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ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」(アンチェル/チェコpo)

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このところ、METをはじめとして世界各国からストリーミング配信された音楽を聞くことに慣れてしまい、しかもいまは選択肢が多いものですから、ネットを逍遥すればなにがしか聞いてみたいものが見つかります。

今日は久しぶりに訪れた「オペラ対訳プロジェクト」でヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」、それもカレル・アンチェル/チェコpoによるスプラフォン録音を日本語字幕付きで公開されているのを見つけました。
この曲は、なにせ古代スラブ語による典礼文がテキストとはいえ、どう聞いてみても教会で信者を前に演奏されるミサ曲とは思えない派手派手しさです。
オーケストラはティンパニーの連打を含め朗々と高らかに鳴り響き、オルガンは終盤には激情そのままの激しさがあります。
ミサ曲という名を借りた演奏会用音楽としか聞こえません。
それでも、この日本語字幕を見ていますと、ちゃんとした典礼文であるかのようです。(多分)

チェコpoを一流オーケストラに育成したのはターリッヒと言われており、その片鱗はいくつか残っている録音でも聞き取ることができます。
その正統的後継者となるはずのアンチェルは、第二次世界大戦中はユダヤ人故に強制収容所に入れられ、本人は音楽家であるため生き延びましたが、家族は収容所で全員虐殺されるという悲劇を経験しています。
第二次世界大戦後、共産党政権に反発して辞任したクーベリックの後任としてチェコpoの常任指揮者となりますが、1968年のプラハの春の圧殺により、亡命してトロントsoの常任指揮者となったあと客死して生涯を終えた人です。

チェコpoというとノイマン時代が日本では親しまれていますが、1959年に来日した際、東京体育館で演奏された「売られた花嫁」序曲の一部をNHKの映像で見ると、圧倒的に精密なアンサンブルに支えられた強烈な音楽は腰を抜かすという生半可な言葉では足りないくらいです。

通販サイトでは1963年録音と記されているこの「グラゴル・ミサ」は、そのNHKの記録映像を彷彿とさせる熱気が充満した名演です。
録音状態も60年近く前のものとは思えない鮮明さで、スプラフォン録音の良さがあります。

「オペラ対訳プロジェクト」のブログによれば、7月3日はヤナーチェクの誕生日であると同時にアンチェルの命日で、その日に合わせて音源が公開されています。(アンチェルはカラヤンと同年生れです)
その中で、クーベリック盤に対して消極的な感想が述べられていますけれども、そういえば、マッケラス盤に気を取られていてクーベリック盤の感想をまだ書いていないことに気づきました。

ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」(シャイー/VPO)

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最初の記述では、この録音は1979年録音と誤記して、その前提の文章となっておりましたが、この曲が大好きなぐらごるみささんから、1997年録音とのご指摘を頂戴し誤りに気づききましたので、文章を大幅に訂正しました。
ぐらごるみささん、ご指摘、ありがとうございます。

VPOのBOX、嬉しいことにヤナーチェクが2枚も収録されています。
ところが残念なことに61枚目の管弦楽集はデッカBOXにも同じものが収録されており、これは既にこのブロクでも印象を書き記しております。

次の62枚目は、しかし珍しい録音でした。
なんとシャイーがVPOを振って「グラゴル・ミサ」を録音したものです。
1997年の録音で、通販サイトをお借りすると、独唱者等は次のお名前が記されています。
エヴァ・ウルバノヴァー(ソプラノ)
マルタ・ベニャチコヴァー(メゾ・ソプラノ)
ヴラディーミル・ボガチョフ(テノール)
リヒャルト・ノヴァーク(バス)
トーマス・トロッター(オルガン)
スロバキア・フィルハーモニー合唱団

今シーズンからスカラ座の音楽監督に就任して、すっかり人気指揮者となったシャイーではありますが、RCOの常任指揮者在任中にVPOとヤナーチェクを録音しているのには気づいておりませんでした。
デッカは、ヤナーチェクのオペラをはじめ、主要曲に関してはマッケラス/VPOで録音しているにもかかわらず、この「グラゴル・ミサ」はわざわざシャイーを呼んできて、しかもVPOとの録音にしたのは、何となく不思議な感じがします。
そのマッケラスは、この曲はチェコpoとの録音、映像のほかに、私は未聴のデンマークrso盤を残しているようです。

さて、このシャイー盤は、マッケラスやクーベリックといった土俗的な雰囲気に溢れた演奏からすると、随分洗練された音楽のように聞こえます。
インターナショナルなヤナーチェク演奏と言っていいのかもしれません。

数年前の私であれば、こういう演奏は違和感いっぱいで拒絶反応が先に立っていたのではないかと思います。
典型的にはマッケラスのようにヤナーチェク独特のリズム感を前面に出した角張った演奏を好んでおりましたが、それ以外の演奏スタイルもあり得るという点で、私の受容の幅が広がってきていることが大きく影響しています。
シャイーは、ややオペラ的な音作りをしているように聞こえますし、そこをVPOが深々とした響きを聞かせてくれている一方で、やや明るめの音色にもなっているところが、なかなかに魅力的です。
極めて優秀なデッカの録音も大きく寄与しています。

4人の独唱者も、劇的な歌い方になっているあたりもオペラ的という印象を強めています。
特にテノールのボガチョフという方が、その傾向が顕著です。
そして、恐らくはこの録音のために呼ばれたと思われるスロヴァキア・フィルハーモニー合唱団もまた、土の香りを残しながらも、迫力ある歌声を聞かせてくれています。

第1曲の入りは、ややゆったりとした音楽でありながら、曲が進むにつれて次第に熱を帯びてきて、聞いている側を興奮に導いてくれるあたりは、演出効果を狙っているのでしょう、決して嫌味ではなく成功しているように思います。
第7曲のアクロバティックなオルガン・ソロから最後の「イントラーダ」になると爆演とまでは言いませんが、かなりの熱演で終わると、聞き慣れた「グラゴル・ミサ」の演奏とはまた違う満足感を味わうことができます。

シャイーはスカラ座のオープニング公演、ヴェルディの「ジャンヌ・ダルク」を指揮した映像がNHKのBSで放送され、これは録画してあとからゆっくり見るつもりではありますが、バレンボイム後のスカラ座が、かつての栄光を取り戻せるか、ちょっと気になります。

ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」(原典版) (マッケラス/チェコpo) DVD

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マッケラスの死後、スプラフォンから発売されたヤナーチェクとマルチヌーを集めたBOXから1枚だけ収録されていたDVDを見るのを忘れていました。

1996年にプラハで行われたコンサートを録画したもので、その中から、まずヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」を聞いてみました。

サー・チャールズ・マッケラス指揮
チェコpo
プラハpo合唱団
ヤン・ホラ(オルガン)

エヴァ・ウルバノヴァー(ソプラノ)
ベルナルダ・フィンク(アルト)
レオ・マリアン・ヴォディチュカ(テノール)
ぺテル・ミクラーシュ(バス)

通販サイトでは、この演奏に「原典版」という表示が付されています。
何が違うのかなと思って聞き始めたら、冒頭から曲が違います。
ビックリしていたら、字幕に「イントラーダ」と表示されています。
いつもなら最後に聞いているはずの曲が最初に聞こえてきます。
同じマッケラス/チェコpoのCDで聞き覚えた曲が、ちょっとした曲の順番の違いで結構オロオロするものです(笑)

2曲目になって聞き慣れた序奏(入祭文)が聞こえてきてホッとします。
ところが、どうもオーケストラにヤナーチェクらしい響きの厚み、迫力が足りなくて、なんか変な感じです。

3曲目の「キリエ」は合唱とソプラノが入ってきますが、画面に歌詞字幕が出てきません。
英語・チェコ語・ドイツ語・フランス語の歌詞が付いていると書いてあったんですが…
(結局、後でわかったことは、各曲のタイトル表示が各国語で出るということだけでした。)

このあと「グロリア」、「クレド」、「サンクトゥス」、「アニュス・デイ」、「後奏曲」(オルガン独奏)と進み、どうなることかと思っていたら、最後にもう一度「イントラーダ」が演奏されて、いつもどおりの終わり方です。

こんな調子で、1回目に見たときは戸惑いが先に立って曲を楽しむという感じはありません。
そこでネットで調べてみると、この曲の成立までにはかなりの改訂が加えられていると書かれているものがありました。
http://members3.jcom.home.ne.jp/janacekjapan/glagol-sekine.html

これによれば、やはり最初に「イントルーダ」が置かれて、「クレド」を中心とした対称的な曲の構造にしようとしていたようで、初演のときはこの形であったようです。
ただ、いつ、どういう理由で「イントルーダ」が省略されるようになったかまでは記載されていません。

昔のCDと聞き比べたわけではありませんが、もう一度聞き直してみると、このDVDの方が土俗的な音調が強いようにも感じます。
ただ、残念ながら上記の論文に書かれているような原典版と聞き慣れた改訂版との違いは、はっきりとはわかりませんでした。
ですから、土俗的な音調の強さを感じるのは、そもそもの楽譜の違いなのか、演奏スタイルの違いなのか、それとも録音の違いなのかまでは定かにわかりません。
ただ、初期デジタル録音のCDよりは遥かに聞きやすい音質になっていることは間違いありません。

歌手の皆さんは、名前も姿も初めて見る方々です。
とはいえ、チェコでの演奏でマッケラスが指揮するコンサートですから、それなりの歌手の皆さんなんでしょう、それぞれ見事な歌声を聞かせてくれます。
それに合唱団の見事にトレーニングされた歌声は、この曲の聞き映えをいっそう高めています。

オペラと違って、私の場合、普通のコンサートを映像で見ることはそれほど多くありません。
しかしながら、この映像では「クレド」で3人のティンパニー奏者が目一杯の音を鳴り響かせているのを見ると、これはやはり壮観で、映像の有難味を感じます。

マッケラスが聞かせてくれる音楽は、CDで聞き慣れているものから、当然のことながら大きく離れているものではありません。
私自身がマッケラスでヤナーチェクを覚えましたので違和感はありませんが、もう少し違う指揮者でヤナーチェクを聞いてみたいという思いが、最近強まっています。

ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」(マッケラス/チェコpo)

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マッケラスがスプラフォンに録音を残したヤナーチェク集から3枚目は「グラゴル・ミサ」です。
これは1984年、まだDENONが元気だった頃に初期のデジタル録音をスプラフォンと共同で制作した有名なもので掲載した単売ジャケットでは左上に懐かしい「PCM」の表示があります。
悔しいことに、このジャケットの最初期CDを持っており、裏には3,300円という定価が印刷されています。
今回、そこに数百円加えるだけで4枚のCDと1枚のDVDが買えてしまいました。。。

ということはさておき、このマッケラス盤「グラゴル・ミサ」は私の刷り込み盤でして、久しぶりに聞いた気がします。
旧盤の佐川吉男氏の解説を改めて読んでおりますと、「これは、教会音楽ではなく、教会音楽のかたちを借りた世俗的なカンタータ、オラトリオのたぐいと見るべきものであろう。」と書かれており、このくだりはすっかり忘れておりました。
続けて「この曲はまた、同じく1926年にこれに先立って書かれた《シンフォニエッタ》と並んで、人生と人間をこよなく愛したヤナーチェクが、第1次世界大戦後300年ぶりで独立を回復した祖国の新生の喜びと自由な雰囲気の中で、彼の楽天主義的人生観を謳歌した名曲の双璧でもある。」と書かれています。

独唱、演奏は次のとおりで、指揮はもちろんマッケラスです。
エリーザベト・ゼーダーシュトレーム(ソプラノ)
ドラホミーラ・ドロブコヴァー(アルト)
フランティシェク・リヴォラ(テノール)
リハルト・ノヴァーク(バス)
ヤン・ホラ(オルガン)
プラハ・フィルハーモニー合唱団
チェコ・フィルハーモニー・オーケストラ

久しぶりに聞き直してみて、まず驚いたのが随分聞きやすい音になっていたことです。
初期のデジタル録音らしい硬い音の名残はありますが、音の鮮明度は格段に上がっている感じがします。
解説書を見る限りではリマスターを施したわけでもなさそうで、CD制作技術の進歩なんでしょうか。

演奏そのものは、上述の佐川解説をそのまま表現したような輝かしさにあふれたもので、この録音を初めて聞いたときの、いままで聞いたこともない新鮮な響きに驚かされたことを思い出します。
奇妙なリズム感、不思議な和音、これが私のヤナーチェク体験の本格的なスタートだったものです。

いまや日本においても、頻繁とまではいきませんがコンサート・プログラムに普通に載るようになりました。
少し前には、デュトワとN響による演奏の映像が放送されていたものも楽しめました。

この曲では、やはりティンパニーとオルガンが派手に聞かせてくれないと面白くありません。
その点でも、マッケラスとチェコpoは、存分にダイナミックな演奏を聞かせてくれます。

この時期、マッケラスのヤナーチェク録音には必ずと言っていいほど参加していたゼーダーシュトレームは、やはり独唱者の中では抜きん出ています。



このCDには、余白にカンタータ「アマールス」という曲が収録されています。
初めて見る名前ですが、録音データを見ると「グラゴル・ミサ」と同時期に録音されたものです。
ところが、最初期CDでは「グラゴル・ミサ」1曲しか収録されていませんでした。
国内盤が発売されていたか、定かな記憶がありません。

輸入盤の悲しさ、解説書には詳しい記述がなく、歌詞すらわからないので困ったなと思っていたら、「クラシック歌曲の森へ」というサイトでしっかり歌詞対訳等が見つかりました。
1897年の作品といいますから、ヤナーチェクとしては比較的初期のもので、まだ独自のスタイルを確立する前のもののようです。
作曲の経緯等はよくわかりませんが、とりあえず対訳を見ながら聞いてみました。
http://kunstlied.blog23.fc2.com/blog-entry-781.html
http://kunstlied.blog23.fc2.com/blog-date-201001-2.html
http://members3.jcom.home.ne.jp/janacekjapan/pdf/seigaku_sample1.pdf

独唱者は次のとおりで、オーケストラ、合唱団は変更がありません。
クヴェトスラヴァ・ニェメチュコヴァー(ソプラノ)
レオ・マリアン・ヴォディチュカ(テノール)
ヴァーツラフ・ジーテク(バリトン)

「グラゴル・ミサ」とは雰囲気が全く違って、ヤナーチェクらしさをそれほど感じない曲です。
せいぜい打楽器が多用されるところで、それらしさを感じるくらいでして、あの激しいリズム感はなく、分厚い弦楽器の音をバックに独唱と合唱が入ってきます。

全体が5曲で構成され、30分ほどの曲です。
歌詞対訳を見ながら聞いておりますと、幸せそうなカップルと、捨て子の私生児アマールスの対比、しかも先に死んでしまうアマールスでは、ちょっと切ない感じもします。
カンタータというものの性格、演奏のされ方がいまひとつ理解できておりませんで、何も教えられず聞いていたらオペラの一シーンと思ってしまうかもわかりません。

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N響の放送録画を長期間放置したままになっていたのがひょっこり出てきたので、中身の確認を兼ねて見てみました。
2009年12月11日の定期公演を録画したもので、指揮はシャルル・デュトワです。

これを録画したのは、滅多にコンサートにはかからないヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」を聞きに行けなかった恨みからです(笑)
ところがDVDに落としたときに、曲名を記載せず、真っ白のままだったので、いままで隅っこに置かれていました。

独唱者は次の方々で、合唱は東京混声合唱団です。
ソプラノ:メラニー・ディーナー
アルト:ヤナ・シーコロヴァー
テノール:サイモン・オニール
バス:ミハイル・ペトレンコ

あのN響も、デュトワの前だと真面目に演奏しています。
画面に映る団員の顔つきが普段と随分違います。
まあ、サラリーマンも、社内でも相手次第で態度を変えることはないとは言えず、人間社会である以上、ある程度はやむを得ないとは思いつつも、この団体はそれが極端なのが見えたのも要因となって定期会員をやめてしまいました。

サヴァリッシュが来たときもそうですが、色んな意味で怖い指揮者のもとで本気を出したときのN響は、やはりかなりの力あるオーケストラだと感心してしまいます。
どうして普段は、あそこまで出し惜しみするのでしょうか。

それでもヤナーチェクにしては、やや響きが薄い感じがするところもありますが、デュトワとしてはこれ以上やると、やり過ぎになるというところなんでしょう。

独唱者の皆さんは、誰か傑出しているということはなく、実にバランスよく歌っている感じです。
このあたりはデュトワの人脈の中からの起用なのでしょうか。

それに東京混声合唱団が、例によって素晴らしい出来です。
日本の合唱は、世界レベルから見ても決して低くはないように思います。

こういう珍しい曲だと、日本語字幕が付いていると本当に助かりますし、どういう楽器が鳴らされているのかも画面を見てよくわかります。
ただ残念なのは、終演後の拍手のタイミングが早過ぎて、最後のところでちょっと白けてしまうことです。


このコンサートの前半は、アラベラ・美歩・シュタインバッハという美しいお嬢さんのヴァイオリンで、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲です。
美人ヴァイオリニスト好きのデュトワらしい起用かなと思いつつ聞いておりました。
なかなか躍動感あふれるヴァイオリンを聞かせてくれる方です。
チャイコフスキーも悪くはありませんが、明るい音色のヴァイオリンですので、もう少し違う曲でも聞いてみたい気がします。
お母さんが日本人と字幕には出ていました。

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