映画のメトダ

【メトダ】とはポーランド語で【方法・方式】の事です。 世界有数の映画大学であるポーランド国立ウッチ映画大学に通う筆者が学校で学んだ事、自分で実践している事などなど、映画製作に関わる事を書いています。

カテゴリ:映画の作り方【初級編】 > 撮影編【初級】講義


さて、前回の続きです。

【ジブショット/jib shot】2:26〜

これは上記の様にクレーンを使ったショットの事を言います。このクレーンは簡易なものから、コンピューター制御できる高価な物まで様々。ただし、簡易な物でも高額です。

【フォローショット/follow shot】
映像をみて分かるようにカメラが被写体を追いかけていくショットの事です。
ちなみに、有名なこのショットを使った映画がこちら…
またまた『シャイニング』です。
『シャイニング』が名作といわれる理由は様々な映画テクニックを最大限に効果的に利用して作られている作品だからです。なので、映画大学では必ずこの映画を分析します。


【ハンド・ヘルド・ショット/Hand Held shot】2:44〜
実はこれ、手持ち撮影の事です。手でもって撮影することをHand Held(手で持った)と言います。この動画は良い例ではないですね。
この動画だと【スピン・アラウンド/spin around】に見えてしまいます。
スピンアラウンドとは…


この様にカメラをある部分を支点にして360度くるくる回すショットの事を言います。
前者の様に円の中心から外に向かって撮影するのも、
後者の様に円の外から中心や外に向かって撮影するのも全てスピン・アラウンド・ショットです。

【T/Vショット/the vertigo shot】2:54〜
別名ドリーズームとも呼ばれるショットです。
別名からもお分かりの通り、ドリーとズームを同時に使用します。

ヒッチコックが『めまい』で始めて使い“伸びる床”として一躍有名になりました。

撮影方法は上の画像の様に被写体を同じ大きさに保つ事が重要で、
ドリーアウトする場合ズームインを
ドリーインする場合ズームアウトを使って被写体の大きさを一定に保ちます。
ちなみに、両者はもちろん背景の見え方に違いができます。
上記の動画はドリーイン・ズームアウトで撮影されています。

以上、知ってると得する(?)カメラーワーク追記でした。

さて、撮影には必ず撮影対象という物があります。
風景や登場人物等のことですね。

撮影対象の事を英語で【オブジェクト/object】と言います。

【フレーミング】とはカメラフレームの中に【オブジェクト】をどの大きさで撮影すかを決める作業の事を言います。

フレーミングには以下の種類があります。
左から順番に【日本語/英語/略し方】を書いておきます。
略は実際にコンテを描く時に頻繁に使用するので覚えておきましょう。

①ロング・ショットLong Shot/LS

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この様に、人物より背景の方が大きく映っているショットの事を言います。
ロング・ショットと後に出てくるフル・ショットの定義の違いは人それぞれなのですが、人物が画面に対して1/3以下の大きさの場合はロング・ショットとみなして良いでしょう。

特徴は一目で登場人物の居場所、場所の持つ雰囲気を伝える事が出来ます
上の図の様に誰も居ない場所にポツンと登場人物を配置する事で孤独を演出したり、
逆に以下の図の様に人々がひしめき合っていることで、世界の壮大さを演出したりします。
写っている人物が誰なのか、個人が具体的に何をしているのかは、このショットだけでは特定できません。
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②フル・ショット/full shot/FS
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フル・ショットは上の図の様に人物を頭の先から足の先まで画面一杯に写すフレーミングの事です。

特徴はロング・ショットと同じように、一目で登場人物が何処に居るかを表す事が出来ます
また、ロング・ショットと違い人物の特定【誰が】と行動【何をしているか】が見ている方にも伝わります。

③ミディアム・ロング・ショット/medium-long shot/M-LS

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別名“ニー・ショット”とも言われています。“ニー”とは英語で膝の意味です。
フル・ショットと似た効果を持っていますが被写体に近い分、登場人物の動き等がフル・ショットに比べダイナミックに見えます。基本は膝の少し下あたりでフレーミングします。フル・ショットとM-LSは大した違いが無いように思いますが、膝の下でフレーミングするのには理由があります。基本、人物をフレーミングする時に関節で画面を切る事はしません。理由は収まりが悪い上に、動きが曖昧になるからです。

試しに、膝を境界線にフレーミングし人物が歩く様子を撮影してみると分かると思います。
また、腕の動きを関節を境界に撮影してみましょう。腕の動きが伝わりにくいと思います。

④ミディアム・ショットmedium shot/MS

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人物に対して頭の先から腰、太腿あたりにかけてフレーミングするのがミディアムショットです。
ここまで来ると、登場人物の表情が読み取れます。
以下の様に、ここまでのショットは画面の中で被写体を複数配置する事が可能です
なので、1つの画面で複数の人物の具体的なリアクションを見せる事が可能です。
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⑤ミディアム・クローズアップmedium-close up/M−CU

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頭の先から胸の当たりまでをフレーミングしたショットです。
登場人物の表情がかなり鮮明に読み取れます
また、よっぽどオブジェクト同士の距離を近づけない限り複数の人物配置は難しいです。
逆にM-CUで複数の登場人物を写した場合、オブジェクト同士の親密さなども表現する事も可能です。
また、背景の雰囲気は何となくわかりますが、オブジェクトが何処に居るかは特定する事は出来なくなります。

⑥クローズアップ/close up/CU
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このフレーミングは最もオブジェクトの表情を印象的に写す事が出来ます
ここまでくると、繊細な目線の動きや、息づかいなども捉える事ができ、観客に登場人物への共感を促す事が出来ます。
その代わり、場所の雰囲気を伝える事も特定も出来ません
また、キスシーンの様な具体的に顔を近づける様なシュチュエーション以外で他の人物を配置する事は出来ません。

⑦エクストリーム・クローズショット/extreme close-up/ECU or XCU
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ここまでオブジェクトに近くなると、具体的な目の動きしか伝わりません
よく目は感情を雄弁に語る…と、勘違いされがちですが、実際には目だけでは殆ど表情から感情を読み取る事が出来ません。唯一、明確に表せる感情は“驚き”です。理由は“目を見開く”という動作が良い意味でも悪い意味でも“驚く”と言う感情にしか無いからです。ということは、驚きは表現できても、その驚きの種類まではこのショットからは特定できません。
表情は具体的に特定できませんが、オブジェクトが大きく写しだされると、観客はより、映し出された人物に共感します。それを利用して編集によって“登場人物が考えている何か”を暗示させる事も可能です。

⑧マクロ・ショット/Macro-shot/MS
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オブジェクトの一部を極端に大きく写すフレーミングの事です。
ただ単に“マクロ”と言ったり“マクロ・ディテール”などと複数の呼び名があります。

ここまで来ると、これ1ショットだけでは一切の感情を読み取る事は出来ません。他のショットと編集で組み合わせる事によって意味付けしたりします。それを逆手に取り、曖昧にする事により、観客の注意を惹いたり、他のショットと合わせて強い印象を与えたりする事が出来ます。

ちなみに、各ショットのフレーミングの感覚は個人によって多少差があります。
例えばM-LSを膝の上まで…と考える人もいれば、膝の上はMSと考える人も居ます。
また、撮影現場では時と場合により、微調整を必要とします。なので、これらのフレーミングはあくまで目安と考えて下さい。より、具体的なイメージを伝える為に、一般的に字コンテだけではなく、絵コンテを使用していることを覚えておきましょう。

以下にポーランド語でそれぞれのショットが何と言うのかが詳しく説明されています。
興味のある方は見てみて下さい。ポーランド語のみなのですが、写真付きなので分かると思います。

http://www.historiasztuki.com.pl/strony/015-00-14-FILM-LANGUAGE.html

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さて、シナリオを映像化する為に必要な作業として【コンテを練る】という作業があります。

コンテとはどのような方法で撮影するかが書かれた映像の脚本だと思って下さい。
当然ですが、撮影前にシナリオに沿ってどのように撮影するかを決めます。
大まかに分けて絵コンテ字コンテという物があります。

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これは正式な物ではないのですが私が書いた絵コンテです。
ここには

①シナリオのどの部分からどの部分まで撮影するか
②登場人物の動き
③カメラ指示

などが書かれています。

絵コンテ、字コンテの詳しい書き方は別の機会に説明するとして、コンテを描く為に必要な知識があります。

それは【ショット】の種類を知る事です。

コンテは脚本と同じようにスタッフと情報を共有する為に使います。
これを具体的に知らなければ、カメラマンやスタッフに指示を出す事が出来ないのです。

そして、コンテを練る作業というのは、言ってみれば監督の醍醐味。どのように撮影するかによって同じシナリオでも映画は180度違った物になってしまいます。

これら、ショットをきちんと理解し、それぞれがどのような意味があるかを知る事は映画監督にとって大事な知識となるのです。その為にはまずショットとは何かをきちんと理解せねばなりません。


①【ショット】と【カット】の違い

まず、日本では多くの人が【ショット】と【カット】を混同して使っている傾向があるように見受けられます。

具体的にいうと【ショット】とは、撮影現場で監督が「よ〜い!アクション!!」と撮影を始め「カット!!」と言ってカメラを止めるまでのひと続きの映像の事を言います。

この様に撮影したままの無編集の物を【ショット】と考えましょう。
ですので、基本的に撮影前の絵コンテの段階で考えるのが【ショット】。
編集の段階で使用するのが【カット】になります。
【カット】は【切る】という意味ですが、言葉の通り編集によって切られた映像の事を言います。なので、1つの【ショット】から複数の【カット】を生み出す事が可能です。

よく日本では【ワンシーン・ワンカット】などと聞きますが、これは1つのシーンを1回の撮影(ワンショット)で表現したシーンの事です。
1つのショットを編集して頭とケツの要らない部分を切り取って1カットにしているので【ワンシーン・ワンカット】でも間違いではないのですが、海外ではこの言葉は使いません。意味が通じない事も無いですが、正確には【マスター・ショット・シーン】と言います。

(原則として、ここでは英語=グローバル・スタンダードの名称、考え方で説明していきます。日本で使っている用語とは多少の違いがあるかもしれませんが、ご了承下さい。)

②【マスター・ショット】

【マスター・ショット】とはシーンの頭から終わりまでを通して撮影されたショットの事を言います。
【マスター・ショット・シーン】との違いは、編集する事を前提に撮影されている事です。

現在、撮影の基本として1シーンに1ショットは【マスターショット】を撮影します。
通常、1シーンを作り上げるのにカメラの位置や人物の大きさを変えて複数のショットを撮影しますが、そのうち、最低でも1つのシーンを頭から終わりまでショットを割らずに撮影するのです。
その理由は色々あるのですが、最大の理由は撮りこぼしが無いようにするため。撮影は時間との戦いです。下手したら予定通り撮影できない場合があります。もし、マスターショットを撮影せずに、長いセリフのシーンを頭から順に撮影していって、時間が無くなって最後まで会話が撮影できなかった…などといった事態にならない為に、バックアップ的な意味も兼ねて撮影します。
(私個人はこの考え方は好きではないのですが、現在映画業界では常識的な考えになっています。)

さて、編集を前提に撮影すると言いましたが…

例えば、AとB、2人の人物が会話しているシーンを撮る事にしましょう。

映画では頻繁に、登場人物のアップが交互に出てきますよね?
その場合、わざわざ1カットずつ、カメラを止めて撮影しているのではなく、AとBの顔のアップを1ショットずつ、マスターショットで撮影し、後で編集しています。
ノート1-6
そして、シナリオの中の必要な部分だけ、カメラ位置や大きさなどを変えたショットを追加で撮っていきます。

ちなみに、長いセリフがあるシーンなどは、途中で役者の為にショットを割って撮影する場合があります。しかし、同じカメラの位置、画面の大きさの場合、ショットを割っていたとしても、それがシーンを通して撮影されていればマスター・ショットとみなされます。

さて、ショットとは何か分かりましたか?
次回は具体的なショットの種類を説明していきます。

さて、

『戦艦ポチョムキン』の違いは何だったでしょう?


皆さん、わかりましたか?

映画史において、エイゼンシュタインは最も重要な人物の1人です。
もう1人、作品を観てきた中で映画史での重要な人物がいましたね。
そうです、『国民の創世』『イントレランス』のD・W・グリフィスです。

D・W・グリフィスは【映画の父】と呼ばれ映画の文法を確立しました。
対してエイゼンシュタインはモンタージュ理論を確立しました。

ここまでは、おそらく知っている方も多いと思います。なぜなら映画史の基本中の基本。
しかし、映画史の勉強をしたい訳ではありません。

ここからが重要です。

さて、映画の文法とモンタージュ理論の違いは何でしょうか?

実はさらりと映画史で流されるこの2人の偉業に対する記述。

ですが、そもそも【映画の文法】とは、【モンタージュ】とは何なのでしょうか?
2つの違いは一体なんなのでしょうか?

この2つは現代では当たり前の様に使用され、観客は意識する事すらありません。
そして、多くの若い作り手さん達もこの2つの違いを曖昧に認識しています。
映画製作においてこの2つを曖昧にしておくと、大変な事になります。
しかし、逆にこれを知っていると、作品に大きな広がりが出来ます。

そして、この2つの違いが分かれば、自ずと冒頭の答えが見えてきます。

では、まず始めに【映画の文法】とは何でしょうか?
簡単に言うと映画の文法とは物語の時間軸の組み合わせ方法と考えて下さい。

例えば、3日間の出来事をAとBという登場人物を使って1本の映画にします。
AとBは別々に行動しているためお互い違う場所にいるとしま
す。


原則として映画は事件が起きた順に物語を見せていきます。
【例1】の場合で言うと1日目から順に2日目、3日目と時間軸に沿って物語を進める事になります。そして、話しの内容が混同しないように以下の様にAの出来事が終わった後にBの出来事を見せます。

例1)

  1日目        2日目        3日目
A ①1日目のAの出来事 ③2日目のAの出来事 ⑤3日目のAの出来事
B ②1日目のBの出来事 ④2日目のBの出来事 ⑥3日目のBの出来事


上記の場合①〜⑥まで6つのシークエンスが出来上がります。

例えばグリフィス以前の映画がそうです。

この頃の映画はワンシーンワンショット、舞台の様な全体を映す画面が基本で時間軸も過去から現在と通常の流れで表されています。


このルールを打ち破って新たな時間軸を提示したのがグリフィスです。
グリフィスは【クロスカッティング】や【カットバック】という手法を使い
【例2】のシークエンス③の様にAとBの2つの出来事を交互に見せ、同時に起こっている事の様に見せる事で1つのシークエンスとして臨場感を高める事に成功しました。

例2)

  1日目        2日目                  3日目
A ①1日目のAの出来事 ③2日目のAとBの出来事を同時に交互に ④3日目のAの
出来事
B ②1日目のBの
出来事                                                  ⑤3日目のBの出来事

【例2】ではシークエンスの流れは5つになります。
シークエンス③では2つ別々の場所、出来事を1つの"流れ"で見せます。前にも言いましたが1つのシークエンスにはいくつシーンや出来事があっても構いませんでしたよね。
あくまで映画の文法は時間軸の組み立て方です。シークエンス同士やシーン同士の繋ぎ方と混同しないように気をつけましょう。

例として『国民の創世』の一部を見てみましょう。


Aの出来事を黒人に追いかけられる娘として、Bは娘を捜す男の出来事とします。
この様にAとBを交互に見せることによって、シークエンスに緊張感を生み出しています。

さて、2つの出来事を1つの流れで見せる時間軸を表す方法が【例2】だとすれば、こんな方法もありますね。

例3)

  1日目        2日目        3日目
A ④1日目のAの出来事 ⑤2日目のAの出来事 ①3日目のAの出来事
B ②1日目のBの出来事 ③2日目のBの出来事 ⑥3日目のBの出来事


この様に①〜⑥までのシークエンスを本来の1日目から描く時間軸に沿った形ではなく、バラバラに見せていく手法。最近の映画ですと『ゴーン・ガール』の様に過去と現在を複雑に絡み合わせる方法です。また『メメント』の様に逆再生によって時間軸を組み立てる方法『イントレランス』でのパラレル編集も時間軸の組み立て方法による効果が大きい作品といえます。

この様に、どのように時間軸を組み立てシークエンスをつくるか?それをどの順番で繋げるか?というのが映画の文法になります。


では次にモンタージュ理論の説明に入ります。
映画の文法が時間軸の組み立てによってシークエンスを作り出す事とすれば、モンタージュはそのシークエンスの中の編集の仕方と考えて下さい。文法よりより細かく、カットとカットをどのように繋げるかによって、意味を作ってゆく作業です

例えばグリフィスは【映画の父】と呼ばれるように、映画の文法を作る以外にも映画に多くの“初めて”を取入れています。その一つが登場人物の顔のアップです。アップはそれまでメリエス映画(【例1】に引用)の様な全体像ばかり見ていた観客に強い印象を残し、俳優の表情によって登場人物の感情を読み取れるという新たな効果を生み出しました。しかし、このアップはそれ以上もそれ以下の意味もありませんでした。

それをカットに割によって新たな意味付けをしたのがエイゼンシュタインです。
さて、次の様な2つの別々のカットがあります。これを繋げてみましょう。

Cut1 主人公のアップ、目線は一点を見つめている。
Cut2 男達が喧嘩している。

さて、皆さん。このカットを続けて見たらどう思いますか?
きっと主人公が男達の喧嘩を見ていると理解するでしょう。この様に全く別のカットを2つ繋げて登場人物の行動、意図、物語を展開していくのがモンタージュ理論です。

皆さん、思い出してみて下さい。『ポチョムキン』以外の映画を。



例えば『カリガリ博士』。こちらの導入部1:09〜見て下さい。

ここでは、男達が女を目線で追っている事を示す為に、女の登場を男達も含めた1枚の全体絵で録り、男のアップの後は必ず同じ全体絵に戻り位置関係を繰り返し見せています。その後にようやく女が1人で映っているカットがでてきます。

それに比べてこちら4:09〜見て下さい。


こちらでは、船長が船内から出てきた後のアップ。その次の肉を見ている男達の全体絵の組み合せだけで船長が何を見ていたのか瞬時に理解できます。ここでは『カリガリ博士』に出てきた冒頭の全体ショットによって位置関係を説明するシーンはありません。

この様に、カットとカットの繋ぎによって新たな意味を与えたのがモンタージュ理論です。

『戦艦ポチョムキン』を見ていて思った方も多いと思いますが、おそらく他の映画と比べて、見やすかったのではないでしょうか?

その理由は前途の様な説明カットを省いた事による、カット間の間延びの解消。
そして、それによりセリフと映像が正確の呼応している事です。

もちろん、他の映画もセリフと映像はある程度呼応し合っていました。が、モンタージュ理論がきちんと確立されていなかったため、無駄な繰り返しに、引き絵よる状況説明なども多く、テンポが悪いだけではなく、登場人物が何か話し合っていた中の最も重要な部分だけが字幕で出る…といった、空白の部分がありました。
しかし、この映画では字幕部分を抜いて、アフレコで絵にセリフを合わせてしまえば、そのまま上映できる程セリフとその前後に来る映像が合っているのです。そうなると、もう殆ど今私たちが見ている現代の映画と変わりありません。

更に重要なのがイマジナリーラインがきちんと取入れられている事です。
これこそ、モンタージュ理論の最たる成果と言っても良いでしょう。
イマジナリーラインとはカットを割った状態でも、登場人物の視線が合うように目線を合わす事です。
あの船長と船員の肉のシーンの様なカット構成の事です。
注意深くポチョムキン以外の映画を見てみると、俳優の顔の向きなどに違和感を感じるはずです。
(それでも映画として成立している理由は色々あるのですが、ここでは説明を省略します)

これで、もう違いが分かりましたね?

◯カッティングによる新たなカットの意味付けがなされている。
◯それにより無駄な説明カットの省略によるセリフと映像との正確な呼応。
◯イマジナリーラインが正確に使用されている。

以上3点に気がつけたあなたは、既に映像組み立ての基礎が何となく身に付いていたと言う事になります。

さて、『戦艦ポチョムキン』を使って更に詳しい説明をしていきましょう!

…と、言いたいのですが…その前に…
カットやショットを正確に知らなければ映像分析は出来ません。ですので、その前にカット&ショットの説明に次回から入ります。

さて、ここまで4本の映画を紹介してきました。

皆さん既にご覧頂きましたか??

この紹介順にはきちんと意味があるので
『イントレランス』『メトロポリス』『カリガリ博士』
先に観賞して下さい。
まだ見てない人はこれらを見た後にもう一度このページに戻ってきて下さい。



さて、既に観賞済みの方は次の映画に行きましょう。

次の作品はエイゼンシュタイン『戦艦ポチョムキン』です。



この映画を見ると、先にご紹介した4本の映画と明らかな違いを感じるはずです。

では、違いの理由を今から観賞して見つけて下さい。

自力で考える事に意味があります。なので、難しいかもしれませんが頑張って探し当てて下さい。
詳しい説明は次回。

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