「本の虫の本」図書館
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題名に誘われて図書館から借りて読んだのが、この「本の虫の本」です。
うさぎ小屋の我が家にはLPやCD以上に本が溢れかえっており、出す場所のない本は、数十箱の段ボールに入ったまま屋根裏に眠っています。
あちこちの部屋に置かれた本棚も完全に満杯で、前後はもちろん、平積みになっているものも多々あり、狭い部屋の床にも積み上がっています…
かつては天井までの書棚に三方が埋め尽くされた書斎が夢でありましたが、この歳になりますと、もう叶えることはありません。
世の中には家が傾くほどの本をお持ちの方がいらっしゃいますので、そこまでには至っていませんけれども、わたしも小さな小さな「本の虫」端くれであるのかもしれません。
しかし「本の虫」を自称する方々は、流石に凄みがありました。
この本は書誌(+装丁)を生業としている方、書店員の方、書評を書いている方、古書店経営者、古書のことを書いている方の五人がお書きになっていて、それぞれ著書もあるみたいですが、わたしは初めて読む方々ばかりです。
それぞれ書き手が、習性、苦悩、偏愛、出版、書店、古本、読書、列伝の項目について、一人17~8ほど、項目にこだわらず二回り書き綴ったものです。
そして、本の中程に、文章の中で紹介された何冊かの本を、イラストに描いたものが一冊一頁で、紙質も変えて挿入されています。
切り揃えられていない本の天に、薄っすらとそれぞれの書き手の塊が5人×2回=10個、見出しが、まるでてんとう虫のように見えるようになっていて、装丁もおしゃれです。
そして、さすが「本の虫」の本と感心したのは、書き手ごとの塊の目次の他に、巻末にはバラバラに書かれたものを項目ごとにまとめ直した目次も付けられています。
ちょっとした本に関する用語集、それに本文で紹介された本の目次も付けられています。
とにかく、本好きが読み始めたら止まらない話ばかりが書かれていて、ご紹介したいものだらけなのですが、その中から私が「へぇ~」と思ったいくつかを。
・青木まりこ現象
これはWikipediaにも項目が立っていて、「書店に足を運んだ際に突如こみ上げる便意」と定義されています。
わたしの父親は「小」の方でありましたが、一緒に本屋さんに行くと、ほぼ100%の割合でトイレに走っておりました。
いっぱい本が並んでいるのを見るだけで嬉しくなって尿意を催すのだと言っていました。
大小の違いはあっても、同じ現象であったのでしょう。
・古書店と猫
古書店には猫が似合うと言われても、商品におしっこをかけられたり、爪とぎをされる被害は死活問題、これはわかります。
そういうことをしない猫もいて、要するに猫にも「アタリ」と「ハズレ」の二種類がいると書かれていると、妙に納得してしまいます。
いま我が家にいるまるちゃんは「ハズレ」かな…(でもかわいいけど)
・古本好き
「函入りの本の扱い方でどのくらいの古本好きかわかる」
これも、納得です。
古本に限らず新本でも、本屋さんの棚から出した本にかけられているパラフィン紙が緩んでいたら、しっかりとかけ直して戻してしまいます。
函に戻すとき破くなんてことはあり得ません。
・町の本屋と万引
この本で登場する書店では、中小出版社の良質な本を取り扱っています。
大手取次には相手をされず、出版社から直販で仕入れると、最低発注数があって返品不可の買い切り、しかも新刊は利益率が低いのだそうです。
そうすると、一冊でも売れ残ったり、汚損したり、果ては万引にあうと、それだけでマイナスになると、小さな本屋さんの厳しさも書かれています。
ハシリの頃のブックオフは何度か訪れていましたが、ただいまベストセラー中のものが、開いた形跡もない真新しい形で何冊も積み上がっているのを見ました。
ああ、これは万引した本を平然と買い取って売っているのだと理解して、それ以来足が遠のいています。
奥付を見ると、出版社は創元社となっていて、住所は大阪の実家から歩いて行ける距離にありました。
中小の出版社にしては、しっかりした本づくりだなと思っていたら、1892年創立の古い会社で、推理小説でお世話になった東京創元社は第二次世界大戦後に暖簾分けした会社であったようで、ちょっとびっくりです。