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響きの森 vol.69


東京poのコンサート、前回は体調不良で行けなかったので、半年ぶりになります。
直前に曲目を確認するためネットを見ていたら、バッティストーニ人気なのか、チケットは見事完売となっていました。

最初はヴェルディの「運命の力」序曲です。
ウォーミング・アップ曲にしては多少重たい方ですが、コンサートではたまに見かけます。
予想どおりというべきか、バッティストーニの魅力満開です。
冒頭から盛大に金管楽器を鳴らしたあと、たっぷりとイタリア・オペラの雰囲気を味わうことができます。
ゆったりとしたテンポで聞かせるところは、あくまでも遅く、鳴らすところは派手に鳴らし切りますが、それが下品になる寸前で踏みとどまっている感じがします。
ヴェルディだと、もう少し端正な音楽にするのが王道でしょうが、わたしなどは「イタリア・オペラは、こうでなくっちゃ!」という派ですので、1曲目から大拍手です。
オペラのピットに入ることが多い東京poですから、聞かせどころもよく心得た響きを聞かせてくれます。

2曲目はショパンのピアノ協奏曲第1番で、ピアノ独奏は清水和音です。
20歳の1981年にロン=ティボー・コンクールで優勝して一躍スター・ピアニストになった人です。
その後、国際的な活躍の話は伝わってこず、わたしは久しぶりに名前を見た印象です。
その清水和音も還暦手前で、年月の経過は早いものです。
で、肝心の演奏ですが、残念ながらわたしは全く楽しめませんでした。
第1楽章の長い長い序奏がまず、やたら重たくて暗いのです。
なんか冬の北陸に出張したときの、どんよりとした低い雲がたれこめている、あの景色を思い出してしまいます。
やっとピアノが鳴り始めても、どうにも音が客席にまで届いて来ません。
あたかもオーケストラに引っ張られたかのような足取りの重いピアノに聞こえます。
ペダルを踏みっぱなしで、音が不明瞭に聞こえますし、過剰な装飾音も肝心の音が聞こえずにスベっている印象になります。
ところどころで聞こえるミスタッチはコンサートではつきもので仕方がありませんけれども、ピアノ、オーケストラともにリハーサルをしっかりやったのかなと思わせるところもあったりして、せっかくヴェルディで上がったテンションがだだ下がりのまま終わってしまいました。
それでも二階席からブラヴォーの声がかかり、アンコールではラフマニノフの「ヴォカリーズ」(アール・ワイルド編曲と掲示されていました)を弾きましたけれども、これもショパンの印象が悪かったせいか、もうひとつ感心するものではありませんでした。


休憩後のメイン曲はムソルグスキーの「展覧会の絵」で、もちろんラヴェル編曲版です。
コンサートでもLP、CDでも数多くの演奏に接してきた曲ではありますけれども、バッティストーニが東京poから引き出す響きは、思いのほか派手派手しいものではありません。
むしろ、土俗的な力強さを意識的に出しているようなところを多く感じます。
そういえば、休憩後のチューニングのときに聞こえた音が、自信はありませんが、いつもよりわずかに低いように聞こえたところがあって、そんなところも影響しているのかなと、いろいろ考えながら聞いていました。
金管楽器はもちろん、木管楽器も目一杯演奏してくれて、とりわけ打楽器群の活躍は目を見張るものがあります。
わたしが大好きな「バーバ・ヤガ」での打楽器群の迫力は大満足です。

アンコールには「ティコ・ティコ」が演奏されました。
聞いたことがある曲ではあったのですが、曲名は会場の掲示で知りました。(アブレウ作曲「ティコ・ティコ・ノ・フバ」と掲示されていました)
高齢者が多い会場もノリノリで、おしりを振りながら指揮をしていたバッティストーニが振り向いて手拍子を求めると、わたしを含め、若干不揃いながら盛大な手拍子で応じて会場は大盛り上がりです。
お隣の席の上品な高齢女性の方は、「懐かしくて」と言いながらハンカチで目頭を押さえながら喜んでおられました。

聞きながら思ったのは、日本ではポップス・オーケストラは定着していませんけれども、人数の多い東京poならば、高齢者をメイン・ターゲットとして海外・国内のポップス・コンサートは成り立つのではないかと思った次第ですが、どうでしょうか?

*「ティコ・ティコ」はバレンボイム/BPOも演奏していましたが、編曲も与ってか、バッティストーニ/東京poの方がはるかにノリのいい演奏でした。