又はシークエンス)だけ性格とは逸脱した行動を起こさせることで、キャラクターの成長や置かれた困難も表現することができます。 


又、細かく設定することで、シナリオ上に何気ないが、キャラクターの性格や感情を表現するようなディテールを付け加えやすくなります。
また、これに加えて、キャラクターがこの性格に至った具体的なエピソードも考えましょう。

キャラ①が9歳の頃、仕事と家事の両立の無理がたたり父親が過労で倒れる。長く病床に付かなければならなくなり、それが原因で父親は会社をクビに。父は自分の治療よりも常にキャラ①を優先してくれていたが、次第に困窮する生活。ある日の朝、キャラ①は給食費をねだる。すると、父は布団の中でキャラ①に泣きながら給食費が払えないと謝罪しだした。それはキャラ①にとって初めて見る父の涙であった。

この出来事はキャラ①にとって、大きな人生の転機になった出来事です。

このように、キャラがその生活、性格に至った具体的なエピソードを用意することは、後の作業にとても有効になります。

また、大事なのが『このエピソードを受けてキャラがどう思ったか』は書きません。なぜなら責任感が強く、自立心の強い性格を表現するためのエピソードです。もし、自分の考えたエピソードが読者にこれらの性格をイメージさせることが出来なければ、そのエピソードは失敗です。

これらの設定はシナリオ中にはでてこないエピソードかもしれませんが、常にキャラクターの行動基準となります。

もう、お気づきかもしれませんが、役者との仕事にも大きく有利に働くことになります。

「責任感が強く、常に父を手伝うように心がけている」などと言うより、このような具体的なエピソードを上げる方が役者の想像を駆り立て、キャラクター作りに役に立ちます。 

もし自分の考えた【FACT】が狙い通りのキャラ設定を表現しているか自信がなければ、思い切って 【FACT】のみを他の人に伝えて、どんな印象を受けるか聞いてみましょう。
この工程は自分の意図通りに観客に情報を与えるための第一歩なのですから。