Twitterにて不定期で紹介している "フィルムメーカーが見るべき映画リスト" をこちらに、まとめて行きたいと思います。

作り手になって気が付いた事は映画ファンと作り手では明らかに鑑賞のポイントが違います。
また、映画監督の教養として知っておくべき作品がいくつかあります。

ここでは世界中の名作を作り手たちがどういった点を注意して鑑賞しているのかというポイントも交えて簡潔にご紹介していきます。

No 1. ルイ・リュミエール『ラ・シオタ駅への列車の到着』

最初にして最強の完璧な構図。

現在に至るまで列車到着のシーンは普遍的にこの構図によって表現されています。



色々考えて「フィルムメーカーが見ておくべき映画リスト」の一つ目を決めました。
作り手として過去作品を見ると言うことはその技術や思考の発展から自分の作品への創造のヒントを得るためです。『映画史』臭いリストになりますが、大事なのはそこから「作り手」として何を学ぶか。

大事なのは今ではありふれた何の変哲も無い表現がなぜ現在まで機能しているのか?
その必然性をこのワンショットは教えてくれます。

No.2 ジョルジュ・メリエス『月世界旅行』(1902)
映画黎明期は演劇と同じ要領で引きからのワンシーンワンカットが基本でした。しかし、この映画ではその型の中で観客を飽きさせないための様々な工夫がなされています。




華麗な美術、特殊効果、俳優への動きのつけ方と当時のアイディアとワンカット、カメラムーブメントなしで、観客を惹きつけるための緊張感がこの10分間に多く詰め込まれています。


No.3 ロイス・ウェバー「Suspense/サスペンス」(1913)
たった10分間の中にサスペンス映画のストリー・テーリングの基礎が全て詰められています。複雑なサスペンスもこの基礎を知らなければ作り上げることはできません。




サイレント映画の分析で最も大事なのは”どの情報によってストリーを認識しているか?”を理解することです。これ一本、きっちり分析することで情報伝達の大事さ、方法を身につけることができます。何よりありがたいのは10分という短さで映像分析初心者にも分析しやすいことです。


No.4 エドウィン・S・ポーター『大列車強盗 』(1903)
史上初めてクロスカッティング(同時間帯に別々の場所で起こっている事象を表す手法)が使用された映画。




また、当時、固定カメラでの室内撮影が一般的だったが一部ロケ撮影に加え、縦の構図の利用(画面間での上下のう動き)、パン撮影など、今では当たり前のように使用されている技術を使用した作品。

この作品で特に学んで欲しいのは最後のクローズアップ(CU)の意味。現在では情報伝達、観客を飽きさせない画面変化等々で頻繁にショットのサイズが変えて撮影されています。この映画のように(当時一般的だった)ワンシーン・ワンショットのLSで撮影された映画の中に1カットだけCUが入っています。
これは重要なワンショットを効果的に見せる方法の基礎です。

この映画を見たエジソンは「このCUは冒頭にもエンディングにもつけられる」とコメントしています。しかし、なぜラストカットに選んだのか?

自分の作品のどの部分に最も印象的なショットを入れ込むかの映像組み立ての最もわかりやすい例と言えます。


No.5  D・W・グリフィス『國民の創生』(1915)
白人至上主義団体KKKの誕生物語を南部白人の立場から描いた作品。
グリフィスは映画の文法を確立した人物。



映画の文法の定義

・1フレームは単一の静止画像である。
・1ショットは、カメラによって行われる単一の連続記録である。 
・1シーンは関連する一連の流れを表したショットの集合体ある。 
・1シーケンスは、映画全体から見た、一つの流れを構成するシーンの集合体ある。

この作品のもっとも重要な学びの点はクロスカッティングや極端なクローズアップ、フラッシュバックの使用意義の分析です。No4で紹介した『大列車強盗』に比べて更に洗練された映画技術が確立されていることに気づかれると思います。

No4とNo5を見比べることにより、ショット構成の重要さと、それぞれの技法が何を伝えるのに適切か、またそれらが、特に何を強烈に増幅させているのかを分析する事をお勧めします。

グリフィスの登場により、映画はそれまで、観客が引きの画面で“状況を観察する楽しみ”から、登場人物の感情を多分に読み取り、"登場人物の心情に共感する" という感情を揺さぶる媒体へと変化します。