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シューベルトの管弦楽編曲版による名歌曲集(プライ、岩城宏之/OEK) 図書館

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シューベルト:管弦楽編曲版による名歌曲集(プライ、岩城)


地元図書館で借りたい本を検索中に、ついでに見ていたCDで珍しいものを見つけました。
ヘルマン・プライがシューベルトのリートを歌ったものなのですが、伴奏がピアノではなく、岩城宏之(1932-2006)が指揮するオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)というものです。
1995年11月、富山県小杉町文化ホールでの録音と記されており、録音関係者の名前は日本人名ばかりでしたが、ちゃんとドイツ・グラモフォンのロゴが付いたCDです。

Wikipediaによれば、OEKは1988年に石川県と金沢市により設立された財団法人が運営母体で、2001年からは石川県立音楽堂を本拠地としているとなっています。
日本初のプロ室内管弦楽団を、金沢という場所で立ち上げるにあたっては、初代音楽監督となった岩城宏之氏の尽力が大きかったと言われています。
まだ自前のホールを持たない時期に、隣県富山で録音し、ヘルマン・プライという大物歌手を招いてDGというメジャー・レーベルで発売するというのも、きっと岩城さんが走り回ったことなのだろうと想像してしまいます。

さて、このCDの収録曲は次のとおりです。


1.魔王(リスト編曲)
2.馭者クロノスに(ブラームス編曲)
3.竪琴弾きの歌(レーガー編曲)
 (1)孤独に身を委ねる者は
 (2)涙と共にパンを食べたことのない者は
 (3)家々の戸口へ忍んで行き
4.プロメテウス(レーガー編曲)
5.夕映えの中で(レーガー編曲))
6.音楽に寄せて(レーガー編曲))
7.セレナーデ(モットル編曲)
8.死と少女(モットル編曲)
9.おやすみ(鈴木行一編曲)
10.菩提樹(鈴木行一編曲)
11.春の夢(鈴木行一編曲)
12.彼女の肖像(ウェーベルン編曲)
13.ます(ブリテン編曲)
14.夜と夢(ワインガルトナー編曲)

 編曲者の中では鈴木行一(1954-2010)というお名前は初めてで、Wikipediaによれば東京芸大出身の現代作曲家で、テレビ「題名のない音楽会」で黛敏郎氏のアシスタントとして編曲等でも活躍された方のようです。
現代音楽家を大事にする岩城さんなりの支援の一環だったのでしょうか。

収録曲は聞き慣れたものが多く、ときにリズムが軽快さを欠き、ちょっと間延びした印象を伴うのは、オーケストラ伴奏の影響もあるかもしれません。
シューベルトの歌曲(リート)は、私はピアノ伴奏で聞いていた方がしっくりきます。

シューベルトの交響曲第9番(ベーム/BPO)

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ベーム/BPOによるシューベルト交響曲全集を聞きついできましたが、いよいよ最後の第9番です。(いまは第8番と呼称されていますが昔から慣れた番号にしました。)
1963年録音となっており、この全集最初に録音されています。
なお、ベームは、その後VPO、SKDとの第9番のライブ盤を残していますが、わたしは聞いたことがありません。

「グレート」という愛称を持つこの交響曲は、わたしは必ずしも熱心に聞いてきた曲ではなかったのですが、このブログでもいくつかの録音を聞き、かなり耳慣れたものとなってきたような気がします。
そして、ここまで聞いてきたベーム盤交響曲全集は、いかにもドイツ風の生真面目なシューベルトを聞かせてくれており、この第9番でも同じ雰囲気を感じ取ることがでrきます。

その典型が第1楽章でして、当時のBPOの重厚な響きをそのまま捉えたかのようなイエス・キリスト教会でのヘルマンス録音(この第9番のみ)は、なんだか目の前に大伽藍があるかのごとくです。

第2楽章ではもう少しゆったり、たっぷり聞かせてくれてもいいのにと思えるほどサバサバと音楽は進んでいきます。
しかしながらオーケストラの音色は、どこかしら可愛らしさを感じさせるものがありますので、乾いた感じはどこにもありません。

第3楽章でもBPOのパワフルさを存分に活かしているかと思えば、中間部の愛らしさもそれなりに聞かせてくれます。
もう一段の艶やかさを求めるならVPO盤がいいのかなとも思えますが、前後の部分での力強さはBPOらしさに満ちています。

ベームらしさを一番感じるのは第4楽章かもしれません。
鳴らすべきところではBPOをかなり激しく鳴らしていて、好調なときのベームの音楽そのものを感じさせます。
その一方で、弱音部分では丁寧なアンサンブルで、強弱のコントラストが恣意的に感じるところがなくて、自然に音楽に引き込まれます。

この曲を直前で聞いたのはピリオド演奏によるブリュッヘン盤で、それなりに感心して聞いていたところもありますけれども、伝統的な大オーケストラで、ここまで充実した音楽を聞かされると、やはりわたしはこういう演奏の方が安心感をもって素直に聞くことができます。

シューベルトの交響曲第8番(ベーム/BPO)

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ベーム/BPOによるシューベルトの交響曲全集から第8番「未完成」です。
1966年録音となっています。

誰もが知る名曲ですので、あまりにも多くの録音があり、名録音とするものも人それぞれの好みで異なるのも仕方ないでしょう。
ベームの「未完成」も今回聞いた録音のあと、1977年にVPOとライブ録音を行っており、こちらを好む方も多いみたいですが、私は聞いたことがありません。
(その他に1975年のVPOとの来日公演ライブ盤というのもありました。)

今回聞いたBPOとの録音は、いかにもベームらしい音楽を聞かせてくれているように感じます。
華やかさ、色っぽさとは遠く離れた剛毅としか言いようのないもので、第1楽章の深刻な響きは、懐かしの映画「未完成交響楽」でシューベルトに親しんだ、私よりももう少し上の世代の方々には強い親近感を覚えそうな気がします。
いかにもドイツ風と感じる重厚な響きをまだ残していたBPOの部厚い音色は、この演奏にふさわしいものを感じます。
まだイエス・キリスト教会での録音ですから、余計にそう感じるのかもしれません。

しかし、第2楽章になりますとBPOも艷やかな響きも聞かせてくれて、とりわけ木管楽器群の音色の美しさは聞き惚れるものがあります。
ゆったりと聞かせてくれているので、次々と登場する個々の楽器を存分に楽しめます。
私は、なんだか音楽そのものよりも、年代を感じさせない録音でBPOの見事なアンサンブルに聞き入ってしまいます。

歌曲で聞くシューベルトの色気みたいなものを、もう少し感じさせて欲しいかなと思うところもあるのは、なまじワルター/NYP(CBS)を聞いてしまっている影響もあるかもしれません。
これはこれで立派な演奏だとは思うのですが、その前にこの時期のBPOの素晴らしさを見事に引き出したというところに、わたしは感心してしまいます。

シューベルトの弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」(ABQ)

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ベーム/BPOによるシューベルトの交響曲全集を聞いている最中ではありますが、棚を見ていたら私としては珍しい弦楽四重奏曲が近くに並んでいたので、シューベルトつながりで聞いてみました。
「死と乙女」という副題で有名な第14番です。
室内楽に疎い私は、よくわからないままアルバン・ベルク四重奏団(ABQ)という名前だけでを入手したCDで、1994年のライブ録音と記されています。
LP時代も名前だけで選んだスメタナ四重奏団盤を聞いていたように思います。

このブログでは「死と乙女」は、マーラーが編曲したものを演奏したバシュメット盤を聞いていて、オリジナルの弦楽四重奏は初めてです。

このABQ盤は、スタジオでのセッション録音ではないことも影響しているのでしょうか、彼方の記憶のスメタナQ盤から思うと、随分激しい演奏であるように感じます。

第1楽章から、たった四人の弦楽とは思えない部厚くて激しい響きが聞こえてきます。
かなり近接したマイク・セッティングみたいで、よく言われる松脂が飛んできそうな生々しさがあります。
弦が切れるのではないかと心配するほど弓を強く押し付けているように聞こえます。

少々驚きながら第2楽章に移りますと、ここは元が歌曲であったところと言われていますので、情感豊かな優しさで始まるものの、徐々に激しさが増してきます。
元となった歌曲に定かな記憶がないものですから、いつもお世話になっている梅丘歌曲会館の対訳を見てみると、乙女が迫りくる死神に悪態をついて、それに対して死神が乙女を死に誘うという短いものです。
棚を探してみたらフィッシャー=ディスカウBOXの4枚目に収録されているのを見つけて、それを聞いてみましたところ、2分半ほどの短いものでした。
フィッシャー=ディスカウの表情豊かな歌声は目立つものの、歌曲としては陰鬱さが先に立って、それほど面白く聞くことができるものではないように感じます。
むしろ、この歌曲をここまで魅力に満ちた弦楽四重奏の変奏曲に仕上げるシューベルトに驚嘆します。

第3楽章は情熱に満ちた始まりから、優しさに溢れた舞踏的な曲想への切り替えのコントラストが見事です。
そして、かなり速いテンポで奏される第4楽章の猛烈な躍動感は、ABQの真骨頂を示したものかなという印象です。
ここまで豊かな響きを圧倒的なテンポで最後に聞かされると、終わりにわずかに収録された会場の拍手もわかるような気がします。

かなり興奮気味に聞き終わった後、ふと思いますのは、かなり煽られたような印象のこの演奏は、ここまで激しく演奏する曲であったかなというところがあります。
室内楽は多くの演奏を聞いているわけではありませんので、他の団体がどういう演奏をしているかもわからないままの印象ではありますけれども。

シューベルトの交響曲第6番(ベーム/BPO)

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ベーム/BPOによるシューベルトの交響曲全集から第6番です。
1971年の録音となっています。

シューベルトが20歳頃の作品と言われており、たいへん愛らしいところもある曲です。
全集の紙ジャケットには、「Little C major Symphony」と記されており、いままで気づかないものでありましたが、これは同じハ長調の第9番「グレート」との比較で小さいハ長調の交響曲という意味で付けられたものであるようです。
他のLP・CDにも記されていたのかもしれませんが、私は、いままで気づいていませんでした。

第6番をベーム/BPOは、かなり堂々とした響きで聞かせながらもシューベルトらしいところも聞かせてくれています。
第1楽章などは、歌曲にも通じる素敵な旋律も聞こえてきますけれども、BPOをかなり鳴らしているものですから、ちょっと立派すぎる感じもします。
なまじ弦楽器群の馬力がすごいものですから、管楽器群の愛らしさが吹き飛ばされている印象です。

しかし、その弦楽器群がしなやかな響きを聞かせる第2楽章序盤になりますと、その豊かな表情がプラスに作用しているかなと思えます。
そして、ティンパニーとともに猛然とオーケストラが鳴らされると、コントラストがはっきりして曲の印象が強まります。

第3楽章のスケルツォでは、その強弱のコントラストに聞く方も耳が慣れてきて、割とシンプルなオーケストレーションであっても、かなり楽しむことができるようになります。

やたらティンパニーが鳴り響くという印象が強い第4楽章は、しかし、このベーム盤のように律義にきちんと演奏すると、他の演奏のようなイタリア風味が消し飛んで、純然たるドイツ音楽のように聞こえてしまいます。


どうもこの録音で聞く第6番の交響曲は、純朴に音楽に向き合うときのベームのスタイルがまともに出てきたみたいです。(オペラなどでは純朴とはほど遠いときもあるのですが)
そして、なまじBPOという桁外れのオーケストラとの大編成での共演ですから、そのスタイルがまともに出てしまって、かなり威圧的なシューベルトになってしまっているところを感じます。
ひょっとすると、もう少し小さな編成によるピリオド演奏のブリュッヘン盤の印象が強く残っているから、余計にそう感じたのかもしれません。

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